ヒット習慣予報 vol.389『あえてのロースペ』
こんにちは。ヒット習慣メーカーズの佐藤諒平です。
執筆時点の12月初旬…、まさに師走という慌ただしい日々を過ごしております。この怒涛の12月走り切れるか大変不安です。(読者の方もお忙しい時期かと思いますが、この記事がちょっとした息抜きになれば幸いです…!)
そして、そんな慌ただしい時期に、よりにもよってスマホの調子が悪く、買替えを検討しています。そこでちょっと気になっているのが、いわゆるdumb phone(ダムフォン)。ご存知の方も多いかもしれませんが、少し説明させていただきますと、dumb phoneは “おばかケータイ”といった意。なぜおばか呼ばわりかというと、通話やメール、アラームといった基本的な機能のみのシンプルでロースペックな携帯電話だからです。下記検索数のグラフからも分かる通り、世界的には、下記検索数のグラフからも分かる通り、2024年の春ごろから現在まで注目が増していることが分かります。

出典:Googleトレンド(「dumb phone」の検索 ※“すべての国”での検索量推移)
個人的には、ですが、日常での情報収集や各種申込、動画をみるといったことはPCやスマートテレビなどでできている、支払いもカードでできる、など考えると、スマホでないとやりづらいのはSNSくらい。そしてSNSも過激で過多な情報に疲れを感じているため、いっそダムフォンの選択肢もアリか…?と思っている次第なのですが、
いろいろ情報を調べていたところ、こうしたスマホ・ケータイに限らず、あえてロースペックなものを選び使う生活者の習慣の兆しがみえてきました。
そこで今回はタイトルを「あえてのロースペ」と題し、生活者の新しい習慣兆しとしてご紹介させていただきます。
一つ目は、あえての「トイデジカメで写真撮影」
これは既に持っている、という方も若い方だといらっしゃるでしょうか。トイデジカメはその名の通り、おもちゃのデジタルカメラで、ロースペックなポイントはその画質。なんと昨今のスマホの10分の1にも満たないほどの画素数しか持ち合わせていません。しかし、そのザラっとした独特の質感が逆に良い、として楽しむ若者が増えています。私の身近な知人でも持っている人が居りみせてもらったのですが、ロースペック故に超小型で、おしゃれでかわいいアイテムといった感じでした。実際SNSで購入した生活者の投稿をみると、画像や動画の内容についてのみならず、かばんなどに付けるちょっとしたファッションアイテムとしても機能している様子がみてとれました。
二つ目は、あえての「旧式デジタルウォッチを着用」
昨今はオンライン決済や細かな健康状態管理までできる便利な腕時計(所謂スマートウォッチ)が増えていましたが、なんと遡ること15年以上前 2000年代頃のスペックの、比較的安価なデジタルウォッチを使う生活者が現れてきているようです。勿論、これらは「時間の確認」が基本の、現在からするとロースペックにも感じるものですが、近年に欧州を発端として、アメリカ、そして日本の若者の間でも一部界隈で人気が高まっています。SNSで生活者の声を見ると、どうやら単に「レトロでかえっておしゃれに感じる」という理由だけではないようで、デジタルによる見やすさ、軽さがしっかりしていつつ、壊れにくく、充電要らずで電池も長持ちするなど、当時から基本的実用性を極めていた製品の強みによって「これこそがちょうどいい」と感じている人も少なくないようです。生活者のこうした利用需要を受けて、復刻版やデザインが現代ナイズされたアレンジ版も多くなっているようで、調べているうちに私もひとつ買いたくなってしまいました…!
最後三つ目は、あえての「低速小型電気自動車を利用」
まだあまり日本では見られない例ですが、Low Speed Electric Vehicles=LSEVsと称され、中国や欧州などの国でリゾートや特定施設内での移動に導入されていることが多いようで、さらには都市、中でも人口が多く建物や交通も過密なエリアでも利用注目が増している例です。ロースペックなポイントは名称そのままですが、低速・小型なこと。最高速度40km/h台で、座席は2席のみ、機能もあまり多くないタイプが多いようです。そんなの不便じゃ…?とも思ったのですが、誰でも使いこなせる、邪魔になりづらく、低コストということで、過密都市ではこれでちょうどいいのではないか、という意見の方も出てきているようです。たしかに、都市圏でシェアリングサービスや配送用の車がより必要となる場合は、この導入はもっと増えていくやもしれません。

では、ここまで事例をご紹介したような、あえてロースペックなものを選び利用する生活者がなぜ昨今増えてきているのでしょうか。
ひとつはスペックのコモディティ化の観点。あらゆる便利なものは、基本的な便利を満たし切り、生活者が使いこなせていない機能まである、というものも少なくありません。そのような状況下でかえって、便利の軸を特段重視せず、あえてちょっとした不便から「体験としての新しさ」や「ちょうど良さ」を感じ楽しむ生活者が増えたのではないか、と考えます。
また、もうひとつは経済性の観点。日本は勿論多くの国の生活者が経済的にも厳しい現代、生活者たちは「最低限必要なもの」を自然と意識するようになり、ハイスペックなことよりも、最低限で”ちょうどいい”ものを、より良く感じ、求めるようになってきたのではないでしょうか。
今回も最後に、「あえてのロースペ」のビジネスチャンスについて考えてみました。
「あえてのロースペ」のビジネスチャンス例
■単機能とデザインバリエーションに特化した、あえての「ロースペックおしゃれ家電シリーズ」
■だれでもどこでもデータ通信量や通信速度を気にせずに楽しめる、あえての「ロースペック最新ゲーム」
■リマスター等ではなく、あえて当時の画質・音質を味わうことができる「ロースペック映画上映会」
など…
車や家電で、“せっかくだから”と買ったはいいものの 使えていない機能が多い私は、まさにこれを機に、今後あえてのロースペ選択をしていくことが多くなりそうです。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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新潟博報堂
ヒット習慣メーカーズ メンバー2020年 新潟博報堂に入社。2023年より2年博報堂に出向後 帰任し、地域で一人前のマーケター・プラナーを目指して修行中。年末年始は推しの配信とアニメを沢山見たいと思います。あと今度こそ正月太りをしないようにしたいです。


