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メタバース生活者たちと共にデジタル世界のこれからを考える vol.6~メタバース生活者と「コミュニティ」~共創が育む新しい企業接点
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メタバース生活者たちと共にデジタル世界のこれからを考える vol.6~メタバース生活者と「コミュニティ」~共創が育む新しい企業接点

博報堂は、2024年11月に、メタバース空間における新しい生活者価値の創出と、イノベーションを生み出すことを目指し、研究員全員がメタバース生活者当事者によって構成されたコミュニティ型プロジェクト「メタバース生活者ラボ™」を設立しました。

本連載では、メタバース生活者ラボの理念に共感いただいている、メタバース生活者当事者でもあるゲストとの対話を通じて、メタバース生活者の未来を探求していきます。

第6回は、メタバースプラットフォーム「cluster(クラスター)」のプロダクトマネージャー(PM)を務めるとみねさんをお招きし、メタバース生活者ラボのメンバーとともに「メタバース生活者にとっての、コミュニティ」 をテーマにした座談会を行いました。

東峰 裕之(とみね)
クラスター株式会社 執行役員 開発本部長
プロダクトマネージャー
 
瀧﨑 絵里香 
メタバース生活者ラボ リーダー 
博報堂 生活者発想技術研究所 上席研究員 
 
十河 瑠璃 
メタバース生活者ラボ 研究員 
博報堂 生活者発想技術研究所 上席研究員 
 
和田 周 
メタバース生活者ラボ 研究員 
博報堂 生活者発想技術研究所 研究員 
 
堀 紫
メタバース生活者ラボ 研究員 
博報堂 生活者発想技術研究所 上席研究員 

バーチャル空間で生活者と繋がる・コミュニティを持つ価値

瀧﨑
昨今、メタバースについては様々な技術研究がありますが、博報堂としては「生活者発想」 を大切にしていて、バーチャル空間で暮らす人々の価値観や行動を、生活者に寄り添う視点で研究していくことを主軸に置いています。やはり、メタバースで生活している人にしかわからない感覚やリアルな体験が多く存在しますし、その独特の感覚を活かした研究が求められていると考えています。

今回は「コミュニティ」をテーマに、バーチャル空間での繋がりやバーチャルの人格同士が交流することの価値について、深く掘り下げていければと思います。

それでは、まず最初にとみねさんの自己紹介からお願いします。

とみね
私は2018年12月にcluster(クラスター)へ入社し、現在はPMとして主に自社製品の開発を担当しています。それ以外にもコミュニティ運営に関わっていて、毎月配信しているユーザー向け番組に出演して毎週のアップデート内容を紹介したりと、ユーザーコミュニティへ情報を届ける役割も担っています。

もともとはUIデザイナーとしてキャリアをスタートし、前職からプロダクトマネジメントやコミュニティマネジメントにも携わるようになりました。コミュニティづくりやUGC(ユーザー生成コンテンツ)の領域が好きで、ユーザー同士がコンテンツを作り合い、楽しみ合う文化にずっと関わってきたのです。

また、昔からインターネットが好きで、中学生の頃からMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)にのめり込むなど、オンラインゲームを通じてコミュニケーションを楽しんできた過去があります。そういったUGC(ユーザー生成コンテンツ)の世界と、MMOのようなオンラインで交流しながら遊ぶ文化が重なり合う場所として、今はメタバースの領域で仕事をしているという感じです。

瀧﨑
メタバースが登場する以前から、現実とは別の世界でゲームの中のキャラクターや人格で活動するというスタイルに魅力を感じていたのでしょうか?
とみね
そうですね。中高生時代は結構サードプレイス的なものに憧れるというか、何かに救いを求める傾向があると思うんですけど、そういうところにオンラインゲームでのコミュニケーションがはまった世代だと感じています。

また当時は、Yahoo!メッセンジャーやMSNメッセンジャーといったチャットツールが主流でした。オンライン上で誰かと会話するという体験がとても新鮮で、「リアルの世界だけではなくネットの世界にもうひとつの生活の場がある」といった感覚を持っていましたね。

今でこそオンラインのコミュニケーションが一般的になっていますが、その頃はまだ社会的な理解が追いついていなくて、そういうところに対するプライドを持っていたのかもしれません。

瀧﨑
cluster(クラスター)の中でUGCを通じて生活者の方と繋がる取り組みについて、これまでどのような経験をされてきたのか教えていただけますか。
とみね
私がcluster(クラスター)に入った頃は、VTuber向けのバーチャルイベントを中心に運営していました。その頃のコアユーザーは、月に1回しかないイベントに毎回参加するような熱心な方が多く、ほとんどが顔見知りの関係でした。その後、常設型のワールドができて、ユーザー自身がワールドやイベントを作れるようになると、コミュニティが徐々に広がっていきました。

私自身、運営側でありながらも初期のコアユーザーとは友人のような関係で一緒に遊んだりして、「コミュニティの成長を間近で体験できた」のが大きな経験だったと思っています。

瀧﨑
ぜひ、そのご経験を踏まえて伺いたいのですが、企業の方がリアルではなくバーチャル空間で生活者と繋がること、コミュニティを持つことの価値についてどう思われていますか。
とみね
いろんな価値の捉え方があると思いますが、私は2つほどあると考えています。まずは、特定の目的で集まっている人たちや、何かの軸を中心に集まるコミュニティのあり方です。例えばVTuberやIPのファンなどは、特定の対象に対してものすごく熱量が高いので、そうした人たちの様子を間近でバーチャル空間で観察できる点は、リアル以上に貴重だと感じています。

もうひとつは、特に目的はなく、ただ存在するソーシャルなコミュニティとの接点を持つこと自体にも価値があると捉えています。

バーチャルはリアルよりもコミュニティの"核"になりやすい

瀧﨑
バーチャル空間の中にいる生活者の方が本音を出しやすいというか、「現実では出せない熱量や活気がある」というのをcluster(クラスター)の方からもよく伺うのですが、とみねさん自身も、そういった雰囲気や違いを感じられることはありますか?
とみね
私はリアルのコミュニティ活動にも長く関わってきましたが、そもそもリアル/バーチャル問わず、コミュニティをけん引する人って熱量が大きいと感じる一方で、バーチャルには、より多くの人が自分の熱量を発揮しやすい独自の方法や切り口があると考えています。

リアルの世界でコミュニティの中心になるのは簡単なことではありません。しかしバーチャル空間には、「小さいけれど熱量があるコミュニティ」が存在していて、その中でアバターを工夫したり面白い企画を開催したりと、さまざまな方法でコミュニティの“核”となることが可能であり、多くの人にチャンスが開かれているのです。

こうしたコミュニティを企業と組み合わせて、ユーザーと一緒に盛り上がる体験を提供できる点に大きな価値があります。自分の意志で場を作り、みんなを巻き込んで盛り上がる体験は、普段の仕事や学校のように外部から目的が課される環境とは違い、よりプリミティブな楽しさがあり、それが個人の自信や成功体験につながるわけですね。

そう言う意味では、バーチャル空間はユーザーやファンと企業の間で特別な関係を築くのに非常に適した場だと言えるでしょう。SNSマーケティングでも一定の効果は得られますが、バーチャル空間では手段の幅と多様性が格段に広がるのです。

cluster(クラスター)の事例を挙げると、近鉄不動産さまの『バーチャルあべのハルカス』ワールドにいるあべのハルカスの展望台「ハルカス300」のキャラクターである『あべのべあ』は、キャラクター自身が様々なワールドやイベントを渡り歩き、コミュニティの一員として受け入れられた結果、ファンと企業の間に強い一体感が生まれました。テキストコミュニケーションが中心のSNSと違って、バーチャル空間ではより身体的な体験に近い形での関わり方や、多様なインタラクションを通じてユーザーの熱量を引き出すことができる点が面白いところだと思います。

瀧﨑
メタバースやバーチャル空間の方が、いろんな手段をもっと自由に、身近に、ハードルなく体験できるということなんですね。
とみね
あとは、クリエイティブな手段がより行使しやすいといった側面もあります。例えば、絵を描くスキルがある人は、イベント用のキービジュアルを作ったり、アバターのテクスチャ改変や、アバター自体をデザインしたりと、多様なアウトプットが可能になります。こうした活動は、もともとクリエイティブが好きな人だけでなく、これまで一歩踏み出せなかった人にとっても挑戦しやすく、また空間上で即座に周りの人から反応やフィードバックを得られるため、自分の成果を実感しやすい環境だと言えるのではないでしょうか。
瀧﨑
私たちの立場からすると、まだメタバースやバーチャル空間を通じて普段は接点のないユーザーと繋がるチャンスを十分に活用できていない企業も多いと感じています。そうしたなかで、ユーザー自身も自分の技術やアイデアを活かして共に作るような“共創体験”を起こしやすいと言うのが核にあるのかなと、とみねさんのお話を聞いて感じました。

とみね
メタバースの価値を考えると、「クリエイティビティ」と「コミュニティ」の2つの軸が重要です。それを企業価値に変換するには、まずクリエイターやキャラクターと直接コラボする発想があります。

もうひとつは、裏にいるユーザーやファンのコミュニティです。これはメタバース内の生活者にあたるコアな部分であり、その人たちが大事にしている価値と自社の企業価値がどうマッチするか。どのようにリスペクトを示すかをしっかりと考えることが重要になります。

つまり、コミュニティのカルチャーや雰囲気を理解して初めて価値のある企画が作れるということです。単に「メタバースに空間を作れば人が来るだろう」という直感的な期待とは違うんですね。

実際に取り組んでいる方は理解していると思いますが、これから挑戦する方にとっては、そこを誤解すると残念な結果になりやすい部分だと思います。

「小さいけれど熱量が高い」層をいかに巻き込めるかが重要

瀧﨑
単に人数や規模だけを追うのではなく、バーチャルの特性を活かして質の高い体験を提供することが大事ということですよね。そうすることで、企業側にもユーザー側にも双方にメリットが生まれるでしょう。

とみねさんから見て、企業に提案してみたいことや、企業と協力して一緒に挑戦してみたいことは何かございますか。

とみね
cluster(クラスター)をはじめとするメタバースプラットフォームでは、バーチャルでの活動を通じて生活できるクリエイターが着実に増えており、今後さらに大きな可能性が広がっていくと感じています。

現実世界で言えば、コミックマーケット(コミケ)における企業ブースの誕生のように、企業が参画することで市場が拡がったり、イベント自体の継続性が高まった例もあります。メタバースでも同じように、企業が適切に関わることで、新しい展開の可能性や継続的な場づくりが可能になると思っています。

もちろん企業にとっては収益性や投資の視点も重要ですが、クリエイター活動と企業活動が良いバランスで結びつくことで、より魅力的で、持続可能なものへと進化していくのではないでしょうか。

特に、生活者に近い商品やサービスを提供している企業は、バーチャル空間と非常に相性が良く、独自の価値を生み出せる可能性があると言えるでしょう。例えば、ブランドの商品を生活者のバーチャル空間に自然に溶け込ませることで、よりリアルで魅力的な感覚をユーザーに届けられるようになります。

瀧﨑
お話の中で出ていた「小さいけれど熱量が高い」という層は、重要なキーワードだと思います。企業にとって、規模は小さくても強い熱量や表現力を持つ層をいかに巻き込み、共に価値を生み出していくかが大きなポイントになりそうです。
とみね
現実世界でも、D2Cブランドの台頭や音楽ジャンルにおけるLo-Fiやシティポップのように、若者の小さくコアなコミュニティから生まれたトレンドがシーンを形成していく流れが当たり前になっています。バーチャル世界そのものをそうした流れの中に見出すこともできますし、その内にある多数のクリエイター発のシーンに対して、、企業ならではの強みでシーンを一緒に盛り上げるにはどうすればよいのか、リスペクトをもって考えていく必要があるでしょう。
瀧﨑
バーチャルだと表現手段が広がることで、普段(リアルで)は身につけられないアクセサリーなど、普段興味がなかった領域も身近に感じられるわけで、こうした特性をうまく活かすことは、企業にとっても大きなチャンスになるとあらためて感じました。

例えば、化粧や美容にあまり興味のない層や、性別・属性が異なる方にも、バーチャル空間ならアプローチが可能になるわけです。どうしても、既存の顧客との接点として捉えがちですが、バーチャル空間を使うことで未来の顧客を育てていくという視点も重要だと思っています。

とみね
価値を伝えるという観点では、リアルに近い体験をオンライン上で手軽に提供できる点が、バーチャル空間の普遍的な価値の一つだと思います。そういう意味でも、バーチャル空間の活用方法には色々な可能性があり、企業側も最適な方法を試行錯誤していくことが肝になるでしょう。

AIでは代替できない「人と繋がる体験の価値」

瀧﨑
今後、バーチャル上のコミュニティや空間がどう発展していくのかについて、とみねさん自身の見解や願望も含めてお伺いしてもよろしいでしょうか。
とみね
メタバース内で活動するクリエイターの中には、音楽ライブやVTuber、アバター制作など様々なジャンルの方がいますが、社会の中での認知度としてはまだまだアンダーグラウンドだと思っていて。今後は、インディーズシーンやメジャーシーンとマッシュアップする機会が増え、ニコニコ動画のボカロPのようにメタバース発の新たなスターが生まれるようになっていけば、より市場自体が発展していくのではと考えています。
瀧﨑
最近ではAIなどの技術によって、クリエイティブの制作や表現の手段がより身近になってきています。そうしたなかで、メタバースやデジタル空間の自由度を活かして、一般の生活者もよりアクティブに表現や活動ができる可能性は、社会全体として大きく広がっていくのではないかと感じています。

また、今ではフォートナイトやマインクラフトなど、子どもたちがアバターを持って遊ぶことが自然な時代になっています。この先の10年後には、メタバースとの接点がさらに当たり前になっているかもしれませんね。

とみね
例えばストリーマーの方々を見ていていいなと思うのは、VTuberと実写で配信されている方が一緒になって遊んでいるところなんです。そういう意味では、私たちの世代ではまだ、アバターを特別視しすぎていた部分もあるかもしれません。もっと自然に、当たり前のものとしてアバターを使いこなしていくのが今後の広がり方なのかなと思っていますね。

瀧﨑
確かに、アバターが当たり前の存在になっていくと、自分には合わないと思っていたカテゴリーやジャンル、ブランドも、バーチャル上では気軽に試せたり、身近に感じられるようになる。そういう風に世の中の感覚が少しずつ変わっていく可能性もあると感じながらお話を伺っていました。
とみね
ファッションの感覚とアバターの活用はだいぶ感覚が近いと感じていて、例えば新しいスニーカーを買うのと、新しい衣装をアバターに着せるのは体感的にかなり似ている。そう考えると、一人ひとりの顧客に対する提案が、リアルとバーチャルの両方に広がったと捉えることもできますよね。リアルではこのブランド、バーチャルではこのブランド、といった使い分けもありえるわけです。
瀧﨑
アバター文化は、特に上の世代ほど浸透していない部分もありますが、企業の方がそこを理解してうまく活用できれば、一気に新しい可能性が広がると感じました。今回のお話を聞いて、まさに「デジタル生活者発想」というか、現実の立場から離れてアバターの中で考えることで、新しいやりたいことや消費の可能性がたくさん生まれることを実感できました。

最近はAIの進化で、企業側でもクリエイティブの制作が容易になってきた一方で、AIでは代替できない領域として「人と繋がる体験の価値」があらためて際立ってきたように感じています。だからこそ、バーチャル空間のように生活者と直接繋がれたり、アバター同士で顔を合わせたりするような距離感は、通常の企業と顧客の関係ではなかなか実現できない貴重な場だと思っています。

十河
私も生活者の盛り上がっているコミュニティに入って、その人たちに好かれるようなマーケティングを試みることはありますが、現状ではまだメタバース自体の理解が十分とは言えない部分もあります。

一方で、特に今の子どもたちはゲームやアバターの世界を当たり前のように楽しんでいるので、企業には、こうしたメタバースの盛り上がりを前提として捉え、正しくアピールしていくことが大切だと感じました。

和田
僕自身もメタバース空間で活動していて、イベント運営やVTuberのコミュニティ作りなどに関わっているなかで、とみねさんのお話には非常に共感できる部分が多くありました。

メタバースの価値は「クリエイティビティ」と「コミュニティ」の2軸で成立しているという点はまさにその通りだと思いますし、メタバースでは熱量のある人同士が非常に繋がりやすく、複数人で一緒にイベントやワールドを作り上げることが可能です。

このように、メタバースでは好きなことを共有する人々が自然に集まり、クリエイティブな活動を拡張していけるのが大きな特徴だと思います。こうした特性を企業が理解し、コミュニティの構造や熱量の高いクリエイターをしっかり把握して、企業の価値とコミュニティの価値をうまく結びつけることができれば、大きな成果を生み出せるのではと思いました。

私は普段からゲームをよくプレイするので、できないことができたり新しい場所にいるようなワクワク感はもちろんありますが、アバターの姿で集まると初対面の人でも一気に親しくなれる気がしました。

しかもリアルでは、部屋でパジャマでくつろいだ状態でも参加できるのも魅力です。企業の方と生活者が非日常的な空間にアバターで気軽に集まって、何か特別な体験を一緒にすると、リアルではありえない速度で距離感が縮まって熱量を高めることも色々な方法でできそうなイメージが湧きました。

※肩書は取材当時のものです

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  • 東峰 裕之(とみね)
    東峰 裕之(とみね)
    クラスター株式会社 執行役員 開発本部長
    プロダクトマネージャー

  • メタバース生活者ラボ リーダー
    博報堂 生活者発想技術研究所 上席研究員

  • メタバース生活者ラボ 研究員
    博報堂 生活者発想技術研究所 上席研究員

  • メタバース生活者ラボ 研究員
    博報堂 生活者発想技術研究所 研究員

  • メタバース生活者ラボ 研究員
    博報堂 生活者発想技術研究所 上席研究員

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