ヒット習慣予報 vol.169『賞花プラス@中国』
こんにちは。ヒット習慣メーカーズの江です。
GW連休を経た5月から6月にかけてのこの時期ですが、特にコロナ禍が2年目に突入し、以前よりも心身バランスを崩しやすい環境下、みなさんお元気にお過ごしでしょうか。
今年のGWもほぼ自宅で過ごしていましたが、過去の写真を見返していたら、数年前のGWに中国から旅行に来た両親と函館市内の五稜郭公園で満開の桜の下で撮った写真が出てきてたくさんの思い出がよみがえってきました。気分的には、ステイホームな日々だからこそ、コロナ禍であることをしばし忘れて1年に1度の桜くらいは楽しみたい、つかの間でもホッとしたいと思われた方も多いのではないでしょうか。
さて、今回取り上げたいテーマは中国における「賞花プラス」の新習慣です。「賞花」とは、お花を観賞するという意味の中国語で、日本語の「お花見」と同義です。そして、なぜ「賞花」に「プラス」を付け加えたかと言いますと、今までのようにお花を観賞するだけにとどまらず、中国の生活者が「賞花」しながらプラスアルファのことを求めて楽しむようになってきているからです。
〈「賞花」に関する各種投稿総量の推移〉
まず、「賞花」への関心がにわかに高まっていることに注目しました。
中国では、2月の春節の連休に政府が帰省や旅行を自粛するよう呼びかけた反動で、日本のGWに相当する労働節の5連休(5月1日~5月5日)の国内旅行件数が中国文化観光省の推計によると、約2億3000万件に上り、コロナ禍前の水準を上回ったそうです。そんな中、コロナ禍の前に大人気だった日本へのお花見旅行に行けない分、中国国内での「賞花」をテーマにした旅行が例年と比べものにならないほど大きな盛り上がりを見せています。もちろん、中国古来の風習として、賞花文化自体が根付いているわけですが、最近「賞花エコノミー」と題した記事を目にする機会が増えてきたと実感しています。中国のソーシャルリスニングツールを使って「賞花」を検索したところ、2021年に入ってから、「賞花」を注目する人が急増していました。日本人のみなさんにとってお馴染みの桜以外に、春には梨の花、桃の花、杏子の花、菜の花、夏には向日葵、秋には牡丹、冬には梅の花なども中国で人気が高いです。春夏秋冬途切れることなく、広い国土のどこかで花が咲き続けるので、一年中「賞花」への関心がつづくのだと思います。
つづいて、「賞花」するついでに、プラスアルファのことを求めて楽しむ人が増えていることについて。もはや中国の四字熟語でいう「走馬観花(表面的にざっと見るだけで終わる)」のような単なる「賞花」に満足できず、「賞花+音楽フェス」、「賞花+スポーツ観戦」、「賞花+伝統文化講座」、「賞花+ファッションショー」、「賞花+ウェディング」や「賞花+花料理」など、「賞花」プラスアルファの楽しみ方が続々と登場しており、「賞花プラス」の可能性が広がっています。読んだ関連記事の中で、特に印象に残っているのは、中国で近年若者を中心に人気を集めている民族衣装「漢服」を着て、髪型からメイクまで全身を鮮やかな色使いで「賞花」を楽しむ若者たちの写真です。彼らにとっては、タイムスリップしたような、時代劇のワンシーンのような、非日常な時間が流れているに違いありません。
ではなぜ、「賞花プラス」は今後も新習慣として定着しうると考えられるのでしょうか。何と言ってもコロナ禍の影響が大きいと思いますが、より具体的な理由を探ってみました。
まずは、異国情緒が味わえる観光地の人気が高まっていることです。海外旅行の再開が待ち遠しいですが、コロナが落ち着きつつある中国では国内旅行が堅調で、回復傾向にあります。通常なら、日本の桜の名所に中国人観光客が大挙して、思い思いに桜の写真を撮り、SNSに投稿していましたが、案外、中国にも桜の木が多いので、日本に行けなくても日本風の「賞花=お花見」を楽しんでいる様子が伺えます。
さらに、自粛生活に疲れた都会人が豊かな自然や美しい景観に親しめる場所を求めるニーズに応えるべく、各地が観光資源の開発に注力して企画力のレベルアップが著しいことも挙げられます。「賞花」をフックに、知恵を絞ってプラスアルファの部分をどんどん考案していくことが奏功したとも言えます。
最後に、「賞花プラス」のビジネスチャンスについて、少し具体的に考えてみました。
「賞花プラス」のビジネスチャンスの例
■「賞花」をテーマにした、年間を通して月に1回、目的地を自由に選べる定額制パッケージツアー商品を提供する。
■「賞花」の時間をより楽しく過ごすための音楽や動画などのライブ配信コンテンツを制作する。
■長距離ドライブを楽しみたい人のために、「賞花」の名所を巡る最適なコースを提案してくれるカーナビ機能を開発する。
など。
今年の梅雨入りは、各地で早くなりそうですが、梅雨の季節を代表する花といえばアジサイですね。緊急事態宣言が明けたら久しぶりに鎌倉を訪れて、アジサイを賞花しながらプラスアルファでできることを考えたいです。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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博報堂DYホールディングス
MTCグローバル開発グループ
ヒット習慣メーカーズ メンバー2017 年博報堂に中途入社。
近いようで遠い中国のヒット習慣から仕事のヒントを探す日々。
中国で一番辛いと言われる故郷の湖南料理をこよなく愛する、生粋の「辛党」。