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ヒット習慣予報 vol.365『週末ハンティング』
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ヒット習慣予報 vol.365『週末ハンティング』

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの中川です。

都市生活は好きだけど、仕事に追われると、どうも自然が恋しくなる。そういう人って多いと思います。今までは、自然の中でゆっくり癒されたいというニーズが主流でしたが、それよりももっと原始的で、本能的な楽しみ方が広がりつつあるようです。それは自然の中に入り、自分の手で「獲る」「採る」という、命を育むための肉体労働のようなもの。そんな新たな習慣の兆しを「週末ハンティング」と名付けました。狩猟や採集といった行為を週末にだけ楽しむライフスタイル。自然に寄り添いながら、自給やサバイバルの要素を取り入れた、新しい“都市生活者の野生回帰”のかたちです。

ひとつ目は、山に分け入り、週末だけ狩猟を楽しむ「週末ハンター」です。
いま、普通の会社員が週末に鹿やイノシシなどの狩猟を楽しむ習慣が広がりつつあります。SNSを眺めてみても「#週末ハンター」「#狩猟女子」というタグと共に、都市生活者による狩猟体験の投稿が増えています。かくいう私も今、狩猟に興味がありまして、先日猟師に同行して狩猟体験をしてきました。それから狩猟免許を取りたいなと思い立ち、警察の講習会を申し込もうと思ったら、あまりの人気に秒で予約が埋まるほど。男性ばかりでなく、女性の希望者も増えているとのことで、時代の変化を感じます。実際にGoogleトレンドで「狩猟免許」というキーワードを見ても、じわじわと検索数を伸ばしています。都市で働き、週末は“本能”に帰る。週末ハンターは、現代の「二拠点生活」の進化系とも言えるのかもしれませんね。

▼「狩猟免許」検索量推移(2010/4/01以降・日本)

出展:Googleトレンド

次に、街の足元に広がる“食べられる自然”を狙う「都市野草採取」です。
去年、街路樹のイチョウが色付く時期に、人々の往来をかいくぐって、おばあさんが落ちていた銀杏を巧みに拾い集める光景を目の当たりにしました。イチョウのみならず、つくし、ヨモギ、たんぽぽ、ドクダミなど、公園や空き地に自生する野草を摘み、自宅で調理や加工を楽しむこの活動が、注目されています。野草を楽しむタレントや野草の料理本が話題になったり、SNSでは「#野草好き」「#野草料理」「#野草生活」などのタグを付けた投稿が多く散見されます。かつては雑草とみなされていた植物に新たな価値を見出し、SNSで採取スポットやレシピが共有されることで初心者の参加も容易になったようです。(ただし、採取に関して法律や規制もあるので、注意が必要です)

最後は、都市でミツバチを飼って採蜜する「週末養蜂」です。
これは、今回の記事を執筆する上でリサーチをしていたところ、発見して驚きました。都市の屋上や庭でハチミツづくりをするのが、密かな人気なんだとか。NPOや企業が行うケースもありますが、個人ではじめる人も増えています。Xで「#屋上養蜂」と検索すると、マンションや戸建ての屋上で巣箱を設置し、週末ごとに観察・採蜜を行う投稿が多く見られます。中には「#週末養蜂家」として、はちみつを小瓶に詰めて友人に配ったり、ラベルを自作してEC販売したりするケースも見られました。自然と関わりながら、ほんの少しの自給的生活を実現する週末養蜂。それは「育てるハンティング」とも言える、穏やかな野生の入り口かもしれません。

では、なぜ「週末ハンティング」は広がりつつあるのでしょうか。
まずは、デジタル社会で疲弊した身体感覚を取り戻したいという欲求。獲る、採る、育てるといった“手と五感”を使う行為は、スマホやパソコンでは得られない実感をもたらしてくれます。次に、自然の循環的な暮らしへの意識の高まり。自然の恵みを無駄なく使う、命をいただくという姿勢には、今の時代が求める「自然の循環の一部である人間」という倫理観にも通じているのでしょう。さらに、「得たものに物語がある」ことへの価値再評価も大きいです。自分の足で得たものには、買ったものにはないストーリーがあります。それが“消費”ではない“体験”として人々を惹きつけているのでしょう。

このように広がりつつある「週末ハンティング」ですが、そこには新たなビジネスチャンスが考えられます。

「週末ハンティング」のビジネスチャンスの例
■都市のどこに採集して食べられる野草が生息しているか?が確認できる「都市野草ハンティングMAP」の開発。
■誰でも屋上で養蜂できる設備やサポートがついた「養蜂体験型不動産物件」の開発。
■個人が採取した野草や獲得した獲物の活用アイデアをシェアできる「自然の知恵シェアリングプラットフォーム」。
など

先日、知り合いの猟師がさばいた猪肉を取り寄せて、BBQで食べたのですが、肉になるまでのストーリーを体感しているからか、食べるほどに体の活力が満ちてくる気がして、いつも以上に命の重みを感じる不思議な体験でした。親子で狩猟体験に行くツアーもあって、これから食育的な観点でも「週末ハンティング」は広がっていくかもしれませんね。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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  • クリエイティブ局 チームリーダー
    ヒット習慣メーカーズ リーダー
    エグゼクティブクリエイティブディレクター
    メーカーの商品開発職を経て、2008年に博報堂中途入社。
    ECDとして、広告のみならず商品、サービス、事業にいたるまで幅広い領域に携わっている。いい年になってきて、思考がちょっと凝り固まってきた気がするので、今年は「ふざける」をテーマに奮闘中。