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効果が出るMAツールの使い方 MAのカスタマージャーニー作りは“コンテンツ主軸”×”アジャイル型”で
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効果が出るMAツールの使い方 MAのカスタマージャーニー作りは“コンテンツ主軸”×”アジャイル型”で

マーケティングオートメーション(以下MA)ツール※はここ1~2年で急速に導入が進んでいます。博報堂プロダクツはツールの選定から導入の支援、マーケティング施策の立案や実行、ツールの運用など、MAツールに関わる全行程で支援サービスを提供しています。本記事ではMAツールを導入する際に問題になりやすいところや押さえておくべきポイントについて、博報堂プロダクツの岩谷隆至に聞きました。
※MAツール:前回の記事をご参照ください。

―自己紹介をお願いします。

 博報堂プロダクツの岩谷です。新卒で入社して9年目になります。大学は理系で、ロボットの研究をしており、エンジニアリングを学びました。博報堂プロダクツにはエンジニア採用で入り、まずSFA(営業支援)ツールのカスタマイズや導入支援などを担当しました。その後の異動で企画やWeb製作、デザイン、システム導入、全体戦略立案、分析、個人情報運用など様々な業務を経験し、今はデジタルマーケティングを担当しています。分析/戦略、システム、Web、デザイン、マーケを一気通貫して対応できるのが自分の強みかなと思っています。

―MAツールを企業が導入する場合に、課題になりやすいことを教えてください。

 一般的にMAツールやCRMツールをご導入いただく場合、企業に解決したい課題があり、それに対して我々が「ツールを使ってこういったやり方をすれば解決出来ますよ」とご提案し、まずツールを選定後、具体的にどういった施策をするか、ペルソナやカスタマージャーニーと合わせて作成していく、という話を詰めていくことになります。
 特に大企業に多いのが、最初にカスタマージャーニーやペルソナを作りこむことを重視するあまり、MAツール運用開始前にかなり精緻で論理的な分析に相当労力をかける傾向にあります。ただこのやり方だと、運用開始までにかなりの時間とコストがかかります。さらに、実際にMAツールの運用を開始すると、思い描いていたペルソナやカスタマージャーニーと異なる部分が数多く出てくるので、修正を迫られることがあります。近年はコロナ禍などによる予測不可能な外部的要因に加え、複合的なデジタル上における情報接点が当たり前な世の中であり、デジタル接点や活用方法も日々進化し多様化しております。結果「企業側では把握できない」想定外の行動をとる顧客が増えており、こうした従来のプロセスが上手く回らない事案が多いのが現場にいて感じております。

―施策の前に十分な分析を行うのは、従来からのマーケティングでそういった手順を踏むべきとされているからですか。

 そうです。博報堂グループもマーケティング戦略を長く手掛けており、カスタマージャーニーを作る上で現状の理解、市場の分析、生活者データの活用といったことをやって来ましたし、以前であればそれが十分に通用していました。しかし、近年はデジタル活用方法の変化が進み、特に若い世代にはこういったやり方が通用しなくなって来ました。
 情報の探し方や接点が全く変わり、ネットやSNSの口コミを重視する人が増えています。ネットの使い方も世代によってどんどん変化しています。

―世代によるネットの使い方の違い、とはどういったものがあるのでしょうか。

わかりやすい例えでいうと、若い世代の方にはブラウザを「検索するもの」から読みたいものをタブで表示して「情報を保存するもの」と使用している人が増えています。読んでおきたいものをタブに開いておくため、常に沢山のタブを開いた状態でネットを使います。それら顧客行動の変化により、これまでWeb解析ツール(アナリティクス)では、一つのページを開いていた時間によってそのページへの興味を測る「滞在時間」という指標が重視されてきたのですが、これが意味をなさなくなってきています。
 こういったことがさまざまな場面であり、企業側が顧客の行動を予想、把握出来ないケースが増えているのが現状です。そのため、長い時間をかけて事前に精緻なカスタマージャーニーを作ること自体が無駄になることも多くなっています。

―では、カスタマージャーニーはもう作らなくていいのでしょうか。

 カスタマージャーニーを作らなくて良いわけではありません。ここ最近は生活者の行動を捕捉するのが難しくなっているので、MAツール運用開始前の段階であまり時間をかけないようにするのが重要だと考えています。MAツールの良い点は施策に対して顧客がどう反応したか顧客の行動情報が得られます。まずツールを使ってなんらかの施策を実行し、そこで得たデータから改善点を探し、また別の施策を実行する、といった流れを早く繰り返し行うことでそのプロジェクトで最適なカスタマージャーニーを作成し精緻化していきます。
これを「アジャイル型カスタマージャーニー」と呼んでおります。
 更に重要なのが、これまでのカスタマージャーニーは顧客のペルソナという“人主軸”で様々な外部データ/顧客データを参考に考えて作るものでした。これを行う施策、つまり“コンテンツ主軸”に変えて作る必要があるということです。コンテンツとは、例えばある商品キャンペーンで、現金やクーポンなどのインセンティブを配るといったことを指しています。コンテンツに対する顧客の行動であれば、得られるデータからその意図を推測したり、今後の動きを予想することが出来ます。
 コンテンツの例としてインセンティブを挙げましたが、これは所謂“ばらまき”になってはいけません。博報堂グループではマーケティング施策を実行する際、ばらまきではなく顧客体験を軸に考えたコンテンツ作りを常に考えています。「マーケティングの基本はお客様をファンにすること」とよく言われますが、MAツールで実行する施策、コンテンツもお客様にファンになっていただくことを考えて作るべきです。

最初の顧客接点が最重要

―MAのカスタマージャーニー作りにおいて一番大事なのはどういったことでしょうか。

 一番大事なのは最初の顧客接点です。ここで言う最初、とは企業側からアプローチする最初の機会、という意味です。顧客は、最初の接点が自分に刺さるものでないとそれ以降興味を失ってしまいます。一方で、「これはあなただけの特別なクーポンですよ」と言ったことを伝え、そのセグメント分けやアプローチ方法、タイミングに顧客が妥当性を感じれば、積極的に利用します。一度アプローチに成功すれば、後はデータを見ながら施策の効果を検証し、いろいろ試していけばいいのです。

―顧客は、どういった場合にインセンティブへの妥当性を感じるのでしょうか。

 例えば、自動車の購入を検討してサイトに来訪し、個別の車種を見て、来店予約の前段階まで来たところで予約せずにサイトを離れてしまった人がいるとします。そういった人がもう一度サイトに来訪した際、「今来店予約をすると特別な特典があります」といったメッセージを出す、といったアプローチが考えられます。この際、「前回予約をせずにサイトを離脱した人限定のクーポンです」といった直接的なメッセージを出す訳ではありませんが、本人は何故自分にそういったメッセージが出るかある程度理解出来るはずです。

―クーポンなどのインセンティブを出す以外にはどのようなアプローチがあるのでしょうか。

 BtoC企業の場合、自社サイトに記事系コンテンツを大量にストックしている企業はとても多いです。そういった記事は埋もれてしがちなのですが、タイミングよく引き合わすことができれば顧客にとって非常に有益なコンテンツになり得ます。
 MAツール上で顧客が過去にどのような行動をしたかを調べ、その日の天気の状況などを踏まえてコンテンツを出し分けます。例えばバイクメーカーのサイトで、訪れた顧客がツーリングに興味があることが分かっており、その日が雨であれば、「雨の日のツーリングに関する記事を紹介する」といった具合です。
 このようにインセンティブ以外にも様々なアプローチが考えられます。ただ、最も重要なのは一番強いコンテンツを一番最初に提供することであり、そこに最適なのはインセンティブであるケースがほとんどですね。まずは顧客に興味を持ってもらい、その興味をより膨らませてもらう“育成”の段階で、インセンティブ以外のコンテンツを使います。

PDCAのCを最重要視し、サイクルを高速で回す

―施策の効果を検証してやり方を修正していく際、どういった手順を取るのでしょうか。

 MAツールには顧客情報がたまっていくので、施策を実行した際に期待した通りに顧客が動いたかを確認します。期待通りであればそのまま続けますし、期待から外れたら新たな施策を考えて実施します。高速でPDCAを回し、特にPDCAのCに最も力を入れます。
 こうした流れを実際にクライアントにお見せして、その効果を実感していただくと、一気に信頼していただけることが多いですね。クライアントも積極的になり、施策についての議論も活発になります。継続的に施策を打つ時期、あるいは施策を打たない時期にもお客様に興味を持ち続けていただくためには、クライアントの協力が不可欠です。ですので、素早くMAツールや施策の効果を示すことには大きな意味があります。
 従来のPDCAのPに時間をかけるやり方は、クライアント側が最初の段階から参加しやすく、「その分析は違う、うちのお客様はこういう人が多いから」といった形でアドバイスいただけるケースが多いです。より精緻な顧客像が描ける反面多くの時間がかかり、施策実施が遅れてしまい何より時間をかけて精緻な顧客像を描いても全く違う行動を起こしてしまう欠点があるのです。コンテンツ主軸のやり方は、コンテンツを活用して顧客を誘導していくのでジャーニーを描く時間や施策実施まで従来より早く描くことができ、MAに蓄積された顧客データを用いてコンテンツ施策の精度を確認でき、アジャイル型に施策⇒確認⇒施策の精緻化ができるところが大きな特徴ですね。

―MAツール導入における博報堂グループの強みはどういったところにありますか。

 ツールの導入支援だけでなく、マーケティング全体の設計や運用、分析まで一気通貫でできる点ですね。博報堂プロダクツは個人情報の取扱い(プライバシーマーク)許可も持っているので、そういった部分は他社にあまりない強みだと思います。我々はツールの導入段階から導入後の実際の運用まで、全てのプロセスで支援いたします。MAツールに関して不安があれば、ぜひご相談いただければと思います。
 

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  • 博報堂プロダクツ データビジネスデザイン事業本部
    CRMデザイン部 第三コンサルティングチーム 
    チームリーダー/データマーケティングディレクター
    博報堂プロダクツにエンジニアとして新卒入社し、大小様々な企業の、MA・CRM構築からWebデータを用いたWeb戦略構築・Web制作・システム構築と、デジタルマーケティングの上流から下流まで一気通貫して従事。現在は、大企業から中小企業まで幅広い企業のデジタルマーケティングのコンサルティングを担当