AaaSを支えるデータ基盤 ~データ統合によるメディアビジネス基盤の革新~
博報堂DYグループが推進する広告メディアビジネスのDX化「AaaS」について分かりやすく紹介する本連載。第6回目では、AaaSを支える独自データ基盤の構築による多種多様なデータの統合管理と、それがもたらすマーケティングの進化についてです。構築に至った背景や実現したこと、開発におけるポイントなどについて、データ基盤の開発を行っている博報堂DYメディアパートナーズメディアビジネス基盤開発局の森下裕介と歌原理美に語ってもらいました。
■独自データ基盤開発が実現した「データの民主化」
―改めて、データ基盤について教えてください
- 森下
- 僕らはAaaSの根幹であるデータ基盤の開発チームとして、歌原さんはデータ基盤の開発を、僕はデータ基盤を利用した各種ソリューションの開発を担当しています。
近年、特にテレビとデジタルを統合的に同じ粒度で可視化するニーズが問われ続けていたところ、今回開発したAaaSのデータ基盤がそうしたニーズに応えることのできる環境となっています。一元的に管理する環境が整い、“テレデジ”という言葉が実体として動き出していると感じていますね。
- 歌原
- 開発の狙いとしては、不確実な時代においても、データドリブンで適切なマーケティングサービスを通して、広告主に提供できる価値を増幅させることにあります。そのためには、データを迅速かつ柔軟に活用できる「基盤」が必要と考えました。これまではどうだったかというと、シミュレーターツール単位でデータの活用が最適化されてしまう、各所にデータが散らばっていて限定的な使い方しかできない、専門のプラナーがいないと高度な分析ができない、などさまざまな制約があったんです。
社内の誰もが自由自在に利用できるデータ基盤というインフラが整ったことで、メディアビジネスの様々なフェーズにおける「データの民主化」を実現できたと思います。
- 森下
- そうですね。また、圧倒的なスピードの向上も特筆すべきことです。例えばテレビ出稿のモニタリングの場合、これまでは一般的に出稿した視聴率データを見るのに1か月は必要だったところ、最速で翌日というスピード感で広告主と一緒にダッシュボード上で見ることが可能になりました。このデータ基盤が一気通貫してプラニング、バイイング、モニタリングのベースとなっているので、広告主と共にスピード感をもってPDCAを回し、次のアクションへ進んでいくことができます。
加えて、これまでのようなエクセルやパワポなどにデータを集計する作業時間も不要になる、という意味でもスピードアップになります。これは同時に、その分のリソースをもっとクリエイティブなことを思考したり、新しい課題解決にあてられるということですから、プラニングや提案の質の向上にもつながります。
- 歌原
- 実際に広告主からも、データがスピーディーに可視化されたことで検討や意思疎通にかかる時間が短縮され、決断スピードが上がったという声も届いています。広告主ごとの出稿データも累積されていくので、広告主としても過去のメディア実績などから自社によりフィットした、精緻なプラニングやバイイングを検討することができます。AaaSのデータ基盤によって、広告主にとっても社内にとっても、メディアビジネスがよりよい方向へシフトしていっていると思います。
―開発チームとして感じている変化はありますか?
- 森下
- 僕自身は広告主に利用してもらうソリューション開発に携わることも多いのですが、広告主が今どういうことを求めているかをうかがいながら、「それは基盤におけるこのデータとこのデータを掛け合わせればできる」「こういう見せ方もできる」といった、ニーズに基づく開発ができていることにやりがいを感じています。データ基盤がこうして整備されている恩恵を最も享受しているのは、僕かもしれません(笑)。これも使えるし、あれにも応用できるし…といった感じで、データ基盤の完成度の高さに日々感銘を受けています。
- 歌原
- データ基盤の存在によって、アイデアから実現までの開発もスピードアップしていますよね。一つの案件で得られた知見を他の案件に応用するなど、データを活用するアイデアの幅も広がり、かつ持続的にアップデートされるようになりました。
- 森下
- 体制として支えているのが、現場を巻き込んでのアジャイル開発です。DX(デジタルトランスフォーメーション)とアジャイル開発は親和性が高いといいますが、広告メディアビジネスのDXであるAaaSも例外ではありません。
データ基盤は、現場と密にコミュニケーションをとって構築してきたので、新しいソリューション開発や既存のソリューションにデータを追加する場合においても、使えるデータはすでに基盤の中に揃っていて、しかもアジャイルで開発できる。結果として、ソリューション開発のスピードはかなり上がっていますね。現場のニーズに合わせて、開発の進捗もこまめに調整しています。
- 歌原
- 森下さんのおっしゃった、現場と連携した開発体制であることは日常的に感じています。大きな企業では組織がサイロ化し、開発と現場が乖離してしまうことで開発のポイントがズレるといったことが珍しくないといいます。AaaSの開発チームでは、現場の声をいち早くキャッチアップし、それを反映したものをスピーディーに実装する。軌道修正することもよくあります。
私自身も、開発するうえで技術が先行せずに、人が扱いやすく役に立つものをつくりたいと思っています。ユーザーの声を受け止め、課題設定したうえでシステムをデザインして現場に提供できることにやりがいを感じますし、現場と共創しながらデータ基盤をアップデートしていきたいと考えています。
- 森下
- さらに言うと、広告主との1対1の向き合いというよりも、すべての広告主を俯瞰的にとらえているからこそ「汎用性のある、全体に最適なものはどういったものか?」を考えることができた。これは博報堂DYメディアパートナーズだからこそ実現できたことだろうとも思っています。
■基盤構築によって生まれた新しいデータドリブンマーケティングの可能性
―どのようなデータをそろえているのでしょうか?
- 歌原
- メディア出稿情報、クリエイティブ、広告の計測データ、マーケティングデータのほか、弊社独自の生活者データやオープンデータなど多岐に渡ります。マーケティングや広告まわりを中心に幅広いデータが格納されているとイメージしていただければと思います。
- 森下
- 既にそろっているデータはもちろん、広告主が見たい情報も入れて同時にモニタリングしていくといったソリューション開発に活用するケースもありますね。広告主と営業が同じ目線で、同じ粒度でデータを見ることで、これまでは見えてこなかった事実も見えるようになっており、好評をいただいています。その先に、自社にしかないデータと広告主しか持っていないデータを掛け合わせることで、新たな技術開発が可能になることは、広告主にとっても大きな意味があると思います。
―AaaSならではのデータ基盤の強みはありますか?
- 森下
- これだけまとまったデータを保有しているということは、間違いなく業界随一だと自負しています。壁がない状態でデータを扱うことができ、広告主に最適なソリューション開発を進めることができています。また、ソリューション間の親和性が高いことも強みだと思います。ベースとなるデータが統一化され、ソリューション間で機能の転用や移植を考えるスピードが格段に早くなり、柔軟な開発が可能になりました。
- 歌原
- 基盤の開発をきっかけに新しい視点が導き出されることで、これまでであれば見落としていたような革新的なアイデアに繋がることもあるかもしれません。
AaaSのデータ基盤は、総合広告会社ならではのあらゆる業界・規模・マーケティングフェーズに応じたメディア出稿経験に基づいたナレッジがあってこそ、効果的な活用ができるのだと考えています。これは開発の力だけでは到底実現できないことで、現場で日々広告主と一緒に働くエキスパートたちがいるからこそ提供できるサービスでもある。開発を内製しているので、思う存分そのナレッジを活かして開発できていると思います。
最近では開発チームではないプラナーも、既存のソリューションに対して「もう少しここをこうしたら、こんなデータ分析ができるようになるんじゃないか?」という仮説をもとに、プロトタイプ的な開発プロジェクトも動いたりしています。
- 森下
- 統合データ基盤というインフラと、総合広告会社ならではの知見を掛け合わせたデータ活用を実践し、プラニングからバイイング、モニタリングまで全体的な底上げがなされる。これはAaaSの大きな競合優位性にあたると思います。
■広告主からメディアまでをシームレスにつなぐメディアビジネス基盤へ
―今後の展望を教えていただけますか?
- 歌原
- 今後は、あらゆるメディアソリューション開発のベースにこのデータ基盤が活用されていくのはもちろん、データ基盤自体のアップデートも計画しています。広告主とのつながりの一方で、媒体社ともシームレスにつながるデータ基盤を構築し、メディア効果を最大化するソリューションを開発・提供していけたらいいですよね。メディア出稿におけるスピード感も変わってくるのではないかと思います。
- 森下
- そうですね。データ基盤を活用しているソリューションが続々と開発され、既存データに加えて新しいデータの拡充も期待できます。多様なデータと整形手法、推定ロジックが整備されることで、時代のスピードに合わせた開発とソリューション提供ができるようになると思います。そこから新しいアイデアを生み出し、メディアビジネス自体を進化させていきたいです。
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データテクノロジー&システム開発部
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