まぜるな危険?事実と示唆データドリブン型プレゼン
こんにちは、データシェフ横井です。突然ですが、みなさまプレゼンテーションはお得意ですか?私は常々四苦八苦しています。特に、データドリブン型のプレゼンでは。
(データドリブン型のプレゼンとは、自説の補強としてデータを引用するのではなく、データから言えることを基に考えを組み立て、ストーリーを紡ぐタイプのプレゼンとここでは定義します。例えるなら、事実から真犯人を言い当てる探偵の推理プレゼン)
データドリブン型のプレゼン、様々な難所があります。例えば「自分の考えを覆すデータ」と対峙するタイミング。
自分の考えがデータで覆されることで、多方面への思考が一気に求められ、万力のような思考負荷がかかります。(しかも大抵〆切は目前。時間的圧力も上乗るミッションインポッシブルな展開に…)
このようなケースが日常茶飯事のため、データドリブン型のプレゼンをまとめていく度にウンウン、ウンウン唸って、時たま泣きそうになります。
しかし、ある技に出会ってから、データドリブン型のプレゼンを考えやすくなりました。
ここだけでこっそりお伝えすると、その技は「ファクト&示唆」と呼ばれる代物です。ファクトと示唆を明確に区別して取り扱う。以上それだけ。(それだけなのに、なかなかどうして難しい)
詳細を説明します。
・ファクトとは客観的事実。データ解析や集計結果のこと。
・示唆とはメッセージ。データから言えること。解釈や推論。
このファクトと示唆を「意識的に分ける」ことで思考が整理しやすくなり、「スライドに何を書こう……」と悩む回数は9割減になりました。(当人比)
ファクトと示唆を分けるとは、次の例文のような感じです。
「今にも大雨が降り出しそうな雲が空を覆っています。傘をお忘れなく」
お気づきでしょうが、これは正解例でなくダメ例です(引っ掛け問題でした)。
客観性を保つべきファクトに、示唆や主観性が紛れ込んでいないでしょうか?いますね。この状態を「示唆混入ファクト」の罠と呼んでいます。料理でいう異物混入。炎上の火種。
[解説]-----------------------------
・「今にも大雨が降り出しそうな雲」は、解釈としての示唆がファクトに紛れ込んでいます。雲がでていることは「ファクト」、大雨が降り出しそうは解釈なので「示唆」。
・「雲が空を覆っている」は「覆っている」という人によって解釈が分かれる主観的表現がファクトに混入しています。
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戦略コンサル出身の師匠は「意識的に分けるじゃ弱い。病的に、もう病的に、ファクトと示唆を分けるのだ!」と病的に言っています。
(私も社内でスキル講座の講師をする際には、師匠の口癖の感染者になっています)
先ほどのダメ例文を、病的にファクトと示唆に分けるとこうなります。
「現在地の空は、雲がほぼ100%を占めています。雲の色は暗灰色、形は層状。過去、同様の雲が観測された際は20mm以上の雨が降っています。今回も大雨が降ると言えるでしょう。傘をお忘れなく」
空・雨・傘くらいシンプルな話では、ダメ例のように省略して語っても問題は発生しませんが、ビジネスシーンでは「示唆混入ファクト」は致命傷に繋がりやすいです。議論の末に、何が正しくて、何が間違っているかが分からなくなるパニックタイムに…。
データからメッセージを考えてスライドにまとめる作業も簡単ではないですが、その際もファクト&示唆の考え方は有効です。
ファクトはファクトだけ、示唆は示唆として、明快に書き分けてみてください。自分の思考が整理でき、プレゼンの聞き手にとっても分かりやすくなったと実感できるハズです。私はその経験がありました。
聞き手にとって分かりやすいか、そこがプレゼンの肝ですよね。
(余談:行動経済学でも「聞き手にとって分かりやすい」ことの価値が示されています。人はスッと理解できる話をする人を、より信頼し、より知的と感じるそうです。認知容易性と呼ばれています。)
データドリブンをしていると、ついつい難解カタカナ言葉を量産しがちになるので、気をつけています。「むずかしいことを、ここちよく」、マイテーマです。
まとめ
需要があれば、次回もデータドリブン型のプレゼン技についてご紹介できればと思います。
需要調査および後学のため、アンケートへのご協力をお願いしております。
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博報堂プロダクツ データビジネスデザイン事業本部 データマーケティング二部「まるで料理をするように、データをさばき、戦略をこしらえ、顧客を喜ばせる」という想いから、データシェフを名乗って活動中。
慶應義塾大学卒業後、6年間一貫してデータドリブンマーケティングに従事。
(筆者肖像制作: 榎本デッサン堂)