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Twitter上の地方新聞社の動画コンテンツに広告を配信するインストリーム動画広告配信サービス「LoNTI」(前編)
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Twitter上の地方新聞社の動画コンテンツに広告を配信するインストリーム動画広告配信サービス「LoNTI」(前編)

博報堂DYメディアパートナーズ(以下、MP)は2020年9月、地方新聞社が作る動画コンテンツに、Twitterの広告メニューを連携させたインストリーム動画広告配信サービス「LoNTI」の提供を開始しました。LoNTIの内容や開発の経緯や、地方新聞社にはどんなメリットがあるのかといったことについて、Twitter Japanの谷本晴樹氏、津田裕一氏と、MPの五十嵐丈鑑、後藤 勉、高橋佐世子が語り合いました。

五十嵐
博報堂DYメディアパートナーズ第一メディア戦略企画室の五十嵐です。まず私から、LoNTIがどういったサービスかを説明いたします。
LoNTIという名前はLocal Newspaper network in Twitter IVSの略です。Twitter IVS(インストリーム動画スポンサーシップ)という言葉は、現在あまり外向けには使われておらず、一般的には「Amplify Sponsorship」という名称で知られています。Amplify Sponsorshipは、広告主がTwitterのパートナー企業と提携して広告を出稿出来るようにするサービスです。具体的には、パートナー企業の動画コンテンツをTwitter広告としてフォロワー以外にも表示し、その動画の前もしくは途中に広告主の広告動画を流します。
LoNTIでは、Amplify Sponsorshipにおけるパートナー企業を、「全国の地方新聞社の連合」という形にしているのが特徴です。全国の地方新聞社が作成した優良動画コンテンツの前に、広告を出稿することが出来ます。インストリーム動画広告自体の効果は非常に高いと言われているのですが、LoNTIはニュースやエリア情報など、人の興味・関心を引く情報の前に広告が出るので、さらに高い広告効果が期待出来ます。新聞社の作るコンテンツなので、ブランドセーフティも担保出来ますし、我々としてもコンテンツが広告対象として適切か都度確認するところまで責任を持って行います。
Twitter広告の表示対象についても、Twitterが誇る様々なターゲットソリューションを使って、的確に設定することが可能です。例えば、「有名なプロ野球選手をフォローしている」「車に関心がある」「年齢が~歳台の女性」といった形ですね。理論上は全Twitterユーザーに届けることが出来ます。
本日はTwitter Japanから、MPを担当いただいている津田さんと、主にコンテンツを担当なさっている谷本さんに参加いただいています。MPからは、プラットフォームビジネス局でTwitterを担当している高橋と、地方紙を担当している新聞三部の後藤が参加します。本日はよろしくお願いいたします。
谷本
Twitter Japanの谷本です。私からもAmplify Sponsorshipについて簡単にご説明させてください。Twitter IVSのような、提携するコンテンツパートナーと共に、スポンサーにとって最適なパッケージを制作する協業商品を「Amplify Sponsorship」と呼んでいます。
私は新聞社、雑誌社、テレビ局のニュース報道局などのパートナーを担当しておりまして、各メディアが作るクリエイティブを土台にした広告商品を作っています。
広告出稿いただいた際は、我々からコンテンツパートナーに対し、広告消化金額に応じたお支払いをいたします。一方で広告主は、全額を広告配信に使うことが出来ます。このようなメディアとの協業を、弊社内のグローバルコンテンツパートナーシップチーム(GCP)が担当しています。
五十嵐
LoNTI以外にも、我々とTwitterでこれまでいろいろな取り組みをさせていただきましたよね。高橋さん、今までの流れを教えていただけますか。
高橋
MPプラットフォームビジネス局の高橋です。まずMPは、Amplify Sponsorshipをかなり早い段階から活用しており、出稿実績が豊富にありました。
2019年からは、Twitterと一緒に「Brand Bird」というプロジェクトをスタートしています。これは、Twitterを単純な広告の枠としてのみ活用するのではなく、統合コミュニケーションの軸とし、Twitterを起点に「会話の誘発」が起こることで広告主の価値を高めていこうという取り組みです。
この一環として、MPがハブになり、MPが保有するオリジナルコンテンツを活用しながら、一緒に商品を作りましょうというパートナーシップを結んでいます。そこから、MPが買い切りをしているテレビコンテンツやスポーツ系のコンテンツなどを使い、様々な商品を作りました。
今回のLoNTIも、このBrand Birdの取り組みの一つと位置付けています。
五十嵐
Amplify Sponsorshipは、基本的にはTwitterと媒体社で作っていく商品だと思います。そこに広告会社を巻き込むことによるメリットは何でしょうか。津田さん、いかがでしょうか。
津田
Twitter Japanの津田です。まずMPは豊富なコンテンツをお持ちです。また、今回の地方新聞社のように、我々では手の届かない良質なコンテンツを、ハブとなって獲得することが出来ます。MPに協力いただけることは、売り上げの面でも、工数の面でも非常に大きな効果があります。
谷本
Amplify Sponsorshipでは、多くの広告主がブランドセーフティを期待されています。取材に基づいた信頼性の高い新聞社のコンテンツが、Amplify Sponsorshipと親和性が高いのは元々分かっていたのですが、数多くの地方新聞社と連携するのは我々の力だけでは難しかったんです。ですのでMPにAmplify Sponsorshipにご協力いただいたことは大変ありがたいと感じています。
後藤
MP新聞三部の後藤です。地方新聞社はかねてから購買数の減少や、最近ではコロナの影響による広告出稿の減少に悩んでいらっしゃいまして、それを打開するために新しいことをやらなくては、と考えています。そういう状況ですので、今回Twitterに協力いただき、LoNTIを販売出来ることを嬉しく思っています。

新聞記事の自動要約がLoNTIに繋がる

五十嵐
LoNTIの開発に至った背景を説明いたします。MPは2017年から東京理科大学の大和田勇人教授と、自然言語処理のビジネス転用を目的として産学協同研究に取り組んで来ました。その一つの成果として、2019年に河北新報社のニュース記事を、AI技術を使って要約し、スマートスピーカー経由で配信する実証実験を行ったんです
「スマートスピーカー元年」と言われていた当時、我々の問題意識として、「1000~2000字の新聞記事は、音声で読み上げるには長過ぎる」というものがありました。もちろん、紙で読む分には全く問題ないのですが、スマートスピーカーから音声として出すには長過ぎて聞きづらいのです。ですので要約が必要になるのですが、人手を使うとかなりのコストが掛かってしまいます。そこでAIを使って新聞記事を要約し、自動で読み上げるシステムを作れば、有用なのではないかと考え、記事要約音声化システム「ASSS」を開発しました。
ASSSを使ってある程度の精度で要約が可能になった段階で、ビジネス転用しようとして最初に行ったのが、河北新報社との取り組みです。河北新報社の読者は高齢の方が多く、「新聞は読みたいけれど、文字を読むのが難しくなってしまった」という方が多くいらっしゃるのが分かりました。テレビやラジオがあるじゃないか、と思われるかもしれませんが、決まった時間にニュースを流すそれらの媒体と異なり、新聞はいつでも情報を読むことが出来るので、メディアとしての新聞にこだわりがある読者の方が沢山いらっしゃったんです。そうした方向けに、実証実験を行ったところ、かなりの反響をいただくことが出来ました。
プロジェクトに取り組む中で、音声のマネタイズはまだまだ市場としては始まったばかりで、大きくなるまでに少し時間がかかりそうだと感じていました。そこで次に取り組むことにしたのが「NEWS BRAIN」です。NEWS BRAINは、AIを活用して新聞記事から短尺の動画を作るソリューションです。我々のASSSと、オープンエイトの動画をAIが自動で作成するサービス「Video BRAIN」を組み合わせて開発し、様々なメディアで既に活用いただいています。
NEWS BRAINを評価いただいた一方で、課題として残っていたのが、新聞社から「動画を作れるのは嬉しいが、それをマネタイズする糸口まで提示してほしい」という要望が多かったことです。そこで考えたのが、Twitterとのパートナーシップです。新聞社がパートナーシップを活用し、動画をツイートすることでマネタイズ出来るようになればいいんだ、と。最初は、どうやったらTwitterのコンテンツパートナーになれるのかが分からなかったので、そこを伺いに行ったところから、今回のプロジェクトがスタートしました。
教えていただきたいのですが、Twitterは全国紙の新聞社と以前から直接パートナー契約を結ばれていらっしゃるんですよね。
谷本
はい、そうですね。その一方で地方新聞社とはまだ契約を結べていない状況でした。こちらの人的なリソースが足りないのもありますし、地方新聞社一社だけではパートナーとして提供いただく動画コンテンツの量がどうしても足りなくなってしまう、ということがあったんです。ですので、一社ごとに個別に契約を結んでいくのは現実的ではないなと感じていました。
五十嵐
MPの強みとして、いわゆる地方新聞社と言われているところとはほぼ全て取引があるんです。それぞれに担当者がおりまして、我々から情報発信をすると耳を傾けていただけます。また、河北新報社との実証実験やNEWS BRAINなどの取り組みを通して「MPは新聞社のDXに向けて何かしら動いている、トライしている」という雰囲気も醸成されているように感じていました。
地方新聞社のコンテンツは素晴らしいですし、他にはない地元に根付いた情報があります。ですので各社をたばねて、一つの大きな地方紙連合のような形に出来れば、Twitterにとっても大きなパートナーになり得るし、広告主にとっても様々なメニューから最適なものが選べるような魅力的なものになるというメリットがあると思いました。
今回のように、連合のような形でパートナーを組むというのは、Twitterでこれまであったのでしょうか。
谷本
新しい取り組みですね。MPに協力いただいたことで、将来的にも可能性が大きい、新しいビジネスが生まれたなと感じています。
高橋
MPプラットフォームビジネス局のTwitter担当としては、MP経由のTwitter上の広告出稿量を伸ばすことがミッションになります。そういう視点で言うと、今までTwitterには広告を出稿していなかった広告主が、Twitterの新しい魅力に気づくきっかけになっているなと感じています。
元々新聞に出稿していた広告主にTwitterに出稿していただけるのも大きいですし、Twitter単体での配信にも繋がっています。Twitterはマスとの親和性も非常に高いので引き続きご一緒出来たらと考えています。
五十嵐
新聞はテキストメディアですし、Twitterも様々なコンテンツのプラットフォームになっているとはいえ、それでもテキスト主体だと言えると思います。ですので新聞とTwitterは非常に相性がいいと感じているんです。
地方新聞社のLoNTIの反響はどうですか。
後藤
各地方新聞社がDXに課題を感じていらっしゃいまして、自社のコンテンツを課金システムにする以外には具体的な打ち手がない状況でした。大手のプラットフォーマーと組むということが出来ていない中で、LoNTIだとそれが出来る可能性がある、ということに大きな反響がありました。2019年に勉強会を始めてから、延べ100社以上にご参加いただいています。
従来、MP新聞局は“紙面の広告を扱う部署”でしたが、LoNTIを扱うようになってから“DXの推進まで担える部署”になったんだなと感じるようになりました。いろいろなご相談もいただきますし、非常に反響が大きいことを感じています。

後編へ続く

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  • 博報堂DYメディアパートナーズ 第1メディアビジネス総括戦略企画室/クリエイティブ&テクノロジー局
    2012年、博報堂DYメディアパートナーズ入社。メディア領域では珍しい美大OB。デジタルメディアプラナーとして、特にアプリマーケティングに注力し、海外アプリ、輸入車、IT企業などを担当。その後、テレビ局担として幅広くメディア領域を経験し、現在はマスメディアとデジタルの “掛け算” を様々な角度から模索、実現。


  • 博報堂DYメディアパートナーズ 新聞局新聞3部
    95年入社、約四半世紀に及ぶ会社生活の大半を新聞局でのキャリアを持つ。2010年当時担当のスポーツ紙6紙をまとめたイチロー選手の特別新聞「イチロータイムズ」や、お世話になった新聞社へのご恩返しを常に考えている。現在地方紙担当部キャップ。
  • 博報堂DYメディアパートナーズ プラットフォームビジネス局第三グループ
    2014年、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社入社。メディアコンサルティング担当として、ソーシャルメディア、出版メディア等を担当。専門的な知識や経験を軸に、サイトコンサルティングや広告商品開発などにも携わり、未来を見据えてビジネスチャンスの拡大を目指す。
  • 谷本 晴樹 氏
    谷本 晴樹 氏
    Twitter Japan Global Contents Partnarships
    シニア・パートナー・マネージャー
    2013年Twitter 入社。政治・ライフライン担当マネージャーなどを経て現職。とりわけ、ニュース・ライフスタイルの領域において、新聞社・出版社・テレビ各社のTwitter活用を横断的にサポートしている。
  • 津田 裕一 氏
    津田 裕一 氏
    Twitter Japan
    Twitter Client Solutions 広告代理店事業本部
    エージェンシーパートナー
    新卒でデータマーケティングプラットフォーム会社に入社し広告営業を経験。
    2018年よりTwitter Japanに入社し、広告代理店事業本部に所属。