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複雑化するメディア環境に勝つ!~最新事例から学ぶデバイス統合プラニング~【セミナーレポート】
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複雑化するメディア環境に勝つ!~最新事例から学ぶデバイス統合プラニング~【セミナーレポート】

ネット結線TV(CTV)の普及、動画配信サービスの増加や地上波テレビの視聴率低下、さらに、スマートフォンやPCでの情報取得が一般的になるなど、メディア環境の複雑化が急速に進んでいます。

こうした中、従来通りのプラニングでは、十分な効果を得るのが難しくなっているのが現状です。そこで、広告を取り巻くメディア環境がどのように変化しているのか、また、広告出稿で効果を最大化するための手法や考え方についてセミナーを実施しました。本記事では、先日開催した博報堂DYグループが主催する“生活者データ・ドリブン”マーケティングセミナー「複雑化するメディア環境に勝つ! ~最新事例から学ぶデバイス統合プラニング~」の様子を編集してお届けします。

<登壇者>
長﨑 慎吾
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
統合アカウントプロデュース局 AaaSアカウント推進二部
メディアプラニングチーフディレクター

馬場 銀河
株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
統合アカウントプロデュース局 AaaSアカウント推進三部
メディアプラニングディレクター

※会社名・部署名・肩書はセミナー開催時のものです。

【第一部】広告を取り巻くメディア環境の変化

アップデートすべきは、“テレビ=地上波”という考え方

長﨑
私は、博報堂DYメディアパートナーズの長﨑と申します。総合印刷会社で、セールスプロモーション領域の企画立案、および制作物のクリエイティブ・ディレクションに従事したのち、インターネット広告代理店でデジタルマーケティングを経験。現在は、当社の統合メディアプラナーとして、メディア戦略の立案や広告運用のディレクションに携わっています。
馬場
博報堂DYメディアパートナーズの馬場と申します。事業会社のBtoBマーケターとして、デジタルマーケティング領域を中心に幅広く取り組み、その経験を生かして、現在は、費用対効果最大化のプラニングとPDCA実行を武器に、統合的にメディア戦略をプラニングしていますをしています。
長﨑
第一部では、昨今のメディア環境の変化についてお話しさせていただきます。なお、本セミナーは、認知広告やブランディング領域が中心になりますので、リスティングやリターゲティングといった、いわゆる獲得目的の広告ではないことを前提とさせてください。

まずは、広告における考え方についてです。これまでは、圧倒的なリーチを誇る「テレビ」をメインに広告を展開し、テレビをあまり見ない層へのリーチを補完するために「デジタル」を活用するのが一般的な手法でした。

長﨑
しかし、その考え方はもう古くなっていると言えるでしょう。なぜなら、みなさんご存知の通り、どの年代でも「地上波の視聴率推移」が年々下がってきているからです。

長﨑
一方で、着目すべきは「ネット結線TV(CTV)の普及」と「動画サービスの視聴時間の増加」です。CTVとは、文字通りインターネットにつながれたTVのことですが、その普及率を見ると、どの年代でも年々増加傾向にあります。

長﨑
CTVの普及が進んだことで、TVerやNetflix、Prime Videoなどの動画配信サービス(OTT)の視聴時間が増加。下のデータを見ると、「地上波」の視聴シェアが微減していくのに反比例する形で、「動画サービス」の視聴シェアが徐々に増加していることがわかると思います。

もしかしたら皆さんの中には、無意識に“テレビ=地上波”と捉え、「テレビはもう古いんじゃないか」と思われていた方もいるかもしれませんが、“テレビ=地上波”という考え方こそが、アップデートしなければいけないポイントなのではないかと思っています。

デバイスごとのメディアプラニングが重要に

長﨑
ここからは、これからのメディアプランについて、掘り下げてお話しさせていただきます。

これまでは、広告を出稿する場合、「テレビ/デジタル」で分けて考えるのが一般的でした。

それに対し、私たちが提唱しているのが「デバイス統合プラニング」です。これは、テレビ/デジタルで分けるのではなく、デバイスごとにメディアプラニングをしていくべきという考え方です。

最も広告効果が高いデバイスは?

長﨑
そんな「デバイス統合プラニング」を考える上で重要なのが、「広告配信をする“面”としてのパワーが強いのはどのデバイスか」です。

こちらが、デバイスごとにブランドリフト効果を調査した結果です。
「◯◯のブランドを知っていますか?」とブランド名を出して調査する“助成想起”と、「◯◯といえばどのブランドを思い浮かべますか?」のようにブランド名を提示せずに調査する“純粋想起”に分けてまとめています。

この結果を見ると、地上波に比べてCTVがやや低い結果となっていますが、ほとんど同等のパワーを持っていると言えるでしょう。対してPC・スマホは、ブランドリフト効果としては劣ってしまう結果となりました。

このことから、広告配信における「面」で考えた時に有利なのは、TVデバイスということがわかります。私が携わっている他の案件でも調査をしたところ、同様の結果となることが多く、ある程度信頼できる傾向なのではないかと思っています。

長﨑
でも、なぜ、デバイスごとに差が生まれるのでしょうか。
当たり前ではあるのですが、その差は「面」として特徴に違いによるものだと考えています。

TVデバイスは、PCやスマホに比べて画面サイズが大きく、視聴態度としても視聴に専念する傾向があります。しかし、スマホなどは画面サイズも小さく、スクロールやスキップを簡単にできてしまう。また、地上波の方が大手企業の広告が多いというこれまでの実績により、信頼性が高いという傾向も考えられます。こうしたさまざまな特徴が、ブランドリフト効果の違いにつながっているのです。

TVデバイスに比べ、広告効果が劣る結果となったPCやスマホですが、だからと言って、PCやスマホに広告を出す意味がないかというと、そうではありません。第二部では、PCやスマホの「面」を活用したプラニング事例についてお話しさせていただきます。

【第二部】PC・スマホのメディアプラニング事例

工夫次第で、テレビを上回る広告効果も

長﨑
第一部では、認知目的の広告を出す場合、地上波やCTVの効果が高いということをお伝えしました。しかし、PCやスマホを活用できないということではありません。PC・スマホが非推奨のケースと、推奨のケースについて簡単に紹介します。

たとえば、同じターゲットに、同じメッセージを、同じクリエイティブで届ける場合。この場合は、PC・スマホは非推奨でしょう。なぜなら、第一部でお伝えしたとおり、地上波とCTVが優位だからです。

長﨑
ただ、「誰に」「何を」「どのように伝えるか」といった設計をする場合は、PC・スマホの広告効果が地上波・CTVを大きく上回ることもあるため、活用すべきだと考えています。

最適な設計で、想定以上の成果を実現

長﨑
実際のメディアプラニング事例を2つ紹介させていただきます。

一つ目が、あるスポーツ関連の広告主様の事例です。
「PCやスマホでスポーツ観戦中のファン層」をターゲットに設定し、「出場中の選手を起用したブランディング広告」を、「試合中継に挟み込まれる広告枠に」配信しました。

イメージとしては、スマホで好きなスポーツを観戦中に、好きなチームが起用された広告を出すことで、ブランディングを図るといったもの。視聴者が一番受け入れやすいタイミングで、受け入れやすいクリエイティブを配信することで、他の媒体で同じクリエイティブを出稿した時と比較して、10倍以上ブランド好意度が上がる結果となりました。

このように、工夫次第で地上波・CTV以上の成果を見込めるのが、PC・スマホの最大の特徴だと思っています。

長﨑
もう一つの事例が、ファッション関連の広告主様の事例です。
「ファッションに関心がある層」をターゲットに、「インフルエンサーが制作したブランディング投稿」を、「インフルエンサー自身のアカウント」でも発信いただきました。

投稿自体も、いわゆる企業側のブランディング広告とは異なり、インフルエンサーの普段の投稿の雰囲気に合わせてブランディング要素をいれていただく形にすることで、インフルエンサーのフォロワーを中心に、いいねやコメントなどのエンゲージメントを大量に獲得。プラットフォーム側のアルゴリズムでも良い投稿だと判断されたことで、さらなる拡散につながり、約600万再生を実現しました。

一般的にリーチ単価が1円だとすると、予算500万円の場合、500万のリーチしか取れないものですが、設計次第で想定を超えるリーチを達成することもできるのです。

長﨑
二つの事例から、PC・スマホでは、地上波で流すTVCMと同じものをリサイズして流すのではなく、「Who」「What」「How」を細かく設計することで、大きな成果を得られるということがわかります。

通常、ターゲット全体を意識した一つの「ビッグメッセージ」を作成し、同じメッセージをテレビやタブレット、OOHなどに広告を展開していくのが一般的だと思いますが、私たちはそれをターゲットごとに最も刺さる形に変換してクリエイティブを作るといった手法を推奨しています。

本セミナーを通して、デバイスごとのプラニングの重要性がお分かりいただけたのではないでしょうか。とくに、地上波・CTVと同じ広告を流す場合、PC・スマホは効果が出にくいデバイスではありますが、設計次第では効果が倍増するデバイスだと思っています。

こうした効果を最大化させるためにも、「誰に」「何を」「どう伝えるか」といったプラニングが不可欠になってきますし、ターゲットごとの訴求ポイントが分かれば、より効果的なクリエイティブづくりにもつながるはずです。

デバイス統合プラ二ングで活躍する、博報堂DYグループの次世代型ビジネスモデル「AaaS」

事業効果の最大化を目指す「AaaS」

馬場
ここまでお話ししたように、デバイス統合プラ二ングではテレビとデジタルを統合的に管理し効果的・効率的に運用することが重要です。
最後に、事例でも活用していた、当社が提唱する広告メディアビジネスのデジタルトランスフォーメーションを果たす次世代型モデル「AaaS」について、簡単にご紹介します。

AaaSは、メディア基点での投資最適化を通じて、広告主様の事業貢献、そしてビジネス貢献をする新しいビジネスモデルです。
コンセプトは大きく4つあります。
1つ目は、メディア広告の価値を「枠から効果へ」と転換させること。「枠」を買い付けるだけではなく、広告を出稿したその後の成果にコミットさせる、「枠」の売買による広告取引から、「効果」の売買による取引へとシフトすることです。
2つ目はテレビとデジタルを中心としたメディアを横断しての最適化「メディア統合」です。
3つ目は「生活者データ」、「メディアデータ」等を活用することで効果の可視化・分析し、KPI達成を目指します。
4つ目は「常時接続コンサルティング」です。コンサルタントが並走し、PDCAを継続的に実施してより高い効果を追求し、最終的には事業効果の最大化を目指します。

馬場
特に最近、多くのお問い合わせをいただいているのが、『Analytics AaaS』です。このソリューションが、なぜ今、多くの企業から注目されているのか、その理由を少し具体的にご説明します。

MMM(Marketing Mix Modeling)実施において注目を集める『Analytics AaaS』

馬場
『Analytics AaaS』は、MMM(Marketing Mix Modeling)を行うための、弊社の自社開発ソリューションです。MMMは、統計的な手法を用いて、テレビCM、Web広告、SNS、イベントといった多様なマーケティング活動が、KGI(重要目標達成指標)にどれだけ貢献しているかを定量的に分析する手法です。これにより、これまで効果が見えにくかったオフラインメディア(テレビCM、新聞広告など)を含めた、マーケティング活動全体の投資対効果を可視化することが可能です。
さらに、『Analytics AaaS』は、現状の分析だけでなく、KGI最大化のための最適なメディア予算アロケーション(配分)の示唆出しにも活用できます。例えば、「売上を〇%増やすためには、テレビデバイス広告の予算を〇円増やし、デジタル広告の予算を〇円にすべき」といった具体的なアクションプランの策定にも役立ちます。

なぜ今、『Analytics AaaS』が求められるのか

馬場
近年、3rd Party Cookieの利用制限(※1)など、プライバシー保護の観点での規制により、Web上でのユーザー行動の追跡がより一層難しくなっています。このような状況下では、個人のCookieデータに依存しないMMMのような分析手法が、非常に有効な手段となります。
『Analytics AaaS』は、個人情報保護規制の影響を受けずに分析が可能であり、広告媒体やチャネルを横断した、統合的なマーケティング効果の測定と最適化を実現できるため、最近は注目を集めているのです。
変化の激しいマーケティング環境においても、お客様がデータに基づいた意思決定を行い、持続的な成長を実現できるよう強力にサポートが可能です。
(※1)3rd Party Cookieとは、訪問しているWebサイト以外から発行されるCookieのこと。主にユーザーの追跡やターゲティング広告などに利用されてきましたが、プライバシー保護の観点から利用制限が進んでいます。
「AaaS」は他にも様々なソリューションを用意しており、課題に応じて最適な提案を行いますので、お気軽にご相談ください。
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  • 株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
    統合アカウントプロデュース局 AaaSアカウント推進二部
    メディアプラニングチーフディレクター
    ※会社名・部署名・肩書はセミナー開催時のものです。
    2012年にキャリアをスタート。総合印刷会社でリアル店舗のセールスプロモーション領域を中心に企画立案および制作物のクリエイティブ・製造のディレクションに従事。2018年からはインターネット広告代理店にて獲得領域を中心とした広告運用のディレクションおよびPDCA関連業務に従事。2020年に博報堂DYメディアパートナーズに入社しテレビ-デジタルの統合および認知から獲得までのフルファネルのメディア戦略設計、メディアプラニング、広告運用ディレクション、PDCA業務などに従事。現在は統合メディアプランナーとして、博報堂グループとして競争戦略として立ち上げたAaaS構想に沿ってメディア事業のDX化を推進中。
  • 株式会社博報堂DYメディアパートナーズ
    統合アカウントプロデュース局 AaaSアカウント推進三部
    メディアプラニングディレクター
    ※会社名・部署名・肩書はセミナー開催時のものです。
    2015年より事業会社のBtoBマーケターとしてキャリアをスタート。
    SEM、LPO、デジタル広告用バナーPDCA、メールマーケティング、Marketing Automationツール導入などデジタルマーケティング領域を中心に幅広く従事。
    2018年より博報堂で通信キャリア、金融、EC、スマホアプリ業界に従事。事業会社視点でのマーケティング経験も活かした、費用対効果最大化プラニングとPDCA実行力が強み。