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対談!EC+【書籍発売記念回】「博報堂式EC」ってなに? 『EC起点の事業変革 博報堂式 ECから始める、これからのマーケティング』出版に寄せて
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対談!EC+【書籍発売記念回】「博報堂式EC」ってなに? 『EC起点の事業変革 博報堂式 ECから始める、これからのマーケティング』出版に寄せて

博報堂DYグループのECプロフェッショナル集団「HAKUHODO EC+」。そのコアメンバー9人が執筆した書籍『EC起点の事業変革 博報堂式 ECから始める、これからのマーケティング』(翔泳社)が3月12日に出版されました。従来型のECを脱し、次世代のEC展開に道を開くこの書籍の企画・執筆を担当した桑嶋剛史と澤田航太、同じく執筆者でHAKUHODO EC+のリーダーである奥山貴弘が、本を企画した意図や読みどころについて語りました。

奥山 貴弘
HAKUHODO EC+ リーダー
博報堂 コマースコンサルティング局 局長補佐

桑嶋 剛史
HAKUHODO EC+ ビジネスコンサルタント/地域DXソリューション リーダー
博報堂 コマースコンサルティング局
コマースDX推進グループ イノベーションプラニングディレクター

澤田 航太
HAKUHODO EC+ コンサルタント
博報堂 コマースコンサルティング局
コマースDX推進グループ マーケティングプラニングディレクター

EC展開の道しるべになる一冊

奥山
以前はものを売るための「出口」であったECが、生活者との出会いの場、生活者を理解する場、つまりマーケティングの「入口」になりつつあると私たちHAKUHODO EC+は考えています。では、その「入口」で生活者にどのような体験を提供していけばいいのか。あるいは、ECをマーケティングにどう活かしていけばいいのか──。それについてクライアントとともに考え、支援していくのが私たちの役割です。

さて、今日はそんな考え方をベースにした書籍『EC起点の事業変革 博報堂式 ECから始める、これからのマーケティング』の企画を担当した2人と、この本で語られている「博報堂式EC」の本質や、読者の皆さんにお伝えしたいメッセージについて語り合っていきたいと思います。
はじめに、書籍を出すことになったきっかけについて教えてもらえますか。

桑嶋
これまでたくさんの企業や自治体のEC展開をご支援する中でしばしば直面してきたのは、「マーケティング」と「EC」が分離して捉えられてしまっているケースです。ECはたんなる販売チャネルの1つで、マーケティング戦略はそれとは別のものである。そんな考え方が根強くあります。しかし僕たちは、ECは現代のマーケティングに不可欠な要素であると考えています。そのことを書籍という形で広くお伝えしたいと考えました。

書店の棚にはEC関連の書籍がたくさん並んでいますが、その多くは「月商100万円をめざすECのコツ」とか「ネットショップ開設講座」といったハウツー系の本です。そういった本で想定されているのは、企業におけるECの実務担当者や、ECで商品を売りたいと考えている個人事業主などの読者です。
それに対して、僕たちが書籍を通じてメッセージをお伝えしたかったのは、主に企業のマーケティング部、宣伝部、営業部などに所属している方々、さらには経営層、自治体の方々などです。つまり、事業をどうつくるかを考えている皆さん、あるいは事業成長の方法を模索していらっしゃる皆さんということです。ECは、そういった方々が抱える課題を解決する強力な武器になる──。それがこの本のコアにあるメッセージです。

澤田
一方でこの本は、ECの直接的なご担当者の皆さんにも有益な視点を提示できていると考えています。企業のEC担当となる方々の中には、「それ以前にまったく別のポジションにいたためにECにどう取り組めばいいかわからない」という悩みをお持ちの方が少なくありません。そういった方々が「マーケティング視点のEC」や「事業視点のEC」に取り組む方法をこの本では詳しく書いています。EC展開の道しるべになる一冊であると私たちは考えています。

EC「から」始めるマーケティングを実践するためのプラニングフレーム(本書より) 

事業成長のドライバーとしてのEC

奥山
「Eコマースで失敗する五つの理由」とありますが、EC展開が失敗する要因にどのようなものがあるのでしょうか。
桑嶋
ECの失敗例の裏には、「ECはEC担当者に任せておけばいい」という考え方が共通してあると僕たちは考えています。EC黎明期には、確かに「ECはEC担当者の仕事」でした。しかし先ほどもお話ししたように、現在のECはマーケティングに不可欠な要素となっています。デジタルマーケティングは、以前はデジタル担当者の専門領域でしたが、今ではすべてのマーケティング活動の基礎となっています。同様に、ECもあらゆるマーケティングの基盤になりつつあると考えるべきだと思います。

具体的な失敗例としてしばしば見られるのが、企業内のコミュニケーションの齟齬です。ECは本来、商品開発、コンタクトセンター、システム、リアル店舗展開などと連携することによって大きな効果を発揮します。また、ECで得たデータや知見を事業活動に活かしていくことも可能です。しかし、企業内のEC担当部署とその他の部署のコミュニケーションがうまくいかず、ECの成果と事業成長を結びつけることができない。そんなケースがよくあります。

澤田
ECを活用しきれず、生活者との関係づくりが難航するケースもあります。現在の生活者の多くは、リアル店舗とECの区別をせずに、ほしいものをほしい場所で買うようになっています。リアルな販売チャネルとECが切り離されていたり、マーケティング戦略にECが組み込まれていなかったりすると、生活者の行動をトータルに補足することが難しくなります。結果として、生活者に提供できる体験価値も不十分なものになってしまいます。生活者視点から見ても、マーケティングや商品戦略にECを組み込むことは不可欠であると思います。
奥山
ECはマーケティングのコアな要素であり、事業成長のエンジンにもなりうる──。その考え方が、この本で謳っている「博報堂式」の本質の1つと言えそうですね。
澤田
おっしゃるとおりです。あらかじめ決まっているマーケティング戦略のオプションとしてECを捉えるのではなく、経営戦略、ブランド戦略、商品戦略とECをしっかり結びつけることで、事業成長の原動力になるECが実現すると僕たちは考えています。
桑嶋
ECはマーケティングや事業戦略のエンジンになるばかりでなく、戦略の起点にもなりえます。本のタイトルに「ECから始める」という言葉を入れたのは、そのことをお伝えしたかったからです。ECは生活者との重要な接点です。そこで提供する体験を通じて、インサイトを得たり、商品販売の成功モデルをつくったりすることが可能です。ECを起点とすることで、マーケティング戦略全体を高度化することができるはずです。

これまでのEC関連書籍にはなかった視点

奥山
博報堂が手掛けたECの本ということで、ECと広告の関係を論じた書籍と捉える方もいるかもしれません。
桑嶋
もちろんEC広告の方法論についても必要最低限のことは論じていますが、それはごく一部です。ECを通じたブランディング、顧客体験のつくり方、バックヤードやフルフィルメントの設計などが主要なテーマとなっています。内容は多岐にわたっているので、個々の課題感や関心に応じて、どこからでも読んでいただくことができると思っています。
奥山
それぞれの視点から、本の読みどころを紹介してください。
澤田
マーケティングや事業視点でフルフィルメントを設計する方法を解説した第5章ですね。これまでのマーケティング関連書籍には、フルフィルメントを含むECのシステム設計という論点はほとんどなく、ECシステムについて学ぶ際にはシステムの専門書を紐解く必要がありましたが、本書ではEC、マーケティング、システムを統合的に論じています。

桑嶋
僕は、新規顧客にECで商品を買ってもらう方法を解説した第7章と、一度買った顧客をリピーター化する方法を解説した第8章を読みどころとして挙げたいと思います。メールの開封率を上げるノウハウやランディングページのデザインといったテクニカルな話ではなく、顧客との関係づくりの本質的な方法論を論じています。
またこの2つの章では、クライアントから特別に許諾をいただいて、実際の事例を紹介しています。そういった点でも、たいへん読み応えのあるものになっていると思います。

「売り買い」の場から、多様な体験を提供する場へ

奥山
今回本を執筆した経験を踏まえて、ECを軸としたマーケティングが今後どう変化していくか、考えを聞かせてください。
澤田
従来のECは、事業者から見ればものを売る場所であり、生活者から見ればものを買う場所でした。しかしこれからのECは、たんに「売り買い」をする場ではなくなっていくと考えています。コンテンツとコマースがどんどん融合し、ストーリーを楽しんだり、情報を集めたりする行動と購買行動がシームレスになっていく。そんな流れが進んでいくと思います。そういった潮流を踏まえて、生活者の行動全体の中にECを位置づけることが必要になっていくのではないでしょうか。
桑嶋
同感です。メディアとしてのEC、情報チャネルとしてのEC、ファン体験を提供する場としてのEC──。そんな多様な機能をECは備えていくことになると思います。それはすなわち、ECのKPIやKGIが売り上げや利益だけではなくなることを意味します。新規顧客の獲得、CX(顧客体験)の創出、エンゲージメントの向上、ブランドの認知度アップなど、さまざまな成果を出せる強力な生活者接点になっていくことは間違いありません。
澤田
何よりも大切なのは実践であると僕たちは考えています。本を通じて得たECに対する理解が実践につながり、確かな成果を生み出す。そんな道筋を示す一冊になっていると自負しています。
桑嶋
本の中では、読者の皆さんのチャレンジを成功に導くための「六つの問い」についても解説しています。また購入者特典として、資料をダウンロードできるようにもなっています。全国の書店でも、もちろんECでも販売していますので(笑)、ぜひお買い求めいただいて「ECから始めるマーケティング」に取り組んでいただければ幸いです。

『EC起点の事業変革 博報堂式 ECから始める、これからのマーケティング』

【目次】
◆第1部 博報堂が解き明かすECに失敗する理由、成功の鍵
第1章 EC事業がうまくいかない五つの理由
第2章 EC「から」始める、これからのマーケティング
第3章 EC「から」始めるための六つの問い
◆第2部 経営者視点の戦略策定
第4章 Q.1 あるべきチャネルの使い分けって?
第5章 Q.2 マーケティング視点で、フルフィルメントをどう設計する?
第6章 Q.3 KGI・KPIはどうやって設計する?
◆第3部 生活者視点の戦術立案
第7章 Q.4 ECで買いたくなる情報の「タッチポイント」って?
第8章 Q.5 もう一度物を買いたくなるための仕掛けって?
第9章 Q.6 長くファンでいたくなるツボって?
◆第4部 実践編
第10章 「六つの問い」を使ってECビジネスを推進しよう

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