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AIが「勝つ広告文」づくりを支援する!──クリエイターの発想力をブーストする「H-AI SEARCH」
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AIが「勝つ広告文」づくりを支援する!──クリエイターの発想力をブーストする「H-AI SEARCH」

広告・マーケティング活動におけるAIの活用が進んでいます。重要なのは、「AIによってどのような価値を生み出していくか」という視点です。2019年に資本業務提携をした博報堂DYグループのアイレップとテックスタートアップのnegociaは、検索連動型広告の広告文を自動生成し、その効果を予測するAIソリューションを開発しました。そのソリューション「H-AI SEARCH」の機能と、そこから生まれる新しい価値について、negocia代表でアイレップの取締役CTOも務める柴山大と、アイレップ側のプロダクト企画マネージャーである池本敦美に話を聞きました。

柴山 大
negocia 代表取締役
アイレップ 取締役CTO

池本 敦美
アイレップ テクノロジービジネスUnit

「テクノロジー×広告運用力」によって新しい価値を生み出す

──アイレップとnegociaは2019年9月に資本業務提携をしました。あらためて、negociaとはどのような会社かご説明いただけますか。

柴山
企業のマーケティングの課題を、AIを中心としたテクノロジーで解決することを目指して2017年3月に創設した会社です。ECサイトの広告運用最適化ソリューション「Commerce Flow」をはじめ、これまでさまざまなソリューション開発を手掛けてきました。学会に論文を発表するなどの研究フェーズと、その成果をプロダクト化して事業にしていくフェーズ。その二つを同時並行で進められる点にnegociaの一つの強みがあります。

一方課題は、広告ビジネス領域の知見やノウハウでした。その領域におけるソリューション開発を推し進めていくには、広告運用やマーケティングに、より精通する必要がありました。その領域の優れた知見やトップクラスのノウハウをもっていたのがアイレップでした。

池本
一方のアイレップは、デジタル広告を手がける会社として、以前からテクノロジー開発に取り組んできましたが、AIなどの最先端のテクノロジーに関しての研究は進めるものの、自社でプロダクトを開発するところまでは至っていない状況でした。そこで、先端のテクノロジーに強いnegociaと提携することでシナジーが図れると考えました。

──テクノロジーと広告運用のノウハウを掛け合わせることで、新しい価値を生み出そうとしたわけですね。

柴山
そのとおりです。生活者が使えるデジタルサービスはどんどん増えていて、それにともなって生活者の嗜好や行動も細分化しています。YouTubeを見ている人、Facebookを見ている人、TikTokを見ている人がそれぞれに異なった価値を求めるようになっている中で、いかに広告を適切に届けていくか。それがクライアント企業や広告会社にとっての課題になっています。

おのおのの生活者が求める広告を届けようとすると、オペレーションが非常に煩雑になり、用意しなければならないクリエイティブも大量になります。きめ細やかな広告配信を実現しようとすれば、テクノロジーを活用するほかありません。テクノロジーを上手に使えば、一人ひとりの生活者が望む広告を配信し、望まれない広告配信を防ぐことが可能になります。そこに、テクノロジーと広告運用のノウハウを掛け合わせる意味があります。

──提携からのおよそ2年半の成果をお聞かせください。

池本
デジタルメディアを専門とするアイレップ側のチームと、エンジニアリングを専門とするnegocia側のチームが活発な対話をすることによって、メディアのナレッジをいかしたソリューション開発ができるようになってきたことが一つの大きな成果です。
柴山
アイレップの運用型広告の知見やノウハウを開発に取り込むことによって、これまでにないAIソリューションを生み出すことができました。その一つが、広告テキスト自動生成AI「H-AI SEARCH」です。ほかにも、プラットフォームに出稿する広告予算を最適化する「Advertising Flow」、マス広告の効果をデジタルで計測する「x2(ダブルスコア)」などのソリューションをこれまでリリースしてきました。negociaの「Commerce Flow」の機能も拡張を続けています。現在もさまざまなソリューションを開発中です。

AIの巨大な「脳」がコピーライティングをサポートする

──「H-AI SEARCH」とはどのようなソリューションなのですか。

柴山
検索連動型広告の広告文を自動生成し、さらに広告配信効果を予測するソリューションです。これまでアイレップが手掛けてきた広告文に加え、世の中にある広告文を何千万というボリュームでAIに学習させ、それに広告の対象となる商品の情報を組み合わせることによって、限られた文字数の中でより効果が高いと考えられる広告文をAIが提案してくれます。

──コピーライターに代わって、AIがコピーをつくるということでしょうか。

柴山
必ずしもそうではありません。AIは過去の膨大なデータを学習しているので、わずか数秒で10から20くらいの優れたコピー文案をつくることが可能です。しかし、それをそのまま配信するわけではありません。プロのコピーライターがその文案をたたき台として、人間の感性を加えながら、最終的なコピーに仕上げていきます。つまり、AIの巨大な「脳」からアイデアやボキャブラリーを借りてくることによって、人間のインスピレーションを高めるツールということです。

──なるほど。コピー案の量を増やすというよりも、むしろ質を高めるソリューションということですね。

柴山
検索連動型広告では、一つの商品に対して何百というパターンの広告文が必要になる。数多くのたたき台を数秒でつくることができるという点で、量の点でも効果を発揮すると言えますね。
池本
広告は「生活者に響く」ことが大原則ですが、デジタル広告の場合は、媒体のアルゴリズムに評価される必要もあります。媒体から評価されることでより成果につながる広告文をつくるという点でも、AIの機能が発揮されます。

広告効果を予測し、広告の「勝率」を上げていく

──もう1つの「広告配信効果予測」機能についてもご説明ください。

柴山
ある広告を配信することによって、どれだけのインプレッション、クリック数、コンバージョンなどを獲得できるかを、過去のデータから予測する機能です。例えば現在配信している広告文のAIによるスコアが6点、新しくつくった広告文が8点だとすると、新しい広告文を配信した方が効果を得られる可能性が高まります。一方、新しい広告文のスコアが現状の広告文のスコアより低ければ、配信する意味はありません。つまり、広告の「無駄撃ち」を防ぐことができるわけです。
池本
それを一定期間繰り返すことによって、広告文の精度をどんどん高めていくことができます。PDCAサイクルを何回も回して、より勝率の高い「勝ち組」を残していくわけです。PDCAを何度も回せるのは、AIがスピーディに数多くの文案をつくってくれるからです。

従来の検索広告運用は、キーワード選びと入札のオペレーションが非常に重要な作業で、そこでプロの力量が発揮されていたのですが、最近は媒体側のAIによって、そのプロセスの多くの部分が自動化されています。つまり、オペレーションのクオリティでの差別化が難しくなっているということです。

そうなると、クリエイティブがますます重要になってきます。「H-AI SEARCH」を活用すると、毎回の広告文の「勝率」が向上するので、より成果を出しやすくなります。つまり、クリエイティブでの差別化ができるようになるわけです。

柴山
デジタル広告は販促ツールであると同時にブランディングツールでもあります。ですから、クライアントと広告のプロである私たちが、広告のブランド価値をチェックする必要があるのですが、チェックを経た結果、その広告がいいとも悪いとも言えないというケースがありえます。そういう場合に、AIによってその広告がいいのか悪いのか、つまり成果に結びつく可能性が高いかどうかを判断することができる。それも「H-AI SEARCH」の活用法の一つです。

──「H-AI SEARCH」は、博報堂DYグループの研究開発組織「Creative technology lab beat」の第一弾プロダクトでもありますね。

柴山
そうです。「Creative technology lab beat」は、AIをはじめとするテクノロジーの活用をクリエイティブ領域において推進するグループ横断型の組織です。僕たちは、アイレップとnegociaのタッグによって生まれるソリューションをグループ全体の資産として使ってもらいたいと考えています。実用例もすでにいくつか出てきています。グループの力によってソリューションの価値は何倍にもなる。そう考えています。

──「H-AI SEARCH」リリース後の成果についてお聞かせください。

池本
例えば、美容業界のクライアントの例で、CTRで8%、CPAで10%改善したケースがあります。思ったよりも早く成果が出ているというのが私たちの実感です。

──クリエイターの反応はいかがですか。

池本
作業がものすごく楽になったという声が多いですね。以前は1時間くらいかかっていた作業が5分で終了するようなケースもあるようです。質の面でも、これまでになかったコピーを生み出せる可能性があるという声も届いています。

より精度の高いクリエイティブ支援AIを

──資本業務提携から2年半ほどの間にどのような可能性が見えてきましたか。

池本
提携前には、正直、自分たちはテック先進企業には追いつけないのではないかというあきらめに似た気持ちがありました。しかし今は、そのような企業に追いつき追い越していけるポテンシャルを得たという確かな手応えがあります。
柴山
アイレップは、以前は購買などのアクションに近い、いわゆるロウワーファネルでのビジネスを主に手掛けていました。しかし、この数年で、認知や興味関心を醸成するミドルファネル、アッパーファネルの領域にも進出しています。それによって、扱うクリエイティブの種類や量も格段に増えてきました。今後は、検索連動型の広告文だけでなく、ブランディング広告などでもAIを使ったクリエイティブ支援が実現していくと思います。

──博報堂DYグループのさまざまなセクションが手掛けるクリエイティブやその成果をデータとしてインプットしていけば、AIの精度はより高まっていきそうですね。

柴山
まさにそれがこの先の可能性だと思います。AIの精度は、データの量と質によって決まります。グループの力によって、ほかにない高精度なクリエイティブ支援AIをつくっていきたいですね。

──今後に向けた意気込みを最後にお聞かせください。

池本
広告運用の自動化や、個人情報保護の観点からのデータ使用制限などによって、デジタル広告会社がなかなか力を発揮しにくい状況になってきています。ここからさらにビジネスを成長させていくために必要なのがテクノロジーの力です。新しいテクノロジーによってビジネス環境の変化に対応し、これまでになかった価値を生み出していきたいと考えています。

柴山
広告ビジネスにおいて最も重要な価値の一つが、優れたクリエイティブです。テクノロジーによってクリエイターのアウトプットの質を高め、クライアントから生活者に届くクリエイティブをよりいっそう優れたものにしていくこと。それが僕たちの重要なミッションです。博報堂DYグループにおけるテック部門として、そのミッションに全力で取り組んでいきたいと思います。
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  • negocia 代表取締役社長
    アイレップ 取締役CTO
    通信企業やWebメディア企業にて商品企画開発を経験したのち、2017年negocia株式会社を設立、代表取締役としてマーケティング系のSaaS商品を提供。2019年、negociaのアイレップへのM&Aに伴い、アイレップのテクノロジー領域全般を管掌。2022年よりアイレップ取締役CTO。
  • アイレップ テクノロジービジネスUnit
    広告運用プロダクト企画Division Divisionマネージャー
    2013年にアイレップ入社。運用型広告のコンサルタントとして自動車・旅行・金融などのクライアント企業を担当。媒体R&D部署にて媒体毎の最適な運用を研究する傍ら、広告運用のシステム基盤を整備し運用の標準化・高度化を担う。現在は広告運用やシステム基盤にとどまらないメディア×AI活用・DX推進のプロダクト企画業務に従事。