積水ハウス×ALSOK×博報堂「駆けつけホームセキュリティ」記者発表会速報レポート~住まい手の「生活ログ」解析から、「防犯」に関する新たなサービスを共創~
あらゆるモノや場がインターネットでつながる「生活者インターフェース市場」を標榜する博報堂は、2023年9月より、「プラットフォームハウス構想」を推進する積水ハウスと共同プロジェクトとして、住まい手の「生活ログ」解析を通した新たな価値創造を進めてきました。
このたび、価値共創パートナーとしてALSOKを迎え、防犯に関する行動習慣を可視化し価格に反映する駆けつけ防犯サービス「駆けつけホームセキュリティ」の提供が開始されることになり、11月22日に、本プロジェクトの進捗状況の説明とこの新たなホームセキュリティサービスに関する記者発表会が開催されました。
(2023年の発表会に関する記事はこちらです)
■「生活ログ」解析により、新たなサービス開発へ
吉田 裕明(積水ハウス株式会社 常務執行役員 プラットフォームハウス推進部長)
積水ハウスは、2050年に向け「人生100年時代の無形資産」づくりを掲げ、「“わが家”を世界一幸せな場所にする」ことをグローバルビジョンにしています。さらに、その幸せを「健康」「つながり」「学び」という3つの要素に分解し、2021年よりスマートハウスの進化系として「プラットフォームハウス構想」を進めてきました。住まい手の皆さまの暮らしに関する情報をお預かりした上で、パーソナライズした付加価値という形でお戻しすることをポリシーとしています。
データのお預かりに関しては、住まい手であるお客様からの同意をしっかり取ったうえで、クラウドによるデータ管理、サイバー攻撃対策を徹底して、真に安心していただける情報セキュリティ対策を実施しています。
2023年より始まった博報堂との共同プロジェクトにおいては、こうして蓄積されたお客様の日々の行動に関する「生活ログ」の解析を重ねながら、新たなサービスの可能性について検証してきました。
元々、積水ハウスには住環境に関するデータは豊富にありましたが、この共同プロジェクトでは、これに加え、日々の暮らし方に関するデータ=ライフスタイルデータを蓄積・活用したいと考えました。
「プラットフォームハウス構想」におけるサービスの第一弾として積水ハウスが開発したアプリ「PLATFORM HOUSE touch」を利用することで、エアコン、照明の操作やホームセキュリティ、熱中症アラートなどの住環境モニタリングが、スマートフォン上でできるので、住まい手のデジタルリテラシーを問わず、365日、日々の生活に寄り添うことができます。さらに今回は、「PLATFORM HOUSE touch」の利用者の方々にもご協力いただき、WEB上でのアンケート調査や日々の行動を記録する日記調査などを行い、「生活ログ」と実生活との整合性を確認しました。その結果、生活モーメントや生活習慣、行動の源泉に関する正解データを構築することができました。
そうして得られたデータをAI分析し、今回の新サービスを開発することになったわけですが、その詳細に関しては、博報堂の青木さんにお話しいただきたいと思います。
■「行動の実態」と「自覚している意識」の間に生じる差分=「つもりギャップ」に着目してサービスを着想
青木 雅人(株式会社博報堂 常務執行役員 コマースデザイン事業ユニット長)
博報堂は、あらゆる生活シーンに広がるデジタル化が生み出す「生活者インターフェース市場」を標榜し、さまざまな企業・業種と協働していますが、今回の積水ハウスとの共同プロジェクトもその一環として、住まい手であるお客様の生活に関するデータをお預かりして、新たな体験・サービスに繋げていくことを目指しています。
今回の新サービス開発に至るまでの経緯ですが、私たちが着目したのは、日々の暮らしの中で、サービス利用により把握できる客観的データ「生活ログ」と、アンケート・日記調査を通して分かる、生活者の主観に基づくデータの違いです。つまり、同じ事柄・テーマでも性質が異なる解釈をすることができるということに気づいたわけです。
今回の解析では、「防犯関連」と「家族と過ごす時間」という二つのテーマで、「行動の実態」と「自覚している意識」を検証しました。たとえば「防犯」というテーマで見ると、「PLATFORM HOUSE touch」の生活ログから分かるのは、玄関・窓などの施錠や不在時の照明などの“行動の実態”で、アンケート・日記調査からわかるのが“防犯への自己認識”です。その2種類のデータを詳細に検証した結果、差分があることがわかりました。つまり、自分では防犯意識が高いつもりでも、実際、窓や玄関ドア等の施錠を忘れるという行動が生じているわけです。私たちは、その差分を「つもりギャップ」と名付け、サービス開発を進めていきました。
分析を進める中で、「こまめな施錠」ということに着目して見ると、実態と意識に関して、差分の大きな邸が一定割合存在することもわかり、さらに住まい手の暮らし方や特徴を深く探ったところ、差分=「つもりギャップ」が大きいお宅の生活者には、「社交的で人づきあいがいい」「忙しいため、身体的に疲労が蓄積しているタイミングがある」「夕方の帰宅後、すぐに食事の準備をしなければいけない時」という、特徴があることもわかりました。
防犯に関する新サービスは、そうした、行動の実態と意識の差分が発生しやすい時間帯やモーメントをカバーし、住まい手の安全を守るためのアラートという方向性で構想しました。
■「つもりギャップ」にフォーカスした、世界初の「駆けつけ防犯サービス」
宮島 裕(綜合警備保障株式会社 常務執行役員)
- 宮島
- ALSOKは、日本の警備業におけるリーディングカンパニーとして、生活者および社会を取り巻くリスクが多様化・複雑化する現代にあって、地域の身守りネットワークの構築や防犯セミナー、高齢者向けの講座を開催するなど、社会全体の安全・安心に貢献しています。
住宅への侵入窃盗の約45%は“無締まり(施錠されていない)”の窓や玄関ドアからの侵入に伴うことから、今後の防犯対策に必要なのは、住まい手自身の防犯に関する意識および行動習慣の改善であるといえます。
今回の積水ハウス×博報堂の共同プロジェクトへの参加は、その意味でも、たいへん有意義であることから、当社としても、いままで培った防犯の知見やスキルを発揮して取り組んでいければと考えています。
- 吉田
- 積水ハウスでは従来、「守る・見える・知らせる」という3つの視点を基本に防犯対策を実施しており、「駆けつける」防犯に関しても、ALSOKなどの警備会社をお客様にご提案してきました。そして、今回の「駆けつけホームセキュリティ」は、「PLATFORM HOUSE touch」をベースに、あらためて企業間共創という視点で、住まい手の防犯行動を促すことを目的に開発したサービスです。住まい手の「PLATFORM HOUSE touch」で不在時の異常検知をALSOKに自動通報し、ガードマンが駆けつけるというもので、従来のように何かあったときに住まい手が自ら通報する必要がありません。さらに、「生活ログ」から解析した住まい手の防犯行動のレベルを3段階で評価して、その評価に応じてサービス価格が変動する点が“世界初”となっています。具体的には、Normal、Good、Excellentの順に評価が高くなるほどリーズナブルにサービスを利用することができ、最大1,100円(税込)の割引が適用されます。防犯に関する行動を可視化し、サービス価格に反映することで、利用者が防犯行動を改善しようというインセンティブにつなげることを狙いとしています。改善のポイントについては、現状の防犯行動データと現状AIを活用し、適切な改善点についてのアドバイスを受けとることができます。
今後も、必要な期間のみの駆けつけサービスや、不在時に自動で警備状態にするサービスなど、住まい手のニーズや生活習慣に合わせたアップデートも予定しています。
今回の新サービスは、この共同プロジェクトが当初目指した、価値共創プラットフォームの第一弾ですが、今後も「プラットフォームハウス構想」で蓄積された、住まい手のデータを活用した、多様なパートナー企業との共創を目指していきたいと思います。
多くのメディアの皆様に参加いただいた今回の記者発表会では、最近の強盗事件の増加も影響し、防犯というテーマへの関心度の高さが伺えました。また、価値共創プラットフォームの次のテーマは何か? どんな企業と共創する予定か?という質問も寄せられ、共同プロジェクトへの期待の高まりも伺うことができました。
本プロジェクトでは、今後もさまざまな企業との共創を通じて、多くのお客様へのよりよい価値提供を目指してまいります。
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