Z世代から読み解く次世代コミュニケーション 〈前編〉
― Z世代のリアルな価値観とは ―
都市生活研究所では、2020年11月19日に、「YOMIKO 都市生活研究所フォーラム2020」を開催致しました。
今回は、生活者フォーサイトセッション「〈Z世代〉から読み解く次世代コミュニケーションのヒント」での研究発表内容をお届けします。
いま注目の集まるZ世代。彼らの価値観と買い物体験に着目。
YOMIKO都市生活研究所では、若者研究の一環としてZ世代の研究を行っています。
私たちは、次世代の購買行動やコミュニケーションを探るべく、「マーケティングとブランディング」を専門領域とし、若者市場研究のカンファレンス主催・企業とのコラボレーション等の研究実践に取り組む産業能率大学の小々馬ゼミにご協力いただき、ゼミ生と定期的かつ高頻度でディスカッションを行う「リアルZ密着サーベイ」を実施。
今回は、一つ上の世代であるミレ二アル世代のYOMIKOメンバーの視点で、その差異にも目を向けながら、本サーベイを通して見えた、Z世代のリアルな価値観を3つ、ご紹介いたします。
0.Z世代の育った時代とは
Z世代とは、96年~2010年生まれ、現在10-24歳までの世代を指します。
ミレ二アル世代が、社会や技術の大きな変化のなか生まれ育ったのに対し、Z世代はこれらの変化がすでに定着したなかで育ってきました。そして、物心ついたころには、LGBTQ・SDGsなどの言葉が身近にあった世代です。
ここから3つの発見について説明していきますが、彼らの価値観を理解するにあたって、このバックグラウンドがヒントになってきます。
1.「メディアに向ける “フラット” な視線」
ミレ二アル世代を大きく上回る形で、SNSとの接触率が高いZ世代。
一般的に「SNSネイティブ」と言われ、この言葉とセットで「マスメディア離れ」とも言われたりしています。
ミレ二アル世代の私たちも、同様の言葉で表現されてきましたが、実感として「ニュースもエンタメもSNSで完結できる」「テレビをわざわざ観ない」そんな感覚があるように思います。では、Z世代において、その傾向は加速しているのでしょうか。
日常生活でのメディアとの関わりについて問いかけると、意外な答えが返ってきました。
これらの発言からは、Z世代があらゆるメディアを「フラット」に捉え、自分の欲しい情報やコンテンツを基準に、選んでいるということが分かります。
よく「若者のTV離れ」という言葉も聞かれますが、ゼミ生からは「TVにはオンタイムならではの楽しさがある」「推しのアイドルが出ている番組は、視聴率を上げたいから観る」といった発言もあり、メディアの特色を理解しながら、その時々を楽しんでいる様子が伺えました。
2.「不確実な将来だからこそ、“いま”チャレンジしたい」
先行き不透明なこの時代に生まれ育ったZ世代。
今年は、新型コロナウイルスの流行で、学生たちの受験や就職活動にも大きく影響。一層不安が付きまといました。
このように、不確実な将来が約束されているから、Z世代は「堅実」で「消極的」と言われることもしばしば。
しかし、ゼミ生に将来観について尋ねてみると、こんな言葉が返ってきました。
さらに、「将来は明るいと思いますか?」という投げかけに対して
という発言もありました。
彼らは、将来に対して不安はあるけれど、だからこそ、「今できることに何でもチャレンジしてみよう」「その姿勢が大切だ」と考えている。彼らの前向きな姿勢とそのパワーが感じられました。
3.「違いを『受け入れる』から、『取り入れ、高め合う』フェーズへ」
最近は、社会全体の傾向として、価値観や好みが多様化しています。
ミレ二アル世代の場合は、SNSも駆使しながら価値観・好みの合う人との繋がりを作り、付き合うコミュニティが狭くなる傾向にあります。
時代の変化とともに生じた「価値観の合う人と関わりたい」という意識。
Z世代においては、コミュニティは一層狭くなっているのでしょうか。
そこで、「価値観の合わない人とも関わりたいと思いますか」という質問を投げかけてみると、ゼミ生からはこんな言葉が飛び出しました。
この発言、さらに深堀っていくと、
これらの発言からは、価値観の違いで、コミュニティを決めたり狭めたりしない、そんな意識が伺えます。
彼らは、もはや「それぞれの違いを受け入れよう」というフェーズにはおらず、多様な考えや価値観に溢れているからこそ、互いの違いを取り入れ、活かしあうべきだと考えているのです。
一般的に、Z世代は社会貢献意識の高い世代と言われますが、こうした価値観がベースとしてあることが背景にあるのかもしれません。
まとめ「見えてきたのは、時代とともに培われた“選び取る力”」
変化の渦中で育ったミレ二アルと違い、大きな変化がすでに定着した中で育ってきたZ世代。
そんな彼らだからこそ、「先入観や偏見に流されず、あらゆる可能性の中から自分で選び取りたい」という意識を持っています。
そして、この意識は、メディアとの関係・将来観・人間関係にも垣間見られたように、「自分の嗅覚(=自分に響くかどうか)を頼りに、まず積極的に関与しに行く」行動へ繋がっていたのでした。
「リアルZ密着サーベイ」を通して見えてきたZ世代の特長。
後編では、そんなZ世代が求める「理想の買い物体験」についてご紹介したいと思います。
小々馬 敦 Atsushi Kogoma
産業能率大学 経営学部 教授
産業能率大学大学院 総合マネジメント研究科 教授
大手広告代理店、世界的なブランド・コンサルティング企業の代表などを経て、2010年ブランド・エンジニアリングを設立。2013年より現職。
若者市場研究のカンファレンス『AgeMi!マーケ!2030』(2019年3月)や日本マーケティング協会との共催で「ミライ・マーケティング研究会(2020年)」を主宰するなど、教育・研究を通じてマーケティング実務家とZ世代をつなぐ取り組みを行っている。
産業能率大学 小々馬ゼミ
「マーケティングとブランディング」を専門領域とし、企業とのコラボレーションや公開セミナーの企画運営、出版、研究レポート・論文の発信等の研究活動を行っている。企業とのコラボレーションでは、商品開発やマーケティングチームにメンバーとして参加したり、企業が直面している実際のマーケティング上の問題を解決するために多様な専門性を有する実務家の方々と協働する「ハンズオン・プロジェクト」に取り組み、企業活動をライブに実体験することにより専門的な資質を高めている。
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株式会社読売広告社
データドリブンマーケティング局 第3マーケティングルーム2017年読売広告社入社。
ストラテジックプランナーとして、飲料・食品・自動車・商業施設・エンタメ系商材など、幅広いクライアントのブランディングやコミュニケーション戦略設計に携わる。
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株式会社読売広告社
データドリブンマーケティング局 第1マーケティングルーム2018年 読売広告社入社。
ストラテジックプランナーとして、アプリ・金融・飲料・消費財など、幅広いクライアントのコミュニケーション戦略設計・オウンドメディア運用等に携わる。