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AIと共存する世界で、クリエイターに求められるスキルとは?【湘南国際村 北斎 DX CONFERENCE 2023レポート】
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AIと共存する世界で、クリエイターに求められるスキルとは?【湘南国際村 北斎 DX CONFERENCE 2023レポート】

ChatGPTをはじめとした話題の生成 AI について、広告制作、建築デザインの世界で活用をすすめる二人のクリエイターが対談。生成 AIの現在と未来、AIと共存する世界で人間のすべき仕事について語りました。

本稿では2023年11月22日~26日に開催された「湘南国際村 北斎 DX CONFERENCE 2023」のセッションにて、博報堂メンバーが登壇した「生成 AI が創る新しい世界」の模様をお届けします。

加藤利基
株式会社SAMURAI ARCHITECTS 代表

柏原平志朗
株式会社博報堂 アクティベーションディレクター

AI北斎-新三浦十景-「湘南国際」
凛と構える湘南国際村。相模湾越しにそびえる富士。 湘南の息吹に包まれて、北斎が描いた歴史と革新の融合が、この新時代の風景に色を添える。
画像提供:湘南国際村事業発信強化委員会

AI×広告制作、AI×建築デザインで、いまなにができるか

柏原
株式会社博報堂のアクティベーションディレクター、柏原と申します。
現在広告制作の現場で生成AIにどのようなことができるかご紹介したいと思います。
たとえば「果汁100%の甘酸っぱい飲み口のオレンジジュースのCMをつくりたい」と指示すれば、テキスト生成AIが CMの脚本をつくり、画像生成AIが絵コンテをつくり、おおよその完成イメージまではパッと仕上げてくれるという状況です。もちろんそれで完成というわけではなく、あくまで叩き台の状態ですが、AIがつくったものをベースに議論してブラッシュアップする、ということができる状況にはなっています。

また、プロモーション戦略を定めるためにグループインタビューを行いたいとき、ペルソナを仮定し、そのペルソナに応じた回答をしてもらうことも可能。簡易的なリサーチや戦略づくりにも役立てることができます。
今日は、普段からこのようにAIを活用している広告クリエイターの視点でお話しできればと思います。

加藤
AI×建築デザインという領域で活動していますSAMURAI ARCHITECTSの加藤と申します。弊社が提供する「Rendery(レンダリー)」というサービスでは、たとえばリノベーションの際、画像生成AIを使って既存の内装写真から希望のイメージに沿った空間デザインを即時に作成することができます。さらに「Instagramで見たこのアイスクリームの画像のようなイメージにしたい」といった、空間以外のイメージから空間デザインを生成することも可能。こういったAIを活用することで建築や街づくりを民主化することをテーマに活動しています。
今回の「北斎 DX CONFERENCE」では、AI北斎というものを作成しました。AIに富嶽三十六景を学習させ、現在の風景を北斎が描いたらどうなるかを模索する試みです。

ここからは柏原さんと「生成AIの未来」というテーマでお話ししていきたいと思いますが、いま、人間の仕事がAIに奪われてしまうのではと危惧されている方も多いかと思います。そのあたりどうお考えですか?

AIと共存する未来では、「独断と偏見」がスキルになる

柏原
いま加藤さんのお話しのなかに「民主化」という言葉がありましたが、生成AIの力を借りればその道のプロフェッショナルでない人も「こういうものがつくりたい」というイメージをある程度実現できるレベルにはなっています。デザインだけでなく、音楽、小説などあらゆる分野において、プロのスキルを手軽にレンタルできるという状態です。でもそれには、絶対にプロに及ばない領域があるというのも事実だと思います。
加藤
ちなみに柏原さんの周囲では、ほとんどの方がAIを活用している状態ですか?
柏原
一部の人はかなり使っていますが、全体としてはまだこれから、という人が多いかもしれません。
加藤
僕はAIのことを最強のアシスタント、最強の秘書だと考えているんです。
AI自体に主体性はないので、それをどう使いこなすかが問われてくる。今後AIを使う人とそうでない人、その間で差が開いてしまうのではという危惧があるのですがどう思いますか?
柏原
個人的に思うのは、これからみんな、特に意識することなくAIを使っていくことになるのではないかということ。
パソコンが普及する前は、ひとつのプレゼンテーションをするにしても「リサーチする人」「発表用の資料を模造紙に描く人」「発表する人」と何人もの人が関わっていたわけですよね。それがいまはパソコンひとつですべてが完結する。その過程には危機的な淘汰があったというわけではなく、自然に当たり前が変わっていったのだと思うんです。同じように、AIを使うか否かで歴然と差が生まれるというより、自然にその差は埋まっていくのが未来の姿なんじゃないかと思います。

加藤
おもしろいですね。
もし個人の間に差が生まれないとしたら、人はなにを目指して生きていくのでしょうか?
柏原
そうなったときに重要なのは独断と偏見なのかもしれません。
AIはさまざまなところからデータを集めて「ふつうに考えたらこうなるだろう」という80点の答えを出せるものだと思うんです。
そんな80点の正解にあふれる未来においては、「普通はこうかもしれないけど自分はこう思う」という独断と偏見をいかに持てるかが問われるのではないでしょうか。
世間の80点とは違う部分に自分の中の正解をつくれるかどうかが、未来のクリエイターにとってかなり重要なスキルになってくると思います。
加藤
AIは個性を消して標準化させてしまうものなので、そのなかで「外れ値」をつくるというのが人間のひとつの仕事かもしれませんね。
人間の可能性とあわせて、AIの限界についてもお話ししたいと思うのですが、AIにできること、できないことについてどう考えますか?

人と人は、より個人的な「感性の共感」でつながっていく

柏原
AI北斎が描いた絵を見て感じたのは、表層的な絵柄についてはかなり忠実にコピーできているなということ。でも、北斎の描くグラデーションは再現できても、そのグラデーションに込めた意図までは学習できないし、北斎の描きそうなアングルはわかっても、そのアングルに決定するまでの試行錯誤や、結局描かれなかったアングルについては学習できない。それがAIの限界点なのかなと感じています。
加藤
できあがったものは学習できても、プロセスについては学習できないということですよね。
今回のAI北斎も実はAIが100%つくっているわけではなく、僕自身の独断と偏見も交えながら人間とAIがコラボレーションしてつくっているという段階。まだそういったプロセスが必要なのかなと思います。
もうひとつ、AIにできること、できないことという意味では人間は身体感覚を持っていて、その経験則を理解し合うことで共感するわけです。
でもそれはAIにはできないこと。この先、生成AIの精度はどんどん上がっていきますが、共感をつくるという部分はやはり人間の仕事なのかなと思っています。

柏原
たしかにそうですね。実際、ある世界的な写真コンクールでAI生成画像が優勝したという事例もあるように、技術的な部分ではクオリティの高い作品をつくれるようになっています。そうなったなかで、人と人は、より個人的な感性の共感でつながっていくようになるのではないかと思います。AIを活用してクリエイティブを行ったとしても、最後のジャッジは人間が行い、そのジャッジを信じることができるかどうか。それは人間同士の共感が決めることなのではないでしょうか。
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  • 加藤 利基
    加藤 利基
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