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web3グローバルハッカソンにて最優秀賞をダブル受賞! ドライブをより楽しめるNFT企画「MAZDA Driver Identity」
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web3グローバルハッカソンにて最優秀賞をダブル受賞! ドライブをより楽しめるNFT企画「MAZDA Driver Identity」

エンジニアやデザイナーなどがチームを組み、テーマに対してアプリケーションやソリューションを期間内に開発していく“ハッカソン”。今、web3領域でも、企業の協賛のもとに開催するハッカソンの企画が始まっています。博報堂キースリーでは昨年、「web3グローバルハッカソン2023」を開催。協賛企業であるマツダと三菱地所からの各テーマに対して377人が取り組み、65のアウトプットが集まりました。

そしてマツダとAstar両方の最優秀賞を、NFT関連の自社事業や企画支援を行う飯泉さんのチームが獲得しました。本稿では、2023年12月21-22日に開催されたカンファレンス「web3BB(Beyond Borders) Tokyo 2023 Winter」より、シンシズモ 取締役の飯泉一馬氏をゲストに迎えたセッション「web3グローバルハッカソン ダブル最優秀賞受賞者にアレコレ根掘り葉掘り聞く会」をダイジェストでお届け。聞き手は博報堂キースリー CEO / 代表取締役の重松俊範が務めました。

飯泉一馬 
シンシズモ株式会社 取締役

重松俊範 
博報堂キースリー CEO / 代表取締役

企業協賛型ハッカソンの新規事業への展開

マツダおよび三菱地所の協賛を受け、2023年下半期に開催した「web3グローバルハッカソン2023」。最優秀賞をダブル受賞し、賞金総額1,100万円相当のAstarのうち400万円分を獲得したのは、シンシズモ社のチームでした。セッションではまず博報堂キースリーの重松から、今回のハッカソンの企画意図が紹介されました。博報堂キースリーではこれまでにも、JALやカルビーなど国内大手企業と組み、NFT関連の実証実験やキャンペーンなどを展開してきました。

重松
当社は「生活者発想」と「クリエイティビティ」を軸に、日本から世界を代表するweb3サービスを生み出すべく、さまざまなクライアント企業とともにweb3事業に取り組んでいます。その一環として、web3で課題解決を試みるハッカソンを行っていまして、昨年2月にはトヨタ自動車と組んで初めての企業協賛型ハッカソンを開催しました。
ハッカソンのメリットは、数カ月の短期間で、いろいろな切り口のアイデアやプロトタイプを募れる点だと思います。ただ、企業協賛の場合はハッカソンはあくまで手段で、実施後にサービスを社会実装していくことを目指しています。優れた案から新規事業開発にも集中的に進めるので、スピード感があります。

重松
今回ご紹介するのは、協賛型ハッカソンの第2弾として開催したもので、なんと同一チームがマツダとAstarの2部門で最優秀賞を受賞しました。そのメンバーであるシンシズモ社の飯泉さんに、今日はマツダへの企画「MAZDA Driver Identity」を解説していただきます。飯泉さんとも、これからぜひ一緒に開発していきましょうと話をしているところです。
では飯泉さん、ご自身と会社の紹介をしていただけますか?
飯泉
私は宇都宮大学を卒業後、東京大学生産技術研究所の山中俊治研究室にて、研究実習生として先端技術の社会実装の研究などをしてきました。その後、NFTの社会実装に取り組もうと、シンシズモを共同創業しました。
当社は主に、NFTやブロックチェーン領域で自社プロダクト開発やプロジェクト企画支援、システム開発を手掛けています。自社事業としては、LINEを通して1分でNFTを配布できるサービス「キリフダ」を展開中です。
重松
今回のハッカソンには何名で、どういった構成でエントリーしたのですか?
飯泉
私たちのチームは4人で、1人がプロジェクトのまとめ役、私を含む3人がエンジニアでした。

NFTを使って、ドライブをより楽しむには?

今回、マツダから提示されたテーマは“Drive to Earn, Use for Fun”。ドライブがもっと楽しくなる世界初のweb3サービスとして、ドライバーや同乗者のためのエンタメサービスの提案を、というお題でした。それに対して飯泉さんらのチームが企画開発したのは、ドライブ中に宝探しができる仕組み。発想もさることながら、本企画の実現に向けて2つの新技術を開発したことも、審査員に注目されました。

重松
今回マツダさんからは、web3のテクノロジーを活用して、ドライバーだけでなく同乗者も楽しめるエンタメ企画を、という話をいただいていました。それに対して飯泉さんらの企画「MAZDA Driver Identity」が最優秀賞を獲得されましたが、率直な感想をうかがえますか?
飯泉
とても光栄です。開発的には、かなりおもしろいものをつくれた自信はありましたが、それだけにテクニカル的にも凝っていたので、正直ここまで評価いただけるのは驚きでした。
ハッカソンには、基本的に2種類あると思います。ひとつはアイデア優先で技術的にはさほどフォーカスしていないタイプ、もうひとつはアイデアも含めつつ開発の実現性も審査されるタイプです。今回は、後者の傾向を強く出されたハッカソンだったのかなと感じました。
重松
「アイデアをどう見るか」は、まさに我々も課題だと思っています。過去に実施したハッカソンでは、開発技術や法律面も含めた実現性について質問しすぎて、参加エンジニアの方の気分を害してしまったこともありました。でも、我々はクライアントとともに実装を目指しているので、挙げていただいた実現性は非常に重要なポイントだと考えています。
ただ、そちらに寄りすぎても、広告会社主催のハッカソンの意義が薄れてしまうので……。
飯泉
はい、発想力と実現性の点で、今回はすごくバランスよく展開されている印象を受けました。

重松
飯泉さんたちの企画は、アイデアがわかりやすく楽しさがイメージできたことに加え、実現のために2つの新しいテクノロジーが開発されていたことも高く評価されました。では、具体的な企画内容を教えてください。
飯泉
マップ上の位置情報をたどりながら、リアルな特典やNFTの“お宝アイテム”などを集めていきます。それらを使ってアプリ上で車をカスタマイズし、自分の車ならではの“ドライバーアイデンティティ”を構築していくことができます。
イメージとしては、それこそ家族4人でドライブしながら「お父さんちょっとそっちの道に行ってみてよ」と子どもがナビをして、横道に入っていくとお宝をゲットできると同時にきれいな景色も思いがけず楽しめる……といった使い方を考えていました。

新開発技術も盛り込んだ企画の今後

アイテムを集めることと、アプリ上で車をカスタマイズするという2段構成で企画された「MAZDA Driver Identity」。その実現のために、飯泉さんらは独自のNFT規格「ERC6551」と、アイテム取得のたびに署名をせずに済む「Session Key」という2つの技術を新たに開発していました。

重松
どのように考えを進めていったのですか?
飯泉
最初に、テーマに掲げられていた“Drive to Earn, Use for Fun”を、自分たちなりに捉え直しました。Earn=稼ぐというと、たとえば歩いてポイントなどを得られる仕組みがあったりしますが、楽しむより稼ぐことが目的になってしまうこともあるかなと僕らは思ったので、もう少し広く「何かを得られる、ゲットする」と解釈してみました。
その点でまず「Drive to Get」というコンセプトを立てて、NFTや特典を得るのにどんなふうに受け取ったら楽しいかを考えていきました。NFTは唯一無二性があるので、ゲットする価値を付加できると思ったんです。

飯泉
もうひとつのコンセプト「Build Identity」は、集めたものを使ってデジタルの車をカスタマイズできたら、自己表現にもなって楽しめそうだと思ったのが発端です。最近のゲームでは、自分が操作する主人公のコスチュームにお金をかけたりしてカスタマイズしている例が増えているなと感じていたので、そうした要素を盛り込みました。
重松
テクノロジーとして、①ERC6551MAZDA(以下、ERC6551M)と、②Session Keyという2つを開発されていますよね。これらが企画にどうかかわっているか、教えてもらえますか?
飯泉
まず①ERC6551Mについて、ERCとはイーサリアムのコミュニティに公開される共通規格で、6551は単純に「6551番目に提案された」という意味です。
中身はシンプルにいうと、NFTを個人IDにできる規格です。現状、ERC20というトークンを「MetaMask(メタマスク)」などのウォレットで管理できるのですが、これらはいずれもユーザーにひもづいています。6551はウォレットではなくNFTをIDにできるので、今回はユーザーではなく車単位で楽しめるように6551をベースにしました。
その上で、いろいろなNFTの状態によってブロックチェーンの状態を自由に変えられる「ダイナミックNFT」を標準搭載し、新たな規格「ERC6551M」を開発しました。
重松
どうして、車単位のIDがいいと思われたのでしょうか?
飯泉
人と車を考えたとき、車は車で売買されたり歴史やデータが残っていたりするので、車自体をIDとして捉えるほうが適切なのではないかと考えたんです。また、ダイナミックNFTによって、たとえばマツダユーザーのSNSコミュニティにカスタマイズした車を登録できる、といった展開も想定しました。

飯泉
もうひとつの②Session Keyは、メタマスクなどだとNFTのやり取りに都度の署名が必要なので、それを一定時間、不要にしたものです。ドライブ中の寄り道を楽しみながらNFTを集めるのに、いちいち署名の操作が要るとわずらわしいので、改善を考えました。
今、Googleなどは一度入れば一定時間のログイン状態を継続できますが、そうした仕組みがまだweb3には来ていないのです。でも、今後は広がっていくと思います。

重松
なるほど。今回は自動車メーカー向けの企画でしたが、どちらの技術も、他の業界や領域にも十分生かせそうです。
飯泉
はい、そんなイメージも持ちながらつくりました。特に6551にはいろいろなチェーンをまたいで連携できるため、使い道があると思います。また、6551は「NFTの下にウォレットを持つ」ことができて、これまでの「ウォレットの下にNFTを持つ」のと主従関係が逆になります。そこが大きな特徴になると思います。
重松
それはおもしろいですね。ショッピングセンターの買い回りにNFTの特典を付与する、みたいなこともできそうです。最後に、賞金をどう使われるか、プランがあればうかがえますか?
飯泉
イーサリアムの大会が年に何回か開催されていて、今年はシドニーとロンドンで行われるので、その旅費にしたいですね。世界のコミュニティの皆と最新情報を交換できるので、楽しみです。
重松
ぜひ、有意義な時間にしてもらえればと思います。今日はありがとうございました!
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  • 飯泉 一馬
    飯泉 一馬
    シンシズモ株式会社 取締役

  • 博報堂キースリー CEO / 代表取締役