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プラニングの精度を上げるための新たな「KPIマネジメント」とは
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プラニングの精度を上げるための新たな「KPIマネジメント」とは

広告出稿をした際、従来であればブランド指標の上下を評価するだけで、ビジネス成果を問われることはありませんでした。しかし、近年TVCM等のオフラインの広告出稿についてもROI(投資対効果)やCPA(コンバージョン単価)、ROAS(広告費用対効果)といったビジネス成果が求められるようになっています。こうした要請に応えるには、従来のKPIマネジメントでは難しかったため、新たなKPIマネジメントの手法を開発してきました。

今回は、新たなKPIマネジメントの中で2つの手法をご紹介いたします。1つは、ブランド指標とビジネス成果を統合する手法で、どのような施策をどのような割合で実行すればビジネス成果を最大化できるかが簡易にプラニング・シミュレーションできるようになります。2つ目は、オフラインを含めた全てのチャネルを俯瞰して評価できる中間KPI(日々データが取得できる指標)の設定手法です。
博報堂DYメディアパートナーズ メディアマーケットデザイン局 石井豊が解説します。

 ブランド指標とビジネス成果を統合するKPIマネジメント

一つ目は、マーケティングファネルを利用したKPIマネジメントの手法です。マーケティングファネルで見た場合、“認知” “理解” “興味” “検討”といったプロセスがあって、ゴールに“顧客獲得”があります。
従来も「顧客獲得を20%増やしたい」といった目標を先に設定することはあったのですが、その場合は「全てのプロセスで数字を20%増やす」といった具合に大雑把なKPIを設定していました。しかし実際は、「理解から興味・検討を経ずに購入する」といった人が近年増えていたり、そもそも数字が一番大きくなりやすい認知のプロセスが80%を超えているようなケースではそこから20%増やすことが不可能、など多くの課題がありました。

 

これに対し今回の手法では、マーケティングファネル上の各プロセスが、顧客獲得という目的に対してどう寄与しているかを可視化することが可能です。

そのため、広告出稿時にマーケティングファネルのどの指標を上げることがビジネス指標を最大化できるのかということの判断が可能になります。ある事例では、各プロセスのなかで理解を増やすことが最も顧客獲得に対しての投資効率が高いことが判明したため、理解をKPIとし、プラニングとクリエイティブ開発を行いました。

メディアプランにおいては、TVCMを減らし、理解を促進する動画広告やタイアップの出稿比率を増やしました。クリエイティブにおいては、従来の認知を目的としたブランド型のクリエイティブの割合を下げるとともに、消費者に商品について理解してもらうためのサービス説明を加えた30秒の長尺デジタルCMを制作しました。

全てのチャネルを俯瞰して評価できる中間KPI

二つ目の事例は、日々データが取得できるアクチュアルデータを中間KPIとして活用したKPIマネジメントの事例です。
従来の中間KPIはブランドの指名検索やサイト来訪など、デジタルに閉じたものでした。テレビCMを見た人が店頭に来店して購入するような場合、指名検索やサイト来訪せず、店頭来店する生活者もいるため、デジタルとオフラインを俯瞰した判断ができていませんでした。そのため、正確な投資判断が可能になる中間KPIを設定することが求められていました。

具体的には、近年可能になった店頭来店計測データとデジタル内の行動をトラッキングするパブリックDMP「AudienceOne」、テレビの視聴データに博報堂DYメディアパートナーズの「Atma」を活用し、データを紐付けました。つまり、位置情報(店頭来店)を目的にテレビCM接触、デジタル内の行動・接触をシングルソースで分析・トラッキングできるようにしています。

分析の結果、テレビCMが80%以上、サイトが15%以下、両方を見た人が20%以下という結果になりました(来店者のうち、メディア接触があった人の割合が90%以上、メディア接触なしに来店した人が10%以下になります)。これはテレビCMのみで70%以上の来店者に接触できているという結果であり、大きな発見でした。
また来店者数がどれくらい増えたかの純増率を見ると、テレビCMのみは+20%以上、テレビCM+サイトは+100%以下、サイトのみは+80%以下で、接触なしの割合に対して純増していることが分かりました。店頭来店者数の割合に純増率をかけた値である純増数はテレビCMのみで+14以上、テレビCM+サイトで+20以下、サイトのみ+4以下で伸びているという結果になりました。(数字はダミーとなります)

このように店頭来店を中間KPIに置いて分析・可視化することにより、ボトルネックを発見することができるため、どこで何をプラニングすればいいかが分かるようになります。
例えばデジタルに比べてテレビCMの純増率が低いことを改善するため、高フリークエンシーになっている生活者への出稿を抑制し、フリークエンシーが少ない生活者向けにテレビCMのバイイングを最適化する、といった具合です。また、テレビCM+サイトの一番純増率が大きいことから、前述の抑制した予算をデジタル投資に振り向ける、といったことも考えられます。
また、接触メディアごとに分解した店頭来店データをBIツールに取り込んで、日々トラッキングすることも可能なため、定点分析のみならず日々の運用にも生かすこともできます。

ビジネス成果に沿ったかつプラニングできるKPIを決めることが重要

今回は、新たなKPIマネジメントの中で、2つの手法についてお話してきましたが、状況に応じて、最適な手法を選ぶ必要があります。ただ重要なことは共通していて、「ビジネス成果に沿った、かつプラニングできるKPIを決めることが重要」ということです。
現在は、様々なデータを活用できるようになってきているため、これまではできなかった定量化が可能になっていますが、ちゃんとプラニングや改善に活かせるかということを考えることが重要だと思います。

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  • 博報堂DYメディアパートナーズ
    メディアマーケットデザイン局
    ディレクター
    2014年10月博報堂DYメディアパートナーズ入社。データドリブンマーケティングの知見を活かし、ビジネス成果を向上させるための統合マーケティングからエグゼキューション施策までの立案までシームレスに担当。金融、自動車、通信、住宅建材、人材、不動産、EC、美容等、多様なジャンルに携わる。