『音楽の未来』レポート 博報堂「コンテンツビジネスラボ」~サブスクリプション時代における消費行動の変化とヒット予測とは?(5/5)
次にヒットするアーティストは?
- 柴
- せっかくですから、「ヒゲダンやあいみょんの次には誰が来るの?」っていう話をさわりだけでもしませんか?
- 谷口
- そうですね。いくつかのアーティストにヒットの傾向が見えてきてるのですが、ビルボードのラジオ指標は特に音楽通の影響が反映されているので、早くヒットの兆候が表れる指標として注目しています。ですのでラジオ指標とストリーミング指標をかけあわせて秘密の方程式を作り、次にヒットしそうなアーティストを何組か選んできました。では、どれにしましょうか。
- 柴
- じゃあ、ヨルシカでお願いします。ヨルシカは今後より注目を集めると僕は思っています。ヨルシカは、ボカロPであるn-buna(ナブナ)と歌い手であるsuis(スイ)の2人組で、顔を出していません。また、中には実写もありますが、基本的には動画はアニメーションです。つまり匿名性の高いアーティストでして、すごく物語的な強度の高い楽曲を作っています。そんなヨルシカが、今年の春から夏にかけて、10代を中心とした若い層、いわゆる文学少年少女たちに大きく支持を広めています。
- 谷口
- ヨルシカも時系列で見てみると、ストリーミングというよりダウンロードで指標が高く出ています。私がヨルシカを知ったきっかけはTikTokで、そこで「ただ君に晴れ」という曲が使われてバズったりもしていまして。そういうところから若い人たちに届いているのはあると思います。
▲ヨルシカ「ただ君に晴れ」
- 柴
- TikTokってすごく面白いアーキテクチャーですよね。一般的にはリア充というか、自撮りが得意な女の子たちが使っているイメージがあると思うのですが、使われている曲がいわゆるパーティーチューンかと言われると、それだけではないですよね。
- 谷口
- そうですね。HoneyWorksも決して最近の曲ばかりではないですが、流行っていて驚きましたね。
- 柴
- もう1人はちゃんみなをお願いします。もともとはヒップホップの分野から出てきた女性ラッパー/シンガーソングライターで、過去には“練馬のビヨンセ”というキャッチコピーでバラエティー番組にも出たりしていましたが、どんどん音楽的な才能が認められてきています。僕の勝手なイメージとしては、かつての尾崎豊的な10代のアウトサイダーのカリスマになりつつある感じがします。
- 谷口
- 10代の間で流行る曲って今まではJ-POPだったと思うのですが、最近だとK-POPが入ってきています。K-POPには北米音楽シーンの要素を含んでいることもあって今の10代はヒップホップに馴染みがあるのか、このようなアーティストが人気みたいですね。
- 木下
- 【ROCK IN JAPAN FESTIVAL】でもたくさん人が入っていたようです。
▲ちゃんみな「Never Grow Up」
- 柴
- 彼女はもともとK-POPにもルーツがあるし、僕が観た初ワンマンではお客さんはギャル文化に属するタイプの人がほとんどでした。ただ、今は邦楽ロックフェスのリスナーという別のクラスタに支持を広げている。そう考えると今後ちゃんみなはレイトマジョリティに刺さる可能性が十分にあります。とはいえ、「先はどうなるかわからない」というカオス的な現象がヒットの本質なので、まったく予測していない他の誰かがブレイクする可能性は大きくあります。駆け足でしたがこんな形でヒット予測とストリーミング・ユーザーの消費動向ということでお話しさせていただきました。ありがとうございました。
コンテンツビジネスラボとは
独自調査「コンテンツファン消費行動調査」の知見をもとに、近年企業のニーズが高まっているコンテンツを起点とした広告やビジネス設計の支援を行う専門チーム。独自に提唱する「コンテンツファン発火モデル」を用いて、企業やコンテンツホルダーが実施するコンテンツを起点とした広告コミュニケーションの設計支援や、新規事業・サービス展開のマーケティング支援等を行っている。博報堂のマーケティングプラナーと研究開発職員、博報堂DYメディアパートナーズのコンテンツビジネス開発の専門家などで構成されるメンバーは、スポーツ、ドラマ、アニメ、ゲーム、音楽など、さまざまなカテゴリの熱心なファンでもあり、コンテンツに対する豊富な知見と情熱を有している。
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柴 那典音楽ジャーナリスト
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博報堂 研究開発局 木下グループ グループマネージャー
博報堂DYホールディングス
マーケティング・テクノロジー・センター 開発1グループ グループマネージャー2002年博報堂入社。以来、マーケティング職・コンサルタント職として、自動車、金融、医薬、スポーツ、ゲームなど業種のコミュニケーション戦略、ブランド戦略、保険、通信でのダイレクトビジネス戦略の立案や新規事業開発に携わる。2010年より現職で、現在データ・デジタルマーケティングに関わるサービスソリューション開発に携わり、Vision-Graphicsシリーズ, m-Quad, Tealiumを活用したサービス開発、得意先導入PDCA業務を担当。またAI領域、XR領域の技術を活用したサービスプロダクト開発、ユースケースプロトタイププロジェクトを複数推進、テクノロジーベンチャープレイヤーとのアライアンスも行っている。また、コンテンツ起点のビジネス設計支援チーム「コンテンツビジネスラボ」のリーダーとして、特にスポーツ、音楽を中心としたコンテンツビジネスの専門家として活動中。
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博報堂
研究開発局
研究員2017年博報堂入社。研究開発局で研究員として、データを活用したマーケティングサービス開発、生活者DMPを活用した生活者研究を行っている。注力研究領域は若者研究やAI技術を用いたマーケティング研究。また、コンテンツビジネスラボのメンバーとして、コンテンツ消費行動研究を行なっており、音楽分野担当として音楽ヒット予測等にも従事。