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〈マーケティングシステム・イニシアティブ〉の挑戦【連載第4回】──LINEを活用したマーケティングを次のステップに!LINE活用3.0でCXを高度化
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〈マーケティングシステム・イニシアティブ〉の挑戦【連載第4回】──LINEを活用したマーケティングを次のステップに!LINE活用3.0でCXを高度化

博報堂DYグループにおけるマーケティングシステムの専門家集団〈マーケティングシステム・イニシアティブ(MSI)〉。グループ内6社、計500人のメンバーからなるこの巨大ユニットの活動を紹介する連載の第4回は、LINEを活用したマーケティングにスポットを当てます。企業のLINE活用をトータルに支援するMSI「LINE活用高度化チーム」の中心メンバーに、LINEというプラットフォームの特徴や、チームの強み、これまでの成果などについて語ってもらいました。

磯部 真吾
博報堂 コマースデザイン事業ユニット
CRM&システムコンサルティング局
CRM推進グループ ビジネスプラニングディレクター/テクニカルディレクター
MSI LINE高度化チーム チームリーダー

牟田 悠希
博報堂 コマースデザイン事業ユニット
CRM&システムコンサルティング局
CRM推進グループ UXプラナー

木下 奈緒
博報堂マーケティングシステムズ
マーケティングシステムビジネス部
ソリューションコンサルタント

「LINE活用3.0」の時代に

──LINEをマーケティングツールとして活用する企業が年々増えています。あらためて、LINEというプラットフォームの特徴を整理していただけますか。

磯部
大きく3つの特徴があると僕たちは考えています。1つは、企業と生活者の継続的な接点になるという点です。企業のLINE公式アカウントを友だち追加してもらい、ユーザーから許諾を得ることでLINEのユーザーIDなどの情報取得が可能になることにより、人単位で継続的なコミュニケーションの起点となります。

2つ目として、LINEミニアプリが使える点が挙げられます。LINEミニアプリとは、LINE上で駆動するウェブサービスです。これによって、LINEというプラットフォームの中で企業独自のUI/UXを備えたコミュニケーションチャネルを運用することができます。このチャネルでさまざまなサービスを展開し、顧客体験(CX)を向上させることで、生活者との関係をより強固にできるだけでなく、LINEミニアプリとLINE公式アカウント、さらには企業のファーストパーティデータを連携させて、個々の生活者に適した情報配信が可能になります。

 図* LINEミニアプリについて *「Hello Friends! W!th LINEヤフー」イベント資料より転載

3つ目が、今後の拡張可能性です。ご存知のように、2021年にLINE社はヤフー社と経営統合をしました。今後は、ユーザー承認を得た上で、2つのプラットフォーム間のデータ連携が進んでいくと想定されています。データ連携が実現すれば、LINEはさらに精度の高いマーケティングプラットフォームになっていくと考えられます。

木下
ポストCookie時代のマーケティングツールとしてLINEはとても有効です。LINEは生活者と常時接続しており、何気ない日々の行動をマーケティングに活用することができます。生活者との距離が非常に近く、データを取得しやすいこと。それもLINEの大きな特徴です。
牟田
もう1つ、大前提として、ユーザー数9700万人*という圧倒的なボリュームが特徴として挙げられます。あらゆる層に対してアプローチできるプラットフォームと言っていいと思います。
*2024年3月時点

──〈マーケティングシステム・イニシアティブ(MSI)〉は、「LINE活用3.0」という考え方を提唱しています。これはどのような考え方なのですか。

磯部
LINEのサービスがスタートしたのは2011年でした。その後急速にユーザー数が増えた2012年から16年くらいまでの時期のLINEを活用したマーケティングを、僕たちは「LINE活用1.0」と捉えています。LINEはこの時期に、企業が数千万人規模の「友だち」に対して一斉にメッセージ配信ができるほどのマスチャネルに成長しました。

続く「LINE活用2.0」は、LINEがアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を公開したことによって、企業がLINEのデータを活用できるようになった時期に該当します。これによって、メッセージのセグメント配信が可能になりました。2020年には LINEミニアプリの活用がスタートしています。

さらに現在は、LINEミニアプリで生活者の様々なニーズにこたえるサービスを開発し、そこで得たデータをもとに精度の高い1to1のメッセージ配信が可能になっています。この段階を僕たちは「LINE活用3.0」と呼んでいます。
なお、LINEミニアプリは飲食店やサロンなどで導入が進んでいますが、最近様々な企業様からも引き合いが増え、エンタープライズ市場にもLINE活用3.0の波がきていると実感しています。

図  LINEを活用したマーケティングの変遷 

牟田
「LINE活用3.0」の段階における生活者とのコミュニケーションは、メッセージ配信だけではなく、LINEミニアプリを活用した「体験型」に進化しています。場合によっては90日間くらいに及ぶコミュニケーションシナリオをつくり、個々の生活者と企業の関係性や、LINE内で生活者のアクションに応じて最適なコンテンツを配信し、よりリッチなCXを提供するといったケースも出てきています。

MSIにおける「LINEを活用した高度化チーム」の強み

──MSIにおける「LINEを活用した高度化チーム」の活動についてお聞かせください。

磯部
クライアント企業がLINEを生活者の接点として活用することをトータルに支援するのが、このチームのミッションです。LINEミニアプリ上のサービス開発を中心にLINE公式アカウントも含めてトータルで支援することで、LINEを起点としたカスタマージャーニーやCXを最適化するだけでなく、ほかのメディアやチャネルと組み合わせた顧客関係性マネジメント(CRM)の戦略を組み立てていくことを得意としています。

──今や各社がLINE活用に取り組んでいます。MSIのLINEを活用した支援の独自性はどのような点にあるのでしょうか。

磯部
マーケティングのプランニング力だけでなく、エンジニアリングやコンテンツ制作のノウハウがある点がMSIの強みです。LINE公式アカウントの活用だけでなく、LINEミニアプリのコンセプト立案から制作、運用、データ活用までをワンストップで支援できるチームはなかなかありません。さまざまな専門性をもったメンバーが会社の垣根を越えて集まり、一枚岩で、かつ機動的に動くことができる。その点に僕たちの最大の強みがあると考えています。
さらにLINEに限定せず、LINE外のタッチポイントも含めて生活者と企業のつながり方を考え、幅広いご提案ができることも強みだと考えています。
牟田
1つのチームの中にさまざまなファンクションがあるので、クイックに動けるだけでなく、クライアントの課題やニーズに応じた柔軟なフォーメーションがつくれるのも、このチームの持ち味だと思います。
木下
LINE公式アカウントの運用支援だけでなく、LINEミニアプリの制作と運用支援ができることの大きなメリットは、LINEにおける生活者のアクションをトータルに把握できる点にあります。LINE公式アカウントのユーザーデータとLINEミニアプリのユーザーデータを連携させ、LINE内のユーザー行動を包括的に捉えて、それをメッセージやコンテンツ配信に活用する。それによって、コミュケーションの精度を継続的に高めていく──。そんな支援体制を私たちはつくることができます。
*LINEアカウントと紐づいた行動データの取得・活用にはユーザーの許諾が必須となります。

生活者にとって最も身近なプラットフォーム

──生活者にとって、LINEとはどのようなプラットフォームなのでしょうか。

磯部
多くの生活者にとって、LINEは最も身近なアプリです。LINEのトークルームはプライベートな空間であり、そこに知り合いや親しい友人と同じレベルで企業の公式アカウントが「友だち」としてリスティングされています。それによって、まるで友人とやり取りをしているような感覚で企業とのコミュニケーションが行われます。生活者が企業をここまで身近な存在と感じられるプラットフォームは、あまりないのではと思います。
牟田
主体的に企業のLINE公式アカウントへメッセージを送る生活者も増えています。例えば生活者がサービスを利用してみて、「おもてなしに感動しました」というコメントを企業のLINE公式アカウントに送り、企業は「素敵なお時間をご堪能いただけて大変良かったです」とお礼メッセージを返しながら、実際にお客様を担当した現場スタッフからDMを送る。そんな、いわば人格と人格のコミュニケーションが実現するのが、LINEの特徴的なところです。
木下
逆に、企業からのメッセージのプロモーション色が強くなりすぎると、生活者は忌避感を抱きます。テキストやコンテンツで「身近な温度感」を実現できるよう、細かなチューニングをしていくことが必要です。

──一方の企業側にとってのLINEの位置づけについてもご説明ください。

牟田
以前は、企業にとってのLINEはメッセージを配信するツールでした。しかしLINE活用3.0の段階に入ってからは、コミュニケーションだけでなく、サービスや体験を届けるプラットフォームに変わってきています。生活者の属性データやメッセージへの反応データに加えて、LINE上のアクションデータや些細なコメントもIDベースで蓄積されるので、それらのデータをもとに継続的にCXを改善していくことが可能です。LINEは一種のミニデータベースになっているとも言えるし、フロー型からストック型のプラットフォームに進化しているとも言えますね。

企業と生活者の有力な接点

──LINE活用3.0におけるクライアント支援としてはどのようなケースがありますか。

磯部
3つの活用パターンをご紹介したいと思います。1つ目が、顧客サービスをLINEミニアプリで実現し、LINEを継続的な接点として活用していくサービス開発型の活用パターンです。顧客の利便性向上やベネフィットの提供などを通じCXを向上していきたい企業様にご提案します。ご支援の際にはLINE公式アカウントだけではなく、様々なUIが実現できるLINEミニアプリも含めた総合的な設計や開発を、ご支援させていただくケースが多くなります。

図 顧客サービスの一例 

牟田
このパターンでは、サービスの開発や改善を行うなかでLINE公式アカウントのユーザーを対象に、LINEミニアプリを活用したアンケート調査やオフラインのデプスインタビューを実施すると高い効果を見込めます。ユーザーの声を聞くことで、その人の印象に残り続ける「象徴的な体験」を発想し、LINEならではの特性を活かしたサービスとして実現できます。結果としてブロックされることなく、つながり続けることができるのです。さらに、LINEを活用した調査スキームでは、企業との距離が近いユーザーを対象にすることができ、調査後も対象となったユーザーと施策等を通して深く繋がり続けることも可能です。
木下
私はこの活用パターンでは、メッセージ配信やLINEミニアプリの制作・運用、チャットボットの設定などのディレクションを担当することが多いです。LINEでは、チャレンジングな取り組みを織り交ぜながら繰り返し、段階的に精度を高めていくアジャイルなクリエイティブワークが可能です。個々の配信やミニアプリが単発の施策として終わるのではなく、リリース後もクライアントのご担当者と話し合いながら細かなチューニングを繰り返し、内容を継続的にブラッシュアップしていけるのです。スピーディーな調整、転換ができるのもLINEの特長です。
牟田
2つ目の活用パターンは、商品の利用体験のサポートとなるプログラムをLINEで構築するオンボーディング型の活用パターンです。日々新商品や新サービスがうまれる昨今、商品の初回利用時の体験がLTV(Life Time Value、顧客生涯価値)に大きく寄与します。そのような背景もあって、この活用パターンをご提案させていただく機会も増えています。生活者が商品の利用を始める時点から、LINEを通じて使用方法や活用のコツなどを伝えていき、商品の利用体験の向上に寄与することで継続利用や関連商品のクロスセルにつなげていくイメージです。これは顧客を育成するための新しいLINEの活用法の一つと言ってもいいと思います。アプリを活用して商品の利用法などを伝えるケースはほかにもありますが、LINEはすでに多くの生活者が使っているプラットフォームなので、スムーズに活用してもらえます。

また、オンボーディングだけでなく、新規顧客獲得にもLINEは寄与できます。例えば、オフラインイベントや、SNSでのキャンペーンなどの接点とLINEを連携させていくことで、新しい顧客層へリーチすることができます。さらには、いろいろなチャネルからLINEに入ってきたユーザーをトラッキングして、メッセージ配信やCXを最適化していくといったことも可能です。

図 オンボーディング型LINE活用イメージ 

磯部
新商品とLINEを組み合わせるケースでは、マスにおけるプロモーションの受け皿をLINEが担う場合も少なくありません。プロモーションを通じて関係をつくった生活者との継続的なコミュニケーションをLINEで行うという方法です。マスとの連携によるCRMといった用途でも、LINEは大きな力を発揮するのです。

店舗オペレーションに組み込むLINE

──3つ目はどのような活用パターンですか。

磯部
店舗などの接客オペレーションにLINEを組み込む、オペレーション改善型のLINE活用パターンです。あまり店舗に負荷をかけすぎずに来店された顧客とのデジタル接点を獲得し、データを取得していきたいといったニーズに合わせてご提案するパターンとなります。来店したお客様に会員登録をお願いしている企業様は多いですが、ユーザー側の入力に手間がかかる場合、スタッフが丁寧にサポートできなかったり、途中で離脱されてしまうといった課題が散見されます。そういった課題に対して、既存のシステムとLINEを組み合わせることで、入力の手間がないシンプルな登録を実現し、お客様と店舗スタッフそれぞれがよりストレスフリーになれる。そんな提案をさせていただくことが多いです。さらには、クライアントが保有するファーストパーティーIDとLINEのユーザーIDを紐づけ、CRMを高度化する、といったことも提案させていただくことが多いです。

以前は、会員システムにメールアドレスや電話番号を登録してもらって、メールでメッセージを送るというのが主なCRMの方法でした。しかし、会員登録フォームの入力完了前に離脱されてしまう、メールはなかなか開封されず内容を読んでもらえない、などといった課題が生まれがちです。LINEミニアプリであれば簡単に登録画面を立ち上げられますし、LINE公式アカウントならば、メッセージが届けばすぐに読んでもらうことができ、そこからのアクションも期待できるため、最近ではLINEを活用したCRMの優先度が高くなっている実感があります。また、LINEミニアプリの登場によってサービスを通して取得したデータを活用してLINE公式アカウントから送るメッセージの内容や配信のタイミングなどを最適化できるようになったというのも大きな変化だと考えています。

──マーケティングシステムの「システム」とそれを用いて実行する「CRM施策」に関するケイパビリティが発揮されるMSIらしい提案になりそうですね。

磯部
ありがとうございます。企業様で導入済みの複数のシステムとLINEミニアプリの開発環境を連携して実現することも多くなっています。クライアントのIT部門のご担当者と話し合いながら、システムの設計、実装、運用、データ活用までを僕たちがマネジメントしています。システムに関して、ここまでの支援をする広告会社はなかなか無いのではないでしょうか。さらにMSIでは施策の設計や実行も統合的に支援することが可能です。

図 LINEミニアプリ実現のためのシステム開発イメージ 

──LINE活用の今後の見通しをお聞かせください。

木下
LINEのユーザーの多くは、大勢の中の一人ではなく、私という個人に対してメッセージを発信してほしいと考えています。その思いに応えていくのが非常に重要です。もちろん、完全なOne to Oneコミュニケーションを実現するのはコスト的にもオペレーション的にも難しいのですが、常にOne to Oneの志向性をもちながら、マーケティング戦略を組み立てていくことが大事だと私は考えています。「一人ひとりの生活者とコミュニケーションする」という意識を強くもち、クライアントのLINE活用をこれからも支援していきたいと思います。
牟田
LINEにおけるCXの深さやリッチさを実現していくことが僕の目標です。例えば、レジャー施設の紹介では単なる画像ではなく実際にその場に立っているような感覚が味わえる360度画像で提供したり、施設に入った後はLINEのカメラでかざすことで名前入りのwelcomeメッセージをARで表示させたり。テクノロジーを活用したクリエイティビティはたくさんあると思います。コミュニケーションや体験を設計する力とテクノロジーやITをリードする力などを組み合わせて、これまでになかった高度なCXを実現させたいですね。
磯部
生活者に主体的に参加したいと思ってもらえるサービスを開発し、企業と生活者の双方向コミュニケーションをいっそう推し進めていくことが大きな目標です。それからもう1つ、クライアント側のご担当者をユーザーと捉え、一人ひとりのご担当者がより使いやすく、マーケティング効果を継続的に高めていける仕組みをつくることを目指したいと思っています。マーケティングツールとしてのLINEにはまだまだ大きな可能性があります。このチームの力を最大限にいかして、あらゆる可能性にチャレンジしていきたいと考えています。

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  • 博報堂 コマースデザイン事業ユニット
    CRM&システムコンサルティング局 
    CRM推進グループ ビジネスプラニングディレクター/テクニカルコンサルタント
    大手SIベンダーにて様々なシステム開発を担当。その後、出版社に転職。Webサービスの開発や社内起業を通し、事業成長に向けて幅広い領域に取り組む。前職では、アプリ企業でソリューションコンサルティング業務などに従事。博報堂入社以降は、マーケティングシステムのコンサルティングやソリューション開発業務に携わる。MSI LINE活用高度化チーム チームリーダー。
  • 博報堂 コマースデザイン事業ユニット
    CRM&システムコンサルティング局
    CRM推進グループ UXプラナー
    2021年博報堂入社。データ分析に基づくコンサルティング、マーケティング実践領域を中心とした戦略・企画・UIUXのディレクション及びプランニングに取り組む。LINEプラットフォームを活用したサービス開発業務やグロース運用支援業務に従事。
  • 博報堂マーケティングシステムズ
    マーケティングシステムビジネス部ソリューションコンサルタント
    Web制作会社にてディレクター、PM、アナリストを担当。2021年HMSに入社し、2022年より新設部署となるマーケティングシステムビジネス部に所属。現在は様々なソリューションを活用しつつ、ユーザー行動を軸にしたデジタルコミュニケーション改善を推進している。