
~AIと共創し、マーケティングビジネスの効率化と高度化を支援する~ 統合マーケティングプラットフォームCREATIVITY ENGINE BLOOM 活用事例【セミナーレポート】【前編】
目次
近年、海外では、統合マーケティングプラットフォームを活用し、マーケティング施策を一気通貫で実現するプラニングが一般化しはじめています。これにより、TVCMや新聞広告などの「マス広告」とWeb広告やSNS広告などの「デジタル広告」を組み合わせる「マス&デジタル連携」や、プラニング業務の効率化・高度化を実現できるだけでなく、AIと掛け合わせることで、次世代マーケティングの実現にもつながります。
そこで、博報堂DYグループでは、マーケティングやクリエイティブ、メディア、流通など、これまでそれぞれの領域で個別に扱われていたデータやツールを掛け合わせ、統合マーケティング戦略立案やビジネス開発支援、社会課題解決のアクションを生み出す新しい統合マーケティングプラットフォーム「CREATIVITY ENGINE BLOOM」を開発しました。本記事では、先日開催した博報堂DYグループが主催する“生活者データ・ドリブン”マーケティングセミナー「~AIと共創し、マーケティングビジネスの効率化と高度化を支援する~ 統合マーケティングプラットフォームCREATIVITY ENGINE BLOOM 活用事例」の様子を編集し、お届けします。レポート前編では、「CREATIVITY ENGINE BLOOM」の全体概要、マーケティング戦略を描く< STRATEGY BLOOM >の全体像、< STRATEGY BLOOM >の3つプロダクトのうちのひとつで、マーケティング戦略の意思決定を支援する「STRATEGY BLOOM PLANNING」の概要と事例について、博報堂テクノロジーズマーケティング事業推進センター副センター長兼部長の北川がご紹介します。
<登壇者>
北川 雄一朗
株式会社博報堂テクノロジーズ
マーケティング事業推進センター 開発推進1部
副センター長兼部長
竹村 剛一良
株式会社博報堂テクノロジーズ
マーケティング事業推進センター 開発推進3部
部長
豆谷 浩輝
株式会社博報堂テクノロジーズ
マーケティング事業推進センター 開発推進3部
統合マーケティングプラットフォーム
「CREATIVITY ENGINE BLOOM」とは
5つのモジュールで、多角的にマーケティングを支援
- 北川
- まずは、「CREATIVITY ENGINE BLOOM」の概要からお話しします。
「CREATIVITY ENGINE BLOOM」とは、博報堂DYグループが開発した、新しい統合マーケティングプラットフォームのことで、当社グループのデータ基盤である「生活者 DATA PLATFORM」と、プラットフォーマーが持つ膨大なデータや、クライアント企業が持つ多様なデータをつなぎ合わせ、「Human-Centered AI機能」を介して、5つのモジュールに落とし込んでいく仕組みとなっています。
- 北川
- その5つのモジュールについて紹介します。
<STRATEGY BLOOM>は、マーケティング戦略の策定を支援するモジュールです。生活者データとクライアント企業のデータを統合し、AI技術を用いることで、市場構造の可視化やターゲット設定、KPI策定などの業務を効率化します。こちらについては、セミナーの後編でも詳しく紹介させていただきます。
<MEDIA BLOOM>は、メディアの投資効果の最大化を目指すモジュールです。テレビとデジタルを組み合わせたメディアの最適化や効率的なアロケーションを策定することで、メディア効果を高めるためのPDCAを支援します。
<CREATIVE BLOOM>は、クリエイティブ業務の効率化と高度化を支援するモジュールです。AIを活用し、クリエイティブの評価や自動生成、予測などを可能にします。
- 北川
- <COMMERCE BLOOM>は、購買データとECプラットフォームと連携し、リアルとECを統合したマーケティング戦略の立案を支援するモジュールです。今後、さまざまなマーケティングサービスの提供を予定しています。
<ENGAGEMENT BLOOM>は、顧客との良質な関係性を構築するモジュールです。クライアント企業様のLTVやエンゲージメントを向上させるOnetoOneマーケティングを支援するサービスを提供予定です。
また、「生活者DATA PLATFORM」については、当社グループが持つ膨大な生活者データとさまざまな外部データのセキュアな連携をもとに、基盤を構築。日本市場におけるLiveRamp社との独占契約も活かしながら、ITサービス基盤の強化に注力していきたいと考えています。
プラニング業務の効率化と高度化が急務に
- 北川
- 新たな統合マーケティングプラットフォーム「CREATIVITY ENGINE BLOOM」を開発した背景には、マーケティング領域におけるさまざまな変化がありました。
たとえば、世界に目を向けると、米国を中心に統合マーケティングプラットフォームの活用が主流になっており、データやテクノロジーを束ねながら、マーケティングの上流から下流まで一気通貫で行うことが一般化しはじめています。また、今やTVCMや新聞広告などの「マス広告」とWebやSNSなどの「デジタル広告」の統合管理は急務となっていますし、近年では、生成AIなどのテクノロジーを活用したマーケティング業務の刷新も重要です。
こうしたことから、「マーケティング業務を見直し、プラニングの効率化と高度化を実現すること」が、広告会社に求められる基本要件になっているのではないかと考え、開発をスタートしました。
- 北川
- マーケティング業務を刷新する上で着目したのが、プラニングのプロセスです。
広告マーケティング業務においては、各領域の専門性を担保するために各職種の担当者がバトンパスをしながら対応することが多く、業務が分断してしまうといった側面がありました。
また、クライアント企業から課題をいただいて、課題に合った提案をしていくという広告のプラニングにおいては、課題に合った提案にする「個別最適化」や、競合他社とは異なる「オリジナリティ」、クライアント企業の情報や提案内容などの「非開示性」も不可欠。こうしたことから、業界的に体系化・標準化が進めにくいという側面もありました。
- 北川
- このような従来のマーケティング業務のやり方だと、さまざまな経験やスキルが個人やチーム内にとどまり、「暗黙知」となってしまいます。これをシステム化によって「継承知」にしていくのが私たちの取り組みです。
グループ全体を眺めた時に、同じような分析をしていたり、同じようなアウトプットを出していたりすることもあると思いますが、AIの力を借りながら、できるところは効率化し、その分の時間を高度化にあてていくことで、プラニング業務の底上げにもつながると考えています。
- 北川
- また、その際にどのようにAIを活用すべきかも重要です。
私たちがイメージしているのは、こちらの図。人だけで0から頂上を目指すのは大変ですが、AIが5合目までを支援してくれるなら、5合目から頂上までのより創造性が求められるところにもっと注力できますよね。AI活用といっても、「人が介在し、共創しながら新しい価値をつくっていく」ということを大切にしています。
- 北川
- まとめになりますが、「CREATIVITY ENGINE BLOOM」を社員が活用することで、当社グループが有する数多くのマーケティングデータ群や、これまで培ってきた多様な知見、さらにAIが掛け合わさって、マーケティング業務の刷新、ひいては、クライアント企業の課題解決につなげられたらと考えています。
市場構造の可視化からKPI策定までをワンストップで実行する
<STRATEGY BLOOM>
<STRATEGY BLOOM>の全体像
- 北川
- ここからは、「CREATIVITY ENGINE BLOOM」の中から、<STRATEGY BLOOM>というモジュールについて紹介させていただきます。
こちらは、市場構造の可視化から、ターゲット・価値規定、KPI策定までのマーケティング戦略をワンストップで実行するモジュールとなっており、このうち3つのプロダクトについて深掘りして紹介していきます。
KGI起点でのプラニングを支援する
「STRATEGY BLOOM PLANNING」
プロダクトの全体像と実装機能
- 北川
- 「STRATEGY BLOOM PLANNING」は、市場構造の可視化から、ターゲット規定、価値規定、KPI策定までを、スムーズに探索しながら導き出す分析ツールです。主に、コンバージョン数などのKGI起点で戦略策定が行われる際のプラニングを支援します。
- 北川
- 「STRATEGY BLOOM PLANNING」にリサーチデータや検索データ、サイト訪問データ、コンバージョンデータ、購買系の各種データをインプットすると、市場構造把握やターゲット規定、価値規定、KPI規定を簡単かつ一気通貫で行えるようになっており、それをクリエイティブプラニングやメディアプラニングに活用いただく流れを想定しています。
- 北川
- 現状開発済みの機能としては、「ファネル型分析」「カテゴリー・エントリーポイント型分析(以下、CEP※)」「主成分分析」「クラスタ分析」「クロス集計」「価値規定/プロポジション」などを用意。市場構造の把握につながるアプローチとしては、「ファネル型分析」と「CEP型分析」を実装しています。
「ファネル型分析」は、資料請求数や販売数などの目標を設定している場合、どのようにサービス認知を獲得していくか、指名検索数を高めていくか、といったところを導出していくアプローチです。たとえば、リーチ×検索数や、サイト誘因×来店数などのテレデジプラニングにおいても有用ですし、購入数や契約数、資料請求数など、広告を通じたKGI達成に向けたアプローチにも活用できると考えています。
また、「CEP型分析」では、購入のきっかけを見定めた上で、そこに対して自社のシェアがどれだけあるのかを分析。戦略的に狙うべきターゲットとポジションを選定していくためのアプローチとなっています。「自社商品ブランドの勝ち筋がどこにあるか」「自社商品ブランドのポジショニング」などを導き出すことが可能です。
昨今、CEP型のアプローチはマーケティング業界でトレンドになっており、パッケージ商材や、低関与商材、非争点化カテゴリにおいて有用なアプローチとして注目を集めています。
※CEP:商品やサービスを購入する際に、特定のカテゴリーやブランドを想起するきっかけのこと
- 北川
- さらに、ターゲット規定やプロファイルの作成に有用な機能として、「主成分分析」や「クラスタ分析」、「クロス集計」も実装。価値規定に関しては、「単一分析」や「企業/ブランド間分析」「訴求イメージの検討」などの機能を実装しており、競合他社と比較分析をしながら、自社の価値規定における短所を掴んでいける分析ツールとなっています。
「STRATEGY BLOOM PLANNING」の活用事例
- 北川
- ここからは、「STRATEGY BLOOM PLANNING」の活用事例を4つ紹介させていただきます。
ケース1は、「KGIに寄与するファネル指標に基づき、メディアプランまで連なるプラニングをすぐにでも実践したい」という事例です。
まずは、「STRATEGY BLOOM PLANNING」を使って向上させるべきKPIの具体スコアを算出。これで狙うべきターゲット像を可視化できるため、ターゲットを獲得するために、どんなメディアプランにすればいいのかをシミュレーションできるようになります。
- 北川
- ケース2は、「各カテゴリやブランドを異なるKPIで管理している場合に、KPIの妥当性を判断し、横断的なブランド管理をしていきたい」という事例です。
さまざまな調査の上、各ブランドでKPIを設定されていると思いますが、長年同じKPIを設定している場合もあるのではないでしょうか。その場合、KPIマネジメントの観点から、規定されているKPIが適切かを見直した上で、マーケティング戦略やメディアプランにつなげていくことが大切です。こうしたKPIの見直しや、KGI達成のためのメディアシミュレーションにおいても、このプロダクトを活用いただけます。
- 北川
- ケース3は、「自社ブランドが戦略的に獲得すべき市場の規定ができていない」という事例です。
保険業界を例に流れを説明させていただくと、まずは結婚や定年、収入が増えたタイミングなどといったCEPを見出すところからはじまります。その上で、CEPごとに消費者が想起する商品を整理すると、「自社ブランドにおいて強力なCEPは何か」や「競合のポジショニング」を導き出すことができるため、潜在ターゲットや潜在市場の特定が可能になります。競合との比較で優位なポジションを見定めながら、商品戦略やマーケティング・コミュニケーション戦略を描いていくことができます。
- 北川
- ケース4は、「自社ブランドが獲得すべきパーセプションを描けていない」という事例です。
これまでにお伝えしたアプローチで、獲得すべきCEPが見定まったとしても、既存の商品ブランドの価値構造と照らし合わせてみると、ギャップが出てしまう場合もあるでしょう。そんな場合も、既存のブランドとの整合性をとりながら、拡張すべきパーセプションを見定めることで、具体的なコミュニケーション戦略の立案が可能になります。
レポート後編では、< STRATEGY BLOOM >の残り2つのプロダクト、マーケティングにおけるコンセプト開発を支援する「STRATEGY BLOOM CONCEPT」とテレビCMの分析業務を支援する「STRATEGY BLOOM CM ANALISYS」の概要と事例をご紹介します。
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株式会社博報堂テクノロジーズ
マーケティング事業推進センター 開発推進1部
副センター長兼部長2005年、博報堂に入社。ストラテジックプラナーとして業界を問わず50社以上のクライアントのマーケ/コミュニケーション戦略・施策立案やブランディング、ダイレクトビジネス等に従事。2012年から、データ/デジタルを担う全社対応組織でのクライアント攻略やソリューション開発、研究開発組織の兼務も経て、現職。 現職では、CREATIVITY ENGINE BLOOMの開発に携わり、グループ全体で活用可能なプラニング支援モジュールの開発をリード。
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株式会社博報堂テクノロジーズ
マーケティング事業推進センター 開発推進3部
部長通信会社を経て、2023年博報堂入社。研究開発組織にて、クリエイティブ業務支援関連のプロジェクトを中心に先端技術を活用したプロダクトマネジメント業務に従事。現職では、CREATIVITY ENGINE BLOOMにおけるマーケプラニング・クリエイティブ制作業務の効率化/高度化に資するプロダクト開発を推進。また、Human Centered AI InstituteのプロジェクトであるCreative technology lab beatに参画し、生成AIを活用したプロダクト企画に従事。
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株式会社博報堂テクノロジーズ
マーケティング事業推進センター 開発推進3部2018年、言語学習サービスを創業。 AIを活用したコンテンツ制作手法を確立し、動画プラットフォーム上で10万人を超えるフォロワーを獲得。2020年、インターネット関連企業にて機械学習エンジニアとして、音声AIの研究開発に従事。2023年、博報堂入社。CREATIVITY ENGINE BLOOMおよびCreativity technology lab beatに参画。テクノロジストとして、先端技術を用いたR&D、プロトタイプ構築から本番開発まで一貫した開発をリード。2025年4月より現職。