おすすめ検索キーワード
「Googleアナリティクス 360」活用 Vol.2
TECHNOLOGY

「Googleアナリティクス 360」活用 Vol.2

デジタルマーケティングにおける企業の関心事の一つに、「保有する自社のデータをマーケティングにどう活用するか」が挙げられます。「Google アナリティクス 360」は、自社データをマーケティングに活用することを実現する、最も有効なツールの一つです。
博報堂DYグループは、Google アナリティクス 360を様々なクライアント企業のマーケティング基盤として活用しており、様々な活用事例がうまれてきています。

本連載では二回にわたって、様々なクライアント企業へのGoogle アナリティクス 360の導入企画や設定、運用を通じて蓄積された経験をもとに、「Google アナリティクス 360」の機能や活用方法とともに、導入を成功させる秘訣を紹介します。

※Vol.1はこちら

Google BigQueryによるオンラインデータとオフラインデータ統合による活用事例

1.Google アナリティクス 360単体だけを導入するのはもったいない

Google アナリティクスは、無料で提供されているにも関わらず非常に高機能なアナリティクスツールであり、世界でも高い普及率を誇ります。このGoogle アナリティクスには有料版であるGoogle アナリティクス 360があることは、前回ご説明いたしました。有料版を導入するだけで、ビジネス成果が劇的に良くなるかというと残念ながら答えは“NO”です。もちろん、有料版になることで魅力的な機能・サポートは追加されますが、Google アナリティクスを有料版に切り替えただけでは、トラッキング対象、蓄積するデータが「サイト内行動」のみであることに変わりありません。

ご存じの通り、マーケティングに使われるデータはオンラインのサイト内行動だけではありません。オフラインの成果データや会員のデータ、天気や世帯数などのオープンデータなど、サイト内行動データ以外にもユーザーを捉えるデータが存在します。特にリアル店舗での購入が最終ゴールとなるビジネスの場合、サイト内行動の成果だけでは、各施策の最適化のための意思決定は難しくなります。そこで、オフラインのデータをサイト内行動と紐づける必要があります。

これまで、店舗データ、会員データ、在庫データなどの複数のデータを統合するとなると、結局はプライベートDMPのような「データハブ」が必要でした。この場合、DMPの構築・維持コストだけでなく、導入までの時間も非常に長くかかってしまいます。
また、Google アナリティクスにもデータインポート機能やMeasurementProtocolなど、外部データを紐づける機能は存在しましたが、すべてGoogle アナリティクスのヒットデータに紐づく必要がありました。上記のようなハードルを回避してオフラインとサイト内行動データの統合を実現するツールが、「BigQuery」です。

2.BigQueryをハブとし、オフラインに留まっていたデータ活用をオンライン施策へ展開

BigQueryとはGoogle社が提供するクラウドサービスの一つであり、クラウド内のデータをSQLに近い言語を使用して集計や抽出ができるほか、Google アナリティクスのデータと外部データを結合・連携させ、複雑な分析を行うなど様々な活用が可能なツールです。

●図1:Google アナリティクス 360とBigQuery連携図

導入ハードルが高いのではないか?とお思いかもしれませんが、クラウドサービスのため、開設に関しては非常に簡単です。BigQueryはリセラー経由ではなく、直接Google社との契約となり、オンライン画面上での申込みと、リセラー経由でのGoogle アナリティクス 360との連携依頼を終えれば、あとはGoogle アナリティクス のデータが入ってくることを待つだけです。
また、Google アナリティクス 以外のデータセットやテーブルを設定するのは一見大変そうですが、例えば会員ごとの属性フラグをCSVでアップロードしたい場合などは、公式ヘルプが用意されているので、手順通りに設定すればクリアできます。
システム構築のリソースがあるのであれば、CloudDataflowを使用するなど、特定のデータソースをバッチ処理で格納することが望ましいでしょう。
このように、Google社は様々なツールをオンラインで提供しており、皆様ご自身でも設定することが可能ですが、もちろんアイレップでサポートすることも可能です。経験豊富な専門部隊が対応させていただきます。

また、Google アナリティクス 360をご契約の場合、$500分のクーポンが毎月付与されます(2018年8月現在)。したがって、毎日膨大な量のクエリを回さない限りは、$500クーポン内で、データ結合・分析が可能ということです。では、Google アナリティクス 360とBigQueryを使用した取り組みの事例をご紹介します。

3.BigQueryによるオフラインCVを用いたアトリビューションROI算出事例

とある高関与商材、店舗展開ビジネスのクライアント様において、潜在層可視化とその投資判断にお悩みがありました。独自の広告効果測定の仕組みを用いて、ラストタッチの広告成果(店舗での購買)は追えていましたが、オウンド接点も含めたアトリビューション評価ができませんでした。

これを解決するためにGoogle アナリティクス 360とBigQueryを導入されましたが、実現するにあたって、
1.【データ統合設計】店舗購買データとオンラインの広告コストデータをいかに繋げるか
2.【評価設計】発生した広告コストと粗利はユーザーごとに異なるため、ユーザーごとのログデータからいかにアトリビューションを算出するか?
の2点を解決しなければなりません。

まず、サーチ広告やディスプレイ広告をクリックして流入した際のコストデータに関しては、Google アナリティクス用の「パラメータ」をキャンペーンやコンテンツ単位で付与していれば、パラメータ値を名寄せのキーとして結合できるのは容易に想像できるかと思います。問題は、一見、交わる部分のないオンラインとオフラインの結合です。これに関しては、(1)常にユーザーID(ブラウザID)を蓄積しておくこと(2)予約時にユニークのIDを発行し、Google アナリティクス側と商談を管理するCRM側の両方に予約IDを蓄積すること、の2点が必須となります。すなわち、「オンラインとオフラインをつなぐ共通のID」を「オン/オフ両方のデータに蓄積する」ことです。

●図2:広告接触~販売粗利の統合イメージ

続いて、ROIをアトリビューションで評価する方法です。
粗利は一人一人のユーザーに紐づいているので、ユーザーごとのオンライン接触履歴と1接点あたりのコストデータが分かれば、割り算することで算出できます。

ここで気をつけるべきは、CV(予約)に至るまでの接点の数と接触チャネルの分類です。一般的な線形モデルのアトリビューション(均等配分)の場合、上記のように1CVを接点の数で均等配分するので、CVまでの接点の数を正しく数えないと、評価がブレます。また、接触チャネルについても、Google アナリティクス用のキャンペーンパラメータを付与していないと、どの媒体メニュー/キャンペーンか、正しく分類できなくなってしまいます。このように、ツール導入や集計時の処理や、データ蓄積の段階から事前準備が必要となります。

●図3:アトリビューション(線形モデル)ROI算出のイメージ

4.すべてはアナリティクス 360とBigQueryから始まる、と言っても過言ではない

Google アナリティクス 360が日本でリリースされて約5年経ち、上記のような店舗成約データとコンタクトデータ、オンライン行動データをBigQuery上で結合している、といったオンライン×オフラインデータの統合を実現している企業は徐々に増えています。
それでも、ツール導入時には、社内稟議のために費用対効果を求められるケースがあります。この場合、ツール導入による成果を数値的に表すのは難しいかと思いますが、オフラインデータとサイト内行動の結合により蓄積データがリッチ化し、分析も高度化、可視化範囲が広がることにより、意思決定・アクション精度アップ、という波及効果を提示し、社内理解を得ることが重要です。
そのために、まずはGoogle アナリティクス 360単体のトラッキングツールとしてではなく、BigQueryをハブとした「フルファネルのマーケティングプラットフォーム」として捉えて、構築・高度化・効率化を進めていくことが求められます。

以上のようにGoogle アナリティクス 360は統合的なマーケティングの効果を高めるために非常に効果的なツールです。
アイレップにはGoogle アナリティクス 360を活用した事例が多数ございます。興味を持たれましたら、是非ご相談ください。

sending

この記事はいかがでしたか?

送信
  • 株式会社アイレップ ソリューションセールス・コンサルティング本部 カスタマーエンゲージメント局 アナリティクスソリューションチーム チームマネージャー
    Web制作のディレクターからフリーのWebアナリストを経て2012年にアイレップ入社。2015年には博報堂DYメディアパートナーズに兼務出向。Googleアナリティクス歴11年、AdobeAnalytics歴6年、シニアアナリストとして顧客データの解析サービス開発や往訪コンサルティングサービスを牽引しつつ、ユーザー行動の可視化手法と、意思決定につなげる手法を研究し続けている。