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あらゆる創造性をつなげ、未来の市場を描く   CREATIVITY ENGINE BLOOM 始動
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あらゆる創造性をつなげ、未来の市場を描く   CREATIVITY ENGINE BLOOM 始動

大手広告会社の博報堂DYホールディングスは、企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ制作などマーケティングコミュニケーション業務をワンストップで提供するAI(人工知能)を活用した統合マーケティングプラットフォーム「CREATIVITY ENGINE BLOOM」を2024年にリリースした。このほどCREATIVITY ENGINE BLOOM内に実装した「STRATEGY BLOOM PLANNING」はプラニングプロセスを標準化し、業種や商材に合わせた分析メニューを用意。簡易な操作で戦略策定に必要な分析結果が得られるなど、マーケティングプロセスの効率化と高度化を実現するものだ。同社が目指すマーケティング戦略のあり方やAI導入のメリットなどについて、同社統合マーケティングプラットフォーム推進室長の木下陽介と同室グループマネージャーの北川雄一朗に聞いた。

グループ全社員にプラニングスキルを提供

――2024年にリリースされたCREATIVITY ENGINE BLOOMが開発された背景と、その特徴を教えてください。

木下
この10年間で従来のテレビCMといったマスマーケティングだけでなく、デジタルマーケティングやCRM(顧客情報管理)など、企業のマーケティング業務は非常に複雑化してきました。特にデジタル面ではプラットフォーマーの台頭によってよって、各プラットフォームでのデータ対応が必要になりました。こうした変化に対応するために、博報堂DYグループではマーケティングコミュニケーション業務の効率化・高度化を進めるプラットフォームとして、CREATIVITY ENGINE BLOOMの開発を始めました。

CREATIVITY ENGINE BLOOMは購買データやウェブ行動ログなど、当社グループが持つ生活者に関するデータ基盤「生活者DATA PLATFORM」と、プラットフォーマーのデータ、クライアント企業のCDP(顧客データプラットフォーム)を連携。そこにAIを活用し、各種データの分析・解析ができるようにして、社内の誰もが簡単に使えるマーケティング業務を支援するプロダクトを提供していきます。

「CREATIVITY ENGINE BLOOM」はマーケティング領域での活用に加え、クリエイティブ制作、販促・CRMなどのコマース、流通領域までワンストップで統合・管理できる統合マーケティングプラットフォームで、5つの主要モジュールで構成されている 

――今までのマーケティングツールにない、CREATIVITY ENGINE BLOOMの画期的な点は。

木下
CREATIVITY ENGINE BLOOMの開発では、私たちはテクノロジーやAIの力を借りてそのプロセスを部分的に標準化し、プロダクトにすることにチャレンジしています。データ収集や分析・加工を一元管理し、マーケティングコミュニケーションを行う際に必ず取り組む業務を標準化してAIに任せることで、それらのタスクに費やしていた時間を削減するだけでなく、新たな市場をつくり潜在顧客を獲得するための課題解決や企業の事業KGI(重要目標達成指標)に直結する戦略、コミュニケーションプラン、アクティベーション企画の検討を支援していきます。

プラニングノウハウを実装

――このたびCREATIVITY ENGINE BLOOM内に分析メニューとしてSTRATEGY BLOOM PLANNINGが実装され、社内での利用が始まりました。これまでのプラニング業務にはどのような課題がありましたか。

北川
プラニング業務は従来、担当者が個別にオーダイメイドでカスタマイズしながらクライアント企業の要望に対応してきました。しかし、長年マーケティング担当をしていた我々の立場からグループ全体を見てみると、どのクライアント企業からも求められ、取り組んでいる分析やプラニングウェイがあると気付きました。

その部分を共通化できればグループ全体で一定以上のクオリティーレベルのものを汎用的に提供できるのではないか。そうした考えで、戦略・施策立案からメディアプラニングまで一気通貫で開発を始めたのがSTRATEGY BLOOM PLANNING実装のきっかけです。

「STRATEGY BLOOM PLANNING」は博報堂DYグループが収集した豊富なデータ群を基盤に、プラニングのノウハウを全社員が利用可能な分析メニューとして実装した 

――STRATEGY BLOOM PLANNINGの導入メリットや効果は何ですか。

北川
キーワードは「効率化」と「高度化」です。グループ全体で見ると、クライアント対応ではどうしても社員間で経験値のばらつきがありますし、オンラインやテレワークが普及する中でどう人材を育成していくかといった課題もありました。STRATEGY BLOOM PLANNINGでは、まず市場構造の把握、ターゲット規定、KPI(重要業績評価指標)設定、価値規定といったマーケティングプロセスを標準化し、ブラウザ上で完結するプロダクトを提供することが可能になりました。同プロダクトを活用することでグループ全体のプラニングの質を高いレベルで維持・向上させ、平準化していくことを目指します。

「STRATEGY BLOOM PLANNING」はマーケティングの起点である市場構造把握から価値規定・KPI設定までを一気通貫で行う 

また様々なデータの前処理はとても時間がかかる作業ですが、フレームワークを形作ることで迅速にプラニングや提案につなげることができ、スピードを求めるクライアント企業にも対応できます。

木下
当社のクライアント企業約3000社の中でも、マーケティング戦略の設計を担うストラテジックプラナー全員がサポートできているわけではありません。プログラミングや統計解析の知見があまりない社員でも利用できるようなUI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザー体験)でSTRATEGY BLOOM PLANNINGを提供し、業務のさらなる高度化を目指します。また、これまで我々がデジタル広告の運用業務で関わってきた企業に対しても、調査データを使ったプラニングやマスとデジタルの統合プラニングの提供も可能になるので、新たな潜在顧客を獲得するためのデジタル運用広告に進化させていきたいです。
北川
現在は社内ツールとしてグループ各社に展開し、様々な業種のクライアント企業のマーケティングに対応できるように準備を進めているところです。さらにはユーザーの意見を基に改修することでストラテジーからメディア、クリエイティブを統合したマーケティング業務に進化すべく機能を強化し、使いやすさを追求していきます。

AIと人との共創関係つくる

――企業マーケティングはこれからどのように進化していくと考えますか。

木下
日本のGDP(国内総生産)が横ばいの状況が続くと考えられる中で、得意先の目標達成への効果を示すことができるマーケティング活動にしか広告予算が割り振られなくなっていくのではないかと考えます。今後のデータマーケティングにおいてアカウンタビリティー(説明責任)を高めることへのニーズが増えるのではないでしょうか。

マーケティングのアカウンタビリティーを高めていく上で、企業やプラットフォーマーが持っているデータを安全な環境で管理して、他の様々なデータとも組み合わせ、データサイエンスを活用していくことが重要です。これにより消費者の深層心理や行動を理解し、マーケティング活動をより進化させることができると思っています。

企業のマーケティングチームと広告会社が互いのデータをクラウド上で共有し、生成AIなどの技術を使いながら一緒に戦略の決定を進める環境が整うと考えており、将来的にはCREATIVITY ENGINE BLOOMがその役割を担っていければと思っています。

CREATIVITY ENGINE BLOOM が提供する戦略意思決定ボードを見ながら効果的なマーケティング戦略やメディアプラン、施策の開発、PDCA(計画・実行・評価・改善)を共に進める関係に変わっていくことを目指したいです。

――CREATIVITY ENGINE BLOOMの今後の展開について教えてください。

木下
中期的にはIDマーケティングに対応するサービスや、IDをベースにマーケティング業務を高度化する分析技術を提供していきます。フルファネルマーケティング(消費者の購買プロセス全体を捉えるマーケティング手法)については、マーケティング効果がまだ解明できていない部分がたくさんあります。そのためCREATIVITY ENGINE BLOOMを活用しながら新たなマーケティング業務のデファクトスタンダードの事例を出したいと考えます。
北川
AIをはじめとするテクノロジーをいかにプラニングに取り込めるのかがマーケティングの進化を目指す上で重要になります。CREATIVITY ENGINE BLOOMがその一つの解決策になることを目指しています。

ただしAIはあくまで業務の「初速」のスピードを上げてくれる伴走者的な役割であり、プラニング業務の主体は人間です。クリエイティビティあふれる個々のセンスが博報堂DYグループの強みです。AIによってその強みをさらに高め、「博報堂DYグループらしさ」を競争優位として打ち出していきたい。AIと人との共創関係を生み出す、より高みを目指せるプロダクトをつくっていきたいと考えます。

■関連リンク
BLOOM設立リリース
STRATEGY BLOOM PLANNINGリリース
 

著作・制作 日本経済新聞社(2025年2月日経電子版に掲載)

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  • 博報堂DYホールディングス
    統合マーケティングプラットフォーム推進室
    室長

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    グループマネージャー

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