ヒット習慣予報 vol.92『趣味の所得化』
こんにちは。ヒット習慣メーカーズの馬場です。
気づけば10月も半ばが過ぎ、急に寒くなってきました。先日、年賀状の仕分けのアルバイトを募集する葉書が届いて、早くも年の瀬の到来を感じました。令和最初の年末ですね。年末の過ごし方などに関する、新しいヒット習慣が出てこないか感度を高く持っていようと思います。
さて、今回のテーマは、「趣味の所得化」です。テクノロジーの進化に伴い、楽しんでいるだけでお金を稼ぐことのできるサービスが増えています。
家賃収入や株式投資の配当金など自分自身で働くことなく収入を得ることを指して「不労所得」と呼びますが、実際に安定した収入を得るためには、物件や株の見極めなどが必要で、それなりの知識と労力が必要となります。「趣味の所得化」は、そうした知識や労力を必要とせず、趣味として普段楽しんでいるものを所得に変えてしまうようにする習慣です。
「不労所得」について、Googleトレンドを見てみると、2006年後半~2007年ごろに不動産ブームの影響を受けて盛り上がり、2008年のリーマンショックで急速に冷え込んで以降、落ち着いていました。しかし、2013年ごろから再び検索数が増え、再び注目が集まり始めています。これは、この頃から動画共有サイトへの投稿により広告収入をあげるというお金の稼ぎ方が新しい「不労所得」として徐々に盛り上がってきたからだと思われます。こうした時代の流れも受け、改めて「不労所得」が求められる中で、「趣味の所得化」も「不労所得」の新しい形として、広がっていくのではないかと考えています。
具体的な例をご紹介します。
1つ目が、ゲームを遊びながらお金稼ぎをする例です。ブロックチェーンゲームをご存知でしょうか。その名の通りブロックチェーン技術を使ったゲームなのですが、特徴は入手したキャラクターやアイテムを売買し、仮想通貨を得ることができる点です。入手が難しいアイテムほど高値で取引されるので、やり込めばやり込むだけお金稼ぎにつながるため、従来のゲーマーだけでなく、テクノロジー好きの間でもプレイヤーが広がっているそうです。
2つ目は、自身の運動データをお金に変える例です。少し難しい話になりますが、2018年ごろから個人情報に紐づくデータ(パーソナルデータ)の保護と利活用の実践が叫ばれる中で、国によって情報銀行という新しい事業が定義されました。詳細の説明は割愛しますが、生活者にとっては、情報銀行を利用することで、パーソナルデータを利用したい企業に自身のデータを提供することで金銭を含む対価を受け取ることができます。具体的には、ランニングデータのような運動データを企業に提供することで、その対価としてお金やフィットネスクラブの割引が受けられるといったイメージになります。これまでは、運動履歴や効果の可視化、モチベーション向上のために行っていたデータの蓄積がそのままお金にも変わるというわけです。
なぜ「趣味の所得化」を得る習慣が広がっているのか、理由を考えてみました。
まず挙げられるのは、テクノロジーの進化です。ブロックチェーンゲームは言わずもがなですが、情報銀行の例も、データを収集する技術や、解析・活用する技術が普及したからこそ、パーソナルデータに大きな価値が見出されているという意味で、テクノロジーの進化が企業だけでなく、個人に対してもお金儲けの機会を生んでいるといえます。
ほかにも、生活者の意識変化も理由になると考えられます。Youtuberのような新しい働き方の広がりはもちろん、副業の活性化なども含め、これまでにない形でお金を稼ぐということに対し、多様性が認められる世の中になってきています。「不労所得」の検索数が増加していることの考察とも言えますが、生活者一人ひとりが今までとは違うお金の稼ぎ方を模索しはじめているのではないでしょうか。
最後に、「趣味の所得化」のビジネスチャンスについて考えてみました。
「趣味の所得化」のビジネスチャンスの例
■ スポーツ器具メーカーとプロスポーツチームがコラボして、日々の運動に着用した時間に応じて、試合チケットなどがもらえるIoTチームユニフォームを販売する。
■ 撮影した写真が、写真素材サイトに自動連携され、売買が発生すると撮影者にお金が入る一眼レフカメラを発売する。
■ 飲料やお菓子などについてくる付録をトークン化して、コレクションでき、換金もできるようにする。
など。
ある意味やったもの勝ちな「趣味の所得化」習慣、私もさっそく始めてみようと思います。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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博報堂 マーケティングシステムコンサルティング局
ヒット習慣メーカーズ メンバー2016年 博報堂に入社。
入社以来、データ/デジタルマーケティングに従事。業務で培った知見を活かし、新たな習慣を生み出すべくヒット習慣メーカーズに参画。