
請求書処理の自動化で経理業務を効率化する方法とは?【ローコードAIプラットフォームDify活用事例】
「AIを導入したいけれど、自社でどのように活用できるかイメージが湧かない…」そんなお悩みはありませんか?
Hakuhodo DY ONEでは、ローコードAIプラットフォーム「Dify」を活用し、マーケティング戦略支援からバックオフィス業務まで、幅広い領域でAIの可能性を追求しています。
このブログでは、Difyを活用した請求書処理自動化の事例をご紹介していきます。広告やマーケティング領域以外でも、AI・Difyは効果的に活用できますので、その活用方法や導入効果、そしてDifyが秘める可能性について知っていただくきっかけになれば幸いです。
請求書処理における課題
請求書処理はどの企業でも発生する業務ですが、企業規模やシステムとの連携状況などによって、業務の自動化の度合いは大きく異なります。自動化が進んでいない企業において、請求書処理は手作業が多く、時間と手間のかかる業務と言えます。
経理担当者は、大量の請求書から必要な情報を管理台帳などに転記し、確認作業を行う必要があり、大きな負担となっています。また、手作業による入力や確認作業は、人的ミスのリスクも伴い、業務効率化における大きな課題となっています。
Hakuhodo DY ONEでは、そのような課題を解決するため、毎月の請求書処理を自動化するRPAロボットを内製しました。このRPAロボットによって、経理業務を行うチームの請求書処理の負担や人的ミスの削減に繋がりましたが、請求書のフォーマットの変更に合わせてたびたび改修が発生したり、近年RPAロボットに必要なライセンス費用が高騰していたりと、開発チームの運用保守費用がかさんでいることが新たに課題となっていました。
Difyを活用した請求書処理の自動化
そこで今回、こうした請求書処理における一連の課題を解決するため、「Dify」と「Power Automate」を連携させ、業務プロセスの自動化を実現しました。
Difyは、プログラミングの知識がなくても直感的な操作でAIアプリケーションやワークフローを開発・運用できるローコードプラットフォームです。
プログラミングの専門知識がない業務側のメンバーでも直感的に自身の業務をフローに落とし込み、AIを活用したフローを作成することができます。作成したワークフローはAPIとして公開することで、外部システムからの呼び出しが可能になります。
一方、Power Automateは、Microsoft社が提供する業務プロセス自動化ツールであり、Microsoft 365をはじめとするクラウドサービスとの連携に強みを持っています。
この両者を組み合わせることで、Power AutomateからDifyのワークフローを呼び出し、AIを活用した請求書処理の自動化を実現しました。
具体的な処理フロー
1. OneDriveに処理対象の請求書ファイル(PDF)を格納する
2. Power Automateにて以下の処理を実行
2-1. OneDrive上の請求書ファイルを取得する
2-2. API経由で請求書ファイルをDifyにアップロードし、Difyワークフローを実行する
a. アップロードされた請求書ファイルをテキストに変換する
b. LLM(大規模言語モデル)を活用し、テキストから必要な情報(請求書番号、請求日、請求金額など)を抽出する
c. 抽出した情報をJSON形式に整形し、結果を返す
2-3. Difyワークフローの実行結果を受け取り、結果をExcelシートに転記する
Dify活用における自動化のポイント
・既存システムとの連携: Difyは標準でAPI連携機能を備えており、Power Automateのような外部のワークフローシステムや、既存の会計システムなどとの連携が容易です。
・ローコード開発: プログラミングの専門知識がなくても、GUIベースでワークフローを構築できます。エンジニアではない経理部門の担当者自身が、プロンプトやフローを修正して、抽出する項目を追加・変更することが可能です。
Dify導入による効果—請求書処理の効率化とコスト削減
Difyを導入したことで、既存で使用していたRPAロボットと同様の請求書処理の自動化を、より低コストで実現できました。
Difyはオープンソースライセンスであるため、RPAロボットのライセンス費用を大幅に削減でき、年間で約60%のコスト削減効果が見込まれます。
さらに今回、プログラミング知識が不要なDifyとPowerAutomateを活用することで、開発チームではなく、経理業務を行うチームが請求書処理フローを管理できるようになりました。業務を最も理解するチームが、請求書の変更に合わせてフローを即座に修正することができるため、その都度開発チームに依頼するという非効率な運用保守の体制も改善されました。
しかしながら、業務側のメンバーがDifyやPowerAutomateを完全に使いこなすには、まだまだ課題が残っています。より複雑なフローの作成や、イレギュラーな事態への対応には、引き続き開発チームのサポートが必要となる場面もあります。
こうした状況を踏まえ、Hakuhodo DY ONEでは、Difyをより幅広い業務の自動化・効率化を実現する中核ツールとして、その活用範囲の拡大に取り組んでいます。
全社員に向けてDifyに関する知識向上や、Power Automateに関する勉強会などを実施し、より業務部門だけで自律的に改善を進められる体制を構築していく予定です。
まとめ
Difyは、API連携によって既存システムにAI機能を容易に組み込むことができ、今回の請求書処理の自動化にとどまらず、さまざまな業務プロセスの効率化に貢献できる可能性を秘めています。
当社では、Difyの可能性を最大限に引き出すために、今後も広告やマーケティング領域からバックオフィス業務まで、さまざまな業務へのDify活用を推進していきます。
最新の生成AI技術を活用して組織や業務の変革、顧客体験の向上を図り、企業の生産性を高める「AI経営コンサルティングサービス」を展開していますので、AIによる業務効率化を行いたいが、何から始めたらいいか分からないという方は、ぜひ一度お問い合わせください。
※Hakuhodo DY ONE ServiceのAD TECH BLOG記事を一部編集して掲載しています。
この記事はいかがでしたか?
-
Hakuhodo DY ONE
テクノロジーR&D本部 DX開発推進局 AdOps開発部2022年に中途入社し、新規事業領域のアプリ開発に携わる。2024年度からは生成AIを活用し、社内業務効率化を推進するプロジェクトに従事している。