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データシェフ横井です。
データの料理術6回目は、広告・CRM戦略の提案業を営む中で感じた

「料理のように、戦略も味見できまいか?」

という戦略の自己チェック方法ついて。一つには戦略の主語を入れ替えてチェックする「主語チェンジ法」があります。背景から順にご説明します。

若手は戦略をどう立てて、どうチェックしているか?

~若手データドリブンマーケターあるある~

上司「来週までに、データを見た上で戦略プランをまとめておいて。」

若手「はい!」

若手、作業にかかる。
(よし、まずは調査データをクラスタリングして、ターゲット軸を定めるぞ!………そうだ、顧客データと購買データを紐づけして、そこから見える「実購入者像」VS調査データにいる「意識では買いたい層」のギャップ分析をしてみるか。ふふ。……さらに、AudienceOneのデータで、サイト来訪者の他サイト回遊状況も掴めるから、それも分析するぞ!……まとめ方は、ターゲット別の購買ファネルで良いかな。よし、やるぞ!)


………1週間後。

若手「できました。」 100ページ近い資料を出しながら。

対する上司の反応あるある。
1.「うーん。ようするに戦略をヒトコトで言うと何なの?」
(若手、返答に窮する。)

2.「色々見てくれてありがとう。しかし、大事な⚪⚪の視点が欠けている。話はそれから。……あ、それ明日の昼までね。もう時間無いから。」
(若手、夜の飲み会を泣く泣くキャンセル。)

一方、滅多にない上司の反応
「なるほど。おもしろい!あとは、この点もつけておいてね。」パーンッと膝を打ちながら。
(若手、ニンマリ。)

なぜ、一週間の苦労が一蹴されるような悲劇が生まれるのか?

若手の立場から反省してみると、元凶の一つは
若手が戦略の良し悪しを自分でチェックできないこと」だと思っています。
戦略を自己チェックできないので、100ページの資料を推敲せず、ついそのまま上司に出してしまう。つまり、若手の戦略チェック方法は「上が良いと言うか?」なのです。

事実、私もこの罠にハマりまくり、数々の悲惨な会議室をクリエイトしてきました。

そこから、「ぐすん。戦略も料理みたく、人に出す前に味見できたら良いのに……。できないのかな?」と思い至りました。

しかし、答えは中々分からない。「結局、経験の成せる業では?」と諦めかけていたある日、一人の起業家に出会いました。

その起業家は、ふとクイズを出してきました。
「日本に来る外国人観光客を2倍にするには?」

私は「日本の知られざる魅力をPRします。たとえば、地方の民宿での文化体験。なぜなら、現地の人との触れ合いを楽しみたい層が一定数存在すると考えられるから。」と答えました。

「浅い、浅すぎる。君の回答、日本をイギリスとかに代えても、成り立つよね?」

「た、確かに…。」

「あと、実行の現場を想像したかい?」

「いいえ、そこまで頭回りませんでした。」

「君の戦略では、実行の段階で現場が困る。たとえば、知られざる魅力を中国人・アメリカ人・イタリア人などの、誰に伝えるのか?かつ、アメリカ人とイタリア人で同じ魅力を伝えるので良いのか?これら実行現場の論点に、君の戦略はヒントすら提供できていない。」

「うっ。身に沁みますし、その状況、覚えがあります。先週の施策アイデア会議が右往左往してしまったのは、私の立てた戦略の浅さが一因だったのか…。」

「そうそう。」

という問答があり、「主語を競合他社に代えても成り立つ戦略は、浅くてアカン。」という示唆を学びとりました。

これを戦略味見ワザに仕立てたものが、「主語チェンジ法」です。
立てた戦略の主語を競合他社に代えてみる。成り立ったら、ダメ。成り立たなければ、悪くない。このワザを使うと「主語チェンジ不可の“悪くない戦略”」になるまで、自力で思考を深めていくことができます。

戦略提案の“受け手”側に立つと、どう見えるか?

突然ですが、あなたは今から、織田信長です。(突然ですね。)

想像してください。

今あなたは、戦国最強の騎馬隊を擁する武田軍との合戦を目前に、二人の軍師から提案を受けています。

一人目はこう言いました。「殿。時代は刀でなく鉄砲になります。鉄砲で戦えば、必ずや勝利を手中に収めることでしょう。」

二人目は「殿。戦国最強の武田騎馬隊には、刀でなく鉄砲です。鉄砲で騎馬隊を挫くことができれば、武田軍は驚き慌てて士気はガタ落ち、ゆえに歩兵戦でも我々に押し込まれ、やがて総崩れになるでしょう。」と言いました。

さあ、あなたはどちらに命運を託しますか?


当然、後者。ですよね?
前者は、そのまま武田側にコピペ提案できてしまいますし、きっと実行現場も混乱します。現場担当者「刀でなく鉄砲か。では鉄砲、どこに何丁用意すればいいのだろう…? 時間も無いし、鉄砲も限られるから、10人1人の割合で全体に行き渡らせておこう。」……その結果、武田の騎馬隊の突進を単発の鉄砲では止められず、あえなく敗走する。その光景が目に浮かんでこないでしょうか。

一方、後者の場合。現場担当者「武田騎馬隊には鉄砲か。では騎馬隊とはどこで衝突するのだっけ?その場所に、可能な限り鉄砲を集めて置いておこう。」その結果、武田の騎馬隊を集中砲火で食い止めて、武田軍が「我らが最強の騎馬隊が止められた…だと?」とザワザワしだす。その展開をイメージできます。

あ、もう信長公モードは解いて下さって結構です。ありがとうございました。

最後に「主語チェンジ法は便利そうだ。しかし100ページの資料ではどうやるのか?」

このようなお声が聞こえてきたので、一つの処方箋をお渡しします。

分析資料のド頭に、次の1スライドサマリーを入れてみてください。主語チェンジ法による自己チェックをしやすいハズです。

その際、ポイントは「課題をリアリティ満載に書くこと」です。
たとえば、論点が「日本に来る外国人観光客を増やすには?」のケースでは

悪い例:「課題は、『地方民宿での文化体験』の認知度・理解度の低さ。」

悪くない例:「課題は、一度日本に来てそれっきりのアメリカ西海岸の独身社会人(20-30代)が、東京・大阪・京都以外の魅力(たとえば、東京から船で3時間の式根島の民宿で、現地の人々と触れ合いながら、焼き魚や温泉を楽しめること)を知らないこと。そのため、初来日時に東京・大阪・京都を巡ったことで満足してしまい、リピート来日に繋がっていないのではないか。」

で、その根拠たるデータが後のスライドに続いていく。
ここまで課題(≒突破口)を具体化できていると、議論も具体的かつ建設的になります。

このように「ターゲットを、どうしたらウゴかせるか?」という『突破口』を、ありとあらゆるデータから探り出していく。それが、「データから戦略を作る」ことなのかな、と思っています。


ちなみに、そのような「施策が見える戦略」を産み出せても、実行に結び付かないケースもあります。

その状況を防ぐ一つの処方箋として、「巻き込みワークショップ」を開催することがあります。巻き込みワークショップは、まず戦略と根拠を説明し、次に実現アイデアを社内外のプロジェクトメンバー総出で絞り出し、議論していくもの。「他部署のメンバーも自分ゴトとして考えてくれて、様々な視点からアイデアと懸念点が集まった、実りある会だった。」という嬉しいお声をよく頂きます。

少し脱線しましたが、以上、戦略の味見をするには?でした。

ここまでお読み下さりありがとうございます。アナタに、不躾ながら一つお願いがございます。

アナタの知る戦略の味見方法を、我々悩める若人に授けていただけないでしょうか?

ハッシュタグ #戦略味見 でご教授くださいませ。

  • 博報堂プロダクツ データビジネスデザイン事業本部 データマーケティング二部
    「まるで料理をするように、データをさばき、戦略をこしらえ、顧客を喜ばせる」という想いから、データシェフを名乗って活動中。
    慶應義塾大学卒業後、6年間一貫してデータドリブンマーケティングに従事。
    (筆者肖像制作: 榎本デッサン堂)

    参考:データビジネスデザイン事業本部の紹介・採用サイト