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連載【企業の「稼ぐ力」を最大化するRevOps】Vol.3  1万人を対象とした調査から見えてきたRevOpsの現状
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連載【企業の「稼ぐ力」を最大化するRevOps】Vol.3  1万人を対象とした調査から見えてきたRevOpsの現状

RevOpsは、マーケティング・セールス・カスタマーサクセス等の顧客接点に関わる取り組みを、「収益の最大化」という視点で連携させる新しい考え方を意味します。欧米では浸透しつつあるこの考え方も、日本において実行している企業はまだ多くはありません。現在どれくらいのビジネスパーソンがRevOpsのことを知っていて、どれくらいの企業が実際にRevOpsに取り組んでいるのか。それを明らかにする調査を、企業のRevOps支援を行う博報堂マーケティングシステムコンサルティング局の協力のもとパートナー企業であるバーチャレクス・コンサルティングが行いました。その結果から見えてきたものとは──。

宮田 麻美氏
バーチャレクス・コンサルティング
ビジネスインキュベーション&コンサルティング部 ジェネラルマネジャー

石毛 正義
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局

高橋 洸介
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局

玉井 耕太郎
博報堂 DXプロデュース局

小島 伸之
グロースデータ ビジネスデザイン本部グロースデザイン3部部長

日本におけるRevOpsの現状を明らかにしたい

──RevOpsの認知度や企業の具体的な取り組みについての調査を実施したとのことですが、この調査の目的についてお聞かせいただけますか。

宮田
過去2回の記事において、「Vol.1 「RevOps」と何か?」、及び「Vol.2 RevOpsを推進するための戦略、システム、組織」についてお伝えしてきました。RevOpsとは、マーケティング・セールス・カスタマーサクセス等の顧客接点に関わる取り組みを、「収益の最大化」という視点で連携させていく考え方を意味しています。
私たちはRevOpsという考え方を多くの企業にお伝えして、その実行をご支援したいと考えています。
しかし、現状ではこの言葉や考え方は日本国内ではあまり浸透していないという実感があり、実際にどのくらいの方々がRevOpsについて知っていて、どのくらいの企業が取り組みを行っているのか。それを知りたいというのが調査の大きな目的でした。2019年から毎年企業のカスタマーサクセスに対する認知と活動について調査を続けているバーチャレクスが主体となり、博報堂の皆さんと意見を交換しながら5月に調査を実施しました。調査対象は従業員数500人以上の民間企業のさまざまな立場の社員の皆さんで、サンプル数は1万弱でした。

調査資料ダウンロードはこちら
(※外部サイトに移動します)

──どのような質問構成だったのですか。

宮田
RevOpsという言葉を知っているか。RevOpsに実際に取り組んでいるか。取り組んでいる場合、それによるビジネスインパクトはどのくらいあるのか──。その3つが質問の柱でした。

──調査する前には、どのような結果を予想していましたか。

高橋
認知度はかなり低いと思っていました。「Ops(=オペレーション)」という言葉はいろいろな場面で使われるようになっていますが、それとレベニューを結びつけた言葉はあまり知られていないのではないかと。
石毛
おそらく、博報堂DYグループの中でもRevOpsという言葉を知っている人はとても限られているのではと思います。
玉井
言葉自体は知られていなくても、組織横断の取り組みが必要であると考えている方々は多いだろうと僕は考えていました。とくにマネジメントクラスには、その認識がある方が多いのではないかと予想していましたね。
小島
クライアントとおつき合いしている中で、部門間連携を実際に進めている企業が増えているという実感はあります。しかし、その活動をRevOpsという概念で捉えている人はあまりいないのではないかと考えています。

RevOpsの取り組みと企業規模との関係とは

──調査結果についてお聞きしていきたいと思います。まず、認知度はどのくらいあったのでしょうか。

宮田
RevOpsという言葉を知っている人は全体の1割ぐらいでした。ただ内訳を見ると、役職では事業部長、本部長、社長、会長など上位職の方々の認知度が比較的高く、本部長・事業部長では5割を超えるという結果になっています。一方部署で見ると、経営企画、人事、情報システムなど、日頃から部門横断で動いている部署に属している方々の認知度が高かったですね。

──実際に取り組んでいる企業についてはどうでしたか。

宮田
今回の調査では、対象者を属性①~③に分け、セグメント別の違いを深掘りしています。属性①~③の定義は以下の通りです。
尚、前述のとおりですが、属性①~③は共通して現職の勤務先が民間企業で、尚且つ従業員規模500人以上の回答者に絞っております。

<属性の定義>
「マーケティング、営業、カスタマーサクセス」における部門横断の取り組みを、
・【属性①】既に社内に取り組んでいる部署、または担当者がいる
・【属性②】今は取り組んでいる部署、または担当者はいないが、計画している、もしくは必要性を感じている
・【属性③】取り組んでいる部署、または担当者はおらず、今後も取り組む予定はない、かつ必要性も感じていない

結果を見ると、売り上げ3000億円以上の企業の3割以上は属性①もしくは②と回答していることが分かり、すでにRevOps(もしくはそれに相当する活動)に取り組んでいるか、今後取り組む予定であることがわかりました。この割合は、企業の規模が小さくなるにしたがって少なくなる傾向が見られます。

──RevOpsの取り組みと企業規模には相関性があるということですね。

宮田
企業規模が大きいために組織横断の取り組みが必要になっているのか、十分な売り上げがあるから組織横断の取り組みに投資ができるのか。そこは明らかではありませんが、調査結果からは相関性が見られますね。
石毛
企業規模が大きい方がRevOpsの成果も大きくなると捉えられますね。また、RevOpsは多くの場合システムへの投資を必要とするので、ある程度の規模の企業ではないと取り組むのが難しいという事情もありそうです。
高橋
大企業は部門予算が比較的潤沢なので、似たようなシステムを部門ごとに入れている場合があります。となると、全社的に「コスト削減の観点で集約した方が良いのではないか?」といった議論になり、その結果、その打開策としてRevOpsに着目している。そんなケースも少なくないのではないでしょうか。
小島
逆に、システム部門がRevOpsの推進役になっている場合もあります。部門横断で動いている部署に属している方々のRevOps認知度は比較的高いという話がありましたが、システム部門は会社全体を俯瞰できる立場にあって、かつRevOpsの実現にはシステム整備が必須であることを考えれば、取り組みを牽引するのは合理的だと思います。

──RevOpsの専門部署を設置している企業はどのくらいあるのですか。

宮田
少ないですね。本調査の中でも、RevOpsのような部門横断の取組の検討・実行をどこが担っているかという設問において、経営企画、マーケティング、セールス、情報システムといった部門との兼任が多い結果となっています。
玉井
一方、最近ではCRO(チーフレベニューオフィサー)という役割を設ける企業も増えていますよね。企業全体の売り上げに責任をもつポジションです。今後は、CROがRevOpsの活動を統括するケースも増えていくのではないでしょうか。
宮田
今回の調査でも、RevOpsを始めとする部門横断の取組を行う部署や担当者がいる、あるいは今後取り組む計画予定がある企業のそれぞれ2割くらいでCROの役職を設けていることがわかっています。おっしゃるように、今後は、CROのミッションとしてRevOpsを推進する例が増えてくるかもしれませんね。

RevOpsは売り上げに直結するか

宮田
次に、企業の成長とRevOpsへの取組の関係性についてですが、こちらの調査では属性別にサンプル数を設定し、設問に答えてもらっています。
(サンプル数は、それぞれ属性①400、属性②400、属性③200)
会社の直近5年間の売り上げが「上がった」「下がった」「ほぼ変化なし」の3つに調査対象を分けて結果を見てみると、RevOpsを始めとする部門横断の取組を行う部署や担当者がいる(属性①)、あるいは今後取り組む計画がある(属性②)という企業の内、6割以上において売り上げが上がっていることがわかります。
一方、取り組む予定がない企業で売り上げが伸びているのは4割以下にとどまっているようです。RevOpsに取り組んだことによって売り上げが上がったケースと、売り上げが上がることによってRevOpsに取り組めるようになったケース。そのどちらもありそうですが、いずれにしても、RevOpsに対する企業のスタンスと売り上げには何らかの関係があるようです。

石毛
RevOpsに取り組めば確実に売り上げが伸びると断言はできないとしても、RevOpsの考え方に沿って組織間連携を進めていけば、売り上げ向上のボトルネックや課題が見えてくるので、それを改善することが売り上げに寄与するとは言えそうです。

高橋
僕はマーケティングを担当している皆さんの意識の変化も大きいのではないかと思います。従来、マーケティングの役割は見込み顧客を獲得するところまでで、そこから先はセールスの仕事でした。それに対して、マーケティングも売り上げというKPIにコミットしなければならないという企業が多くなってきた印象で、必然的にセールスとの連携も活発になり、その結果として部門横断で収益を考えるRevOpsという思想を取り入れ始めている、といった流れもあるのではないかと。そういう意味では売り上げ向上が先で、そうした中で更にドライブをかける為にRevOpsに行きついた、というケースもあるのではないでしょうか。
玉井
RevOpsの方法論は、とくにBtoBビジネスに有効だと考えています。
BtoB企業には一般に、従業員数が増えれば売り上げも上がるという構造があります。一方、従業員数が増えるほど各部門の独立性が高まり、多くの場合それぞれがサイロ化していく可能性があります。それを打開する有効な方法の1つがRevOpsです。そう考えれば、売り上げが伸びている企業において、RevOpsは必然的な取り組みになりつつあるのではないかと思います。

小島
多くの企業、特に従業員数の多い大手企業は部門ごとに個別の目標や戦略を設定するケースが見られます。ただ、どうしても規模が限定されるため、効果がが頭打ちになるという課題を抱えていると感じています。玉井さんが言うように、RevOpsは売り上げを上げるために必要な方法論という認識が広まりつつあるし、それに取り組んでいる企業は実際に売り上げを伸ばしているということなのではないでしょうか。

RevOpsのコストをどう見るか

──ビジネスインパクトに関する調査結果についてもご説明ください。

宮田
ビジネスインパクトについては、「新規顧客数」「既存顧客数(継続利用・契約更新数)」「客単価」「顧客獲得コスト」の4項目について聞きました。調査結果を見ると、RevOpsに取り組んでいる企業とこれから取り組む予定のある企業のおよそ4割は、すべての項目が増加していることがわかります。新規顧客数、既存顧客数、客単価向上はポジティブな成果で、顧客獲得コスト増加はネガティブな要素と言えます。
玉井
「売り上げを上げてコストを下げる」のがRevOpsの本来のあり方です。コストが上がっているということは、取り組みの内容に改善の余地があるということかもしれませんね。
宮田
一般に、新規顧客獲得コストと既存顧客(リピート)獲得コストには「5対1の法則」があると言われます。新規顧客の獲得には既存顧客獲得の5倍のコストがかかるということです。ですから、売り上げ構成における既存顧客の割合が増えていけば、それだけコストは下がることになります。一方、既存顧客の方がロイヤルティは高いとされるため、客単価は向上し、LTV(生涯顧客価値)への貢献は大きくなります。RevOpsを「正しく」実行することでそのような成果が得られるのですが、顧客獲得コストが増えている企業が多いということは、成果が出るところまで取り組みがまだ進んでいないということなのだと私は捉えています。
小島
RevOpsに取り組みが道半ばという企業が多いということですよね。新規顧客数を増やすところまでは成功したけれど、LTVやROI(投資対効果)の向上は今のところ実現していない。そんなケースが少なくないのだと思います。
高橋
先進的な企業でも、まだ試行錯誤を重ねている段階なのでしょうね。いろいろなトライアルをしているために、現状ではコストがかさんでいると考えられます。
石毛
RevOpsを「正しく」実行すればコストは削減できるのですが、それは一朝一夕で実現できるものではありません。だからこそ、それを支援するパートナーが必要とされているのだと思います。

「従業員発想」でRevOpsを支援していく

──この調査結果を受けて、今後クライアントをどう支援していきたいか。それぞれの考えをお聞かせください。

玉井
企業において各部門が個別の目標を設定するのは組織論的にやむを得ないことです。だからこそ、それぞれの目標を調整しながら、統一したKPIやKGIを設定していく取り組みが必要なのですが、それをすべて社内で行うのは難しい場合が多いと思います。そんなときに、僕たちが第三者の立場でRevOpsの課題の定義と実装の見取り図をご提供できれば、もっと多くの企業がRevOpsを実行できるようになるはずです。ぜひ、そのお手伝いをしていきたいですね。
小島
RevOpsには3つの壁があると考えています。それぞれの部門内の事情で活動が滞ってしまう「部門の壁」、部門間のつながりがなかなかつくれない「連携の壁」、そしてデータやシステムの統合がうまくいかない「システムの壁」です。「システムの壁」は専門的な知見やソリューション提供で解決可能ですが、「部門や連携の壁」を超えていくには、RevOpsを推進する立場の方が力を発揮する必要があります。ソリューションをご提供することはもとより、パートナーとして推進者に寄り添い、リーダーシップを発揮するご支援をしていきたいと考えています。
高橋
博報堂DYグループは生活者発想を大切にしていますが、RevOpsにおいても同様で、クライアントの「会社」や「部門」という組織だけではなく、日々現場で働かれている「従業員の皆さん」という一個人にも目を向けた「従業員発想」が大事だと僕は思います。というのも、仮にRevOpsの考え方や重要性を理解できても、小島さんが言うように、部署ごとに抱えているミッションの違いや目先の現場業務が最優先であることを想像すると、隣の部門にも目を向けるといったある種の余裕が必要となるRevOpsはなかなかハードルが高いのも事実です。そうした中で、それでもRevOpsに取り組んでみることで、これまで各部門で閉じていた活動とその成果が全社貢献レベルにまで発展するということ、それは従業員一人一人のモチベーション向上にも繋がり得るということ。今まで以上に仕事に対するやりがいや誇りを持つようになる従業員もいるかもしれません。今のは例えでしたが、要はそういった「従業員の皆さん」の原動力を作っていくことも重要だと思います。組織を動かす為にはやっぱり「人」が大事だと思っているので、こうした「従業員発想」こそが僕らなりのRevOps支援だと信じて、これからも取り組みを続けてきたいと思います。
宮田
マーケティングやネットワーキングに強みのある博報堂と、企業のセールスやカスタマーサクセスの取り組みを支援してきたバーチャレクスがチームを組むことで、RevOpsに関するあらゆる課題に一気通貫で対応できる体制が出来上がった。そう私たちは考えています。このチーム力によって、RevOpsの成功に貢献していくことがこれからの目標です。

石毛
RevOpsはテクノロジーも駆使しながら組織連携によって成果を最大化していく手法です。RevOpsを支援する僕たち自身も、組織の枠にとらわれずに、クライアントのニーズに応じて柔軟な動きをしていく必要があります。RevOpsは企業が稼ぐ力を向上させる取り組みですが、その基盤となるのは「幸せな関係づくり」であると僕は考えています。BtoB企業であれば取引先との幸せな関係、BtoC企業であれば生活者との幸せな関係、さらにあらゆる企業における従業員同士の幸せな関係──。その実現を、組織を超えた連携によってご支援していくことがRevOpsに関わる僕たちの役割です。その役割をしっかり果たしていきたいと思っています。

・「HAKUHODO Marsys Assessment for RevOps」の詳しいサービス概要はこちら
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・RevOps実態調査(国内) 2023年版第一弾:「認知&取り組み状況 編」はこちら
・RevOps実態調査(国内) 2023年版第二弾:「成果 編」はこちら
・RevOps実態調査(国内) 2023年版第三弾:「運用 編」はこちら
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