課題解決に直結させる、データ活用テクニックとは
――「獲得系(リスティングやリターゲティング広告といった手法の総称)は、ずいぶんやりつくしていて頭打ちだ。必要なのは認知系(おおよそ獲得系以外の総称)だが、効率の悪化は避けたい。」
あなたは、こういった課題感のブリーフをみたことはありますか?
特に、ダイレクト論が根強い事業体では、大なり小なりこの課題感をお持ちのケースが多いように感じます。また一方で、デジタルメディアについて比較的習熟されている方からも、似たような声を耳にすることがあります。
いずれのケースにおいても、いわゆる「ターゲティング」に対して、相応の見識がある方に多い課題意識といっても良いのではないでしょうか。
いわゆる獲得系の広告は、施策の総量を増やして獲得数が上がったとしても、総量でみれば獲得単価が上がってしまい、マーケティングROIは悪化することになります。とはいえ、手放しに効率を無視したアプローチもできませんから、難しい問題のひとつです。
マーケターの方がこうした課題に直面したとき、現在地点として認識しておくだけで、「解決策を見つけやすくなる3つの視点」があります。
① この課題を知覚しているということは、見込み客のコンバージョンファネルやパーセプションフローと「正反対に流れる思考法」を持っていること。
② 同時に、認知施策や獲得施策といった、手段に寄せた「二項対立のフレームワーク」を用いて思考していること。
③ こうした思考に至る一因に、二項対立の中間にある「データが不足」している可能性があること。
この3つの視点を持つことは、ターゲティングに見識のあるマーケターにとって、とりわけ有益なものになると考えています。
他方で、ターゲティングではなく逆に「マス」志向にある場合や、ブランディング(ブランドのプレファレンス向上)に立脚している場合などでも、二項対立的な発想を抱きやすいため、同様に有益でしょう。
実は、この3つの視点とは「カスタマージャーニーをデータで追いかける」というテクニックを分解したものです。カスタマージャーニーと聞けば、もはや当たり前のことではあるものの、冒頭の課題感が指し示すとおり、実質的に当たり前にはなっていないケースはまだ多いことをみるべきだと思います。
まずは「検索データ」に着目してみよう
さて、さきほどの3つの視点を簡単に図解すると、以下のようになります。
おおむね実務においては、意識(定量・定性)調査と、行動トラッキングツールの2つのツールを使い分けることによって、見込み客を捉えることが多いと思います。
最近では、この2つのツールに3rd Party DMPを組み合わせる手法もずいぶん浸透してきました。博報堂DYグループが持つDMPでいうところの、AudienceOneを基軸とした「生活者DMP」がそれにあたります。
この手法の汎用性は高く、おおよそ見込み客を可視化することができます。しかし、良くも悪くも、おおよそのことが分かってしまうがゆえに、中間データ(図上の赤い点)への着目が薄れがちになってしまうということでしょう。
中間データとは、最も代表的なものには「検索データ」があります。
ここでの検索データとは、Googleトレンドやリアルタイム検索といった、総量を指し示すデータではなく、あくまでも「見込み客や戦略ターゲットの検索データ」になります。重要なポイントは、カスタマージャーニー上で抜けているデータに着目することなのです。
データの入手方法については様々ありますので、ここでは割愛しますが、見込み客や戦略ターゲットの検索データを見ることができれば、たとえば以下のようなことができるようになるでしょう。
① CV者の検索キーワードを時系列に整理することで、現在狙っているサーチターゲティングのひとつ手前のキーワード群を使って、見込み客を狙う。
② 競合企業名を含めた検索キーワードを入手し、相対的な検索シェアとして整理することで、イボークト・セット(ブランドの購入候補)の変化をとらえ、戦略ターゲットにおいて、ブランドの認知状況がマーケティングROIにもたらす影響を図れるようにする。
いずれも、過度なターゲティングによって顧客の幅を狭めるものではなく、カスタマージャーニーに則って顧客の幅を広げていくことにつながるアプローチですから、冒頭のような「頭打ち感」に対しては、1つの解決策となりえるのではないでしょうか。
検索データ以外にも、広がる多様なデータ
また、検索データの他にも、有益なデータは様々あります。比較的に入手しやすいデータを挙げていくと、「大手ECデータ」「WEBサイトアクセスログデータ」「各種SNSデータ」などがそれにあたります。
例えば、あるカスタマージャーニーにおいて、「大手ECサイト」を経由する割合が高いのであれば、自社サイトを中心としたトラッキングはあまり機能するとはいえません。それよりかは、大手ECサイトのストアページの閲覧データが意味を持ちますし、ひいては、大手ECサイト内におけるマーケット規模やターゲットの行動データが顧客の広がりをもたらすことでしょう。
ただし、実務で活用するうえでは、データ分析対象にするECサイトは、カスタマージャーニーとは別の次元から俯瞰して検討することをおすすめします。なぜならば、ECサイトごとに絞り込めるターゲットや情報の粒度が異なるうえに、データ接続の観点から、その後のプロモーション展開を大きく左右するためです。総合的に勘案しながらデータを入手していくことがポイントになります。
また、比較検討系の商材の場合は、比較サイトやブログ等を経由する割合が高くなります。こうしたカスタマージャーニーでは「WEBサイトアクセスログデータ」が有効的です。
WEBサイトアクセスログデータとは、URL単位のアクセスのサーバーログデータで、Cookieベースのアクセスログよりも細かい粒度を把握することができます。選ぶ手法によっては、戦略ターゲットを選んだ上でログを抽出することもできます。
比較検討をする見込み客は、おおむね比較サイト等を起点として、競合企業に流出していく構造になっています。よって、マーケットシェアの奪い合いという視点からブランドを眺めたときに、対策を講じるべき重要なタッチポイントであるといえます。
一見すると、「比較検討をする見込み客を狙う」ということは、すでにターゲットは行動を伴っているわけですから、DSP等の行動ターゲティングでカバーできる領域のようにも思えます。
しかし、ヤン・カールソン氏やアラン・ラフリー氏が提唱する、有名なMoment of Truth(意訳すると、意思決定の瞬間)の考え方に基づくならば、モーメントはプレイスメントに紐づいて存在していますから、起点となるプレイスメントを把握し、そのプレイスメントを改善することでしか真のモーメントに対するアプローチは得られないのではないでしょうか。
最後に、「各種SNSデータ」ですが、SNSはAPIやツールが十分に整備されていますから、さまざまな文脈でデータ活用は進んでいるのではないかと思います。お読みの方がマーケターの方でしたら、なにかしらのツールを用いて、セールスの効果やエンゲージメントの効果、あるいはブランドのリスクマネジメントなど、ケース・バイ・ケースで日頃から手元でデータを利活用されているのではないでしょうか。
いうまでもなくSNSデータは、定量・定性調査とは異なり、時系列視点での変化を捉えることができます。セールスやエンゲージメントに代表されるように変化が重要となる指標をみるうえでは、SNSデータの活用は欠かせないものといえるでしょう。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
もしも、解決しがたい課題感をお持ちのようであれば、カスタマージャーニーの洗い出し(データの洗い出し)を行ってみてはいかがでしょうか。
また、詳しい資料等ご要望のかたは、お気軽にぜひお問い合わせいただければと思います。
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