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オンラインがけん引する生活変化 【化粧品(ビューティー)カテゴリー】におけるNew Normal
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オンラインがけん引する生活変化 【化粧品(ビューティー)カテゴリー】におけるNew Normal

新型コロナウィルスによる外出自粛の影響により、オンライン活用の拡大と、それによる生活変化が幅広い領域で起こっています。博報堂は3月および5月に、こうした変化に対する生活者の意識や今後に向けてのニーズを調査。ウィズコロナ時代における新たなソリューション開発・マーケティングチャンスの探索を行っています。

前回に続く本稿では、「ビューティー」のジャンルで起きた変化について、より詳しい姿を掘り下げていきます。

■コロナにより大きな影響を受けた国内の化粧品需要

コロナウィルス感染拡大防止策としての外出自粛は、化粧品カテゴリー全体の需要にも大きな影響をもたらし、売り上げは大幅にダウンしています。メイクをすること自体が「不要不急」であると意識されたことはもちろんですが、テレカンファレンス、テレワークの日常化やマスク着用の習慣化の結果、“メイクが不要”な状況が生み出され、ファンデーションやチーク、アイメイク、そして特にリップといった、対面でなければ見えにくいもの、マスクをすると隠れてしまうものの消費が非常に落ちています。それに対し、同じ化粧品カテゴリーでも、スキンケア用品への需要にはあまり変化は見られず、堅調に推移しています。多くの人にとって外出の有無にかかわらずスキンケア用品は必需品ですから、これまでと変わらず購買が続けられた結果でしょう。

緊張感も少し緩和され、外出する人も増えた現在、一部の人は早速店舗へ出かけて行っている様子です。先んじてこうした行動に出るのはどういう人たちかというと、やはりフットワークの軽い若年層、そして高価格帯の化粧品利用者など、美容に非常にこだわりのある層です。彼女たちは日常生活の中で化粧品との結びつきが非常に強く、たとえ現状のような状況下にあっても、ポジティブにビューティーを楽しみたいと考えている。たとえばマスクをしていても目立つアイメイクを工夫してみたり、積極的にSNSをパトロールして新しいブランドとの出会いを探ったり、普段は店頭で買っているものをECサイトで買ってみるといった行動が見られます。

■今、化粧品のブランド体験・購買体験時に起きていることとは

オンライン上の様々な施策やメディアから事前に情報収集し、ある程度購入したい商品を定めた後、最終的には店頭で質感や発色を試してから購入を決定するという生活者が圧倒的に多いのが現状です。そういう意味で、店頭は最後の関門のような場でもありました。そういう場が外出自粛や営業休止によりなくなってしまったこと、またテスターを使用することへの不安が生じてしまった結果増加したのが、YouTubeやSNSの美容アカウントへの接触時間です。家で過ごす時間が増えたことも後押しとなり、スマホなどを通じてあるコスメのあるカラーがどのように伸びて見えるかをチェックしたり、ユーチューバーが紹介する内容を参考にしたり…といった人が増えたようです。ただやはり、依然店頭で試せないことで購入をあきらめてしまう人も多いというのが現状です。また、自粛の必要性がなくなってからも、引き続き短時間での買い物を望む生活者が多いことも調査からわかりました。

一方メーカー側の視点から見ると、これまで店頭で重大な役割を担い、購買に大きく貢献してきてくれた現場のビューティー・コンサルタント(以下、BC)/美容部員の方たちの活躍の場が失われている現状を鑑み、彼女たちを重要な資産としてとらえ、何らかの形で活用できないかを模索する動きもあります。

■オンライン体験・オフライン体験のこれから

これから問われるのは、いかにこうした生活者行動の変化をポジティブにとらえなおし、新たなブランド・購入体験――ビューティー体験のNew Normal――につなげていけるか。そのためにもまずは「オンラインでできる体験・サービスをどう拡充させていくか」を考えること。そしてそれが可能になったときに、「店頭が担うべき役割は一体何なのか」を追究していくことが求められると考えます。それぞれのポイントについて具体的に見ていきましょう。

1.オンライン体験を加速させる

まずは商品を試す機会をスピード提供すること。たとえばARアプリで顔写真を撮影し、カラーやファンデーションが自分に合うかを試してみるというサービスはすでに何社か提供を始めています。現状では割とシンプルな設計になっていますが、今後パーソナルデータをしっかりと紐づけていき、より精緻なレコメンドができていくともっと便利になりそうです。また、自宅にすぐにサンプルが届いたり、レコメンドされた商品が定期的に届くような仕組みがあれば、これまで以上にスムーズにトライアルが進められるでしょう。

次に消費への出会いから購買までを一気に推進すること。情報は入ってきても店頭で離脱という、ボトルネックとなっていた従来の購買プロセスを超越するような仕組みが有効になってくるかもしれません。たとえばスマートスピーカーに「今日大事なプレゼンなんだ」と相談すると、ぴったりのメイク方法を伝授、かつ対応する商品をレコメンしてくれて、そのまま購入できるといった仕組みがあれば、シームレスな購買体験が可能になります。

そして、オンラインにおけるセレンディピティの提供。これまでは店頭をパトロールする中で新しい商品や自分に合う商品に出会えていましたが、そういう出会いの場をオンライン上に設けることも有効でしょう。先述の、経験豊富なBCによるオンラインカウンセリングなどを通して、雑談の中から意外な商品を提案してもらったり、自分でも気づかなかったような美に出会うこともあるかもしれません。BCの新しい活躍の場にもなり得るのではないでしょうか。

2.オフライン体験を再規定する

オンライン体験の加速化により、店舗でのリアルなオフライン体験を改めて規定し直す必要性も出てきます。たとえばハイブランドの店舗に行くと、なんとなく気分が上がるといった、象徴的な体験をもっと拡充させていくような動きが出てくるかもしれません。言い換えれば、「ブランドらしく・FANな・ここでしかできないアクティビティ設計」。それがどういうブランドで、もっとも提供したい価値は何かを改めて規定し、そこでしかできないイベントやアクティビティを設計する。心から楽しんでもらい、また足を運びたいと思ってもらえるような場所を仕立て上げる。そういう取り組みも重要ではないかと考えます。

また、オンラインからさまざまなデータをシームレスにつなぎこみ、ユーザビリティを最大限高めることも可能でしょう。“あたかも自分のためにすべてがあつらえられているような状態”をつくっていくことも、そこを訪れる楽しみの一つになるはずで、有効な仕掛けではないかと考えます。

そして変わらず求められるのがセレンディピティの提供。いつでも新しいビューティー情報が入手でき、出会いのあるような場を再設定し直すイメージです。いつものパトロール先ではなく、まったく予想もしなかったような場所とタイミングで出会いが生まれるような機会を設計していく。店舗のあり方を再度作り直していくことも可能なのではないでしょうか。

次回は、「エンタテインメントカテゴリー」における変化についてご紹介します。

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  • 博報堂第三プラニング局 ストラテジックプラニングディレクター
    2016年博報堂入社後、ストラテジックプラニング職として 化粧品・食品など中心にコミュニケーションプラニングやデジタルマーケティングを担当。
    インサイトワークやコンセプトメイキングをコアスキルとしつつ、将来は、前職のオフィス空間デザインやワークスタイルコンサルティング経験を活かしてブランド体験×OMO領域のイノベーションプラナーになるべく奮闘中。一級建築士。