心と身体の両方から生活者に迫る!【気持センシングラボ対談4】
50年以上にわたって日本の広告界とメディアを支えてきた調査会社、ビデオリサーチ。そのシンクタンクである「ひと研究所」が気持センシングラボに参画しました。さまざまな手法によって人の「気持ち」を掘り下げ、生活者を幸せにする広告展開の実現を目指すプロジェクト。それが気持センシングラボです。複数の会社の協力のもとで進められているこの取り組みにビデオリサーチが加わることによって、プロジェクトはさらに大きく前進しそうです。ひと研究所の所長である亀田憲氏と、プロジェクトの取りまとめ役である大広の山口大道がビジョンを語り合いました。
調査会社の参画がプロジェクトにもたらす価値
- 山口
- あらためて、気持センシングラボに参画してくださってありがとうございます。プロジェクト発足時から、調査会社にはぜひとも加わっていただきたいと思っていました。というのも、この取り組みの信頼性を担保するには、データを客観的に分析し、解釈・意味づけできるプレーヤーの存在が必要だからです。歴史と実績のあるビデオリサーチのシンクタンクである「ひと研究所」に参加いただけたことで、プロジェクトの可能性は大きく広がったと思っています。
- 亀田
- 私も最初にプロジェクトのお話を聞いたときに、ぜひ一緒にやらせていただきたいと思いました。ビデオリサーチはこれまで、生活者への問いによって引き出されるデータ、すなわちアスキングデータを主に取り扱ってきました。これに、気持センシングラボの取り組みから生まれるインターネットのログデータやバイタルデータ(生体情報)を掛け合わせることができれば、より生活者を深く理解できるようになるはずです。声をかけていただいて、「待ち焦がれていたものと出会えた!」という感じでしたね(笑)。
もう一つ、山口さんと最初にお話をしたときに山口さんのマーケティングに関するお考えに共感できる点が非常に多かったのも参加を決めた理由です。「そうだよね」「僕もそう思う」ということだらけで、これなら同じ方向を向いてプロジェクトを進めていけると思いました。
- 山口
- おもんぱかった意見、ありがとうございます(笑)。とくに、共感していただけたポイントはどんな点でしたか。
- 亀田
- 広告に対する課題感ですね。インターネット広告が普及してから、アドフラウドなどの問題もあり、広告はどうしてもネガティブなイメージをもたれるようになっています。しかし、生活者の気持ちに寄り添って、生活者が本当にほしい情報を、ほしいタイミングで、ほしい表現で届けることができれば、それはとても素敵な情報というプレゼントになると私は信じています。その信念を山口さんもお持ちであることがわかって、「一緒にできる」と確信しました。
楽しさや豊かさを提供するツールとしてのデジタル
- 山口
- ひと研究所の設立の経緯をあらためて教えていただけますか。
- 亀田
- ビデオリサーチは2012年に創設50周年を迎えました。50年の間、媒体社、広告会社などにデータを提供することが弊社のビジネスの柱でした。しかし、新しい時代に向けて、データにとどまらず、顧客の課題解決のためにデータを咀嚼したり、加工したり、分析の方向性を提案したりして、調査データの付加価値を高めていかなければならない。そんな意識が社内で高まっていました。いわば「提供から提言まで。」を次のビジネスモデルとするということです。そのビジョンの具現化の一つとして設立されたのがひと研究所です。
- 山口
- なぜ、「ひと」に着目されたのでしょうか。
- 亀田
- ビデオリサーチ社業の中心は、ご存知のとおり視聴率です。視聴率とは、生活者がテレビを見ていることを示すデータですよね。つまり、ビデオリサーチは50年の間、生活者の行動を一貫して見つめてきたということです。その根幹にあらためてフォーカスしようという想いが「ひと」という言葉に込められています。
- 山口
- 最近ではデジタル領域への取り組みも進めていますね。
- 亀田
- はい。デジタルに注力した理由は二つあります。生活者の行動や嗜好の変化を捉えるには、インターネットをはじめとするデジタル領域を無視するわけにはいかないということが一つ。もう一つは、デジタルマーケティングを「生活者基点」で進化せることができないかという課題意識があることです。
- 山口
- 後者はまさに気持センシングラボの取り組みに直結するテーマです。
- 亀田
- デジタルにはどうしても「効率的」であるものの「無機質」「ドライ」というイメージもつきまといますが、デジタル技術があるからこそ、生活者に楽しさや豊かさを提供できるという側面もあると思います。これからのマーケティングはそこも目指すべきであるというのも、山口さんと私の考えが一致した点の一つでした。
- 山口
- 御社独自のセグメントでありソリューションでもある「ひとセグ」についても説明していただけますか。
- 亀田
- 近年、生活者を取り巻く環境がカオス化している、というのが「ひとセグ」の大元にある認識です。カオス化の要素は3つあります。メディアが変化していること、生活者自身が変化していること、そして商品が変化していることです。
インターネットの普及により莫大な量の情報が世の中をかけめぐり、SNSなどの普及により生活者が情報を発信するなど起点となり、企業のほうがそれを追いかけるようになってきた。それがメディアの大きな変化です。一方、生活者はライフスタイルが多様化した結果、年齢や性別によってライフステージや年収などを推測することが難しくなっています。さらに、商品は異常なほどに細分化が進み、同じカテゴリーのアイテムが何種類も店の棚に並ぶようになっています。
複雑になった商品の情報を、複雑になった生活者に、複雑なメディア環境で伝えていかなければならない。この複雑化の掛け算でカオス化した状況を「コミュニケーションカオス」と名付けました。この状況はマーケターにとっては非常に苦しいはずです。そこで、カオスを整理し、マーケティングをシンプルに考えられるフレームワークとして考案したのが「ひとセグ」です。
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株式会社大広
ブランドアクティベーション統括 顧客価値開発本部 東京第2顧客獲得局
プロデューサー複数の広告会社で営業やマーケティングセクションでの経験を積み、2015年12月より、株式会社大広に入社。前職時代に注力した、デジタル領域に関連する経験をベースにしながら、プロモーション業務に従事している。「生活者を動かすこと」をモットーとして、日々の業務に取り組んでいる。
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亀田 憲株式会社ビデオリサーチ
ひと研究所 所長広告会社、事業会社、コンサルティング会社を経て株式会社ビデオリサーチに入社。様々な立場でのマーケティング経験と生活者研究の知見をベースに、クライアント課題の発見、解決に努める。2016年よりひと研究所所長。中小企業診断士、産業能率大学マーケティング兼任講師。著書は『マインド・ホールを突破せよ。』(ダイヤモンド社)、『新シニア市場攻略のカギはモラトリアムおじさんだ!』(ダイヤモンド社)、『販促Q&Aノート』(同友館)など。