雑誌データを起点とした、ViVi/non-no/CanCamによるZ世代論 ~雑誌DX基盤「MDAM」のマーケティング活用方法~後編
雑誌DX基盤「MDAM」を活用した雑誌データ分析を通して見えてくるZ世代像や、新たな雑誌のポテンシャルとは。集英社、講談社、小学館の編集者、データサイエンティストが一堂に会し、雑誌データの分析をもとに、Z世代に向けたマーケティング攻略の鍵について探っていきます。
後編では、雑誌データを起点としたZ世代のマーケティング活用方法について、具体的な事例とともに解説します。編集者の視点から、Z世代の特徴や彼らに響くコンテンツの作り方、そしてMDAMを活用したデータ分析の結果をもとに、どのようにマーケティング戦略を立てるべきかを探ります。
(登壇者の社名・肩書はウェビナー開催当時のものです)
スピーカー:
平本哲也
講談社
NET ViVi編集長
小泉光代
集英社
non-noブランド統括 non-no web編集長
高橋尚子
小学館
CanCamブランド室 副編集長
長尾 洋一郎
講談社
IT戦略企画室
テクノロジーラボ 部長
兼 KODANSHAtech合同会社
ゼネラルマネジャー
樋口 建
博報堂テクノロジーズ
メディアDXセンター データテクノロジー部
ファシリテーター:
安島 博之
博報堂DYメディアパートナーズ(現:博報堂)
新聞雑誌局
編集者に聞く!Z世代マーケティング活用の勘所
- 安島
- では具体的に、Z世代をどう攻略していけばいいのでしょうか。編集者の皆さんはZ世代をどう捉えていますか。
- 平本
- 私はZ世代のことを究極のサバサバ世代と呼んでいます。
ViViのデジタルコンテンツも、伸びるものととことん関心を示されないものの差がすごく激しい。僕らミレニアル世代と比べ、興味のないものはどんどん流していくカルチャーがあります。逆に良いコンテンツに対してはすごい熱量で反応してくれて、購買に繋がったりする。ごまかしの利かない、目利き力のある人たちだと思います。
- 小泉
- Z世代の皆さんはリテラシーも高いし、ネットで取る情報と雑誌メディアから取る情報を分けて捉えています。雑誌に対しては信頼感があるようで、最後は「雑誌のお墨付きなら大丈夫だな」という感覚が強いと感じます。non-noの場合は大学生をひたすら深く見ていくことで、そこに意味が出てきて、ご提供できる価値に繋がっていくと考えています。
- 高橋
- 若い世代は「物欲がない」などと言われることが多いですが、結構購買意欲が高い印象があります。失敗したくないという心理も強く、口コミや雑誌を見たりして、自分に合うのか確かめようとする。「あなたにはこれが合いますよ」と提案しつつも何か新しい価値をつけてあげることが、私達ができることかなと思っています。
- 安島
- 各誌の読者像の違いについては、いかがでしょうか。
- 平本
- ViViが、ギャル文化をけん引していた時代から変わらないのは「自分の人生を自分で着よう」ということ。なのでパーソナルカラー診断や骨格を元にしたコーデやメイクの提案はやらないようにしています。その考え方は、他のエンパワーメント企画、キャリアの企画などの作りにも反映されているのかなと思います。
- 小泉
- non-noがフォーカスする大学生は、入学後、成人式や就職活動、インターン、卒業旅行などさまざまなライフイベントが生じますし、お酒を飲むとかクレジットカードを作る、免許を取るなど、いろんな「初めて」がある年代でもある。その都度、さまざまな消費が発生するわけで、そこで迷ったときの手助けができる媒体にしたいと考えています。「好きが原動力になる世代」であり、特に美容に関しては、将来リターンを得るための投資意識も強いです。イベントを確実に素敵なものにプロデュースしたいとか、計画的に生きようという気持ちも強いと感じます。
- 高橋
- CanCamは、オフィスやデート、女友達と遊ぶ日など20代社会人女性の日常的なシーンを切り取っているのが特徴的かと思います。かつては「めちゃモテ」を推していた時代がありましたが、いまは“うっかり”もてちゃう、“うっかり”色っぽいといったファッションが好評なのが面白いですね。ビジネスマナー、投資など、関心があってもわからないことが多いようなテーマの企画を通して、悩み事をクリアにしてあげる誌面を目指しています。
- 安島
- 樋口さん、長尾さんは、分析した結果と照らし合わせていかがですか。
- 樋口
- ネットと誌面で、同じ世代でも読者層や届き方が違うという点は、分析してみての発見でした。
- 長尾
- 僕自身のWebメディアの編集経験から言うと、デジタルだと雑誌と同じタイトルでは読んでもらえなかったりするので、“文脈の解体”が必要だったりします。雑誌だと、「うちはこういうストーリーを語ります」というのが一貫性を持って伝えられるけど、Webの記事になると、そのパッケージから出てしまう。
今後データ分析を行う立場からすると、そうした雑誌の発信する物語がウケているか、ちゃんと伝えられているか、MDAMと他メディアのデータを掛け合わせることで検証できるかもしれないと思います。
- 安島
- 雑誌のSNSやオフィシャルアカウントについてはどうとらえていますか。
- 平本
- 雑誌のViViは、ViViらしさの発信地で、それを小分けにして、SNSごとにロジックを変えて出しています。雑誌もSNSも共存し、互いに高め合っている。ViViのSNSがここまで伸びているのも、誌面であれだけのビジュアルを作れているからだと思います。
- 小泉
- SNSによってユーザーの特性は全然違うので、コンテンツの出し分けは必須です。また、SNSを検索ツールとして使う方も多い一方で、SNSで取りづらい情報が確実にあります。「正しい下着の付け方」「脱毛、ムダ毛のケア」みたいなテーマは正しい情報を探し出しにくく、悩んでいる方が多い。SNSでは拾えない正しい情報を提供することで、雑誌の価値を改めて感じていただけたらと思います。

- 高橋
- 私たちは、誌面の内容をリフト記事としてWebに転載し、そこで人気だった企画を再度紙でも取り上げるというやり方をしています。紙もデジタルもVSではなくマルチに活用しています。
- 安島
- ありがとうございます。
「改めて雑誌の価値を教えてください」との質問も来ています。
- 高橋
- ビジュアルをすごく綺麗に見せられるのは圧倒的に雑誌。SNSだと同じ画角でしか入れられない、ピクセル数が決まっているので、限界はありますね。
- 平本
- デジタルでBuzzを起こすためのコンテンツを作っているからこそ、雑誌の、ハイエンゲージメントさをすごく感じます。関心の低い人による一視聴と、ファンによる一視聴の価値は全く違う。ウェブに切り出していく、その根幹となるビジュアル作りのベースにあるのは紙なので、両者ともなくしては考えられません。
- 小泉
- 紙はブランディングの柱です。若い世代にとっても、たとえば自分の推しが表紙になることの価値はものすごい高い。「私たちはこういうストーリーを語っています」というブランディングの根幹に雑誌があるのは、変わらないと思います。
- 安島
- ありがとうございます。最後に一言ずつお願いできますか。
- 平本
- 今日お話しを伺い、感覚でやってきたものを言語化してもらえたという実感があります。 データを使うことでもっと成長できそうだなと感じました。短尺動画をだいぶ極めてきたいま、次の挑戦として物語コンテンツに挑戦していけたらと思います。クライアントの皆さんともコラボレーションできるタッチポイントがたくさんあると思うので、ぜひご一緒できれば嬉しいです。
- 小泉
- MDAMによる深い分析の可能性を本当に感じました。こうしたデータ分析やデジタル施策を工夫することで、non-noの信頼感や実績、良い部分をさらに広くお届けできたと思います。non-noは50周年を経て次の50年を迎えるところなので、雑誌はもちろん、デジタルでどうやって存在感を発揮していくか、若い世代と読者組織と一丸となって考えているところです。ご一緒できる機会もあると思うので、気軽に編集部にお声を掛けていただけたらと思っております。
- 高橋
- MDAMによる分析を使うことで、また新しい企画が生み出せそうだと感じました。いまは一部の人しか見られない状態ですが、将来的に現場の子たちがもっと気軽に活用し、企画アイデアにつなげられるようになれば理想的ですね。またCanCamとしては、最近読者の皆さんが運転に関心があるようなので、女性同性のドライブに関するデータも検証できるといいなと思いました。私達の興味や関心事をデータで後押しできたら、また何か新しい価値が生まれるだろうと思うので、ぜひ一緒に成長していけたらと思います。
- 安島
- ありがとうございます。博報堂DYグループにおいては、このような雑誌のコンテンツ力、トレンドの発信力を活かした複数のソリューションをローンチしております。「MATCH」というチームは、雑誌メディアの広告出稿以外の部分をパッケージとし、水先案内のようにクライアントと編集部を繋げていくサービスを展開しています。またコンテンツのマルチユース、ユーザー獲得、オウンドメディアのグロースまでオールインパッケージでサポートする「COMPASS」いうソリューションもあります。さらに今回のMDAM分析の知見を活用した新しいクライアント向けソリューションも現在準備中です。ご期待ください。
本ウェビナーがベースとなったMDAMソリューション
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