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デジタルマーケティングの最前線 【博報堂デジタルイニシアティブの挑戦 Vol.7】 動画広告のナーチャリング活用とは──高精度PDCAによるクライアントビジネスへの貢献
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デジタルマーケティングの最前線 【博報堂デジタルイニシアティブの挑戦 Vol.7】 動画広告のナーチャリング活用とは──高精度PDCAによるクライアントビジネスへの貢献

博報堂DYグループのデジタル専門家集団「博報堂デジタルイニシアティブ(HDI)」の取り組みを紹介する連載「博報堂デジタルイニシアティブの挑戦」。
第7回となる今回は、ダイレクトマーケティングにおいて動画広告を活用し確実にナーチャリングにつなげるスキームをつくった事例をご紹介します。オンライン完結型ビジネスにおけるデジタルマーケティングの方法論について、HDIのメンバーに語ってもらいました。

島嵜 美樹
デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)/博報堂デジタルイニシアティブ(HDI)第一ビジネスデザイン本部

オンライン完結型ビジネスのデジタル広告課題

──現在のお仕事の内容をお聞かせください。

島嵜
クライアントのデジタルメディア広告領域を担当しています。具体的には、クライアント側ご担当者への戦略ご提案、広告の運用・検証までを一気通貫でディレクションするのが私の役割です。

──今回は動画広告というテーマですが、担当しているクライアントのどのような課題をどう解決していったのでしょうか。

島嵜
私は、オンライン上で購入・申込を受け付けるオンライン完結型ビジネスモデルをお持ちのクライアントを担当させていただくことが多いです。オンライン完結型のデジタルマーケティングは広告経由でサイト来訪し、そのまま購入・申込の獲得につなげるアプローチに傾注するため、ROAS(広告の費用対効果)の向上とCPA(顧客獲得単価)を下げることがKPIになるケースが多いです。そして、このモデルを継続していくとコスト効率は良化していくが、早々に獲得件数が頭打ちになってしまいビジネス全体の伸びが鈍化してしまうという課題が発生します。この課題に対して動画広告を活用し解決を行っていくというアプローチを実施しました。

──従来のマーケティングの方法論では、まず広くターゲット層の認知を広め、興味関心層から見込み顧客を増やしていく戦略がとられますよね。

島嵜
オンライン完結型のビジネスモデルの場合は、まずニーズ顕在層重視でアプローチを行っていくことが多いです。というのも、ニーズ潜在層へ広告を打てば打つほど、オンラインビジネスの主要な指標の1つであるROASの数字が悪化してしまうことを恐れ、ROASを悪化させないために「どれだけ広告費をかけずに顧客を獲得できるか」という発想になってしまうからです。その発想を変えて、獲得件数を継続的に増やしていくための新しい戦略を立てる取り組みを行うことが重要だと考えています。

指名検索をいかに向上させるか

──具体的な解決策についてお聞かせください。

島嵜
まずニーズ潜在層で認知施策を展開するに際して、何をKPIにするかを決めることが重要です。例えば、過去1年間の様々なデータを統計モデルでの分析にかけ、その中のどの指標が「購入や申込」という行動に寄与しているかを洗い出すことが可能です。その結果、社名や商品名などで指名検索をした人が購買・申込に至る確率が高いということが判明し、「指名検索数の増加」をKPIにすることをご提案したことがあります。「指名検索が重要」という示唆は言われてみれば当たり前のことのように思えますが、それを具体的に数値で明らかにすることで、クライアントの担当者の方にご納得いただけました。

──広告がどれだけの指名検索につながったかを把握するのは簡単ではなさそうです。

島嵜
そこで力を発揮したのが、博報堂DYグループの提供する「Tele-Digi AaaS*¹」です。これを使うことによって、広告による検索数の上昇効果を推定することが可能になります。動画広告の効果を「Tele-Digi AaaS*¹」で測定する方法をご提案し、実施する運びとなりました。
※1 Tele-Digi AaaS「テレビCM」と「デジタル広告」のメディアパフォーマンスを 一元化してモニタリングできる統合ダッシュボード。

──なぜ動画広告だったのですか。

島嵜
動画の方が、静止画よりも訴求力が強いことが大きな理由です。また、マスメディアを使ったCM展開にはかなりの予算が必要になりますが、デジタル動画ならば比較的低コストでの配信が可能です。広告予算を抑えながら高い効果が期待できるのが動画広告だったということです。

──そこからデジタル動画広告をどのような方法で活用していったのでしょうか。

島嵜
動画広告素材をいくつかのセグメントに対して配信し、その結果指名検索につながった割合の高いセグメントを検証しました。その際に活用したのが、プラットフォームのデータクリーンルームです。

例えば、25歳から55歳の男性の指名検索率が高かったとします。データクリーンルームの中でさまざまなデータと突合することによって、その人たちがどういうライフスタイルや嗜好性を持った人たちなのかが明らかになります。その作業を通じて解像度が上がったセグメントを、私たちはポテンシャルセグメントと呼んでおり、次の段階ではそのポテンシャルセグメントに向けて広告を配信し、その結果を再び検証します。その作業を何度も何度も繰り返すことで、ターゲティングの精度を高めていきました。

──そこから新しく見えてきたことはありましたか。

島嵜
当初の予想を裏切り、クライアントの商材に関心が高そうとは一見思えないセグメントに大きなポテンシャルがあることがわかりました。例えば、商品とはまったく関係がない「料理が得意」とか「車が好き」といったような嗜好性を持った人が潜在顧客になりうるといった結果が出るのですが、競合他社はそのような層に対してアプローチをしていません。競合他社のアプローチが手薄な領域に向けたターゲティングができるようになったことが1つ大きな成果と言えます。

PDCAは売り上げを上げるための手段

──次の段階の取り組みについてもお聞かせいただけますか。

島嵜
先ほどお話した検証で有効性を確かめることができたセグメントに対して強くアピールできるクリエイティブ開発が次の段階になります。これも検証の繰り返しで「指名検索率を上げるクリエイティブ」に関するナレッジを開発する必要があります。このように常に検証を繰り返しそのクライアントに適したナレッジ開発に取り組んでいます。

例えば、15秒程度の動画の尺を数ブロックに分け、ブロックごとに要素を組み替えて、その効果を検証するといった方法をとっています。冒頭のブロックに社名を入れ、続いて、オファー、ユーザーメリットの説明、そして最後に再び社名で終えるといったパターンをAとすると、Bパターンではオファーから始めてみる。そんな検証です。

──ターゲティングやクリエイティブのPDCAサイクルを回していく一方で、ビジネス成果を継続的に上げていく取り組みも必要ですよね。

島嵜
おっしゃるとおりです。私たちのミッションは、新しい戦略を検証しながら、同時にROASを下げずに獲得件数を伸ばしていくことです。クライアントの目標は売り上げ向上であり、PDCAサイクルによる検証はあくまでもそれを実現するための手段であり、検証のためにクライアントのビジネス成長を鈍化させてはならないと私たちは考えています。これまでご説明した、戦術・計測手法・検証手法をもちいて、ただの単一施策や検証だけで終わらずクライアントビジネスのグロースに目的を置いた取り組みを行えるよう意識しています。

ソリューションと人のスキルをつないでいく

──今後の展望をお聞かせください。

島嵜
デジタルメディア広告の配信手法とクリエイティブをハックし、「指名検索数」の向上を行えるナレッジを開発することが目下のテーマです。また、本格的な3rdパーティークッキーレス環境下でのダイレクトマーケティングというものを考えると、これまでの手法からの転換が必要になってきます。今後の環境変化に向けて新たなアプローチ手法の開発と成果創出を短中期的に行っていきたいと思っているところです。

──あらためて、HDIの強みを最後にお聞かせください。

島嵜
博報堂DYグループには非常に幅広いソリューションやサービスがあります。また、さまざまな領域のプロフェッショナル人材がいます。デジタルという領域でソリューションと人のスキルを上手につないで、クライアント課題を確実に解決できること。それがHDIの一番の強みだと思います。私自身、自分のスキルをさらに磨いて、HDIのポテンシャルを高めていきたいと考えています。

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