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広告メディアビジネスの働き方が変わる! ――MPにおける業務プロセスイノベーションの現場より
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広告メディアビジネスの働き方が変わる! ――MPにおける業務プロセスイノベーションの現場より

博報堂DYメディアパートナーズ(以下、MP)で着々と進められている、業務プロセス改革。その背景にある考え方から、新たに導入された技術、AaaSとの関連性や今後の展望まで、現在進行形でプロセスイノベーションに取り組んでいる3名に話を伺いました。

人の手がかかっていた業務を重点的に自動化し
年間2.5万時間の労働時間削減を実現

————まず始めに、業務プロセスの改革が始まった背景について教えていただけますか。

荻野
まず大前提として、MPで行われているメディア業務には非常に多くのオペレーションやルーティン業務があり、人から人へのバトンリレーや待ち時間が他の業務時間を圧迫していたり、一部の社員に業務が集中するといった深刻な課題がありました。それを受けて、2019年に始まった現在の中期経営計画において重点テーマとされたのが、経営の効率化にもつながる“プロセスイノベーション”です。以来、新たに立ち上がったプロセスイノベーション専門部隊が中心となり、RPA(Robotic Process Automation)テクノロジーを使った業務プロセスの自動化が着々と進められています。

意識したのは、旧来型の仕事の進め方――たとえば紙で行っていた素材割り付けや進行確認などのアナログ業務――をデジタル化すること。また、日々同じことを繰り返すルーティン作業の業務フローを再構築し、ロボット化することです。さまざまある業務の中でも、特に人の手が多くかかっていた部分から重点的に自動化していくことで、業務時間の大幅な削減にすでに成功しています。

————具体的にはどういったRPAテクノロジーを採用しているのでしょうか。

荻野
大きく分けると「Blue Prism」と「Microsoft Power Automate」という2種類のRPAを組み合わせて使っています。「Blue Prism」の特徴は、社内システムとの連携に強いことです。たとえばテレビスポットの受発注内容をシステム登録する際、これまでならマージンは何パーセントか、オンエア日はいつかなどの数字や文字情報を、社内システムの画面の指示に従い1つずつ手で入力していました。一方「Blue Prism」を導入した現在は、規定のフォーマットに案件番号等を入力することで、一気に必要な情報をアップロードすることができます。

「Microsoft Power Automate」は社内システムとの連携に強く、日常的なメール配信や共有ストレージ上でのファイル操作などに特に力を発揮します。日々のメディア業務では、全国に200、300もある媒体社との間で頻繁にデータのやり取りを行いますが、そのたびにメールにファイルを添付し、「考査をお願いします」「指示を送りました」などの本文を書くというルーティンが発生していました。一方「Microsoft Power Automate」を導入してからは、共有ストレージ上にファイルを置くだけで、事前に設定していた媒体社リストに自動でメールが送信されたり、添付ファイルが自動的に共有ストレージ上に保存されるようになり、社員を煩雑なルーティン業務から解放することができました。添付忘れや宛先漏れといった小さな事故も防げるようになり、それらに起因する社員の心理的ストレスの軽減にもつながっています。

このように、一つひとつの業務をRPAテクノロジーに置き換えることで、現時点で年間2.5万時間の労働時間削減効果が生まれています。社員の年間労働時間を2000時間として換算すると、実に12.5人分の業務プロセスがすでに自動化されたことになります。

————RPAテクノロジーの活用のほかに、どのような方法で業務プロセスの見直しを進めているのか教えてください。

荻野
RPAの活用以外で言うと、現在はChatGPTなどの生成系AIや、Microsoft Power Platform、Slack、salesforceなどを組み合わせた業務の自動化にも取り組んでいます。
通常、新システムの導入となると、どうしてもトップダウン型の一方的な押しつけになりがちですが、MPにおいては、本社部門主導のプロジェクトと現業部門主導のプロジェクトが同時進行で進められています。具体的には、費用がかかるもの、基幹システムとの連携が必要なものは本社主導で開発し、現業部門では目の前の業務に即したソリューションをスピーディに開発しています。それぞれのプロジェクトをうまく融合させながら、お互いの取り組みやノウハウを有機的に共有し、ときには協同でシステムを開発していく。オープンマインドな社風や現場のスピード感を大切にするMPという会社だからこそ可能な体制といえるかもしれません。

その大きな成果の1つが「AaaS(Advertising as a Service)」です。

AaaSによって汎用ダッシュボードを使ったフロー刷新が可能に

————AaaSは業務効率化にどのように貢献しているのでしょうか?具体的に教えてください。

飯塚
AaaSは博報堂DYグループが提供する広告メディアビジネスの次世代型モデルで、様々なソリューション群で構成されています。

一例ではありますが、かつてメディアプラニングの仕事と言えば、主要検索エンジンで何回表示されたかといった媒体社からのデータを受け取り、いつどこに広告を出したかの手元のデータと合わせてクロス集計し、レポート化し、得意先に提出するという一連の作業が存在していました。得意先によっては、デイリー、ウィークリー、マンスリーの3種にわたるレポートが必要で、広告の費用対効果をつねに得意先に提示し続ける必要があり、その作業負荷は非常に大きいものでした。

そんな中AaaSが可能にしたのは、媒体社データ、生活者データ、マーケティングデータすべてのデジタル化とシステム基盤上での統合です。AaaSを通じて、得意先と一緒に統合メディア運用ダッシュボードをモニタリングすることができ、その場で「広告Aの反応がいまいちなので出稿を少なめにし、反応がいい広告B、Cをより多く出稿しましょう」というように、プラニングとバイイングをリアルタイムで行えるようになりました。
社員の作業負荷を削減し、業務の効率化につながるだけでなく、得意先にとっても、広告効果や関連するデータ類を見たいときに自由に見られるようになり、新しい提供価値を生む土壌づくりにつながっていると思います。

————AaaSを使って今後どのような開発ロードマップをイメージされているのか教えてください。

飯塚
AaaSの中長期開発ビジョンとして「博報堂DYグループ・媒体社・得意先が常時つながる
メディアPDCA業務基盤に進化させていくこと」を掲げています。これは、博報堂DYグループ内の業務をつなげるという意味もあれば、媒体社のCM在庫や視聴率などのデータと、また得意先のマーケティング・メディア業務とつなげるという意味で、システムをつないでいくことで業務の効率化やメディア枠の最適運用、得意先への新たな提供価値などを実現していこうとしています。

————中でも、AaaSのどの部分が特に業務プロセスの改革に結びつくとお考えですか?

飯塚
基盤にあたるデータウェアハウス(DWH)の一元化と、社内業務ツールの効率化や高度化などの部分です。媒体社のデータを得意先に毎月、毎週、毎日レポートする業務環境から、ダッシュボードを通じてリアルタイムで得意先と同じ目線を共有する業務環境へと、AaaSによってまさにダイレクトに社員の業務プロセスが切り替わりつつあります。

このようにMPにおける各種業務をつなぎ、業務効率化に寄与する部分を、私たちはAaaSのSide-A(サイド・エージェンシー)と呼んでおり、視聴率集計機能やグループダッシュボードの連携整理などを進めています。今後、CTVも含めたテレビとデジタルの統合プラニングの世界にシフトすれば、効率化できる作業範囲はさらに広がっていくでしょう。なお媒体社の在庫やデータとつなげる側面をSide-B(サイド・ビジネス)、クライアントのマーケティング・メディア業務とつなげる側面をSide-C(サイド・クライアント)と呼び、これら3つの領域の“つなげる”を実現するべく、AaaS開発を進めていく計画です。

いずれにしても、AI/ソフトウェアを起点にした広告メディアビジネスの業務プロセスのDX化を、今後も着々と推進していきたいと思います。

生成系AIの活用で情報の属人的を防ぎ
本来の業務に集中できる時間をつくり出す

————AIの話が出ましたが、ChatGPTなど生成系AIによって、広告メディア業務はどのように変わるのでしょうか。

渡邊
博報堂DYグループ全体としては、今年5月に博報堂テクノロジーズの「ChatGPTソリューション開発推進室」が発足し、業務効率化やDX課題解決に取り組んでいるところです。現在、私たちのチームが従事しているAaasソリューションの新規開発アップデートや、得意先のマーケティング・メディアPDCA業務などに対するChatGPTの組み込みを進めていて、たとえば広告クリエイティブを自動生成したり、広告入稿後の改善を自動化するといったことはもちろん、常時接続型の情報共有にも試験的に活用を始めています。

また、たとえば「A業種と相性の良いソリューションは何か」、「成果改善に効く真新しい打ち手は何かないか」、「開発中のソリューションにはどのようなものがあるか」など、ソリューション関連の問い合わせが社内で頻繁に発生しており、その対応に追われるという課題もありました。そうした一次問い合わせについても、ChatGPTを活用して対応を自動化できないか検証を進めています。メディアPDCAやソリューション開発の世界では、社内はもちろんプラットフォーマーや得意先とも、日々最新のソリューションやナレッジについて情報共有をしながら業務が進んでいきます。実現すれば、膨大な情報や知見を属人化させず効率的に社内で共有できますし、問い合わせへの対応の質を高めることもできます。また、より付加価値を生み出す仕事にフォーカスする時間を新たに生み出すこともできるでしょう。

————具体的にはどのような仕組みを検討しているのでしょうか。

渡邊
現在複数の仕組みのテストを並行して行っているところですが、一例としてBTC社と取り組んでいる、Azure OpenAI Service上のOn Your Data機能を使い、ChatGPTの回答に業務データを利用できる環境構築についてご紹介します。この機能を使えば、Azure Blob Storageの中に自分のPDFやテキストなどのファイルを入れるだけで、それらを学習データとして読み込ませることができます。それらはインデックス化され、Azure Cognitive Searchで検索させることで、データ参照元さえ整っていれば、どのようなソリューションがどれくらい成果改善に寄与してきたのかや、業種やKPI別などのノーム値など、どんな問合せにも自動で対応することができます。

On Your Data 機能の概要(BTC社作成)

日々情報がアップデートされる広告PDCAやソリューション開発において重要なのは、メディアPDCAのプロセスなどの情報を属人化させず、可視化/標準化し、専門知見をタイムリーに共有することです。人材育成を競争優位に結びつけるためにも、現在、ChatGPTに限らず、Notionなど様々な業務効率化ツールを組み合わせて、育成も含めた仕組み化を進めているところです。今後も業務プロセスの改革を進めることで、労働時間の削減はもちろん、得意先や媒体社のビジネス成長に資するアイディアを考える時間を生み出していく予定です。

————では最後に、これからの業務プロセス改革の展望についてお聞かせください。

荻野
プロセスイノベーションの取り組みは、まだまだ始まったばかりです。RPAに限らず様々な最新テクノロジーを業務プロセスに組み込みたいと考えており、そのためには、社内の開発体制をこれまで以上に拡充しつつ、博報堂DYグループ各社の開発コミュニティとも緊密に連携を図っていく必要があると考えています。

それと同時に、私たちが今後のプロセスイノベーションの大きなポイントになると考えているのが、若手社員の存在です。既存の価値観や古い慣習へのこだわり、新しいテクノロジーに対する抵抗も少ない彼らの提案が、時に大きなブレイクスルーにつながることもあります。これからも、若手を基点にしたプロセスイノベーションの先進的な取り組みに期待したいところです。

広告メディアビジネスは、かつての属人的な業務プロセスに、システム的な業務プロセスが融合しつつあるのが現状です。これまで多くの時間コストがかかっていたプロセスを自動化させることで初めて、メディアの価値向上や、得意先のマーケティングへの貢献など、社員が本来行うべき業務に集中できる環境を整えることができます。近い将来、社員とAIやロボットが自然と分業する世界をつくり出し、アジャイル型の業務プロセスを浸透させることができれば何よりです。

————本日は、ありがとうございました。

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  • 博報堂DYメディアパートナーズ AaaSビジネス戦略局 局長

  • 博報堂DYメディアパートナーズ 経営企画局 プロセスイノベーショングループ グループマネージャー

  • 博報堂DYメディアパートナーズ 統合アカウントプロデュース局 AaaSアカウント推進三部 マーケティングプラナー