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オウンドサービスの成長を支援する、「DXD Growth Program」とは?
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オウンドサービスの成長を支援する、「DXD Growth Program」とは?

ポストクッキー時代に向け、顧客ID取得の窓口としての「オウンド」の重要性が高まり、企業やブランドと生活者のインタラクティブな関係構築・価値提供を行う「オウンドサービス」も増えてきました。しかしその多くが、どんな指針でグロースを行うかのKPIが設定できていなかったり、UIUXをアップデートする体制ができていなかったり、社内に乱立する様々なデジタル顧客接点を俯瞰的に見れていなかったり、といった課題に直面しています。そんななか誕生した「DXD Growth Program」は、継続的に成長するオウンドサービス実現のための戦略立案から、実際に実装するために、データを活用して顧客に受け入れられるシステム・デザイン・コンテンツを開発するオウンドサービス運用を一気通貫で実施できるプログラムです。

本連載では、「DXD Growth Program」における考え方から具体的な支援内容まで、計6回にわたって詳しくご紹介。今回はVol.0として、プログラム誕生の背景や現状の概観などについて、リーダーの入江謙太に聞いていきます。

ポストクッキー時代に備え
オウンドサービス基点のマーケティングを支援する

――まずは入江さんの自己紹介からお願いします。

03年に入社し、最初はストラテジックプラニング職から始まったのですが、あらゆる部門を次々と転属し、ストラテジー、クリエイティブ、デジタル、プロモーション、マス広告、デジタルメディアなど、PRと営業を除くほぼすべてを経験してきました。なので感覚的には“住所不定無職”という感じです(笑)。現在は「hakuhodo DXD」という組織のリーダーをしています。

――「hakuhodo DXD」のチーム構成について教えていただけますか。

計50人ほどで構成されており、大きく3つのラインがあります。一つは、ストラテジー出身者が多く集まるサービスデザインチーム。そしてエンジニアリングやテクノロジーに詳しいと同時にブランドに則した体験設計ができるテクニカルディレクションのチーム。最後が、リアルとデジタル、店舗空間、VRといった3DCGなど、幅広いデザインを手掛けられるデザイナーチーム。この3つのラインによって、長く続くエクスペリエンスサービスやD2C事業などの構想、開発、実装までを可能にできると考えています。

もう一点、チーム構成で特徴的なのは、博報堂プロダクツからの常駐メンバーが博報堂本体のメンバーと同数、あるいはそれ以上入っていることです。広告業界では長らく、何のためにどんな広告をつくるかというプラニングと、実際に撮影して編集して納品するというプロダクションの仕事が分かれていて、そのために博報堂と博報堂プロダクツという会社の役割もはっきりと分かれていました。しかし、近年は特にデジタル領域でアジャイル性が重視されていて、考える人とつくる人が同じチームで動く、つまりプラニングとプロダクションの一体化が求められるようになってきています。とはいえまだまだそういうケースは少ないので、私たちのチーム構成は非常に特徴的かなと思います。

――なるほど。それではなぜ「DXD Growth Program」が生まれたのか、その背景を教えていただけますか。

まず「オウンドメディア」という言葉を聞くと、製品の品質や性能といった、カタログ的な情報がまとめられた企業の情報発信の場をイメージされると思います。しかし、近年はそこで商品の購入ができたり、健康管理ができるといった多様な機能を持たせることで、企業とブランドと生活者がもっとインタラクティブにつながれる、価値提供できる場としての「オウンドサービス」を構築することが増えています。たとえば私たちが関わったある宅配企業のサービスは、LINEのチャットで配達時間の変更が簡単にできるというもので、おかげさまでたくさんの人に利用されています。しかしつくって終わりになっていたり、つくったのはいいがユーザーに全然使ってもらえないといった課題を抱えているサービスは決して少なくありません。オウンドサービスをつくるのであれば、自社の商品を買ってもらったり、お店に来てもらったり、CRMのようなロイヤリティ向上施策をやり続ける必要があるし、どんどんアップデートしてより良いものを目指すべきだと思います。そのサポートを行うのが「DXD Growth Program」。つまり、企業のオウンドサービスをグロースさせ、企業やブランドにとって意味のあるものにすることを最大の目的としています。

――なぜオウンドサービスは近年急に注目されるようになったんでしょうか。

ポストクッキー時代を見据えた動きです。これまではクッキーをもとに生活者をターゲティングすることができましたが、これからはそれが難しくなる。認知、興味、検討、購入後のリピート購入やファン化の過程で、クッキーは非常に重要な役割を果たしていましたが、それが使えなくなる以上、クッキーに代わるファーストパーティデータ、顧客IDをベースにしたマーケティング活動が必要になってきます。ではその顧客IDをどのように得るのか。ただ「登録してね」と言ってもだめで、やはり何らかの価値提供、関係構築ができるようなサービスを提供しなければ、難しいでしょう。だからこそオウンドサービスをどうつくって育てるかが重要になります。人口も減るなかで、新規顧客を増やすことはもちろん重要ですが、LTVを上げて既存顧客との関係をより豊かなものにしていくことはより一層大切になっていきます。その際に、オウンドサービスを基軸にマーケティングを考えていくことが大きな鍵になると考えています。

――オウンドサービスという言葉になかなかピンと来ない人もいると思うのですが、インタラクティブかつ継続的な関係構築を実現するものという理解でいいでしょうか。

いまはさまざまな業界で、商品の購入を、お客さんとつながっていくための基点ととらえるようになってきています。たとえば自動車なら、購入後、車検や整備などでディーラーとの関係性が続き、それが次の購入につながっていきますよね。自動車は単価が高いので、全国規模でディーラーを設置して整備士さんも揃えることができていたわけですが、いまはデジタルが普及浸透したおかげで、高価格の耐久財でなくとも、継続的な関係構築に主眼を置いたサービスを提供することが可能になっています。たとえば消費財メーカー、飲料メーカー、化粧品メーカーなど、自社でダイレクトなチャネルを持つD2C事業に挑戦する動きが活発化していますし、保険業界、金融業界が、UXやアフターサービスで差別化、付加価値化していく動きもあります。また、ファーストフードやコンビニ、遊園地といったリテールビジネスでは、これまでどこの誰が来て何を買ったかなどはわかりませんでしたが、アプリを通した購入が広がることで、その人の属性や好みなどが見えてきて、より深い価値を提供できるようになっていく。このように、関係構築と価値提供のなかで、生活者データを活用していくというのがオウンドサービスの考え方なんです。

――なるほど。

現状ではDXに力を入れている大企業でさえも、同じ製品を取り扱う自社のECサイトがいくつも存在したり、アプリやサイトや公式LINEなどのデジタル接点が複数乱立していて、顧客IDの統合管理や適切なサービス提供ができていません。そうしたオウンドサービスを自社で整備し、さらにグロースさせて運営するために私たちに相談が来ることもあります。それから、従業員がデータを見ながら仕事ができる環境づくりといった、いわゆるEX、エンプロイーエクスペリエンスに関する相談もあります。

――オウンドサービスという言葉が意味するところが、少し見えた気がします。

ごくごく簡単に言ってしまえば、博報堂が生活者インターフェースと呼んでいるものに相当するのかなと思います。ウェブやアプリ制作はあくまでも一つのアウトプット。肝心なのはビジネス課題をどうとらえ、フロー型からストック型のマーケティングに移行させ、いかに顧客IDを活用して中長期的に生活者との関係性を育み、LTVを上げていくか。その一つの切り札がオウンドサービスづくりなんです。

戦略立案から生活者目線の体験設計まで――
博報堂だからこそ確かなグロースパートナーになり得る

――企業側が抱える課題としては、ほかにどんなものがありますか。

まず「オウンドサービス部」という部門はほぼありません。新規事業開発部門がD2C事業を担ったり、デジタルマーケティングはデジタル部門が担ったり、事業やブランドのサービス化を推進する機能がない場合が多いと感じます。また、IT部門は、堅牢なシステムづくりは担っても、システムやデジタルの知見を通じて新しい価値を創造しようとすることはまだまだ得意ではない印象があります。そうすると、やはり事業部門とIT部門がコラボレーションした混成チームが必要になるわけですが、縦割りの組織においてはなかなかスムーズに協力体制が築けないことも多いのが実状です。融合の必要性を理解していただく必要がまずありますよね。

――「DXD Growth Program」であれば、そうした体制づくりにおける課題に対しても博報堂がケアしながら、自走をサポートしていくということでしょうか。

そうですね。もちろん可能な限り自社内で内製できるよう支援はさせていただきます。しかし、LINEなどの運用は自分たちでできても、システムのアップデートにはエンジニアリングが必要だし、UIのアップデートにはUIデザインの組織も必要。そういう意味で私たちは、せめて自社内でディレクションして回していけるように、ノウハウをお伝えし、サービス自体のグロースまでを責任をもってサポートしていきます。

――特にどういう企業の方にこのプログラムを活用していただきたいですか。

先ほども述べましたが、多種多様なアプリやサービスを展開してはいるけれども、使ってもらえない、人が集まらないという課題を多くの企業が抱えています。我々はもちろん新規立ち上げのタイミングからグロースを意識して構想し、開発に併走していくこともできますが、特に「いまあるものをどうリニューアルし、リバイタライズさせることができるか」とお悩みの方にお声がけいただけると嬉しいですね。顧客ID基盤がなかなか統合できないとか、グロースするためのマーケティングシステムは導入したものの運用できていないといったお悩みにはもちろん対応いたしますし、ウェブサイトのデザインシステムづくりといったご支援もできます。また業務プロセスや組織設計の見直し、あるいはゴール設定やコンセプト、戦略の見直しといった戦略面でのサポートもさせていただけると思っています。

――改めて、博報堂がこうしたプログラムを推進する意義、強みは何でしょうか。

いま私たちのチームでは、ある住宅メーカーのクライアントに対し、住宅展示場の疑似体験がオンラインでできるエクスペリエンスを構想・開発していますが、このような業務はなかなかクライアント側から博報堂に相談しようと思われることが少ないというのが実情だと思います。住宅展示場体験というのは、企業ブランドを直接表現しやすい顧客接点の最たるものなので、本来はマーケティング戦略上非常に重要なはずですが、博報堂は広告会社というイメージが根強く、こうした仕事の依頼先として想起されないことがまだまだ多いように感じます。しかし、企業にとっての重要な顧客接点・生活者インターフェースであるからこそ、広告会社である博報堂の強みが活きると考えています。私たちはブランド、企業に関する戦略立案もできますし、生活者目線でのエクスペリエンス開発もできます。戦略コンサルティング、データ分析、システム開発、UI/UXデザイン、コンテンツクリエイティブ…それぞれの専門家がワンチームになり、生活者から愛され、生活者とつながり続けるサービスを構築することができるわけです。多くの人に使ってもらえるサービスにすることで、きちんとブランド、企業に貢献するサービスグロースパートナーになりえると考えています。

――よくわかりました。ありがとうございます。
次回からは「DXD Growth Program」の具体的な5つのステップ×5つの機能について、各担当者からご紹介いただきます。ご期待ください。

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  • hakuhodo DXD リーダー
    複数年にわたって機能するUXやサービスの開発を中心に行う専門チーム、hakuhodo DXDをリード。アートディレクション、テクニカルディレクション、サービスデザインの3つから成る職種混合型チームで、構想~開発~グロースを一気通貫で担う。