マーケティングシステムの導入と運用を支援する──「HAKUHODO Marsys Onboarding」が実現するマーケティングDX
マーケティング活動の効率を上げ、確実に成果に結びつけるには、マーケティングシステムの活用が欠かせません。しかし、システムを導入してもそれを使いこなせないために、成果がなかなか出ないというケースがしばしば見られます。
博報堂のマーケティングシステムコンサルティング局が提供する「HAKUHODO Marsys Onboarding」は、システムのオンボーディングを支援し、クライアント内でのシステム活用の内製化を実現に導くソリューションです。その開発の経緯や課題意識を3人のメンバーが語りました。
上田 周平
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
カスタマーサクセス部 部長
馬場 郁実
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
カスタマーサクセス部
磯部 真吾
博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
カスタマーサクセス部
自走化・内製化を目指すソリューション
──「HAKUHODO Marsys Onboarding」の概要と開発の背景をお聞かせください。
- 上田
- 「HAKUHODO Marsys Onboarding」は、その名のとおり、マーケティングシステムのオンボーディング(導入と定着)を支援するソリューションです。博報堂マーケティングシステムコンサルティング局は、企業がマーケティングに活用するさまざまなシステムを構築するサービスを提供していますが、システムはあくまでもマーケティングの「道具」です。重要なのはそれによってマーケティング活動の効果や効率を向上させ、事業の成長を実現させることです。
しかし、システムやツール活用の難易度が高かったり、システムを上手に使いこなすことができる人材がいなかったりすると、その目的になかなかたどり着くことができません。そこで、システムを使いこなし、スムーズな運用をお手伝いするソリューションを開発したわけです。
- 馬場
- 特徴的なのは、最終的にクライアントによる自走化・内製化を目指すソリューションである点です。僕たちが途中まで伴走させていただきながら、組織内でシステムをスムーズに回しで成果に結びつけることができる仕組みづくりの支援を同時に進め、クライアント側で自律的な運用ができるようになることを目指します。
- 磯部
- マーケティングシステムを上手に活用することによって、マーケティング活動の対象である生活者に提供する体験価値、つまりCXを向上させることが可能になります。CX向上のためには、生活者とのタッチポイントやコミュニケーションのプロセスを統合的に設計する必要があるのですが、どうしてもウェブ、メール、SNS、ECなどタッチポイントやチャネルごとの個別最適でマーケティング施策が進んでしまう場合が少なくありません。
全体最適の視点でマーケティング活動を捉え、それに沿ってシステムを活用することができれば、CXを向上させ、事業を確実に成長させられると僕たちは考えています。そんな考え方がHAKUHODO Marsys Onboardingのベースにあります。
- 上田
- マーケティングシステムを導入済みだけどその運用に課題があるというケースと、システムそのものがまだ構築できていないというケース。マーケティングシステムコンサルティング局はその両方に対応することが可能です。前者の場合は、どのようなベンダーのシステムであっても活用のご支援をさせていただけます。後者の場合は、マーケティングシステムコンサルティング局の別部隊がシステムを構築し、その導入と運用支援を僕たちがやらせていただくという体制でのご支援となります。
オンボーディング終了後にも継続的に支援を
──クライアントはHAKUHODO Marsys OnboardingMarsysをどのような流れで活用することになるのでしょうか。
- 上田
- HAKUHODO Marsys Onboardingを使って僕たちがご支援するのは、広い意味でのマーケティングDX(デジタルトランスフォーメーション)です。まずはクライアントのマーケティグDXの課題や目標についてヒアリングし、課題解決や目標達成のためにどの領域からご支援するのが効果的かを考え、プロジェクトの計画を立てます。そして、その計画に沿ってシステムのオペレーションの整理や体制づくりを進めていきます。
ソリューションが目指すのは、第一に「システムがあるのにうまく使えていない」という状態を解消すること、第二に「ソリューションをうまく使えている状態」を継続していく仕組みをつくり、クライアント側で自走できるようになること。大きくはその二つです。
──クライアント側の人材育成の支援もするのでしょうか。
- 上田
- それもこのソリューションの重要な機能の一つです。博報堂側のメンバーがチームを組んで、場合によってはクライアント先に常駐してオペレーションの体制をつくっていきますが、そこにクライアント側の社員の皆さんにも参加していただき、一緒にオペレーションを学んでいただくことになります。
──自走化・内製化までにはどのくらいの期間がかかるのですか。
- 馬場
- ケースバイケースですが、おおむね半年から1年といったところです。最初の計画が半年で達成できたとしても、その過程で別の課題が見えてくる場合があります。そこでさらに別のオンボーディング活動を進めていく。そんな流れになることが多いですね。
- 磯部
- マーケティングシステムコンサルティング局にはシステム開発部門が別にあるのですが、オンボーディングのフェーズでも小規模な開発が必要になるケースがあります。僕たちのチームの中には開発のスキルがあるメンバーもいるので、そのようなケースにも対応することが可能です。リリース後の開発体制の整備やノーコード/ローコードの開発環境のオンボーディングなどを通して、最終的に自走化・内製化を目指すという目標は確実に実現させます。
──自走化・内製化が実現したあともクライアント支援は続いていくのですか。
- 馬場
- 僕たちが所属しているカスタマーサクセス部のミッションは、クライアントのサクセスを実現することにあります。HAKUHODO Marsys Onboardingの提供はその一部であり、オンボーディングが終了してもより効果的なマーケティングの実現を目指すカスタマーサクセスの活動が終わるわけではありません。その後もご支援が継続するケースが多いです。
- 磯部
- 僕たちが考える自走化・内製化は、クライアントサイドですべてのオペレーションができるようなるというよりも、できることとできないことを見極め、できることを確実にやっていただくということです。オンボーディング活動が終わっても、リソースや組織体制の問題などでクライアント内では担いきれない部分が残ることも少なくありません。そこは引き続きご支援させていただき、システム活用の最適な形をつくるために尽力していきたいと考えています。
オンボーディングのさまざまなケース
──HAKUHODO Marsys Onboardingを活用したこれまでの具体的な取り組みをいくつか教えていただけますか。
- 馬場
- ひとつは、飲食系チェーンのクライアントのケースです。
システム構築からのスタートで、構築、導入、運用設計、新しい業務の設計までを支援させていただきました。その中で、クライアントの作業負荷をできるだけ抑えられるサポートをご提供しました。
──取り組みの中で最もたいへんだったのはどのような点ですか。
- 馬場
- 新しいシステムを導入して運用するということになると、クライアントの組織内に新しい体制をつくらなければならなくなります。それが1つたいへんな点でした。このケースでは、既存のデジタルチームを主体として、そこにマーケティングなどほかのチームのメンバーの皆さんに参加していただく形をつくってオンボーディングを進めました。結果として、必要なレベルまで内製化が進み、データドリブンなマーケティングも実現しつつあります。
- 上田
- 僕からは消費財メーカーの取り組みをご紹介します。
コロナ禍の中で、売り場が閉鎖してしまったり、顧客の店舗来店が激減したりするケースが発生しました。それを受けて、多くのメーカーが新しい販売チャネルづくりを模索しました。僕が担当させていただいたのも、自社ECサイトをつくって、D2C型の直販モデルを構築するケースでした。
この案件では、システムをつくるベンダーがほかにいたので、まず僕たちがその構造を把握して、システムの活用法を整理していきました。その後、そのシステムを使ってD2Cチャンネル上で購買データや閲覧データを集め、それをベースにマーケティングオートメーションを運用し、CRMの施策を回していくところまでの形をつくりました。当初は僕たちがシステムの運用を代行する形態でしたが、最終的には内製化を実現しています。この取り組みによって、新しい販売チャネルが出来上がっただけでなく、クライアントの中に集客~購入~リテンションまでのサイクルをシステム/データを活用したオペレーションフローが出来上がったのも大きな成果でした。DXは終わりのない活動なので、今後もご支援を続けていきたいと考えています。
──システムだけではなく、新しいチャネルやビジネスモデルを立ち上げるに当たってHAKUHODO Marsys Onboardingが力を発揮するケースも多いのですね。
- 磯部
- 僕が担当させていただいた観光系クライアントもそのようなケースでしたね。顧客との直接とのオンラインでの接点を作りたいというのがクライアントのご要望で、ツールやベンダーの選定から、システム活用、チャネルづくり、データ活用などをトータルに支援させていただきました。クライアントは、アジャイル型のプロジェクト進行を希望されていたので、タスクを細かく切り分けて、小さな単位で仕組みを開発していきました。リリース後の現在もクライアントと一緒に様々なサービスを追加開発をしながらCXの向上に取り組み、成果が右肩上がりに伸びている状況です。
「できること」を確実に一つ一つ実現していく
──HAKUHODO Marsys Onboardingをさまざまなクライアントに提供する中で見えてきたことがありましたらお聞かせください。
- 上田
- このソリューションを開発するに当たって僕たちが持っていた仮説は、「システム開発だけではなく、その活用や運用に課題を感じている企業が多い」ということでした。その仮説はかなり的を射ていたと思っています。システムを上手に運用し、成果に結びつけていくことを求めているクライアントの皆さんはとても多く、HAKUHODO Marsys Onboardingが力を発揮する場面はたくさんある。そんなことを実感しています。
- 馬場
- 企業のマーケティング活動にはいろいろなレイヤーがあるということにあらためて気づきました。
例えば、マネージメントクラスと現場のマーケティング担当者が見ているものが違っていて、それによってマーケティングにおけるデータ活用が滞っているケースが少なくありません。システムのオンボーディングを通じて異なるレイヤーをつなぎ、トータルなマーケティングDXを実現していくことに貢献していきたいと思っています。
- 磯部
- 僕たちはクライアント側の内製化を目指しているわけですが、それは簡単に実現するものではないと感じています。先ほどもお話ししたように、内製化ができる領域、内製化が可能な領域を見極め、それ以外の領域は僕たちが引き続き支援させていただきます。オンボーディングの取り組みは、その「見極め」のための作業でもあると考えています。
- 上田
- 広告会社が得意としてきたのは「toBe」、つまり、目指すべき姿を描いて、そこにクライアントともに向かっていくという方法論です。一方、マーケティングシステムの領域では、「CanBe」、つまり、できることをしっかりやっていくことが求められます。クライアントが「できること」が何かを考え、それを一つ一つ増やしていくこと。スモールサクセスを積み重ねていくこと──。それが結果としての内製化につながるのだと思います。この1年ほどの取り組みの中で、そういった地道な作業の大切さをあらためて感じています。
──HAKUHODO Marsys Onboardingを活用したクライアント支援にかける思いを最後にお聞かせください。
- 磯部
- 自走化・内製化は、僕たちがクライアントにしっかり並走することによってしか実現しないし、内製化後もさまざまな形で並走させていただくことで、クライアントの事業成長に寄与していきたい。そう考えています。その「並走のツール」としてのHAKUHODO Marsys Onboardingを多くの企業の皆さんにぜひお使いいただきたいですね。
- 馬場
- 博報堂は「パートナー主義」というフィロソフィーを掲げています。HAKUHODO Marsys Onboardingは、そのフィロソフィーを象徴するソリューションであると言っていいと思います。クライアントの皆さんのよきパートナーであり続けるために、HAKUHODO Marsys Onboardingの価値をさらに広めていきたいと思います。
- 上田
- 博報堂が長年取り組んできたのは、マスマーケティングによって「広さ」を獲得することでした。それに対して、マーケティングシステムはどちらかというとCRMによって生活者との関係の「深さ」をつくっていくためのツールです。「広さ」と「深さ」の両方がマーケティングにおいては重要なのですが、その2つをうまく結びつける方法論はまだ確立しているとはいえない状況かと思います。HAKUHODO Marsys Onboardingをご提供していく中で、その方法論を見出していきたい。それがこれからの目標の1つであり、大きなチャレンジになると考えています。
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