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対談!EC+【第13回】──「ソーシャルARコマース」ってなに? バーチャルメイクの技術が実現する新しいコスメ購入のスタイル
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対談!EC+【第13回】──「ソーシャルARコマース」ってなに? バーチャルメイクの技術が実現する新しいコスメ購入のスタイル

博報堂DYグループのEC領域におけるナレッジとスキルを結集し、企業のEC事業を戦略構築から実装・運用までフルファネル、ワンストップでサポートするユニット「HAKUHODO EC+」。がお送りする EC事情の最前線をさまざまなプロフェッショナルの方とご紹介する連載「対談!EC+」。第13回は、AIとARを活用したバーチャルメイクサービスを展開しているパーフェクトの代表取締役社長・磯崎順信さんをお招きし、HAKUHODO EC+とパーフェクトが共同で開発したソリューション〈ソーシャルARコマース〉について語り合いました。SNS、AR、ECを組み合わせたソリューションが生活者と企業にもたらす価値とは──。

磯崎 順信氏
パーフェクト 代表取締役社長

奥山 貴弘
HAKUHODO EC+リーダー
博報堂 ショッパーマーケティング事業局 局長代理 兼 コマースDX推進グループマネージャー

武藤 重近
博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 コマースクリエイティブ部

瀧川 千智
博報堂DYメディアパートナーズ
クリエイティブ&テクノロジー局 ソリューション開発グループ グループマネージャー

バーチャルメイク技術のトップランナー

奥山
この連載では、「EC+」の「+」、つまり、生活者の利便性や省力性を超えたECの可能性や拡張性にフォーカスし、ECの新しい領域に挑戦しているプロフェッショナルをお招きしていろいろなお話を伺っています。今回は、バーチャルメイクサービス〈YouCam メイク〉の開発者であり、HAKUHODO EC+とともに化粧品EC支援ソリューション〈ソーシャルARコマース〉を企画・開発したパーフェクトの磯崎順信さんと、バーチャルメイク技術やコスメECをテーマにお話をしていきたいと思います。最初に、パーフェクトという会社の概要についてご説明いただきます。
磯崎
パーフェクトはもともと、台湾をベースに活動していたサイバーリンクという会社の一部門でした。サイバーリンクはPC向けの画像映像処理技術を開発していた企業で、世界中のPCメーカーにソフトを提供していました。2010年くらいからモバイル向けのアプリ開発を手がけるようになっていた頃、バーチャルメイクのサービスが世の中に登場しました。ARの技術を使って自分の顔に仮想的にメイクを施すことができるサービスです。サイバーリンクの技術をもってすれば、より高度なサービスをつくれるだろう。そう考えて〈YouCam メイク〉を開発してリリースしたところ、爆発的にヒットしました。その後、その事業部門がパーフェクトとして独立したというのが会社設立の経緯です。〈YouCam メイク〉は当初モバイル向けアプリだったのですが、コスメブランドの皆さんと対話を重ねる中で、ブランドのウェブ上でも使えるプラットフォーム型のサービスに進化していきました。

奥山
〈YouCam メイク〉は、AIやARに関する高い技術力を駆使することによって実現していると言えそうですね。
磯崎
おっしゃるとおりです。肌のテクスチャーや光沢をバーチャルで微細に表現するには、高度なテクノロジー力が求められます。現時点において、この領域では私たちがトップランナーであると自負しています。

生活者、メーカーを取り巻く環境変化

奥山
そういった技術力をベースにした化粧品EC支援ソリューションが〈ソーシャルARコマース〉です。そのソリューションについて詳しくお聞きする前に、コスメをめぐる生活者とメーカーの現状について解説していただきたいと思います。

武藤
コスメユーザーの現状を見ると、化粧品ECでの購入比率は伸長しており、SNSでインフルエンサーが投稿したアイテムなどをチェックしながら、気になったらECで購入するという動きが広がっています。SNS・スマホの浸透により、気になる商品と出会ったらすぐに購入が発生する「瞬間」的な消費行動が浸透する時代において、コスメにおいても同様の動きが加速しています。とくにZ世代には、SNSを自分の気になるブランドとの出会いの場として積極的に活用し、気に入ったブランドがあれば検討フェーズを飛び越えて、即購買する人が少なくありません。

一方、化粧品メーカー側の取り組みとして、まさにパーフェクト社のバーチャルメイク技術の導入が急速な広がりをみせています。バーチャルメイク技術の導入により、生活者は気になるメイクアイテムを自分の顔に重ねた上で、購入することが可能になります。生活者による化粧品ECでの購入比率の伸長を後押ししているのがバーチャルメイク技術であると捉えています。

奥山
3年間のコロナ禍の中で、化粧品の購買スタイルや人気アイテムはどのように変化したのでしょうか。
瀧川
この3年間で、ECでコスメを購買する人がかなり増えました。その傾向は現在も続いています。購買スタイルは大きく二極化していて、デパートなどのコスメ売り場で接客を受けてブランドを買うという以前からのスタイルを好む生活者と、SNSや美容系雑誌で情報をチェックし、デパート、ドラッグストア、ECなどいろいろなチャネルで好きなブランドを探す生活者。大きく分けるとその二通りの傾向があると思います。

アイテムで見ると、コロナ禍以前はリップが人気商品だったのですが、マスク着用が必須になってからは、アイメイクやスキンケア系の商品の売れ行きが伸びました。マスク着用義務がほぼなくなった現在は、あらためて顔全体のメイクのバランスに対する意識が高まっているようです。そういった生活者にとって、いろいろなメイクパターンを試せるバーチャルメイクはとても便利なサービスだと思います。

奥山
メーカーがARの導入を進めているのも、コロナ禍以降の動きなのでしょうか。
磯崎
コロナ禍という要因もちろんあると思いますが、この5、6年ほどの動きを見ると、コロナ禍以前から一貫して導入が伸びていることがわかります。バーチャルメイクの利便性に気づいているメーカーの皆さんが戦略的に取り組んでいるということなのだと思います。

「SNS×AR×コマース」が生み出す、新しい自分との出会い

奥山
〈ソーシャルARコマース〉の開発経緯をお聞かせください。
武藤
EC+の「+」の部分である拡張性をテーマに、最先端のテクノロジーを活用した新たな顧客体験ソリューションの可能性を追求するところからスタートしました。その中で、化粧品市場に着目した背景として、ARテクノロジーを活用した新たな顧客体験を提供することで、メーカーECの支援を行うことができるのでは、と考えたからです。最終的には、ECでの購入比率が伸長する化粧品市場において、SNS投稿、AR体験、コマース融合による顧客体験の提供を通じて、潜在層の化粧品メーカーEC送客・購買を促すメディアタイアップ型ソリューションとしてリリースをさせて頂きました。
〈ソーシャルARコマース〉は、SNSに投稿されたインフルエンサーおすすめのメイクパターンを実際に雑誌社のWebタイアップLP側でバーチャル体験でき、「新しい自分との出会い」を通じて、化粧品メーカーEC送客・購買を促すソリューションになります。
磯崎
ARの高度な技術は以前からあったのですが、それをビジネスに結びつけてマネタイズできるモデルはあまりありませんでした。コスメの領域であればそれができるのではないかと僕たちは考えました。

リアル店舗で購買の起点となるのは「お試し」です。ものを実際に手に取ってみたり、試着してみたりすることで買いたいという気持ちが醸成されるわけです。その法則はコスメにももちろん当てはまります。しかしコスメの場合、例えばリップを何十色も試してみるわけにはいきません。唇は一つしかないからです。結果、最も自分に合うと思えるアイテムだけを試すことになります。

しかし、バーチャルメイクを活用すれば、いろいろなリップを試して、いわば「冒険」することが可能になります。これまでつけたことがなかったような色をつけてみることで、新しい自分を発見できるかもしれないし、購買の選択肢も大きく広がります。一方、それによってメーカーの売り上げは上がります。バーチャルメイクは、生活者とメーカーのウィンウィンを実現できるサービス。そう言っていいと思います。その機能をインフルエンサーのリコメンドと組み合わせることでさらに拡張したのが〈ソーシャルARコマース〉です。

瀧川
「冒険」というのはとてもいい言葉だと思います。冒険がないと、新しい自分に出会うことはできませんよね。これまでとは違ったメイクにチャレンジして、自分自身を刷新していくことを可能にするのが、まさしくバーチャルメイクだと思います。

雑誌メディアと協業する意義

奥山
〈ソーシャルARコマース〉活用の具体的な流れについても説明していただけますか。
武藤
今回、ソリューションの第1弾として主婦と生活社ご協力のもと、女性誌「ar」連携によるタイアップ型パッケージの提供をリリースいたしました。具体的な流れとして、女性誌「ar」のインフルエンサーによる協賛クライアントのアイテムを使ったおすすめのメイクパターンを編集部のアカウントとインフルエンサー個人のSNSアカウントで投稿します。SNSでは投稿したメイクパターンをarのWebタイアップLP側で実際にバーチャル体験できることを告知し、誘引を図ります。LP側では、インフルエンサーやヘアメイクによるメイクパターンの解説を紹介し、期待感を醸成した上で、バーチャルメイクの体験を案内します。気になるメイクパターンについて、まとめて購入できる導線を提供し、化粧品メーカーECへの送客を促す流れになっています。
SNSでの投稿を起点に、ECに来訪する前の潜在層に対して、タイアップLP上でバーチャルメイクできる体験、まとめて購入できる導線を提供し、メーカーEC送客・購買を促すところがこの取り組みにおける重要なポイントだと思っています。

奥山
ソリューションのパートナーとして雑誌社に参加いただいた理由をお聞かせください。
瀧川
コスメブランドにとって、雑誌やそのウェブサイトはとても重要なメディアです。雑誌を介してブランドが生活者とつながってファンをつくっていくというモデルは、このソリューション展開でもとても有効だと考えました。第一弾のタイアップ企画で主婦と生活社の「ar」にご協力いただいたのは、美容系のインフルエンサーが多数いて、新しい取り組みに敏感な読者も多いという特徴があったからです。

また、雑誌社と協業することによって、プロの編集者のアイデアやコンテンツ編集力をご提供いただけるというメリットがあります。一方、この取り組みには、雑誌社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するという側面もあります。それが、私たちが雑誌社にご提供できるメリットであると考えました。

磯崎
〈ソーシャルARコマース〉を成功させるに当たって、コンテンツの力は非常に大きな要素です。バーチャルコスメの仕組みはあくまでもツールです。そこに、商品の魅力を伝えたり、生活者がほしいと思えるようなメッセージを発信したりするコンテンツを組み合わせることによって、初めてコマースへの流れが生まれます。雑誌社の力によってクオリティの高いコンテンツをつくれるというのは、とても重要なポイントだと思います。

奥山
「まとめ買い」の機能も、これまでのECにはあまりなかったものですね。
武藤
バーチャルメイクで仕上がりを体験してそれが気に入ったら、体験したアイテムをすべてまとめて買いたいと考える生活者が多いはずです。もしそこで、通常のECのようにそれぞれの商品ページにアクセスして、一つ一つカートに入れるという作業が発生したら、「やはり買うのをやめよう」と考える人も少なからずいると思います。そのようなストレスをなくすためにメイクパターン単位での「まとめ買い」ができる導線をLP側で提供し、メーカーEC側での客単価向上を支援できればと考えています。
磯崎
「まとめ買い」の前提となるのが、インフルエンサーやメディアへの信頼や共感です。それがあるからこそ、安心してまとめて買えるわけです。
奥山
インフルエンサーのリコメンドに納得して、バーチャルメイクで試して納得する。そういった段階を踏んでいるからこそ、即決買いができるということですよね。
武藤
メイクのトレンドに熟知した雑誌メディア公認のインフルエンサーを起用し、SNS、AR、コマースを融合したシームレスな顧客体験を提供できるパッケージだからこそ、お薦めメイクパターンを実際に体験したい、まとめて購入したいという気持ちが高まると思っています。もちろん個別のアイテム単位で購入したい方もいると思いますので、LP上では、ニーズに合わせて買い方を選べるようになっています。

「バーチャル技術」を活用した新しい購入スタイルを広げていきたい

奥山
最後に、このサービスをどう成長させていきたいか、それぞれのビジョンをお聞かせください。
磯崎
ARを使った「バーチャルお試し」の仕組みは、メイクだけでなく、ヘアカラー、腕時計、ジュエリー、ブライダルなどさまざまな領域に拡張していくことが可能です。用途を広げながら、生活者の利便性をさらに向上させるとともに、ECの活性化を図っていきたい。そう考えています。
瀧川
今後は、さまざまな媒体と協業にチャレンジしていきたいと考えています。例えばテレビとの協業が実現すれば、ドラマの出演者のファッションをARで試してまとめて買えるといったサービスを提供することもできると思います。新しい仕組みづくりに挑戦することで、〈ソーシャルARコマース〉の可能性をどんどん広げていきたいですね。

武藤
コロナ禍を経て、マスク制限が解除される中、改めて自分なりのメイクを楽しみたい、自分に合ったメイクとの出会いを楽しみたい、というニーズが広がってきていると考えています。ソーシャルARコマースは、SNS、AR、コマースを融合したシームレスな顧客体験の提供を通じて、まさにこうした生活者のニーズに応えていけるソリューションであり、メーカーECを来訪、購買、客単価向上の観点から支援できるソリューションです。このソリューションの価値をさらに多くの企業や生活者に伝えていきたいと思っています。
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  • 磯崎 順信氏
    磯崎 順信氏
    パーフェクト 代表取締役社長
    デジタルメディアテクノロジー関連の外資系ベンチャー企業の日本代表等を経て、2015年にPerfectCorp.の日本法人の立ち上げより現職で参画。バーチャルメイクアプリ「YouCam メイク」をはじめ、AI/ARによる新しい消費者エンゲージメントプラットフォームをを多くのブランド・小売店・メディアに向け提供し、エコシステムを確立。
  • HAKUHODO EC+リーダー
    博報堂 ショッパーマーケティング事業局 局長代理 兼
    コマースDX推進グループマネージャー
    2004年博報堂中途入社。大手通信会社を中心に長らく営業職を担当し、2019年より現職。ショッパーマーケティング・イニシアティブのメンバーとして、EC領域に特化した組織横断型プロジェクトチームである「HAKUHODO EC+」を推進する。
  • 博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
    コマースクリエイティブ部
    クリエイティブビジネスプロデューサー
    2001年博報堂入社。テクノロジーを起点とした顧客体験の設計から実装を通じて、クライアントECを支援するクリエイティブビジネスプロデューサー。営業部門を経て、現在はクリエイティブ部門にて、コマース領域におけるビジネス開発、ソリューション開発案件などに従事。
  • 博報堂DYメディアパートナーズ クリエイティブ&テクノロジー局
    ソリューション開発グループ グループマネージャー
    2005年博報堂入社。マーケティング局を経て、雑誌局(現在の新聞雑誌局)へ。
    雑誌やWEBの編集部とクライアントの課題解決をするソリューション「博報堂DYメディアパートナーズMATCH」、社内の女性プロジェクト「博報堂キャリジョ研」を立ち上げ。2022~23年ACCメディアクリエイティブ部門審査員。