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対談!EC+【特別編④】進化する「地域DXソリューション」Vol.1──“観光×物産”で地域の関係人口増加を目指す「観光DXソリューション」
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対談!EC+【特別編④】進化する「地域DXソリューション」Vol.1──“観光×物産”で地域の関係人口増加を目指す「観光DXソリューション」

自治体や地域事業者のECやDXの課題解決を目指して、2023年2月から提供が始まった〈地域DXソリューション〉。博報堂DYグループのEC領域の専門家集団であるHAKHODO EC+が取り組んでいるこのソリューション群は、現在も進化を続けています。従来の6つのメニューに加えて、この7月に新たに6つのメニューが追加されました。その1つ〈観光DXソリューション〉について、ソリューションの開発や運用を担当するメンバーが語りました。
地域DX特別編 前回はこちら

(写真左から)
桑嶋 剛史
HAKUHODO EC+ ビジネスコンサルタント/地域DXソリューション リーダー
博報堂 コマースコンサルティング局
コマースDX推進グループ
イノベーションプラニングディレクター

永見 拓哉
HAKUHODO EC+ コンサルタント
博報堂 コマースコンサルティング局
コマースDX推進グループ
マーケティングプラナー

濵畑 麻希子
HAKUHODO EC+/地域DXソリューションサブリーダー
博報堂プロダクツ コマーステクノロジー事業本部
コマースマーケティングコンサルタント

林 匠太郎
HAKUHODO EC+
博報堂 グロースプラニング局

なぜ、HAKUHODO EC+が「観光」に取り組むのか

桑嶋
HAKUHODO EC+の取り組みの一環として、DXによる地域支援を行う〈地域DXソリューション〉のサービスがスタートしたのは2023年2月でした。「産地直送ECモール立ち上げ」「EC事業診断」「ECモール運用代行」「新商品開発」「地域ライブコマース」「地域DX教育」の6つのメニューで始めたサービスでしたが、この1年半ほどの間に全国の多くの自治体や地域事業者の皆さんに各メニューをご活用いただき、大きな成果を出してきました。その間、チームの陣容も大きく拡大しています。博報堂内ではグロースプランニング局や、グループ会社のHakuhodo DY ONEといった新しい組織が加わり、コアメンバーの数はスタート時のおよそ2倍になりました。

さらにこの7月、〈地域DXソリューション〉に新たに6つのメニューが加わりました。その1つが、地域の観光課題を解決する〈観光DXソリューション〉です。このサービス開発の背景について、濵畑さんからご説明いただきます。

濵畑
近年、地方では「関係人口」が重要なキーワードになっています。関係人口とは、その地域に定住はしていないけれど、継続的なかかわりをもつ人の数を示す言葉です。観光などで一時的に地域を訪れる人の数を「交流人口」と言いますが、そこからさらに地域との関係を深めた人たちによって構成されるのが関係人口です。

多くの地方では過疎化や少子化にともなう人口減少が深刻な問題となっています。関係人口が増えることは、そのような問題の解決策の1つになると考えられます。実際、コロナ禍以降、その土地に移住するまではいかなくても、テレワークの拠点としたり、月のうちの何日かは農作業をするために地域を訪れたりするなど、「関係人口化」する人たちが増えてきています。また、働き手不足に悩む地方の旅館や商業施設などを働き口として選ぶ若い世代が増えているのも、関係人口の増加につながっています。

こういった関係人口化のきっかけになるのが「観光」です。たまたま観光で訪れた土地を気に入って、そこに何度も通うようになったり、仕事や生活の1つの拠点としたりする。そうして、地域の経済活動や社会活動に貢献するようになる──。そんな流れが各地で生まれています。各地の自治体や地域事業者の皆さんが今まで以上に観光への取り組みを強化できる仕組みがあれば、関係人口化がいっそう進むに違いない。そう私たちは考えました。そのツールとなるのが〈観光DXソリューション〉です。

桑嶋
HAKUHODO EC+が「観光」というテーマに取り組む意味合いについても説明していただけますか。
濵畑
観光客を関係人口化するためには、たんにその地域の観光情報を伝えるだけでは不十分です。情報基盤を整備し、情報が拡散する仕組みをつくり、観光客を獲得し、長期的な関係をつくっていく。そんな一連の取り組みが必要となります。HAKUHODO EC+、とりわけ〈地域DXソリューション〉のチームは、これまで主に「物産販売」というテーマでそういった一気通貫の仕組みをつくって地域の皆さんを支援してきました。その活動で蓄積したノウハウは、観光にも応用することが可能です。物産だけでなく観光に関する地域課題の解決に私たちの知見やスキルをご提供できること。それが、私たちが観光というテーマに取り組む意味だと考えています。

〈観光DXソリューション〉の4つのステップ

桑嶋
「観光DX」というと、観光情報基盤のデジタル化を意味すると捉えられがちです。しかし、それはDXの一部にすぎません。僕たちは、観光DXには4つのステップがあると考えています。

1つ目のステップが、観光情報を発信するホームページやSNSといった「観光情報を伝える基盤」づくり、2つ目のステップは、SNSやラジオ・テレビ番組などを活用した「観光情報の拡散」です。3つ目のステップが「観光情報基盤を起点とした相互送客・マーケティング」で、本格的なDXの取り組みはこのステップから始まります。ステップ3には、このあと説明する「デジタル会員証」を使った地域内の相互送客プログラムや、データマーケティングを駆使したCRMなどが含まれます。さらに4つ目のステップは「観光×物産」、すなわち、観光をふるさと納税や物産モールと組み合わせることで、交流人口の関係人口化を促進する取り組みです。
以上の一連のステップの土台となるのが、ステップ1とステップ2です。そのフェーズでいかされているのが、博報堂プロダクツの情報設計のノウハウです。

濵畑
観光の情報設計において重要なのは、生活者が求める情報を適切な形で届けることです。博報堂プロダクツには、生活者の意識や動向を調査し分析するチーム、最適なインターフェースをつくるUI/UXチーム、情報拡散のプロであるSNS運用チームなどがあります。また、博報堂のメンバーと一緒にタレントやインフルエンサーなどを起用したPR戦略を立案することもできます。それらのスキルやノウハウが、観光DXの取り組みでも発揮されています。
桑嶋
地域の観光情報PRには、いくつかのポイントがあります。これについては、ライブコマースなどを専門にしている永見さんから説明していただけますか。
永見
観光情報PRのポイントは、大きく2つあると思います。1つは、その地域の魅力や特色を踏まえた情報拡散の方法を、適切に選択していくことです。たんに「拡散力・影響力があるから」という基準でメディアを活用すると、逆に地域独自の魅力を損ねてしまうこともありえます。地域の特色を把握して、その地域により適した拡散方法を考えなければなりません。もう1つが、生活者に継続的に情報を届けていくことです。打ち上げ花火的に情報を発信するのではなく、その地域に興味関心がある生活者が常に地域の情報に触れられる仕組みをつくることが必要です。その継続的な取り組みが、交流人口の関係人口化につながると僕たちは考えています。

観光DXにおけるデータ活用

桑嶋
3つ目のステップである「観光情報基盤を起点とした相互送客・マーケティング」では、データ活用が必須になります。観光DXにおけるデータ活用について、データのプロである林さんに解説していただきます。
観光客の年齢や性別などのデモグラフィックデータを活用している自治体や地域事業者は少なくないと思います。しかし、そういった基礎的なデータだけで観光客を捉えると、施策の解像度が粗くなってしまう可能性があります。
僕たちが推奨しているのは、プラットフォーマーが保有する検索データや、旅行サイトが保有する旅行商品購買データ、博報堂DYグループ が保有する生活者データなどを多面的に組み合わせて観光客を捉えることで、より解像度の高いプラニングをすることです。
桑嶋
いろいろなデータを組み合わせることで、関係人口化しやすい人がどういう人で、その人にどういうアプローチをすべきかが見えてくるということですよね。プラットフォームや旅行サイトなどが保有するデータ活用に関しては、プライバシー保護に十分に配慮する必要があるし、プラットフォーマーやサイト運営者との信頼関係も重要になります。データ活用のノウハウや、データを保有するプレーヤーとの強いパートナーシップがある点が、僕たち博報堂DYグループの強みと言っていいと思います。

関係人口化を推進するという目的を考えれば、地域に来訪した人々の購買・行動データも重要です。そのようなデータを蓄積していくことで、どういった嗜好性や行動特性がある人たちが関係人口化しやすいかという「正解データ」を得ることが可能になるからです。その正解データをもとにPR戦略を立てたり、地域における相互送客を促進したりすることで関係人口を増やしていくことができると僕たちは考えています。
そのような購買行動データの収集に活用できるのがレシートアプリです。これは、購買時のレシートをスキャンするとポイントが溜まるアプリで、観光客にメリットを提供しつつ購買行動を把握できる仕組みの1つと言えます。

桑嶋
そのような正解データがあれば、観光で一度訪れた人たちに再来訪を促すCRMのプランニングの精度も上がりそうですね。
おっしゃるとおりです。正解データを充実させていくことで、CRMの解像度も上がっていくと考えられます。そのためには、情報を発信するターゲット、情報の内容、発信頻度などをいくつかのパターンで試すABテストが有効です。ABテストを繰り返し、より関係人口化しやすいターゲットを見極め、その人たちに地域に継続的に関係したいと思える情報を発信していくこと。それが観光DXのCRMにおける重要な取り組みだと思います。
濵畑
そのCRMの考え方は、ダイレクトマーケティングの方法論に近いと言えます。私が属している博報堂プロダクツのコマーステクノロジー事業本部も、林さんが属している博報堂のグロースプランニング局も、いずれもダイレクトマーケティングを得意とする部署です。ダイレクトマーケティングにおいて重要なのは、顧客を獲得し、さらにその人たちにロイヤルカスタマーになってもらう流れをつくることです。そのためには、CRMのプランを泥臭く何度も何度もつくり替えていく必要があります。その経験とナレッジが観光DXの取り組みにもいかされると思います。

観光客の遊動性を高める「デジタル会員証」

桑嶋
ステップ3の「観光情報基盤を起点とした相互送客・マーケティング」においては、先ほど少し触れた「デジタル会員証」の仕組みを活用していくことになります。デジタル会員証の開発を主導してきた永見さんから、この仕組みの概要をご説明いただきます。
永見
デジタル会員証とは、地域を訪れた人に使っていただく会員システムで、地域内の店舗で買い物をしたり飲食をしたりするごとにポイントが溜まったり、スタンプラリーのような企画に参加することが可能です。これを地域共通のサービスプラットフォームとして自治体や地域事業者の皆さんに活用していただくことで、観光客の地域内の遊動性が高まり、多様な接点が生まれることになります。それによって観光客の皆さんは新しい顧客体験を得ることが可能になり、自治体や事業者側は、データを獲得して観光客の行動や消費動向を把握することができるようになります。

デジタル会員証開発の背景にあったのは、「地域の中で観光客が集まる場所にかたよりがある」という悩みをしばしば耳にしたことでした。地域の中の特定の場所だけを人が訪れる構造が固定化してしまうと、地域全体が活性化しなくなってしまいます。その課題を解決するには、人々の多様な行動を促し、地域内での遊動性を高めることが必要であると考えました。「デジタル会員証」を活用することで、多くの観光客がさまざまな接点で地域の多様な魅力を感じられるようになれば、関係人口化は間違いなく進んでいくと思います。

桑嶋
購買の仕組みなどと組み合わせて観光の体験価値を上げていけるのは、まさにHAKUHODO EC+の強みだと思います。それによって獲得できるデータも増えるわけですが、重要なのは、観光客にとってベネフィットがあり、それが地域の魅力を知ることにつながるということです。端的に言えば、「使って楽しいサービス」でなければならないということです。そのような視点がなく、単にデータを収集することを目的にした仕組みは、失敗する可能性が高いですよね。
そう思います。「生活者視点でのデータ収集」ということですよね。生活者にメリットがあって、生活者が能動的に参加したくなる仕組みがあるから、それを生活者は使いたくなる。その結果として得られたデータも、最終的には生活者のベネフィットのために使われる──。そんな考え方が大切だと思います。

桑嶋
さて、ステップ4の「観光×物産」では、博報堂プロダクツが開発したソリューション〈EC Cart +〉を活用しています。このソリューションの特徴を教えていただけますか。
濵畑
モール型の通販の仕組みがつくりやすいこと、カスタマイズがしやすいことに加えて、MA(マーケティングオートメーション)との連携機能、ライブコマースの機能、タッチするだけで、ダイレクトに商品詳細ページへ誘導できる「TIG」技術(※)を標準搭載していることなどが挙げられます。観光情報や物産情報を伝えるには、映像がとても有効です。そう考えれば、ECに動画を組み合わせた展開ができる〈EC Cart +〉は、「観光×物産」のステップで大きな力を発揮すると思います。

──最後に、これからの観光DXにかける思いや、今後の見通しをお聞かせください。

交流人口を増やし、さらにその人たちを関係人口化していくには、DXの取り組みが絶対に必要です。僕たちのDX支援のノウハウを全国のさまざまな自治体や地域事業者の皆さんにご提供し、地域の力になっていきたい。そう思っています。
永見
関係人口を増やすには、地域の情報を発信するだけでなく、訪問者を迎えいれる側の「受け皿」を作ることも必要であり、デジタル会員証もその1つです。自治体・事業者が連携して、訪問者を迎え入れる準備をした上で、訪問者を迎え入れ、能動的な行動を促すことで、地域への愛着も醸成されると思います。今後も、訪問者の能動性を促進する施策や仕組みを考え、交流人口の関係人口化に寄与していきたいと考えています。
濵畑
〈観光DXソリューション〉は関係人口を増やすことを目的にしていますが、広く捉えれば、〈地域DXソリューション〉のすべてが関係人口増加を後押ししていると考えられます。ソリューション群を活用して関係人口増加に寄与することで、地域の活性化を支援すること。それが私たちの役割だと思います。
桑嶋
観光DXを「観光」という狭い視野で捉えるのではなく、物産販売やふるさと納税と結びつけて、より大きなビジョンをもって進めていくことができるのがHAKUHODO EC+の強みです。もちろん、地方の活性化の軸は物産や観光だけではありません。今後もECのノウハウを軸としながら、自治体や地域事業者の皆さんの活動をトータルにサポートしていきたいですね。

※「TIG/ティグ」は、博報堂プロダクツが資本業務提携を締結しているパロニム株式会社(本社:東京都港区三田/社長:小林道生)が日本で独自に開発したインタラクティブ動画テクノロジーです。
https://www.h-products.co.jp/topics/entry/2022/09/28/140000 

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  • HAKUHODO EC+ ビジネスコンサルタント/地域DXソリューション リーダー
    博報堂 コマースコンサルティング局
    コマースDX推進グループ
    イノベーションプラニングディレクター
    通販事業の運営チームを経て、博報堂のEC支援チームの旗揚げに参画。米国Kepler社への短期出向を経て、現職。ECを軸に、新規ビジネスの立ち上げや変革、事業設計を得意とする。各種講師や記事/書籍執筆なども担当。
  • HAKUHODO EC+ コンサルタント
    博報堂 コマースコンサルティング局
    コマースDX推進グループ
    マーケティングプラナー
    2021年博報堂入社のZ世代。
    EC領域を中心とした事業戦略コンサルティングを軸に、マーケティング戦略の設計、新商品開発、企業理念の策定、コマース施策の戦略設計~実装など、幅広い領域のプラニング・プロジェクトマネジメントを担当。
  • HAKUHODO EC+/地域DXソリューションサブリーダー
    博報堂プロダクツ コマーステクノロジー事業本部
    コマースマーケティングコンサルタント
    2014年博報堂プロダクツに中途入社。前職の広報・販促PRの経験から、広告主視点を持った幅広い対応力が強み。ダイレクトマーケティング、特にCRMの戦略立案から施策設計・実施が得意領域。現在はコマース領域における実装までのコンサルティングも担当。
  • HAKUHODO EC+
    博報堂 グロースプラニング局
    2019年、ビジネスプロデュース職として博報堂に入社。2022年にマーケティング職に転向後は、DCRを使った1st Party Data × Platformer Dataの運用スキーム構築や、ビッグデータ解析、データサイエンス手法を用いたKPI策定・PDCA運用業務を中心に従事。

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