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ヒット習慣予報 vol.130 『遊び心ディスタンス』
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ヒット習慣予報 vol.130 『遊び心ディスタンス』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの村山です。

 なかなか梅雨が明けず、すっきりしない日が続いておりますが皆さんいかがおすごしでしょうか。早く夏の青空がみられるといいですね。僕はというと、すっかり働き方が変わり在宅での仕事がすっかり定着し、1日中家から出ない日が続くことも珍しくなくなりました。

 週末に外出した際に街中を観察していても、3密を避けソーシャルディスタンスを保つことも、意識せずにできる新習慣として定着してきているように思います。Googleトレンドで「ディスタンス」というワードを検索してみても、コロナ禍に突入した3月以降爆発的に増加し、その後やや落ち着きを見せ始めていることがわかります。

「ディスタンス」の検索数推移

 出典)Googleトレンド

 そんな人と人の間に距離やマスク・パーテーションなどの「ディスタンス」が存在することが当たり前になった今日この頃だからこそ、ただ無理やり距離をとる生活ではなく、ポジティブに距離に向き合いはじめる新習慣の兆しが今回のテーマ「遊び心ディスタンス」です。

 例えば、日常的に利用するカフェで隣の席や前の席に人が座らないようにマネキンを設置して話題になっている店がありました。しかもそのマネキンはセレクトショップで買える服でオシャレにコーディネートされていて、気に入ればその場でQRコードを読み取って購入できる仕組みになっていました。ただ距離をとることを目的にイスを間引いたり、印をつけているだけよりも、マネキンとはいえ賑わいを感じることができますし、服を購入できる遊び心のある体験が付加されていて、とてもいい取り組みだと思いました。

 他にもフランスの飲食店では来店客一人ひとりを囲うように円錐形のアクリルパーテーションを導入している店が増えてきているようです。まるでSFの世界のレストランのようなオシャレで洗練されたデザインになっており、感染症予防のためのパーテーションというよりもインテリアデザインそのもののようにも見える仕上がりになっていました。マスクをはずして思い切り会話を楽しめる機能が、ワクワクするような空間としても成立していて、まさに新しい日常らしい空間だなと思いました。

 遊び心のあるパーテーションという意味で、先述したようなオシャレな形状だけでなく、パーテーションそのものに絵を描きもっと多様で個性的な空間に仕上げている事例もありました。レジカウンターの間にかけられている飛沫防止シートにアーティストがお店の雰囲気にあった絵を描くことで対策している飲食店です。素敵な絵によって空間そのものが彩られることで、描かれる以前よりも素敵な空間に仕上がっているのが印象的でした。地方では地元の工芸品の装飾を手がける職人さんたちがパーテーションに絵を描く取り組みも始まっているようです。地域らしいデザインと観光客が出会う新しいインターフェースとしてパーテーションが機能しており、感染防止という価値を遊び心でアップデートする良い事例として印象深かったです。

 もっとも卑近な人と人の距離を保つための日用品であるマスクの需要にも変化が見られるようです。いままでマスクを製造していなかったメーカー各社が独自の高性能なマスクを発売し話題になりましたが、最近ではそのような機能性だけでなく遊び心のあるデザインを施したマスクも人気のようです。大手百貨店がファッションブランドとコラボしたデザインマスクを発売したところ即日完売するほどの人気ぶりで、有名ファッションブランドもTシャツとマスクのセット販売を行うなど、機能を超えてファッションの一部としてマスクが定着しはじめる兆しが見え始めています。あるファッションブランドでは家で眠っている政府支給の未使用マスクを店に持ち込むと無料でかわいい刺繍を施してくれるという、まさに遊び心のある取り組みも実施されていたようです。

 ここまでいくつか事例をご紹介してきましたが、コロナ禍の収束がまだまだ見えない中で「遊び心ディスタンス」の兆しはこれからも広がっていくのではないかと思います。もはや短期的ではなく、中長期的な制限を強いられる生活の反動に応えるために、制限のための機能を超えて、感性に訴える新しい価値に転換する“遊び心”が様々な場面で必要になっていくと考えられるからです。

最後に、「遊び心ディスタンス」のビジネスチャンスについて、少し考えてみたいと思います。

「遊び心ディスタンス」のビジネスチャンス例
■ 人気店のパーテーションを新しいアーティストのためのギャラリーとして開放
■ 柔軟剤の香りのお試しタッチポイントとしてマスクを活用
■ ソーシャルディスタンスのためのカフェや飲食店の空いた空間を、企業の新商品サンプリングの場として活用
など。

様々な制限とともに生活していかなければいけない今日この頃ですが、そんな制限を遊び心でポジティブに楽しむ生活に僕もチャレンジしてみたいと思います。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • 博報堂 PR局
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    PR戦略局から、19年に統合プラニング局に異動、21年にふたたびPR局に異動。車からお菓子に至るまで様々なクライアントの情報戦略、企画立案に携わる。毎日きまった街のきまった飲み屋に入り浸っていた生活を経て、知らない街の知らない店に飲みに行きたいなとリサーチ活動を実施中。