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ヒット習慣予報 vol.368『気ままにブリード』
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ヒット習慣予報 vol.368『気ままにブリード』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの石井です。
突然ですが、みなさんはペットを飼ったことがありますか?私は犬が好きで、昔実家でも犬を飼っていたのですが、社会人になってからは仕事も忙しく、飼いたいと思ってもなかなか実現できずにいます。しかし、SNSで犬の動画を見たり、ふと犬を見かけるたびに、ついつい見入って飼いたくなってしまいます。ただ、犬や迎えるには時間もお金もかかるし、命を預かる責任も大きいとは自覚しつつも、「癒されたい」「育ててみたい」という欲求は消えないジレンマを抱えています。しかし、近年では、本物の自分のペットを「ちゃんと飼う」のではなく、本物ではない、自分のではないペットを「気ままに飼う」という新たなペットの飼育に注目が集まっているようです。
そこで、Googleトレンドで「ペット」を検索してみると、近年、検索ボリュームが右肩上がりに徐々に伸びており、コロナ禍以降も高水準を維持していることがわかります。

出典:Googleトレンド

今回、ご紹介する「気ままにブリード」は、ペットを飼いたいが、自分のリソース的にペットを飼えない人が、本来の飼育とは形を変えて、ペットを飼育する体験をしているという新しい社会の兆しに着目しました。ここからは、具体的な動向を一つずつ紹介していきたいと思います。

まずは、生きていないけど、まるで本物のような存在感を持つ「AIペットの飼育」です。ペットのようなモフモフの丸い見た目と、感情を学習するAIを搭載したペット(人形型ロボット)は、まるで生き物のような反応を見せてくれるため、注目を集めているようです。抱きしめたり、撫でたりすると、振動や声で反応してくれるのが特徴で、ユーザーの行動や飼育環境に応じて感情が変化し、「今日は機嫌がいい」「ちょっとすねてるかも?」といった本来のペットと同様の関係性を築いていける感覚があるようです。私も、AIペットの販売店立ち寄ったことがあるのですが、思った以上にリアルな反応が返ってきて驚きがありました。また、店舗にて購入されているお客さんも多く、今後需要がさらに加速しそうな気配を感じました。このように、AIペットとのコミュニケーションを通じて、癒しを得る行為が、忙しい現代人にとってちょうどいい“気ままな飼育”として受け入れられています。このペットを飼育するという形は、リアルの手触りで癒されつつ、ペットとのコミュニケーションをすることで心の隙間をしっかり埋めてくれる存在となっているようです。

次は、メタバース上における「アバターペットの飼育」です。ユーザーが、自分好みにカスタマイズしたペットを、仮想空間内で育てたり交流したりする飼育が、注目を集めています。リアルなペットのように、散歩等のお世話の義務はなく、都合のいいときだけアクセスして癒されることが人気の要因の一つとなっています。さらに、SNS感覚で日常的にペットの写真をアップしたり、アイテムを買って着せ替えしたりできるので、「SNSでお披露目したい」感覚も満たしながら、楽しめるそうです。実際にSNSで調べてみると、

「アバターペットを飼い始めました」という声も多く、思った以上の人が、日常的にメタバース上でペットとコミュニケーションをとっているようです。また、バーチャルだからこそ、物理的な制約を受けず、マンション暮らしやアレルギー体質の人でもペットとの関係性を楽しめる新たな選択肢となっています。これまでもデジタルペットという形はいくつかありましたが、メタバースという没入空間での飼育になるため、デジタルペットの中でも桁違いにリアルな飼育体験を行うことができることができるようです。

最後に紹介するのは、リアルなペットの「お預かり飼育」です。これは、自分のタイミングで一時的にペット触れ合いたい人と犬を飼っているが一時的に預けたい人をマッチングし、協力してペットの飼育を実現しているようです。たとえば「犬が好きだけど仕事が忙しい」「旅行で家を空けるから預けたい」など、ライフスタイルの中で多忙な時間に一時的に自分のペットを預ける感覚でペットの体験時間を、少しの時間だけペットを飼育したい人にシェアすることで、犬も人も無理のないライフスタイルを築いています。個人的に、他人にペットを預けるのは少し不安もありますが、口コミを見てみると、プラットフォームコミュニティの中で信頼関係を築くことができるという理由から、近隣の方などに預けるハードルが下がっていることがわかりました。「また、今日はちょっと癒されたいな」という日だけ、気軽に“飼育気分”を味わうことができ、何より、「事情があってずっとは飼えないけれど、愛情は注ぎたい」という人にとって、“ちょっとだけ飼う”という新しい形の共生スタイルが、注目を集めている要因の一つのようです。ただしこちらは本物の命を預かる行為なので、その覚悟がある方だけの楽しみ方である、ということをは覚えておく必要があります。

いくつか事例を紹介してきましたが、なぜここまで「気ままにブリード」が盛り上がっているのでしょうか。理由の一つとして、現代人の忙しさや物価の高騰などがあるのではないでしょうか。仕事や家事、多層化する趣味など、限られた時間とお金の中で、本格的なペットの飼育にはなかなか踏み出せないという人が増えている気がします。でも、心のどこかで「癒されたい。愛情を注ぎたい。」という感情を、AIやメタバース、シェアリングといった技術や仕組みが、その欲求を“無理なく満たす手段”として受け入れられ始めているのではないでしょうか。
また、気ままに飼育する人が増えている背景には、「飼う=所有」という価値観ではなく、「関わる=体験」としてのペットとのつながり方へと変化していることも、理由の一つだと考えます。ちゃんと最後まで面倒を見なければという「義務感」ではなく、自分のペースで「無理なく寄り添う」というペットとの新しい関係性が築かれているのかもしれません。

最後に、「気ままにブリード」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。

「気ままにブリード」のビジネスチャンスの例
■AIペット専門店の運営
■メタバース内でのペット商品のEC展開
■ペットの飼い主とペットと触れ合いたい人のマッチングカフェ
など

個人的に犬を飼いたい気持ちはかなり強いですが、自分の場合自宅に十分な時間いてあげられないので、本気でAIペットを検討します。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • 九州博報堂
    ヒット習慣メーカーズ メンバー
    2021年九州博報堂に入社し、統合プラニング職に従事。
    2023年から博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局に所属。
    アウトドア派。旅行が趣味で、1番好きな国はハワイ。老後はハワイに住みたいと思っている。