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DATA GEARの新たなチャレンジ【連載第3回】生成AIを活用して顧客の声をビジネス価値に変える──VOC分析に新しい地平を拓く〈DATA GEAR Voice Analysis〉
コンタクトセンターに寄せられた声やSNSの投稿などには、顧客のニーズや不満を解像度高く捉えるためのヒントがたくさんあります。しかし、そういったVOC((Voice of Customer/顧客の声)の分析には手間がかかることから、VOCの重要性を認識しつつも、十分に活用できていないという課題がこれまではありました。
そのような課題を解決するために博報堂CRM&システムコンサルティング局のDATA GEARチームが開発したのが、〈DATA GEAR Voice Analysis〉です。
生成AIを活用してVOCを分析し、顧客の声を確実にビジネス価値に変えていく。そのソリューションの概要やこれまでの成果について、DATA GEARのメンバーに語ってもらいました。
土井 京佑
博報堂 CRM&システムコンサルティング局
データプラットフォームグループ
グループマネージャー
奥山 貴文
博報堂 CRM&システムコンサルティング局
データプラットフォームグループ
マーケティングプラニングディレクター
宮本 潤哉
博報堂 CRM&システムコンサルティング局
データプラットフォームグループ
マーケティングプラニングディレクター
牧野 壮馬
博報堂 CRM&システムコンサルティング局
データプラットフォームグループ
マーケティングプラナー
VOCという「宝の山」から宝を掘り出す
──マーケティングにおけるVOC活用の重要性についてご説明ください。
- 奥山
- 広告からサイトへの流入数やサイト内での購買率といったデータを活用できるのがデジタルマーケティングの利点です。しかし、そういった定量的データからは、「なぜ商品を買わなかったか」「商品やサービスのどのような点に不満があるか」といった理由を読み取ることはできません。そういった情報を得るには、コンタクトセンターに電話やメールで寄せられた声、LINEからの問い合わせ、SNSの投稿内容といったVOCを分析することが必要です。定量データとVOCデータを組み合わせて分析し検証することで、顧客理解を深め、マーケティングの精度をより上げることができる。そこにVOC活用の重要性があります。
──企業がVOCを活用するにあたって、これまでどのような課題がありましたか。
- 土井
- テキストマイニングの手法でVOCを分析することは以前から行われてきました。しかし、その多くは人の手で行わなければならなかったため、「VOC活用には労力がかかる」という意識が根強くあったように思います。VOCは本来「宝の山」と言えるのですが、そこから宝をうまく掘り出せていなかったことが大きな課題でした。
──そういった課題を解決するソリューションが〈DATA GEAR Voice Analysis〉ということですね。このソリューションの開発が始まったのはいつ頃ですか。
- 奥山
- 2023年末くらいですね。クライアントが保有するVOCを分析する作業を僕たちのチームが担当していたのですが、作業を効率化できないかと考えて生成AIを活用したところ、かなりの効果が得られることがわかりました。そこでこれをパッケージソリューション化しようということになりました。
〈DATA GEAR Voice Analysis〉の特徴として、AIを使うことによってVOC分析業務が効率化することと、人の目では気づかなかった視点をAIが提示してくれること。その2点が挙げられます。
「AI×人」の力で価値を最大化する
- 宮本
- AIを活用することでデータ処理の柔軟性が増したことも〈DATA GEAR Voice Analysis〉の強みと言えると思います。例えばテキストに絵文字が入っているような場合でも、AIはその意味を読み取ってくれます。また、インターネットスラングが多用されていて読みにくいSNSの投稿なども、AIは難なく解読してくれます。
それからもう一点、テキストや音声だけでなく、画像や動画を分析対象とできるのもこのソリューションの大きな特徴です。
- 土井
- もっとも、AIはあくまでもツールです。ツールが出したアウトプットをどう解釈し、どのようにクライアントのビジネスにつなげていくか。そこを担うのは、あくまでも人です。マーケティングやプラニングのプロである博報堂のメンバーが分析結果を次のアクションにつなげることで、データを具体的な価値に変えていく。〈DATA GEAR Voice Analysis〉はそこまでのスコープをもったソリューションです。
- 奥山
- AIを活用してVOCを分析できるプレーヤーは僕たち以外にもいると思います。しかし、その分析結果をもとに、新しいキャンペーン施策を立案したり、クリエイティブを改善したりすることができるプレーヤーは決して多くはありません。「AI×人」の力で、VOCから生まれる価値を最大化できることが僕たちの大きな強みです。
- 牧野
- CRM&システムコンサルティング局は、開発したソリューションをクライアントに提供するだけでなく、最終的にはクライアント側で運用を内製化していただくことを目指しています。具体的には、ここで得られたVOCの示唆をクライアント社内で使えるAIエージェント化することで、より機動的にソリューションを活用できるようになり、クライアントの競争優位性につなげていただけると考えるからです。その内製化支援までを含むソリューションであること。それも大きな差別化ポイントだと思います。
新規市場の分析にも力を発揮
──これまでの成果についてお聞かせください。
- 奥山
- クライアントが保有するVOCをスピーディに分析するというのが〈DATA GEAR Voice Analysis〉のコンセプトの1つです。カジュアルに活用していただけるソリューションということもあり、幾つかの案件で試用を開始しています。
コンタクトセンターに寄せられたVOCだけでなく、LINEやSNSのデータや実購買データなどを統合して分析するケースも出てきています。コンタクトセンターに寄せられる不満や苦情はかなり深刻化してからのものが多いので、それらが顧客の声を代表しているとは限りません。顧客のインサイトを捉えるには、多様なチャネルのデータを集めて分析することが必要です。そのような取り組みでも〈DATA GEAR Voice Analysis〉は力を発揮します。
- 土井
- 新規市場開拓を目指すクライアントに〈DATA GEAR Voice Analysis〉を活用していただくケースも増えてきていますね。例えば、グローバル進出を検討する際、海外のニュース報道やSNSの投稿を分析し、ビジネス展開の戦略を練るといったケースです。VOCは一般に自社の既存顧客の声を意味しますが、広く「市場の声」「生活者の声」を集めて分析するといった用途にも〈DATA GEAR Voice Analysis〉はお使いいただけます。
──今後の見通しをお聞かせください。
- 宮本
- ソリューションの基本形は完成しているので、VOCを収集するチャンネルを拡大していくのが次のステップになると考えています。マーケティングファネルで見ると、SNSは商品やサービスの認知に効果があり、YouTubeユーザーには商品購買検討層が多いというデータもあります。より幅広いチャネルからVOCを集めることによって、これまで以上に精度の高いVOC活用が可能になるはずです。そういった取り組みを通じて、クライアントのビジネスに貢献していきたいと思っています。
- 牧野
- 〈DATA GEAR Voice Analysis〉は、VOCの分析を通じてCX(顧客体験)の向上を目指すソリューションであると僕は捉えています。
CX向上につながる要素は、必ずしも顕在化しているわけではありません。SNSの声などをAIで分析することによって、これまで見えなかった要素を洗い出し、隠れたVOCを可視化することで、クライアントの顧客の体験価値を上げていく。そんな取り組みに注力していきたいですね。
- 土井
- 〈DATA GEAR Voice Analysis〉は個別にクライアントにご提供していく予定ですが、ゆくゆくは業界ごとのパッケージソリューションに育てていきたいという思いがあります。消費財、自動車、コスメ、ITなど、それぞれの業界に即したVOCの収集と分析の手法を確立し、各業界におけるVOC分析の標準的なソリューションとして定着させていくことが、これからの大きな目標です。
- 奥山
- これまで10年間ほどクライアントのCRM活動のご支援をしてきました。CRMにはデジタルテクノロジーやデータの活用が必須ですが、そういった取り組みは往々にして属人化する傾向があります。CRMのプロがクライアントの社内にいても、その人が異動したり退職したりすると、CRM活動が滞ってしまう。そんなケースをこれまで何度も見てきました。
しかし、〈DATA GEAR Voice Analysis〉を活用していただくことで、CRMにVOCを活用する取り組みのハードルはグッと下がります。このソリューションを多くのクライアントに提供することで、現場でマーケティングを担当されている皆さんがよりスムーズにCRM活動に取り組めるようになり、その成果を事業成長につなげることができるようになるはずです。その道筋をつくるお手伝いをしていきたいと考えています。
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