ヒット習慣予報 vol.307『ないなら自作』
こんにちは。ヒット習慣メーカーズの吉田です。
私はとあるゲームが好きで学生時代からプレイし続けているのですが、そのゲームでは毎年1回、ユーザーが応募できるアートコンテストを実施しています。様々なユーザーの渾身の作品を眺めながらこんなのも作れるのかと毎年驚いているのでが、最近は、様々なジャンルで色々なものを自作する人たちをよく見かけるような気がします。
そこで、実際に手作りをする人たちが増えているのか気になり、Googleトレンドで「自分で作る」と検索してみると、年々検索数が増加していることがわかりました。
このように、ハンドメイドへの熱は高い状態ですが、最近は「ないなら作ればいいじゃない」といった具合に、なんでも自分でつくってしまう、まさに「職人」のような人たちが増え始めているようです。
そこで、今回は、欲しいものは自分で作り上げる新しい兆しを、「ないなら自作」と題しまして、実際にどのようなものを自作しているのか、新しい事例をいくつか紹介したいと思います。
最初に紹介する事例は、「スニーカーデコ」です。
元々はとあるブランドが発表した、ビーズが手作業で刺繍されたスニーカーが即完売し、入手困難となったことから、「手に入らないなら自分でつくってみよう」と考えた人達が実践したことからはじまるムーブメントで、市販のスニーカーにビーズやレースを自分で装飾する人たちが増えてきています。
作業自体が非常に大変で根気がいるのですが、刺繍するビーズやレースをどう配置するのかといったデザイン面の設計も非常に大変で、自分で手作りするものの中ではかなりハードルが高いですが、手間暇かけて自分が作りたいものを作るという体験そのものに楽しさを感じる人も多いようです。
続いて紹介する事例は、「本格推しグッズ」です。
「推し活」という言葉が世間的に有名になって久しいですが、公式が出しているグッズだけでなく、自分でオリジナルグッズを制作する人たちが増えてきています。
例えば、「推し」をアクリルキーホルダーにして持ち歩いたり、「推し」の応援うちわを自作したりというのは比較的メジャーになりつつありますが、本格的なところでは、ゲームコンテンツなどでは、実際にゲーム内に登場する武器やアイテムを、素材を買ってきて自作する、という人も見かけるようになりました。
コスプレをする人が衣装を作る、というのは昔からありましたが、今ではコスプレをしない人でもコンテンツのアイテムを自作するのが増え始めています。
最後に紹介するのが、「手作りスマホケース」です。
スマートフォンはいまや生活の必需品で、常に携帯していることからケースのデザインや機能性にこだわる人は多いと思います。この記事を読んでいる人の中でも、透明なスマホケースにステッカーや写真を入れてオリジナルケースのように使っている人も多いのではないでしょうか。
そんなスマホケースですが、アクリル絵の具を使って自分でデザインをしたり、UVレジンを活用してドライフラワーを取り入れたりと、本格的な手作りスマホケースを作る人たちが増えてきています。中には、色や柄のある紙を切り貼りしてプリントするデコパージュという技法を使ってデザインをする人もいるようで、手軽に始められるだけでなく、こだわろうと思えば、とことんこだわれるのも魅力のようです。
では、このような、「ないなら自作」が新たな兆しを見せている背景にはどのようなことが考えられるでしょうか。
まずひとつは、動画投稿プラットフォームの活性化に伴い、コアなハウツー動画にも簡単にアクセスできるようになり、参考にしやすくなったことが考えられます。今までは、本格的なものをつくろうとすると、参考にできる資料が少なく、技術面以外のハードルも高かったですが、様々なジャンルのプロの仕事が動画で簡単に見られるなど、何かをつくろうとした際に参考にしやすい環境が整ったことで、自作のハードルが下がっていることが、「ないなら自作」をする人たちが増え始めた大きな要因と考えられます。
もう一つの背景は、手作りする時間そのものに価値を感じる人たちが増えてきているからと考えられます。ここ数年はコスパやタイパが重要視されることが多いように、効率の良さが優先されがちですが、以前紹介したvol.291「無心消費」 のように、何かに無心で没頭する時間を求めている人たちが増え始めていることもあり、じっくり時間をかけて自分で全部手作りするという体験そのものが好まれているのではないでしょうか。
最後に、「ないなら自作」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。
「ないなら自作」のビジネスチャンスの例
■手軽に自作アイテムのデザインを提案してくれるAIシステムの開発
■自作アイテムだけを集めた、自作展覧会の実施
■本格的な工具も扱える、レンタル工房サービスの開発
手軽なものから本格的なものまで、奥が深いハンドメイドの世界ですが、不器用な僕はまずはスマホケースのデザインから始めてみようかなと思っています。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
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北海道博報堂
ヒット習慣メーカーズ メンバー2020年北海道博報堂に入社し、マーケティング・ストラテジックプラナーとして業務に邁進している。インターネットに生息し、日夜インターネットカルチャーを浴び続けている。