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マーケティングシステムの今~マーケティング&ITの実務家集団が語る事業グロースへのヒント【vol.4】AIエージェントが変える、マーケティングの「思考」と「行動」
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マーケティングシステムの今~マーケティング&ITの実務家集団が語る事業グロースへのヒント【vol.4】AIエージェントが変える、マーケティングの「思考」と「行動」

マーケティング活動において、データとテクノロジーが果たす役割は年々高まっています。データ基盤整備やCDP(カスタマーデータプラットフォーム)活用、マーケティングオートメーション、AI活用といった言葉は、もはや特別なものではなくなりました。一方で、それらを「実際の事業成長」に結びつけられている企業は、想像以上に少ないのが実情です。本連載では、博報堂マーケティングシステムコンサルティング局(以下、マーシス局)のメンバーが、事業グロースに向けた「生活者発想×データ×テクノロジー」の挑戦について、日々現場で向き合っている知見や視点から発信していきます。

第4回のテーマは、ビジネスシーンで急速に存在感を増す「AIエージェント」が、マーケティング分野にどのような変革をもたらすかについてです。単なる業務効率化ツールを超え、自律的に思考し、行動するAIが、企業のマーケティング活動をどのように深化させ、新たな事業機会を創造するのか。博報堂マーシス局の視点から、その可能性と導入の要点を考察します。
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土井 京佑
株式会社博報堂
マーケティングシステムコンサルティング局
データプラットフォーム推進部 部長

「考えるAI」の台頭:AIエージェントがもたらす変革の核心

近年のAI技術の進歩は目覚ましく、特にChatGPTのような生成AIは、自然な文章生成や対話能力で大きな注目を集めました。しかし、これらのAIの多くは、ユーザーからの具体的な指示(プロンプト)があって初めて機能する、いわば「受動的なアシスタント」という位置づけでした。

これに対し、現在ビジネス界で大きな期待が寄せられているのが「AIエージェント」です。AIエージェントは、人間から与えられた最終的な「目標」を理解し、その達成に向けて自律的に計画を立て、必要な情報の収集や分析を行い、さらに外部のツールやシステムと連携しながら、一連のタスクを遂行していく能力を持っています。それはまるで、特定の専門業務を任せられる「自律的なビジネスパートナー」が加わるようなものです。

AIエージェントの登場は、単なる業務の自動化や効率化に留まらず、これまで人間の知的な労働が担ってきた領域に踏み込み、その働き方自体を根本から変える可能性を秘めていると、我々は見ています。
 

マーケティング活動におけるAIエージェントの具体的な効用

AIエージェントは、マーケティング活動の多岐にわたる領域において、これまでにない価値を提供し、事業の成長を加速させる可能性を秘めています。

図:AIエージェントによるマーケティング業務の進化 

特に、これまで人間では手間がかかりすぎて着手できなかった業務領域、例えば大量の顧客フィードバックからの示唆抽出や、過去の膨大なキャンペーンデータからの成功要因分析といった「知的な探索と推論」を伴う作業に、AIエージェントは大きな価値をもたらすと考えられます。これにより、マーケティング担当者は、より創造的で戦略的な業務に集中できる時間と機会を得ることが可能になります。 

AIエージェント活用を組織に根付かせるためのアプローチ

AIエージェントを組織に導入しその真価を最大限に引き出すためには、単に技術を導入するだけでなく、組織全体でその活用を支える仕組みを構築することが不可欠です。

● ステップ1:導入の「目的」と「対象業務」を明確にする
まずは、AIエージェントを導入する具体的な目的を、企業の事業戦略と紐付けて設定します。同時に、AIエージェントを適用する「業務領域」を特定します。AIエージェントは、例えば問い合わせ対応のような「定型業務」から、市場調査のような「非定型業務」まで幅広く対応可能ですが、まずは社内のボトルネックとなっている業務や、データが豊富に存在する業務から着手することが、成功への近道となります。

● ステップ2:段階的な導入と組織への浸透
いきなり大規模なシステムを構築するのではなく、小さな成功体験を積み重ねる「スモールスタート」を推奨します。特定の部門や業務でプロトタイプを導入し、効果を検証します。この際、AIエージェントが参照すべき社内データ(例:製品マニュアル、顧客データ)の整備や、AIエージェントへの指示方法(プロンプト)の最適化が重要になります。
 

図:AI活用を組織に根付かせるための主要要素 

AIエージェントの導入を成功させるには、上記の各要素が有機的に連携することが不可欠です。特に、「人材育成と文化醸成」においては、従業員がAIを「仕事が奪われる存在」ではなく、「自身の能力を拡張し、より高付加価値な業務に集中できる機会を与える存在」と捉えられるよう、継続的な教育とコミュニケーションが重要になります。また、AIエージェントが誤った情報(ハルシネーション)を出力するリスクや、データプライバシーに関する懸念に対し、明確な「運用ルールとリスク管理」体制を確立することも、組織全体で安心してAIを活用するための基盤となります。

● ステップ3:成果の可視化と継続的な改善
導入後のAIエージェントのパフォーマンスは、定量的な指標(例:業務時間削減率、リードタイム短縮率)と、定性的な指標(例:従業員満足度、顧客体験向上度)の両面から評価します。得られた成果は社内で積極的に共有し、成功事例を横展開することで、組織全体のAI活用への意欲を高めます。AI技術は日々進化するため、一度導入したら終わりではなく、継続的な改善サイクルを回し、常に最新のAIエージェントを業務に適用していく姿勢が求められます。

 

博報堂マーシス局が提供する「事業変革」の価値

博報堂のマーシス局は、クライアント企業の皆様がこのAIエージェントの波を乗りこなし、新たな事業成長を実現するための強力なパートナーです。我々は、単なる技術導入の支援に留まらず、博報堂が長年培ってきた「生活者発想」を核に、企業独自の価値創造を支援いたします。

我々は、まずAIエージェントの活用を「いかに生活者の心を捉え、行動を促すか」という視点で捉え、貴社独自のマーケティング戦略を構築します。これにより、単なる効率化に留まらず、事業成長に直結するAIエージェント活用を共にデザインすることが可能です。また、我々はマーケティングシステム、データ基盤、そしてAIエージェントを含む最先端テクノロジーに関する深い専門知識と、これらを現実のビジネスに実装する実行力を兼ね備えています。この専門性と実行力によって、企業の複雑なマーケティング課題に対し、最適なソリューションをワンストップで提供することが可能です。
さらに、AIエージェントの導入は、技術、業務、人、組織、ガバナンスの多岐にわたる側面を考慮する必要がありますが、我々は戦略立案から、AIエージェントの設計・開発、導入後の運用・効果測定、そして組織的な浸透や人材育成に至るまで、貴社に寄り添った伴走型支援を提供し、持続的な事業変革を支援してまいります。

AIエージェントの台頭は、マーケティング活動に計り知れない可能性をもたらします。この変革期において、博報堂マーシス局は「生活者発想×データ×テクノロジー」の力で、クライアント企業の皆様が「考えるAI」と共に、新たな事業グロースを実現できるよう、尽力してまいります。ぜひ、我々と共に、AIエージェントが拓くマーケティングの未来へ踏み出しましょう。
 

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  • 株式会社博報堂
    マーケティングシステムコンサルティング局
    データプラットフォーム推進部 部長
    生成AIの実装支援から新たなCX開発、事業戦略支援まで、データ・AI活用によるクライアント支援を推進。プロトタイピングによる高速検証、生成AIを活用した人材育成・業務効率化・マーケティングデータ活用・CX革新など、幅広いテーマに対応。データ・AI活用における「Can be(現実的に実現可能なこと)」を重視し、ビジネス成果に直結するデータ・AI利活用モデルの確立に取り組んでいる。

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