1時間ポッキリで、創発はうまれるのか? ーーオンラインだけでどこまで創発できるか?vol.1
オンライン環境、最大限活用できてますか?
“生活者データ・ドリブン”マーケティング通信をご覧のみなさま、こんにちは!VoiceVisionの米満です。
最近はいかがお過ごしでしょうか?ようやく緊急事態宣言が解除され、リスクと共存することを前提にしながら「新しい日常」へと社会が歩みはじめています。わたしたち個人に目を向けてみると、これまでは対面が当たり前だったことも、オンラインでできることをうまく取り入れながら、ワークとライフ、オンラインとオフライン、ひとりひとりに合った形でブレンドしていく模索が始まっているように感じます。
わたしたちVoiceVisionは「ひとりひとりの声から、もっとステキなこれからを。」というビジョンをかかげ、ファシリテーションの技法を活用し、生活者との対話から創発をうみだす会社です。最近ではこの「新しい日常」に歩む社会の中で、生活者とオンラインでのワークショップなども行っています。過去の連載はコチラ。
みなさんはオンライン会議、うまくできていますか?一口に会議といっても、定例会など情報共有の会議、プレゼンテーションや商談など説得交渉をする会議、アイデアを出すなど議論を深める会議など、様々なタイプがあります。
情報共有型の会議では、移動の手間が省ける、場所を選ばない、効率的に進められるなど、オンラインならではの良さが発揮しやすい一方で、双方向のやり取りが求められるアイデア会議などでは、こんな声をよく耳にします。
「雑談がなく本題だけに終始し、硬い雰囲気になってしまう…」
「キャッチボールがうまくできず、一方的な会話になってしまう…」
「空気が読めず、どう切り出したら良いかわからない…」
「発言する人がいつも偏ってしまう…」
「打ち合わせでの笑いが減った気がする…」
みなさんも思い当たるところはないでしょうか?
ある研究では、チームワークで集団的知性を発揮するためには、「個人の知性水準」よりも「社会的感受性(=他人の感情を読み取る力)」と「全体の参加性(=平等な発言機会)」の方が重要であるといわれています。
ところが、PC画面越しのオンライン会議になると、人がいる実感が得られにくいことから、この「社会的感受性」と「全体の参加性」がどちらとも失われてしまいがちです。逆に言えば、オンライン会議こそ、それらをうまくつくりだす必要がある、と言えるのではないでしょうか。
オンライン会議で「1+1+…=∞」はつくれるのか?
さて、そもそも「いいアイデア会議」とは何でしょうか?それは「思いもよらなかった新しい発見が創られること」です。わたしたちはこれを「創発」と呼んでいます。平たく言えば、ひとりひとりが「1」を持ち寄って、それが単純な足し算を超えた「より大きな成果」が得られることです。
オンライン会議でどこまで創発をうみだせるのか?VoiceVisionでは、この新しい日常に歩む社会へ対応するべく様々なアイデアにチャレンジをしました。本連載では、チャレンジの中身とそこから得られた発見をまとめていきます。全6回の構成で進み、各回VoiceVisionのメンバーが担当していきます。
わたしたちも手探りではじめたこの企画。トライ&エラーから、単なる“オンラインでの創発の工夫”を超えて“これからの創発のあり方”が見えてきました。本連載が少しでもみなさんの創発のヒントになれば幸いです。
1時間ポッキリで、創発はうまれるのか?
第1回は、「時間の制約」を抜け出すには?です。オンライン会議では限られた時間の中ですべてを決めてしまおうとしまいがちです。その結果、煮え切らないままむりやり結論をだしてしまったり、モヤモヤしたまま、また次回…となってしまったり。今回は「1時間ポッキリアイデアワークショップ」と題して、限られた時間の中で思っていることを出しきり、創発をうみだせるか?チャレンジしてみました。
【仮説】
いきなり本題に取り組むのではなく「事前ワーク」で参加者個人のアイデアを出し切ってから、オンライン会議に参加。本番の時間は、「アイデア共有」と「収束」にフォーカスすることで、短時間で効率的に創発をうみだすことができるのではないか?
【実験】
●テーマ:「これからの働き方について考えよう!」
●進め方:進行役(ファシリテーター)が参加者の意見を引き出し、
結論に向けて対話を進めていくワークショップ形式
●使用したツール:
一般的なオンライン会議ツールで対話しながら、オンラインホワイトボードツールに発言をまとめていく
●会議の流れ:
①事前ワークで「オンライン生活で感じたこと」「これからの働き方アイデア」を
会議本番までにポストイットに書き出しておく
②会議本番では事前ワークの内容を共有し、ファシリテーターが方向性をまとめていく。
対面形式のワークショップ等でも、事前課題を設けてインプットの情報量を増やし、ディスカッションを盛り上げていこうという設計がよくありますが、オンラインではうまくいくのか、レッツトライ!
ワークショップが始まる前にすでにこの状況。数多くの意見が張り出されています。中にはすでにグルーピングを始めてくれる優しい人も出てきています。「うんうん、盛り上がりそう。」「オンラインでも対面と同じような発想で、すんなりといけそうだぞ。」と最初は思いました。ところが…。
あ、あれ…?なんだ、この雰囲気。ホワイトボード上では盛り上がっているのに、みんなのこの真面目で楽しくなさそうな顔…。進行役が参加者に意見を求めてみても、進行役と参加者の1対1の会話が続き、なかなか参加者同士が会話するということがうまれません…。
【結果】
失敗!それっぽく一杯ポストイットが貼ってあったり、発見が言葉として書いてあるのですが、1時間の中ではすべての議論が終えられず、お互いのアイデアを共有するに留まり創発には至りませんでした。よく見てみると、まとめ方やポストイットの使い方もバラバラです…。対面と同じ発想でオンライン会議を行うと痛い目に合いそうです。
やりにくさを抜け出す創発のポイントとは?
創発に至らなかった原因はどこにあったのでしょうか。それはオンライン会議ならではの「やりにくさ」がありました。
・個々のアイデア共有に時間がかかりすぎ、議論する時間を取りにくい。
・整理に留まり、そのアイデアの"WhySo?""SoWhat?"を深めにくい。
・参加者同士の横の対話がうまれにくい。
・誰に話を振れば議論を深められるかの判断がしにくい
これらのやりにくさを抜け出すには、ファシリテーターの役割が対面以上に重要になってきます。時間の制約を乗り越えて創発をうみだすために、オンライン会議ではファシリテーターはどのようなことに気をつけるべきなのでしょうか。今回の実験からは以下のようなポイントが見えてきました。
オンラインでは特にこのようなポイントを意識して会議を設計・進行することで、限られた時間の中でもファシリテーターの嗅覚も働きやすく、創発もうまれやすくなるのではないでしょうか。
オンラインでの創発の可能性を探ろう!
さて、いかがでしたでしょうか。オンライン会議用の便利なツールが様々出てきていますが、単にそれを使えばいいということではなく、創発をうみだすためには様々な工夫が必要になってきます。今後の記事で更に深掘っていきますので、ぜひお楽しみに!
みなさんもオンラインの環境を最大限活用した楽しいワクワクする会議をつくり、一緒に創発の可能性を探っていきませんか?
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(株)VoiceVision エクゼクティブコミュニティプロデューサー
(株)博報堂 ストラテジックプラニングディレクターマーケティングリサーチ会社勤務を経て2009年博報堂入社。博報堂関西支社勤務を歴て、2018年よりVoiceVision、博報堂プラニング局に所属。リモートワーク生活で「焙煎」と「燻製」に目覚める。