おすすめ検索キーワード
ヒット習慣予報 vol.367『マイクロ・エンタメ』
PLANNING

ヒット習慣予報 vol.367『マイクロ・エンタメ』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの村山です。

本格的に梅雨入りしてどさっと急に雨がふったりと不安定な天気が続いていますね。植物を育てているので、雨がふるのはありがたいですがジメジメした湿気と気圧の変化でどうも調子が上がらない今日このごろです。雨の日の休日などは、どこかに出かけるのも億劫なので、家で映画をみながら過ごす人も多いと思いますが、今回はそんなエンタメに関する新潮流「マイクロ・エンタメ」を紹介したいと思います。これまでもvol.19『時短エンタメ』などで忙しい社会におけるタイパ重視の効率的なエンタメ接触を取り上げたり、 vol.277『脱短尺』のように逆にあえて時間のかかるエンタメにも着目してきましたが、今回は、「マイクロ」ということで、そもそもエンタメそのもののものすごい短尺化について改めて取り上げて行きたいと思います。

Googleトレンドで「ショート動画」と検索すると、ショート動画自体の登場からは時間が経っているものの、過去5年現在も未だに右肩上がりに検索数が上昇していることが見て取れます。SNSが本格的に普及し、誰もが簡単に動画をつくれる時代にマーケティングもエンタメも短尺化している潮流が見て取れると思います。事実、グローバルに端を発した縦型ショートドラマ市場が活況で、大手から新興企業まで様々なプレイヤーが参入しているようです。

「ショート動画」の検索数推移

出典:Googleトレンド

短尺動画市場が盛り上がる中で、1つ目の「マイクロ・エンタメ」は「マイクロ・映画」です。
マイクロというだけに、なんと20秒のホラー映画(ショートムービー)が話題になっていました。本当に映画といえるのか!?という短さですが、本当に短尺の映画は数年前からつくられてきており、古くは2010年代から15秒のホラームービーが作られていたりと、意外と歴史は長いのですが、SNSの登場でさらにショート動画が一般化されたことで注目があつまっているのではないでしょうか。20秒のホラー動画に対しては、ぼーっとみていると見逃してしまうような細かい作り込みや演出に対するコメントがあったり、その後の展開を予想するコメントがあったり、シーンへの共感(こんな瞬間が自分の過去にもあったかも、のような)と、ただの短尺ではなく、超短尺(マイクロ化)だからこそ長尺に負けないこだわりへの称賛と、視聴者の物語への参加性がより高まっているように見受けられました。実際に僕の周囲でも動画SNSで短尺のホラーをみる人が増えている感覚があります。

2つ目の「マイクロ・エンタメ」は「マイクロ・小説」です。どんなに短い小説でも800字はありそうな小説しか僕も読んだことがありませんでしたが、最近になって、SNSの文字制限である140時を上限とした「140字小説」なるものが人気になっているようです。もちろん140字しかないので、表現できるシーンや物語は限られているからこそ、その物語に十分すぎる余白が存在することで、コメントや返信でその物語を自分(にもあった)物語として過去の経験を語る人がいたり、その続きを想像してコメントする人がいたりと短いゆえの参加性の高さが伺えるところがユニークでした。SNSで投稿され拡散された人気の短編をあつめた書籍も出版されており、その本もSNSで拡散されて人気になるという新しい本の売り方がされていることも面白いなと思いました。
 

3つ目の「マイクロ・エンタメ」は「マイクロ・マンガ」です。一般的な短尺の漫画、というと4コママンガを思い浮かべると思いますし、僕も新聞に掲載されているものから、漫画雑誌に掲載されているものまで幅広く親しんできました。SNSが一般化することで、それより短い2コママンガが人気になってきているようです。シュールなオチがついたマンガから日常の育児におけるくすっと笑えるシーンを描いたものまで様々なジャンルのマンガが展開されており、どれもスキマ時間でサクッと楽しめるだけでなく、本当に数秒で読み切れてしまうので、次から次へとどんどん読む手がとまらなくなる感覚があるのが不思議です。
また、実際に僕も動画配信SNSで週刊漫画雑誌を楽しみにしていた時のような感覚で日々接触するようになっています。

このような超短尺のエンタメに接触するきっかけは、スキマ時間にさくっと楽しめる息抜きとしてSNSでみかけたから、たまにみるようになった、ということかもしれません。ただ、それが続いていくと、次はどんな内容になるんだろうか、とアップされるのが楽しみになったり、過去にアップされたコンテンツも楽しんでみようと遡ってみたりと、いつの間にかしっかりと楽しむような習慣になっていることが多いようです。

なぜ、このように短尺を超えた超短尺=マイクロなエンタメに注目が集まっているのでしょうか。大きな要因としてはコンテンツを生活者が一方的に受け取る時代から、そのコンテンツに参加し一人の読み手としてだけではなく、発信者や参加者になる(つまり、作り手と読み手がある意味でフラットな関係になる)共犯関係が生まれてきているからではないでしょうか。もちろん忙しい日常において、タイパよく様々なコンテンツを接種したいという欲望やスキマ時間で簡単にくすっと笑えるコンテンツが求められているなどの理由もあると思います。ただ、最も大きいのはこのフラットな関係による新しいコンテンツの楽しみ方の芽生えが大きいのではないかと思います。あとは短尺なのでい(一概に言えませんが)制作のハードルが下がるということもあるのではないでしょうか。1冊分の漫画はかけないけど、2コマの漫画なら書いてみようかな、そしてSNSで発信してみようかな、といった作り手の第一歩が踏み出しやすくなった環境の変化も後押ししているように思います。これからAIとの共創が当たり前になる時代に「マイクロ・エンタメ」はますます盛り上がってくるのではないでしょうか。

「マイクロ・エンタメ」のビジネスチャンスについて、考えてみたいと思います。

「マイクロ・エンタメ」のビジネスチャンス例
■2コマ漫画で自己紹介する、2コマ漫画名刺を制作
■140字の小説をそれぞれの解釈で映像化するコンテストを開催
■短尺映画を複数本、短時間&安い値段で楽しめるマイクロムービー映画館を開業

今度、映画1本分の時間、2時間かけて、短尺のホラーをみまくってみる、時短なのかそうじゃないのかわからない楽しみ方をしてみようと思います!

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

sending

この記事はいかがでしたか?

送信
  • 博報堂 PR局
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    車からお菓子に至るまで様々なクライアントの情報戦略、企画立案に携わる。運動不足でたるみきった体と気持ちを鍛え直したいと思い、筋トレを始めました。