おすすめ検索キーワード
放送と通信の垣根を越えた新しいテレビCM運用モデル ──〈Target Impression保証型テレビデバイス広告メニュー〉
MEDIA

放送と通信の垣根を越えた新しいテレビCM運用モデル ──〈Target Impression保証型テレビデバイス広告メニュー〉

地上波テレビのスポットCMは、圧倒的なリーチ力がある一方で、デジタル広告のような運用型メディアではありません。その側面をインターネットにつながったコネクテッドTVによって補い、CMキャンペーン全体の目標Target Impressionを確実に達成していく──。そんな新しいモデルがリリースされました。これまでにない画期的な広告メニューを開発したフジテレビと博報堂DYメディアパートナーズのメンバーに話を聞きました。

吉田 高次氏
フジテレビジョン
営業局 営業推進室 営業戦略部 副部長

植松 裕介氏
フジテレビジョン
営業局 首都圏営業室 スポット営業部 主任 兼 営業戦略部

森﨑 宏伸氏
フジテレビジョン
営業局 総合営業室 デジタル営業部  兼 営業戦略部

児玉 昌
博報堂DYメディアパートナーズ
総合アカウントプロデュース局 テレビアカウント推進部

湯川 適
博報堂DYメディアパートナーズ
統合アカウントプロデュース局 OTTアカウント推進部 

本間 奎太
博報堂DYメディアパートナーズ
テレビラジオビジネス局 テレビ三部

地上波とデジタルのメリットを組み合わせる

──〈Target Impression保証型テレビデバイス広告メニュー〉は、地上波テレビとデジタルを統合した画期的な試みとして注目を集めています。このメニューを開発する背景にあった課題をお聞かせください。

吉田
まず、放送局側の課題からご説明します。
私が現在所属しているフジテレビの営業戦略部は今年新設された部署で、地上波と配信サービスであるTVerの両者に共通する広告メニューを開発することをミッションの一つとしています。

近年、地上波テレビをあまり見ない「ローテレ層」や、まったく見ない「ノンテレ層」と呼ばれる人たちが、特に若い世代に増えてきているという事実があります。それに対して、TVerのユーザー数は右肩上がりで伸びており、現在のMUB(マンスリーユニークブラウザ)は月間4000万に達しています。

──インターネット経由でのコンテンツ接触が急増しているわけですね。

吉田
そうです。とはいえ、テレビがもっているリーチのボリュームとスピードは、依然ほかのメディアを大きく凌いでいます。また、「ブランドセーフティ」という観点からも、テレビは信頼されるメディアであり続けています。

在京キー5局が共同で行った「広告から生活者が受ける印象」に関するアンケート調査結果を見ると、テレビ番組やCMは、「信頼感」「親しみ」「広告表現や内容」などの点で高く評価されていることがわかります。

「テレビや無料動画における広告が生活者に与える印象」調査 2024年8月実施
調査手法:インターネット調査
調査地域:全国
調査対象:自宅に据え置きTVを保有、かつ、直近三か月以内に地上波テレビ・TVer・無料動画プラットフォーム(PF)の全ての利用経験がある
サンプル数:1,698人
調査期間:2024年8月21日(水)~8月23日(金)

広告主の視点から見れば、テレビCMはブランドを棄損するリスクが非常に少ないということです。テレビがもつこのメディア価値やコンテンツパワーを引き続き提供していく義務が私たちにはあります。

地上波とTVer、すなわち放送と通信の垣根を越えて、テレビのメディア価値やコンテンツパワーを広告主にご利用いただきたい。そう考えたのが、〈Target Impression保証型テレビデバイス広告メニュー〉開発の発端でした。

森﨑
これまで、地上波とTVerの広告セールスが別々だったのは、広告指標の違いが大きな壁になっていたことが原因でした。しかし今回、TVer広告の配信対象をテレビデバイスに限定することで、地上波とTVerを「Target Impression」という統一指標で扱うことができるようになりました。それによって、セールスはもちろん、モニタリング、運用までをテレビデバイスという括りで包括的に行えるようになったのです。まさにこれこそが、このメニューの画期性だと考えています。
植松
スポンサーの広告予算の一部では、この数年、地上波からデジタルにシフトする動きがみられます。
地上波のスポットCMを担当する立場として、そのことを大きな課題と感じてきました。吉田からあったように、テレビには現在も大きな媒体力があります。一方、広告主にとって、広告成果を可視化しやすいデジタルメディアが非常に魅力的であることも理解できます。〈Target Impression保証型テレビデバイス広告メニュー〉は、その2つの利点を組み合わせた新しいメニューと言えます。

地上波CMを「運用」できる画期的な仕組み

──博報堂DYメディアパートナーズ側の課題意識についてもお聞かせください。

児玉
「地上波テレビ広告とデジタル広告を統合的に運用したい」という広告主のニーズに応えなければならないという議論が、博報堂DYグループ内では以前からありました。〈Tele-Digi AaaS〉という独自のモデルを開発したのも、そのような課題意識があったからです。

そんな中、日頃おつき合いのあるフジテレビの皆さんとのディスカッションを通じて、テレビデバイス上の「Target Impression」という指標でテレビ広告とデジタル広告の統合ができるのではないかというアイデアが出てきました。そこで、2024年7月にプロジェクトをスタートさせて、新しい広告メニューの開発に着手したわけです。

──〈Target Impression保証型テレビデバイス広告メニュー〉の仕組みをご説明いただけますか。

児玉
まず、キャンペーン全体の目標インプレッション数を設定し、〈Tele-Digi AaaS〉の仕組みを使ってダッシュボードで管理します。ダッシュボード上では、地上波テレビCMのインプレッションをデイリーで把握することができます。そして、目標に対する達成度に応じて、CTV(コネクテッドTV、以下CTV)への出稿で調整をしていきます。そうした運用によって、キャンペーン終了日までに目標のインプレッションを確実に達成することが可能になる。そんな仕組みです。

【インプレッションを統合モニタリングする“Tele-Digi AaaS”の概念図】


──テレビ広告をデジタル広告のような「運用型」にするメニューと言えそうですね。

森﨑
広告運用ができなかったテレビと、運用可能なCTVの広告を組み合わせることで、トータルな運用モデルをつくるという考え方ですね。
発想自体はシンプルですが、これまでは実現できなかった仕組みです。

これが可能になったのは、TVerをCTVで視聴する生活者が増えたからです。
TVerの再生数で見ると、ほぼ3分の1がCTVとなっています。CTVはコンテンツを提供する側から見れば「配信メディア」ですが、視聴者にとっては地上波と同じ「テレビ」です。広告がもたらす体験という点では、地上波テレビもCTVも同等と考えられます。

──プロジェクトの発足が7月で、新メニューのリリースが9月末ですから、実質2カ月ほどで開発されたことになります。とてもスピーディな動きでしたね。

吉田
それが可能だったのは、私たちフジテレビ側と博報堂DYメディアパートナーズの皆さんとの間で課題意識を明確に共有できたこと、マスとデジタルの両メディアの広告ビジネスに精通したメンバーの皆さんのお力添えがあったこと。この2点が大きかったと思います。
本間
「新しいことに挑戦したい」というフジテレビの皆さんの情熱を僕たちは感じていました。フジテレビは、TVerを含む「AVOD(広告付き無料配信)サービス」の再生数、視聴人数、視聴時間の3つの指標において、2年連続トップのポジションを獲得しています。そのアドバンテージをいかしながら、広告主にとってメリットとなる新しい取り組みを進めたい──。そんな気持ちを受け止めさせていただきました。

トータルの露出量を保証する仕組み

──新しい広告メニューを開発するにあたっての苦労点についてもお聞かせいただけますか。

植松
従来の地上波のスポットCMとはまったく別の商品であることを周囲に理解してもらうのが大変でした。
〈Target Impression保証型テレビデバイス広告メニュー〉の指標は、視聴率ではなくインプレッションです。視聴率を基準とする従来の広告メニューのほかに、インプレッションというテレビ局ではこれまであまり使われてこなかった指標を基準とする広告メニューを販売することで、広告主の選択の幅が広がり、フジテレビにとっても新しい利益創出のチャンスが生まれる──。そんな説明を丁寧に行いました。
児玉
単に広告予算のデジタルシフトが加速するだけなのではないか。そんな意見もありましたね。それに対しては、「地上波で目標設定したCM露出量をCTVと合わせ、トータルの露出量を保証するメニューである」という説明で納得していただくことができました。
湯川
テレビCMの大きな特徴は、周辺ターゲットへもリーチできる点にあります。
テレビは家族や夫婦などで共視聴することが多いメディアなので、商品情報を訴求したい層だけでなく、その周辺層にもメッセージが届くわけです。一方、今回僕たちが開発したのは、特定のターゲットに明確にフォーカスしてインプレッションを獲得するためのメニューです。そこに大きな違いがあります。
吉田
それはとても重要な視点だと思います。現在はターゲットではないけれど、将来的に顧客になってくれるかもしれない若い視聴者。あるいは、今は商品に興味はないけれど、いつか興味を持ってくれるかもしれない潜在顧客。そういった層に対してもメッセージを訴求できるのがまさにテレビCMの強みです。その強みをいかしながら、テレビでは訴求しきれないターゲットに対してCTVでメッセージを届けていくことを可能にする。そんな付加価値の高いプレミアムサービスが〈Target Impression保証型テレビデバイス広告メニュー〉と言えます。
森﨑
ターゲットに対するインプレッションが保証されるので、これまでデジタルメディアで運用型広告を展開してきた広告主の皆様にとっても、非常に使いやすいメニューとなっているかと思います。これによって、テレビCMへの出稿の入り口が大きく広がると嬉しいです。

 

──博報堂DYグループが重視している「生活者視点」の要素は、このメニューに組み入れられていますか。

本間
先ほど吉田さんがおっしゃったように、生活者の「テレビ離れ」の流れがあるのは確かです。しかし、「良質なテレビコンテンツ離れ」は決して進んでいないと僕たちは考えています。地上波をリアルタイムで見なくても、CTVなどの新しいデバイスで優れたコンテンツを楽しみたいと考える生活者は今後も減ることはないはずです。広告ビジネスのモデルを使って、放送か通信かを気にせずに無料でコンテンツが楽しめる環境をつくり、信頼できる広告情報を届けていく。その点に〈Target Impression保証型テレビデバイス広告メニュー〉における生活者視点があると思います。

広告メニューをいかに拡張していくか

──リリース後の反響はいかがですか。

児玉
さまざまな広告主から多くの問い合わせをいただいています。広告主のニーズに合致したメニューであるという確かな手応えがありますね。
本間
社内からも「話を聞かせてほしい」という依頼がたくさん寄せられています。すでに決定した案件もいくつか出てきています。

──このメニューは現在のものでいったん完成と考えてよろしいですか。

吉田
今後もアップデートしていきたいという構想があります。
1つは、先ほども話に出た周辺ターゲットを視野に入れた指標策定です。例えば、F1層をターゲットにした広告の場合、数年後に購買層になるティーン層を周辺ターゲットと捉えることができます。コアターゲットだけでなく周辺ターゲットへのアプローチを組み込んだ指標を博報堂DYメディアパートナーズの皆さんとつくっていくこと。それがこれからの大きなチャレンジになると考えています。

それからもう1つ、デモグラフィックを軸としたターゲティングだけでなく、嗜好性やライフサイクルによるターゲティングができないかと考えています。

児玉
いずれの構想も実現へのハードルはありますが、博報堂DYグループが保有する生活者データやAaaSのツールを活用すれば、実現は決して不可能ではないと思っています。
湯川
オペレーションのシステム化も、今後チャレンジしていくべき領域だと思います。例えばその日の地上波でのTarget Impressionに応じて、翌日のCTVでの広告投下量が自動で算出される。そんなシステムがあれば、オペレーションをより効率化できます。
森﨑
ターゲットの視聴率予測の仕組みづくりにも取り組んでみたいですね。これも簡単ではありませんが、AIなどの活用で実現できればいいと思います。
児玉
現在、AaaSでも視聴率予測機能は開発を進めており、年々精度を高めることに成功しています。今後、是非フジテレビとも連携してさらなる精度向上やプラニング活用に繋げていければと思います。

テレビの力で広告主の課題を解決してきたい

──地上波とデジタルを統合する広告モデルは、今後テレビ業界全体でスタンダードになっていきそうですか。

吉田
そうなるのが望ましいと思っています。私たちは、今回つくったモデルをクローズドにするつもりはありません。ほかの放送局でも同様のモデルを導入していただければ、テレビ全体の広告価値を上げていくことができるはずです。
植松
テレビ離れが進んでいる中で、求められているのは「競争と協調」です。各局が競い合ってメディアやコンテンツの価値を高めながら、必要な場面では業界全体で協力して新しい価値を生み出していく。そんな取り組みがこれからは必要とされると思います。
森﨑
広告主はフジテレビだけに広告を出稿するわけではありません。複数の局をまたいでプランニングしていく際に各局共通の広告モデルがあることは、広告主にとっても大きなメリットとなります。その観点から見ても、テレビ業界全体で新しい取り組みを進めいくことには大きな意義があると考えています。
児玉
まさに、日本テレビのアドリーチマックスなど、各放送局で地上波とデジタルを統合させる取り組みが始まっています。もちろん、放送局ごとに特徴や強みの違いはありますが、そういった違いを踏まえて、それぞれの局の新しい広告メニューづくりに広告会社の立場から貢献していきたいですね。

──テレビ広告の価値を引き続き高めていくために、今後どのような取り組みをしていきたいか。最後にそれぞれの思いをお聞かせください。

本間
フジテレビのチームの皆さんは、テレビ業界の中で先頭に立ってこれまでになかったことにチャレンジしようとされています。僕たちもそのチームに伴走させていただきながら、ともに新しい広告メニューづくりを進めてきました。今後もチャレンジのパートナーとして、テレビ広告の価値を高めていくことに貢献したいと考えています。
森﨑
TVerのサービスがスタートしたのは9年前で、僕自身は6年前からTVerの広告セールスを担当してきました。その立場からすると、「ようやくここまで成長してくれた」と感慨深い思いです。
TVerは間違いなくこれからも成長していくメディアです。地上波の力とTVerの力を掛け合わせて、テレビ全体のメディアパワーをもっともっと上げていくこと。それがこれからの目標です。
湯川
多くの人たちに共通の話題を提供するのは、今も昔もテレビです。僕自身、テレビが大好きという気持ちが常にあります。僕は現在、TVerの広告を販売する立場ですが、TVerを入り口として地上波にアプローチできる道筋を多くの広告主に提供していきたいですね。

植松
私はスポットCMの担当になる前は、ディレクターとしてバラエティや情報番組の制作を手掛けていました。制作者たちは、いいコンテンツをつくるために日々たいへんな努力をしています。どのタイミングでCMを流したら視聴者の心を捉えることができるか。そういったことも常に考えています。テレビというメディアを支えているのは、スタッフたちの強い思いです。その思いを大切にしながら、テレビの価値を多くの広告主にこれからも伝えていきたい。そう思っています。

児玉
テレビ広告を担当するようになって10年以上になります。その中で、テレビというメディアがもつリーチ力、瞬発力、信頼性を肌身で感じてきました。そういった価値を広告主の課題解決に結びつけていくことが僕たちの役割です。これからも、その役目をしっかり果たしていきたいと考えています。
吉田
〈Target Impression保証型テレビデバイス広告メニュー〉はスポットCMに限定したサービスですが、テレビ局の広告商品にはタイムCMというもう1つの柱があります。タイムCMにおいても、地上波とCTVの連携の仕組みをつくれる可能性があると私は考えています。

植松が言うように、テレビ局の制作スタッフは良質なコンテンツづくりに日夜全力で取り組んでいます。そのコンテンツに対してスポンサードいただくのがタイムCMです。では、そのようなCMにおける地上波とCTVの統合メニューはどうあるべきか。その点について、博報堂DYメディアパートナーズの皆さんと引き続きディスカッションをしていきたいと考えています。〈Target Impression保証型テレビデバイス広告メニュー〉の開発を成功させたチームの力をもって、これからもチャレンジを続けていきたいと思います。

sending

この記事はいかがでしたか?

送信
  • 吉田 高次
    吉田 高次
    フジテレビジョン
    営業局 営業推進室 営業戦略部 副部長

  • 植松 裕介
    植松 裕介
    フジテレビジョン
    営業局 首都圏営業室 スポット営業部 主任 兼 営業戦略部

  • 森﨑 宏伸
    森﨑 宏伸
    フジテレビジョン
    営業局 総合営業室 デジタル営業部 兼 営業戦略部

  • 博報堂DYメディアパートナーズ
    総合アカウントプロデュース局 テレビアカウント推進部

  • 博報堂DYメディアパートナーズ
    統合アカウントプロデュース局 OTTアカウント推進部 

  • 博報堂DYメディアパートナーズ
    テレビラジオビジネス局 テレビ三部