
ヒット習慣予報 vol.356『日常プチアウトソーシング』
こんにちは、ヒット習慣メーカーズの吉田です。
突然ですが、皆さんは自分が加入しているサブスクリプションサービスをすべて把握できていますか?
ちなみに、僕はほとんど覚えていないです。そんなに登録しているわけでもないのに。どのサブスクサービスに登録していて、それぞれどの決済方法を設定していたのかを把握していないので、気が付いたら月末に色々請求が飛んできてあたふたする、というのをここ数年ひたすら繰り返しています。
僕と同じようにサブスクの管理に悩みを感じている人たちがいるのか調べてみると、「サブスク 管理」の検索数が、サブスクサービスが市民権を得たコロナ禍から少し時間が経過した2022年頃から徐々に上昇トレンドになっており、ここ数年では特に検索数が増えてきています。
出典:Googleトレンド(「サブスク 管理」の直近10年間のウェブ検索数の推移)
このように、サブスクをはじめとする新たなサービスの浸透で世の中が便利になり、様々な体験やエンタメを享受できるようになった一方で、その反動となるようなペインも顕在化し始めている昨今。そういったストレスから自分を解放するために、日常生活の様々なものを他の人やサービスにお任せする人たちが増えてきています。今回は、そんな新たな兆しを「日常プチアウトソーシング」と題しまして、生活の中のちょっとしたアウトソーシングの事例を紹介していきます。
最初に紹介する事例は、「管理をアウトソーシング」です。
冒頭でサブスクリプションサービスの管理に苦戦している、というお話をしましたが、僕と同じような悩みを抱えている同志たちにとって画期的なサービスがあることをご存知でしょうか。これまでもひっそりと存在していましたが、欧米圏で新しいものが発表されるなど、今注目を集めています。
そのサービスとは、自分が登録しているサブスクリプションの契約管理を一つのアプリで一元化してくれるのに加え、料金の支払いも通信事業者へと一元化される、という内容で、面倒になりがちなサブスクの管理を簡略化してくれるサービスです。
管理の手間の簡略化に加え、特定のサブスクリプションをセットで登録しているとサブスク料金が割引される、セット割引などのお得な特典が用意されているものもあるようで、これまでよりも一層利用者が増えていくのではないでしょうか。
解約忘れのサブスク料金で「サブスク貧乏」に陥る、といった事態は今後解消されていくかもしれません。
続いて紹介する事例は、「旅行先でアウトソーシング」です。
最近は外国人観光客も回復し、日本国内の様々な土地が観光客でにぎわっていますが、旅行先で問題になるのが手荷物を預けるロッカー不足。昨年僕も、箱根旅行に行った際にロッカーが全く空いて無かったせいで、大荷物を抱えながら観光したりもしましたが、同じような状況に陥ったことがある人もいるのではないでしょうか。
手荷物だけでも先に宿泊先に預けられれば楽なのですが、ホテルまで荷物を持ち運ぶのも手間がかかる…そんなちょっとしたストレスを解消してくれるサービスを活用する人が最近は増えているようです。
そのサービスとは、駅のロッカーに預けると宿泊先に荷物を配送してくれるというもので、手荷物を預けに宿泊先に寄る手間を省けるのに加え、ロッカーの中身が配送されて再びカラになるので、観光客の増加によって生じているロッカー不足の解消にも貢献できそうですね。
最後に紹介するのが、「献立をアウトソーシング」です。
料理のアウトソーシングともいえる、飲食店の出前サービスが一般的になって久しいですが、最近は出来合いのものをただ頼むのではなく、あくまで献立を考える手間と、材料を買いに行くことだけをアウトソーシングするミールキットの利用者が徐々に増えてきているようです。
ミールキットはその日の献立と必要な材料が届くサービスで、献立を考えたり買い物に行くのは面倒くさいけど、出前で済ませるのはちょっと味気ないし、栄養が偏りそう…と考える人のニーズをとらえており、SNSや身の回りにいるミールキットを利用している人たちを見てみると、子育て中の方に特に受け入れられているように感じます。
ここまで「日常プチアウトソーシング」の事例をいくつか紹介してきましたが、このような新たな兆しを見せている背景にはどのようなことが考えられるでしょうか。
まず、エンタメサービスの増加など、娯楽の増加・多様化に伴い、自分の時間の使い方の取捨選択が生活者の中で起き始めていることが一つ目の背景と考えられます。一日の時間は有限ですが、その限られた時間で出来ることは増え続けている中で、今までは自分で済ませていたようなことも、外部サービスへとアウトソーシングすることで、自分のしたいことに割ける時間を少しでも多く確保しようとする人が増えてきているのだと考えられます。
もう一つの背景としては、外部サービスへの委託というアウトソーシングに対する抵抗感がなくなってきていることが考えられます。出前サービスによる料理・食事調達のアウトソーシングだけでなく、家事代行サービスなど、様々なアウトソーシングサービスが徐々に定着したことで、困ったらアウトソーシングするという考えが一般的になり、日常の中のちょっとしたストレスや手間も、自分ではなく外部サービスに頼って解決しようと考える人が増えてきたのではないかと思います。
最後に、「日常プチアウトソーシング」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。
「日常プチアウトソーシング」のビジネスチャンスの例
■自分が利用しているSNSサービスを一括で管理し、都度最適なアカウントやSNSの切り替えをシームレスに行ってくれる管理アプリの開発
■その日の気分に応じたミュージックセットリストを毎朝提供して音楽選びをアウトソーシングできる、音楽サブスクリプションサービスの機能開発
■衣替えに合わせて洋服を預けるだけでクリーニングと保管を行ってくれる、外部クローゼットサービスの開発
年度末、仕事もプライベートも忙しくなりがちな時期ですが、僕もプチアウトソーシングで楽できるところは楽をして、うまく乗り切っていきたいなと思います。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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北海道博報堂/博報堂プラニングハウス
ヒット習慣メーカーズ メンバー2020年北海道博報堂に入社し、マーケティング・ストラテジックプラナーとして業務に邁進している。2024年博報堂プラニングハウスに参画。インターネットに生息し、日夜インターネットカルチャーを浴び続けている。