
スポーツ観戦は「リアル」と「オンライン」の融合へ~eスポーツが示す未来像~
目次
ここ数年、テレビのニュースや情報番組を見ていると、これまで知らなかった新しいスポーツの名前を耳にしたり、その競技の様子を目にしたりする機会が増えたと感じませんか?
例えば、eスポーツ、スポーツクライミング、スケートボード、ブレイキング、フォーミュラEなど、実に多種多様なスポーツ競技が登場しました。将来的には、インドで人気のクリケットが日本でもメジャーになる日が来るかもしれません。
テレビニュース露出データが語る!「ニュースポーツ」台頭のインパクト
このような新しいスポーツ競技が続々と出現する中、そのメディアパワーを探るべく、テレビニュースでの露出量を分析しました。主要なスポーツ競技を選定し、2013年と2023年の露出量を比較分析したところ、興味深い変化が見られました。
大谷翔平選手の人気を背景に、MLBは2013年の4位から2023年にはプロ野球を超えて1位に急上昇しています。Bリーグなどのバスケットボールも11位から6位に順位を上げ、露出量は約20倍に増加しました。また、スポーツクライミングやスケートボードといったニュースポーツ系は、以前はランク外だったものの、バレーボールに次ぐ位置まで浮上し、約40時間もの露出量を記録しています。これらのデータから、スポーツ競技のテレビニュース露出量が大きく変化していることがわかります。
(データ:二ホンモニター「テレビスポーツデータ年鑑2014/2024」より作成)
eスポーツ関心層の深層を探る:新たな生活者像と行動インサイト
本コラムでは、そうしたニュースポーツの一つである「eスポーツ」に注目してみました。
そもそもeスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、コンピューターゲームやテレビゲームを対戦型競技のことです。2024年にはIOC(国際オリンピック委員会)が正式競技として承認し、来年開催される愛知県・名古屋のアジア競技大会や、2027年にサウジアラビアで開催される初のオリンピック公式大会「eスポーツゲームズオリンピック」でも正式競技として採用されるなど、その注目度は高まってきています。
そこで、博報堂が実施しているアスリートイメージ評価調査のデータをもとに、eスポーツの認知度や関心度、そして関心層がテクノロジーサービスにどのような期待を抱いているかをまとめてみました。
eスポーツの認知度は約8割と高く、5人のうち4人がその存在を知っていることがわかります。また、eスポーツへの関心度(「興味・関心があった」+「やや興味・関心があった」)は約2割と、一定の層が関心を寄せていることが示されました。
次に、eスポーツの「ファン」とも言える関心層を詳しく見ていきましょう。
性年代別では、男女ともに10代が最多で2割前後を占め、男女20代と男性30代がそれぞれ約1割と、10代から30代が中心層となっていることがわかります。職業別では、「高校生」と「大学生」が合わせて4割、「会社管理職」と「会社事務職」が合わせて2割と、学生と会社員が多くを占めていました。世帯年収については、調査対象者平均が673万円であるのに対し、eスポーツ関心層は831万円と、かなり高い結果となりました。
eスポーツ関心層が好きなスポーツを尋ねたところ、野球(日本代表)、サッカー(日本代表)、プロ野球(国内)、MLB、サッカー(Jリーグ)など、野球とサッカーが上位を占めました 。これらに加えて、バスケットボール(日本代表)やバレーボール(日本代表)なども人気が高く、eスポーツ関心層はテレビニュース露出量の多いメジャーなスポーツも好む傾向にあると言えるでしょう。
ファンサービスの向上のためにテクノロジーを活用したサービス導入への期待は、すべてのサービスにおいて全体よりも顕著に高い結果となりました。
特に、「チケットを買いたいファンが購入予算額を登録し、販売元がセールスの可否を決めるチケット販売プラットフォーム」や「スポーツチームアプリのファン向けのオリジナルゲーム」への期待がトップ2でした。
さらに、ファン向けのサービス・施設に関する利用意向(利用したい)でも、同様にすべてのサービス・施設で全体よりも利用意向が高いことがわかりました 。「プロスポーツのバーチャル体験ができる施設(バッティングセンター/バーチャルゴルフ等)」と「試合会場で観戦が楽しめるカフェ・レストラン」が利用意向のトップ2でした。
これは、eスポーツ関心層がリアルとオンラインの両方でスポーツ体験を楽しみたいと考えていることを示唆しています。
デジタル時代のマーケティング戦略:eスポーツファンを動かす鍵とは
今回の調査結果から、eスポーツは高い認知度を持ち、世の中に広く浸透していると考えられます。その関心層は、若者から会社員まで幅広い年代にわたり、高世帯年収層が多いことが特徴です。新しいテクノロジーやサービス、施設利用に対して非常に積極的であり、オンラインでのゲーム体験とリアルなスポーツ観戦の両方を融合させて楽しむ傾向があると言えるでしょう。
このような明確な特性を持つeスポーツの関心層は、未来の社会をより良くするためのデジタルサービスを開発・展開していく上で、「ビジネスを成長させるための重要な鍵」となるかもしれません。
彼らのニーズと行動様式を深く理解することで、新たな市場を創造し、大きなビジネスチャンスを掴むことができるのではないでしょうか。
アスリートイメージ評価調査2025春
■ 調査概要 ■
・調査方法:Web調査
・調査地区:首都圏+京阪神圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)
・調査対象者:対象エリアに在住の15~69歳の男女
・有効回収サンプル数:600サンプル
・調査期間:2025年2月28日~3月4日
・実査機関:QO株式会社
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博報堂 グループメディアビジネス推進局 メディアインテリジェンス部1995年博報堂入社・初任配属はイベント/展示会などを扱う事業本部。
2004年博報堂DYメディアパートナーズへ。メディアマーケティング局兼ラジオ局複属。入社以来、メディア・コンテンツの再価値化などに従事。現在は博報堂 グループメディアビジネス推進局 メディアインテリジェンス部にてメディア・コンテンツDX情報分析を担当。