安心・安全な“データ統合プラットフォーム”と、機械学習を用いたデータ活用の可能性-ガートナー データ&アナリティクスサミット2018
6月14日(木)、15日(金)にガートナー ジャパン株式会社が主催する「ガートナー データ & アナリティクス サミット 2018」が、東京・品川コンファレンスセンターにて開催されました。
「安心・安全な“データ統合プラットフォーム”と、機械学習を用いたデータ活用の可能性」と題し、博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター室長、兼 AIビジネス・クリエイションセンター センター長の青木雅人とNTTデータ ビジネスソリューション事業本部 AI&IoT事業部 課長の小酒井一稔氏によるセッションが行われました。
青木からは主に、博報堂DYホールディングスが先日発表した「データ・エクスチェンジ・プラットフォーム設立準備室」における、「k-統計化&データフュージョン」の開発背景や、その技術について解説がありました。
政府によるデータ連携促進の提唱(Society5.0等)や、企業間連携を図るニュースも増えてきており、データ連携は新たなサービス開発やAI技術などの進歩に需要がある一方、欧州ではGDPR(EU一般データ保護規制)が適用されるなど、企業をはじめとするデータホルダーが個人情報の取り扱いやプライバシー保護に万全な対策が求められている現状があることについて触れました。そこで、個人情報を非個人情報に加工・統合し、データ分析に活用できる技術である「k-統計化&データフュージョン」の開発につながったと解説しました。
「k-統計化&データフュージョン」については、これまで、個人情報保護に対応するための匿名加工情報は【40代男性・関東在住・身長170cm台・体重60kg台】など、データの粒度を落とすこことで個人の特定には繋がらない反面、人物の具体的なペルソナを把握しにくい「輪郭のみえないデータ」(青木)になりがちでしたが、「k-統計化」技術では、マイクロクラスタリングによって“仮想個人”を創り出し、仮想個人に対して、人物像がわかるような輪郭のはっきりした統計データ【42才男性・東京都港区在住・173cm・体重63kg】を付与することが可能な点、さらに、属性・趣向などが似た仮想個人データを統合(データフュージョン)していくことで、生活者を多面的にとらえることが可能となると語り、この技術が進むことでこれまでは個人情報観点でハードルの高かったデータなどが、安心・安全な状態で取り扱うことができ、個人情報保護の課題もクリアすることで、新たなサービス開発や技術進歩につながる可能性があると青木は語りました。
NTTデータの小酒井氏からは、ビジネスでどのようにAI技術やデータを活用していくかについて触れられました。ビジネス観点では、BIツールをはじめ見える化させるところから、将来を予測するところまで「データに基づいた意思決定」ができるように支援する動きや、分析技術の観点では、よりデータが大規模になり色々なデータが使用可能になっていること、分析の自動化によって効率化させようとする動きがあると紹介しました。
特に、分析の自動化においては、分析設計から業務運用まではさまざまな課題があることを指摘し、試行錯誤の段階でAIを育てながら活用していくことが求められていると語りました。分析プロセスのうち、目的設計や分析設計は人間が行う必要があるものの、データサイエンティストが予測モデルをつくる作業(機械学習)、その予測の精度が保たれているかを確認すること(モデル品質維持)の2つは自動化することができるようになってきたとのこと。
そこで、機械学習を活用しデータ分析を自動化する技術として、DataRobot社のシステムを例に挙げ、予測モデルを自動的に生成する機能、予測に効果的なデータ項目などを確認する機能予測の根拠まで可視化できる機能などについて紹介し、機械学習の自動化の技術が進んできたことを解説しました。これらの技術はメーカーなどの品質管理や、人事採用まで幅広いケースで使われていると語りました。さらに、予測モデルの業務運用に向けては、一度作った予測モデルを継続的にメンテナンスする必要性について指摘し、モデル品質維持を自動化する技術として、NTTデータが開発した「AICYCLE™」の機能を紹介しました。
最後には参加者から質疑応答も活発に行われ、データ活用の可能性について多いに語られるセッションとなりました。
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博報堂DYホールディングス マーケティング・テクノロジー・センター室長 兼) AIビジネス・クリエイションセンター センター長
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小酒井 一稔NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 AI&IoT事業部 課長