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Z世代の採用活動におけるキーポイント「SNSによるエンゲージメント採用」
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Z世代の採用活動におけるキーポイント「SNSによるエンゲージメント採用」

 博報堂グループでデジタル広告事業を手掛けるスパイスボックスは、人材採用に特化した「採用コミュニケーション事業部」を立ち上げ、SNSの分析を企業の採用活動に役立てるサービスを提供しています。スパイスボックスが提唱する「SNSによるエンゲージメント採用」とはどのようなものなのでしょうか。この事業部の秋山真部長に話を聞きました。

採用活動のサポートに特化した新規事業

──はじめに「採用コミュニケーション事業部」の概要についてお聞かせください。

秋山
2018年に発足した新規事業部で、企業の人事・採用担当者さま向けのサービスを展開しています。SNSのデータ解析ツール「THINK」を活用したソーシャルリスニングの手法によって、競合企業の採用活動や求職者、就活生の傾向を分析し、採用戦略の策定や実行を支援するのが主な取り組みです。

──新規事業を立ち上げる背景にはどのような理由があったのですか。

秋山
世の中全体の変化として、働き方は多様化し、生活者が仕事探しに求めるニーズも変わってきています。これからの社会で活躍する人材を増やす為にも、企業が生活者側の変化を捉えて採用活動を行うことが必要と考えました。また、近年、採用市場は大きく変化しており、多くの企業はその変化に対応できていないのではないかという課題をお持ちです。例えば、従来の就職活動ナビサイトの利用者数や、合同説明会への参加者数は年々減少傾向にある一方、SNSなどのオンラインツールによる情報収集行動が非常に活発になっています。そのため、企業がSNSを採用戦略に組み込むケースが増えてきているのですが、SNSを使った採用活動の「正解」があるわけではありません。そこで私たちは、「ソーシャル分析」「コンテンツ制作」「情報発信」というSNSを活用した一連の採用活動をワンストップでサポートできる事業を立ち上げようと考えたわけです。

2020年採用市場の3つの変化

──2020年の採用市場にはどのような変化が見られましたか。

秋山
大きく3つの変化があったと考えています。1つは、新型コロナウイルスの影響によって、企業の情報発信と学生の情報収集の多くがオンラインで行われるようになったことです。この数年徐々に進んできたオンラインシフトが一気に加速した感があります。

その結果、就職活動は「早期化」かつ「長期化」しました。企業の情報発信がオンラインになるということは、その情報にいつでもアクセスできるということです。就活生たちの情報収集の時期も早くなり、そのぶん就活の期間も長くなったわけです。

2つめの変化は「メディアの分散化」です。就活サイトや自社のウェブサイトだけでなく、Twitter、Instagram、YouTube、LINEなどを就活生とのタッチポイントとして活用する企業が非常に増えました。これも、この数年の流れが昨年1年で一気に進んだと言えます。

就活生の情報行動に着目すると、2020年はとくにLINEのオープンチャットの活用が爆発的に増えました。いくつものチャットグループをつくって情報交換をする動きがとても活発になっています。

3つめとして挙げられるのは、求職者の価値観の変化です。私たちは、「THINK」を活用して就活生の傾向を毎年分析しています。経年でその変化を見ていくと、とりわけ2020年はコロナショックがあったので、企業に求める要件や働き方に対する意識が顕著に変わったことがわかります。

──価値観は具体的にどのように変化しているのでしょうか。

秋山
就活生が重視するポイントは、大きく4つにまとめられます。1つめが企業の商品やサービスの魅力、とりわけそれがどのくらい社会に貢献しているか。2つめが就業環境。3つめが「人」、すなわち経営者、上司、同僚などの人間的魅力。そして4つめが、事業の安定性と将来性です。最近の就活生は、この4つのポイントのどれかを重視する傾向にあります。逆に、企業のネームバリューや年収などはそれほど重視されにくくなっています。その変化が、昨年はさらに大きく進んだということです。

採用活動に成功した企業が実行したこととは

──採用する側の企業は、そのような状況にどう対応したのでしょうか。

秋山
オンラインシフトが加速する中で、採用活動に成功している企業は3つの要素を押さえています。「接触媒体の使い分け」「他社との差別化」「世の中の興味・関心文脈との接着」です。

まず、1つめの「接触媒体の使い分け」ですが、マーケティング担当者ならよくご存知のように、コミュニケーションにはファネル、つまり、認知獲得からコンバージョン、その後の長期的関係構築に至るいくつかの段階があります。そのファネルごとに媒体を使い分ける必要があるのですが、それを考えずに、採用コンテンツを単純にオンライン化しただけという企業も少なくありません。そのようなケースは、残念ながら採用効率が非常に低くなる傾向があります。

逆に、就活生の興味分野や生活動線などをしっかり考えた上でメディアを使い分けるコミュニケーション設計をしている企業は、採用活動に成功しています。ポイントはやはりSNSの活用です。SNSは、多くの就活生が日常的に活用しているツールだからです。SNSでタッチポイントをつくり、就活情報メディアに誘引し、そこからオウンドサイトやオンラインイベントへの流れをつくる。それがコミュニケーション設計の成功モデルの1つです。

2つめの「他社との差別化」ですが、これは主にコンテンツに関わります。オンラインシフトの中で、多くの企業がYouTubeを使って説明会を行うようになっていますが、単に説明会を動画にしただけでは、就活生から見るとどれもこれも同じ内容に感じられてしまいます。同じメディアを使っても、フォーマットや企画の切り口など、コンテンツに工夫を施せば、就活生の注目を集められます。例えば、通常、説明会では、人事担当者が企業情報を一方的に話す、もしくはファシリテーターや他の企業の人事とセッションするなどのコンテンツが多くなります。このような一般的なコンテンツが乱立するシーズンは、社員同士を対話させるライトなコンテンツや、内定者など学生とのセッションを公開で実施するということも有効だと思います。また、対談コンテンツも就活メディア×人事や、同業界や同規模の人事同士という掛け合わせが多いので、インフルエンサーやあえて業界や規模が異なる企業同士のセッションなどを企画すると差別化になるのではないでしょうか。
直近は最近話題のSNSであるClubhouseも既に採用コミュニケーションに活用されていて、社員同士の雑談や、就活インフルエンサー×人事の対談などを、公開で配信したりしています。ライブでトークが聞けるというのは、本来SNSが持つリアルな情報という側面、そしてライトにコンテンツ消費ができるという点も、今の世の中のニーズにフィットしていますし、今後採用活動での事例も増えていくと思います。

そして3つめの「世の中の興味・関心文脈との接着」ですが、これは求職者の社会意識の高まりと関連しています。先ほど、近年の就活生は企業の社会貢献を重視するという話をしましたが、SNSの活用においても、世の中の動きやトピックと連動した情報発信をすることによって、膨大なSNSの情報の中に埋もれてしまうことを回避できます。情報に注目してもらい、興味を持ってもらうためには、自社のメッセージが世の中の文脈とどのように「接着」できるかを考える必要があります。

──近年は、企業のパーパスを重視する若者が増えているようですね。

秋山
就活生たちは企業のパーパスを知りたがっているし、自分のパーパスをアピールしたいと考える人も増えています。企業のパーパス、あるいはブランドメッセージと、求職者の価値観。そのマッチングが、今後はいっそう重要になっていくのではないでしょうか。

SNSの分析と活用が採用活動の明暗を分ける

──2021年以降、企業はどのように採用活動を行っていけばいいのでしょうか。

秋山
最も重要なのは、やはりオンラインシフトにしっかり取り組むことだと思います。直接的な対話が必要な場面では、これまでどおりオフラインコミュニケーションを行っていくことになると思いますが、説明会やイベントなどはほぼオンライン化することが可能です。それによって通年でのコミュニケーションも可能になります。

オンラインシフトを進めた上で、「SNSによるエンゲージメント採用」を目指していくことが重要であると私たちは考えています。繰り返しますが、SNSは就活生の多くが日常的に接しているメディアです。そこで就活生と出会い、企業へのエンゲージメント(愛着、親しみ、絆)を感じてもらい、そこから関係を深めていくというのが、これからの採用活動を勝ち抜くために必須の道筋であると思います。

 

──オンラインメディアの中で、とくにSNSが重要なのはなぜですか。

秋山
まず、世の中の興味・関心文脈と接着した情報発信がしやすいメディアであることが挙げられます。また、情報が拡散されることでより多くの就活生に情報が届く可能性があるのもSNSのメリットです。さらに、「いいね」やリツイートなどによって、「第三者が情報を推奨する」という形が生まれやすい点もSNSの特徴です。親しい人やインフルエンサーなど第三者が推奨する情報は信頼度が高まるというのが、SNSマーケティングの基本的な考え方です。

──「SNSによるエンゲージメント採用」を支援するに当たって、スパイスボックスにはどのような強みがあるのでしょうか。

秋山
冒頭に申し上げた「ソーシャル分析」「コンテンツ制作」「情報発信」といった一連の取り組みをワンストップでサポートできることです。この中でとりわけ重要なのが、「分析」によってターゲット、競合、メディアの傾向をしっかり把握することです。なぜなら、それらを把握しなければ、どのようなコンテンツをつくり、それをどのように発信していけばいいかがわからないからです。

まずは、ソーシャルリスニングによって世の中の傾向や、興味・関心文脈を捉え、それを踏まえて、動画、記事、イベントなどのコンテンツをつくり、それを適切なターゲットに適切なタイミングで届けていく──。採用分野でそこまでのトータルなサービスを提供しているプレーヤーは、私たちだけだと思います。

──SNSの分析と活用が、これからの採用活動の明暗を分けそうですね。

秋山
そのとおりです。SNSによって興味や共感を醸成し、エンゲージメントを高めていくことが、企業の採用活動の効率化だけでなく、採用ブランディングにも寄与することになる。そう私たちは考えています。ぜひ、そのお手伝いをさせていただきたいですね。
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  • 株式会社スパイスボックス
    採用コミュニケーション事業部 事業部長
    2016年にスパイスボックスへ新卒入社、1年間の営業プロデューサー経験を経て、2年目よりチームマネージャーを兼務。3年目に自ら採用コミュニケーション事業を立ち上げ、事業部長に就任。 同事業では、人事・採用担当者向けのサービスを展開。独自のソーシャルリスニングツールである『THINK』を用いた、SNS・WEB上のビックデータ解析と、分析を活かしたプランニングが事業の強みであり、Z世代やミレニアル世代に刺さる採用戦略を立案。現在数々の大手企業をクライアントに持つ。