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「広告とCRMの融合」を実現する体制構築とTealium活用手法 ~Team AIM2年間の実績より~
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「広告とCRMの融合」を実現する体制構築とTealium活用手法 ~Team AIM2年間の実績より~

顧客データ戦略やデジタルトランスフォーメーションがテーマの、TEALIUM年次カンファレンス DIGITAL VELOCITY TOKYOが開催され、博報堂デジタルビジネス推進局長代理天石直と、同局ビジネスプロデューサー金子明彦が登壇。Tealium社と博報堂DYグループ各社、TIS社で結成されたプロジェクトチーム「Team AIM」におけるTealiumの導入・運用、体制構築と業務推進の実践について語りました。

■今求められる、「寄せ鍋チーム」的連携の在り方

天石
日本のデジタルマーケティング業界の最大の課題は、「ツール/システムを入れて終わり」ということだと思っています。残念ながらそのような状況が非常に多くなっています。結果、現在の企業のオウンドサイトはツールであふれています。なぜ、そのような問題が起きるのか。広告主サイド、我々受注サイド、それぞれに問題があると思いますが、最大の要因は、現在のデジタルマーケティングのトレンドそのものにあります。

数年前までのデジタルマーケティングは、個別領域の極限までの最適化・効率化がトレンドでした。すなわち、ペイドメディアではブランディングと獲得効率、純広告とDSPの組み合わせ、オウンドメディアではLPOとUI/UX、CRMではLINEの個別配信、会員ページ拡充、メールマーケティングなどを、個別領域ごとにそれぞれ極限まで最適化していくことでした。
しかし、現在は、ペイドメディア、オウンドメディア、CRMの間の壁を取り払い、アドテクを用いて広告とCRMを融合させることが大きなトレンドになりつつあります。

それにより実現できる世界は、たとえばこんな世界です。CRMとして「LINEでリアル店舗来店を捕捉する」「捕捉した来店情報をセールスフォースに反映する」。オウンドメディアで、「次回、オウンドメディアに訪問した際に適切なコンテンツを掲出する」。そして、ペイドメディアで「しばらくリアル店舗に来店がない顧客にはバナー広告を出す」あるいは、「来店頻度が高い顧客と類似した顧客にもバナー広告を出す」。このようにCRMとオウンドメディア、ペイドメディアを組み合わせながら、適切なコミュニケーションをしていくことを、皆さんがしようとしています。

ペイドメディア、オウンドメディア、CRMの各領域がそれぞれ十分に高度化し、それぞれをつなぐ、たとえばティーリアムのようなアドテクツールもできましたので、理論上は実現可能になったために、各社が「理想の世界」を目指しているのが、2019年現在のマーケティング業界だと思っています。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。「広告とCRMの融合」はシステム上、理論上は実現可能ですが、体制上実現不可能になっている事例が非常に多くなっています。そこには2つの問題があります。

1つ目は導入体制の問題です。よく言われることですが、広告主がサイロ化しています。CMOが全体統括をされますが、基本的にはペイドメディア、オウンドメディア、CRM、ツール/システムを別々の部署が対応されています。受注サイドもほぼ同様で、それぞれの領域を別々の企業が対応しています。そして、広告主サイド、受注サイド、それぞれがバラバラに連携し合い、指示し合うために、いつまでたっても進みません。このプロセス自身が多大な疲弊を生み、ツールを入れ終えたところでちょうど力尽きる、という事例が非常に多いのです。

力尽きずに運用段階に進んだとしても、運用時にも同じく「サイロ化の壁」が立ちはだかります。これが2つ目の問題です。「マーケティングがデジタル化する」ということは、アジャイル型、オールウエイズオンのマーケティングが可能になるので、高速PDCAを回すことが大前提となります。今まではペイドメディア、オウンドメディア、CRMの各領域内でそれぞれ高速PDCAを回していけばよかったのですが、広告とCRMが融合する時代には、全領域横断で高速PDCAを回していく必要があります。
この体制で本当にそれができるのでしょうか。他部署への根回し、説明ミーティングの実施、説明のための資料作成に多大な時間を取られているのが現状で、結果的に「超低速PDCA」になっています。エグゼキューション、コミュニケーションが求めるスピードに運用が追いついていない状況です。

ここで、ひとつの概念を提示したいと思います。「Pot」、つまり混ざることです。ごった煮の鍋という意味です。これはFacebook社が提唱している概念で、部門をまたいだクリエイティブチームを組成し、ひとつのKPIの達成のためにクリエイター、マーケター、テクノロジスト、プログラマーが常に混ざり続けることが一番大事だと彼らはいっています。
これを日本流の概念に敢えて解釈するならば、会席料理から寄せ鍋へ、ということだと思っています。会席料理は、個々の料理が個別最適化されていて、それがリレー方式で順番に出て来るものです。寄せ鍋はそうではなく、全体最適化され、最初から最後まで常に混ざり続けているものです。こういう「寄せ鍋チーム」を広告主サイド、受注サイド合同で作っていきたいという強い思いが我々の中にあります。

「サイロ化が問題」というのは、今年いわれ始めた問題ではなく、数年前からずっといわれ続けてきました。大事なのは、この問題を少しずつでも具体的に解決していくための、広告主サイド、我々受注サイドの不断無き努力と意志です。

2年前、2017年に立ち上げた「Team AIM」は我々受注サイドにおけるそのトライアルです。博報堂の中だけでは足りないのならグループ会社も連携する。それでも足りないのなら、グループ外の会社も含めて連携する。実現したいことをまっとうに実現するために必要なピースを少しずつそろえて、これまでにいろいろな実績を生み出してきました。もちろん失敗事例もあります。後半ではone teamだからこそ実現できた広告とCRMの融合の事例について具体に紹介させていただきたいと思います。

2017年に立ち上げた横断チーム「Team AIM」

■Tealiumによるデータ管理でパフォーマンス改善を図る

金子
ここ最近、獲得効率を維持したうえでのWeb広告費削減やWeb広告媒体を横断した形での獲得パフォーマンスの可視化などの相談を受けるケースが増えています。
博報堂では、このような相談をクライアントから受けた場合、Tealium(CDP)を用いた現状のWeb広告運用効率の可視化、特に媒体を横断したデジタル広告におけるOnetoOneでの対ユーザーへの必要以上な広告配信がなされていないかどうかの分析を提案しています。

今回はタイプ別に2つの事例を紹介させていただきます。ひとつめは広告寄りの事例です。
人材業界のクライアントからは、昨年対比で予算は増えないが獲得目標は上がっており困っているとの相談をいただきました。日々の運用広告のチューニングは専業広告代理店と必死に行っているが限界もあると。そこに対して博報堂からはユーザー1人あたりの媒体横断での広告配信状況の可視化を提案しました。GTMやYTM等の一般的なタグマネツールではタグの管理自体が目的となっているため、1人1人のユーザーステータスまでは管理を行う機能がありません。そのためユーザーデータは各タグ(≒広告媒体)単位で分断された形で蓄積されます。この場合に起こってしまうのが媒体横断での対ユーザーへの広告超過配信(オーバーフリークエンシー)です。
たとえば、クライアントがGoogle、Yahoo、Facebook、Criteoこの4つの広告媒体に出稿しているとして、タグが4つWebサイトにGTM配下で格納されているとします。各タグは自分の媒体経由の流入しかカウントアップしませんので、実際にはそのユーザーが累計で10回以上複数の広告経由でWebサイトに来訪してたとしてもGoogle広告経由の流入が3回目なのであれば、Googleタグとしては、このユーザーのWebサイト来訪回数は「3」になってしまいます。結果起こっているのが媒体横断でのオーバーフリークエンシーです。

我々は、まずこのような運用状況の可視化のためにTealiumを提案します。それはTealiumがタグの管理以上にユーザーステータスのリアルタイム計測を可能にしているためです。

ユーザーがWebサイトに来訪した瞬間にそのユーザーがどの媒体からの何回目の来訪なのかをリアルタイムに判別するので、これらのデータを計測し、分析することで現状のオーバーフリークエンシーの状況や広告費の削減めどの試算を可能にしています。

人材業界のクライアントに関しては、まさにTealiumのこの機能を使った分析を実施しました。結果、オーバーフリークエンシーによる多額の費用削減見込みが見つかりました。また、Tealiumで取得したデータを分析していく中でこれまで見えていなかった新たな示唆も得ることができ、クライアントのマーケティングに貢献することができました。

もうひとつの事例は、TealiumとSalesforce、さらにLINEを統合してOne to Oneの更に先、One to Moment型のコミュニケーションを行うことを目標に掲げている自動車メーカーとの取り組みです。Tealiumで計測するユーザーごとのWebの回遊行動、Salesforceに格納される各ユーザーの購買データや商談データ、そしてLINEのBeaconを使ってディーラーへの来店時の行動を捕捉し、これらのオンラインとオフラインを跨ぐ膨大なユーザーデータ群をTealium内へ取り込み、統一のIDで結合させています。こうすることによって、ユーザーがWebサイトに訪問した瞬間に、もしくはユーザーがディーラーに足を運んでLINEのBeaconで来店を捕捉したその瞬間に、Tealiumがユーザーを判別し、そのユーザーにとって最適なコミュニケーションを提供する、という姿を実現させつつあります。
オンラインとオフラインのデータ連携によるユースケースも具体的に生まれつつあります。

たとえば現オーナーであるユーザーがWebサイトに来訪し、そのユーザーのWeb行動履歴から他メーカーへの乗り換え、流出のリスクを検知。などのような事が可能になりました。これはSalesforceからユーザーIDごとの購買データをTealiumに連携させているからこそ捕捉できるようになったものです。

デジタル環境は日進月歩で、取得できるデータの種類は増え、デジタルマーケティングは複雑化しています。こうしたデータを、Tealiumのようなプラットフォームを使って統合し、バッジというような単位で施策に必要なサイズにまとめて、施策とリアルタイムでスムーズにつなぐことで、パフォーマンスの改善を図ることができます。
そして、それらのPDCAを回せる体制の構築にチャレンジすれば、それが次のパフォーマンスにつながっていくと考えています。

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  • 博報堂 デジタルビジネス推進局 局長代理
    2006年博報堂入社。営業職として自動車、金融、システム、ゲームアプリの各クライアントにおいて、オンライン、オフライン領域含めた幅広いマーケティング業務を推進。旧DATA Wingsに異動後は、博報堂全社のクライアントに対するデジタルマーケティング領域の業務コーディネートおよびプロデュース業務に従事。
  • 博報堂 デジタルビジネス推進局 ビジネスプロデューサー
    2016年に博報堂入社、消費財から耐久消費財まで様々なクライアントのデジタルマーケティングを担当。直近ではCDPツールの活用コンサルを軸に複数のクライアントに半常駐してデジタル業務の推進をサポート。趣味は釣り。