広告メディアビジネスの次世代型モデル"AaaS"とは ~イノベーションを支える仕組みと方法について 【前編】博報堂DYグループの「AaaS」モデルとは
アドバタイジングウィーク・アジア2021 博報堂DYグループセミナーレポート
今年で6度目の開催となったアドバタイジングウィーク・アジア。新型コロナ感染予防の観点から、An Immersive Digital Experienceと題したオンラインイベントとして5月27日に開催(※)されました。社会の情勢に伴い、変化を求められるマーケティング・コミュニケーション業界において、示唆に富んだ多彩なセッションが繰り広げられました。
本稿では、博報堂DYメディアパートナーズの安藤元博常務執行役員、藤本 良信メディアビジネス基盤開発局長、小山 裕香BIソリューション開発部長によるセッションの模様を前編・後編に分けてご紹介します。
※9月にリアルイベントとオンラインイベントのハイブリッド形式開催も予定しています
スピーカー
安藤 元博
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
株式会社博報堂
株式会社博報堂DYホールディングス
常務執行役員
博報堂DYグループの「AaaS」とは
- 安藤
- 本日は、広告メディアビジネスの革新を進めるモデル、博報堂DYグループの『AaaS』についてご紹介します。
昨今あらゆる産業で「イノベーション」「デジタルトランスフォーメーション」の必要性が問われるようになり、我々もそのお手伝いをする場面が増えてきています。
では、我々自身が身をおく「広告業界」では、デジタルトランスフォーメーションは進んでいるのでしょうか。
「テレビとデジタルは評価の指標もバイイングの仕方も別。事業成長やマーケティング効果にどのようにつながっているのか分かりにくい」という広告主からの声もあります。そのような声に応えるため各媒体社やプラットフォーマーからも、さらには広告業界外のプレイヤーからも新しいサービスが次々に提供されているという状況があり、非常に有益で進化したツールが多く出てきています。
ただ、それぞれが「個別」になってしまっているという課題があります。
どのようなツールがあるのか、それぞれ何ができて何ができないのか、何をどう組み合わせどう補えばいいのかも整理できていないのが現状です。ツールを入れてはみたものの実際には使われていない、ということすら、残念ながら起きているようです。放送局からもデジタルプラットフォーマーからも有益で進化した提案が出てきていますが、広告主側から見るとそれぞれが「点」となってしまっていることが課題となっています。
広告業界こそが抜本的な改革が必要なのではないかと考え、私たちは『AaaS』というモデルを提唱しています。
『AaaS』というのは “Advertising as a Service”の略で、広告メディアビジネスが向かうべき方向、自分たち自身のデジタルトランスフォーメーションを果たすモデルであると考えています。
デジタル化は、あらゆる産業に変革をもたらすと言われています。例えば、自動車業界は車という「モノ」を売っていた産業から、「モビリティサービス」を提供する産業に転換すると言われています。
では、広告業はどうか。現状「サービス」業として捉えられている部分もありますが、果たして本当にサービス業になっているのでしょうか。
広告業は6兆円規模のビジネスとなっていますが、広告枠の売り買いで収益を上げている側面が非常に大きい。「枠」の売り買いというのは、あえていえばモノの売買と同じようなものだと考えられます。しかし「枠」ではなく、広告にまつわる「効果」を売り物にすることが、本当の「サービス」化ではないでしょうか。
では、広告主にとっての広告の効果とは、何でしょうか。
あるターゲット層の人たちにブランドを知ってほしい、好きになってほしい。潜在的なユーザーにお店やサイトに来てほしい、買って欲しい。すでに買っている人に買い続けてほしい等ありますが、そのようなマーケティング上のターゲットと評価指標と広告メディアの売り買いの取引指標が乖離しているというのが現状です。それぞれのメディア間で指標も異なります。こんな風に広告を出したい、という目的をストレートに達成することが難しいというのが現状でもあります。それを変えようというのが我々の取り組みです。
例えば、検索やサイト来訪や、認知やブランド好意をあげる等、目的に応じてテレビとデジタルを横断し、広告を提供していく。目的にダイレクトに応えていきます。
そのためにまず、膨大なメディア取引データを一元的に扱えるデータウェアハウス(以下DWH)、システム基盤を作りました。次いで、メディアデータと博報堂DYグループの知見を掛け合わせ、アルゴリズムを作り、ツールとダッシュボードの形で提供できるようにしています。
『AaaS』はシステム基盤をベースに、プラニング・モニタリング・バイイングの3つの要素が統合ダッシュボードの上で動いていくことで、統合メディア運用をしていくというモデルです。
これまで分断され、かつ目に見えない要素が多かったため、広告メディア活動全体からみると無駄も生じていたという側面もあるかもしれない。この「無駄」を排除してメディア効果を最大化し、事業成果に直接的に貢献していく、ひいては広告主の事業成長に貢献していくのが『AaaS』モデルなのです。
広告主のみなさまへの提供価値についてもう少し詳しくお話します。
まず骨格の部分ですが、独自の統合メディアDWHの上に、プラニング・バイイング・モニタリングという、広告メディアビジネスで扱う3つの基本要素が一貫して回るというシステムを実現しました。これらを一貫してご提供します。
博報堂DYグループは、『AaaS』を実現するために、全ての基本となる統合メディアDWHを最初に作りました。これが出来たことで、これまで分断されていたプラニング・バイイング・モニタリングを一貫して提供できるようになり、これまで手作業で時間をかけていたことが圧倒的に早いスピードで出来るようになります。
スピードが速まるということは、単に効率的になるということだけでなく、仕事そのものの質が変わり、デジタルにおける常時接続時代の運用に耐えられる様になります。だからこそ広告「枠」ではなく「サービス」を提供できる様になるのです。
『AaaS』は、レイヤーの異なる4つのサービス群を用意しています。
事業成果を最大化するためのメディアの投資配分、KPIを設定することができる「Analytics AaaS」。テレビとデジタルを統合的に運用することができる「Tele-Digi AaaS」。テレビだけ、デジタルだけで運用を最適化できるサービス、「TV AaaS」、「Digital AaaS」の4つです。
4つのレイヤーを組み合わせながら、事業成果の最大化に貢献していきます。同じ効果を少ない予算で実現することで効率があがる。余った予算を事業に投下することができる。そのことにより事業が成長する。単に効率を上げるのみならず、継続的な事業成長のスパイラルに貢献していく。
これが、システムを基盤とし統合メディア運用サービスを提供する『AaaS』というモデルです。
<後編では、AaaSのデータ基盤、また、具体的なAaaSの取り組みについてご紹介します>
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