
ヒット習慣予報 vol.360『忍びの癒し術』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの上利です。
新年度、いかがお過ごしでしょうか。三寒四温の不規則な気候で自律神経は乱れやすく、新たな環境に気持ちが追いつかないように感じる方も多いかもしれません。
そんなどこか心許ない気分にも寄り添えるような「癒し術」を、今回は取り上げます。
みなさんはどんな癒し術をお持ちでしょうか?
癒し術にも色々ありますが、どうやら最近、仕事中に周りの人には分からない方法でひそかに癒される「忍びの癒し術」を実践する人が増えているようなのです。
ここからは、具体的な「忍びの癒し術」の例をご紹介しながら、その背景にどんな心理があるのか、紐解いていきたいと思います。
まず一つ目にご紹介するのは、「カバンの中にぬいぐるみを忍ばせて過ごす」という忍びの癒し術です。
仕事や面接に行くときに、特にカバンから取り出すことはせず、ただずっとカバンの中にぬいぐるみを忍ばせておくと、それだけでいつもそばに味方がいてくれている安心感を味わえるというのです。たまにカバンの中を覗くと目が合って癒されるとのこと。同様の目的で、カバンの外側ではなく内側にお気に入りのキーホルダーを付けるという行動をしている人もいます。
私も試しにカバンの中にお気に入りのカンガルーのぬいぐるみを忍ばせて出社してみたのですが、中にぬいぐるみがいると思うと、満員電車の中でカバンがつぶされないよう気を付けたり、椅子にカバンを置くときも優しく置いたり、自然とぬいぐるみを大切に守ろうとする行動を取っていることに気づきました。自分にとって大切なものを大切にするという行為自体にも、自分自身を大切しているような癒し効果があるように感じます。もちろん、仕事中にふとカバンの中にいるカンガルーのことを思い出してふふっと温かい気持ちにもなりました。
二つ目にご紹介するのは、「オンライン会議中に相手からは見えない位置に好きなものを並べまくる」という大胆な忍びの癒し術です。
自宅からオンライン会議に出席する際に、自分からは見えるけれどカメラには映らない場所に、推しの写真や好きなぬいぐるみを並べることで、癒されながら会議に出席できるのです。オンライン会議の参加者の一人のような位置に推しの写真を置いてモチベーションを上げるという人もいるようです。
テレワーク・オンライン会議の普及によって可能になった新たな忍びの癒し術ですね。会議や面接で緊張しやすいことに悩んでいる方にとっては、気持ちを落ち着けて出席できる画期的な方法かもしれません。
最後にご紹介するのは、「隠しロック画面」です。
スマホのロック画面を長押しすると別の画像が出現するといったアプリを使って、推しの写真などを隠しロック画面として設定する人がいるようです。
ロック画面は周囲の人から見えることが多いため、オタバレ(=オタクであることがバレる)防止目的で隠し機能を使う人もいると思いますが、オタバレが気にならない人にとっても、長押しすると隠れていた推しが現れるという体験自体が面白く、癒されるようです。
では、なぜこうした「忍びの癒し術」が広まりつつあるのでしょうか?
まず前提として、情報化による生活のスピードの加速、人間関係の複雑化などを背景に、現代人にとって、ストレスが心身の健康に対する重大なリスクになっているということがあります。
※厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書-こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に-
特に働き盛りの年代において、こころの健康状態が「あまりよくない」「よくない」と回答する割合が高く、ストレス状況は深刻になっています。
※厚生労働省 令和6年版 厚生労働白書-こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に-
そんな現代のストレスの一要因として、SNSの普及によって何もかもがオープンになり、常に他者から「見られる」状況になっていることが挙げられます。
推し活ももはやファッション化し、自己表現の一手段となっています。自己表現は良いことでもありますが、この常に「見られる」状況によって、常に他者からジャッジされているような感覚に陥り、無意識のうちに私たちの心は疲弊しています。
そういった何でも他者から見られるオープンな時代に、ぬいぐるみも推しも他人に見せるのではなく、あえて「忍ばせ」て自分ひとりだけで楽しむ贅沢、自分だけの秘密を作るような感覚を味わうことで、推しやぬいぐるみが持つ癒し効果が増幅するのではないでしょうか。
最後に、「忍びの癒し術」のビジネスチャンスとして、下記のようなことを考えてみました。
「忍びの癒し術」のビジネスチャンスの例
■外出時にこっそり着用できる、インナーウェアの推しグッズ
■外から見たらシンプルなデザインでありながら、自分に見える内側にだけ好きな絵柄を入れられるオーダーメイドマグカップ
■内側にキーホルダーを付けることに特化したデザインのバッグ
カバンの中にぬいぐるみ忍ばせ生活は個人的にかなり気に入ったので、しばらく続けてみようと思います。
新年度で緊張気味の皆さんも、好きなものをこっそり忍ばせて乗り切れるよう、応援しています。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
この記事はいかがでしたか?
-
ストラテジックプラニング局
ヒット習慣メーカーズ メンバー2022年 博報堂に入社。
エンタメと語学のオタク。学生時代から現在も演劇を続けており、役者期間はプレゼンの滑舌が良くなります。